特養の修繕は、3つの条件で頼み方が決まります
特養の修繕を頼む業者を選ぶとき、ほかの介護施設と同じ見方だけでは足りないことがあります。特養には、ほかの施設より強く効いてくる条件が3つあるからです。
図1 特養の修繕の頼み方を決める、3つの条件。
この3つは、業者にとっても工事の段取りを大きく左右します。最初の相談のときに3つを伝えておくと、業者の見積や工程の出し方が具体的になり、比べやすくなります。順に見ていきます。
入居者が、24時間暮らしている建物です
特養は、要介護度の高い方が多く暮らしている建物です。デイサービスのように夜や休日に空くことはなく、工事は入居者の方が暮らしている中で行うのが基本になります。そのため、止められない設備と、避ける時間帯を、先に業者と共有しておくことが欠かせません。
特養で、止まると困る設備と気をつけること| 設備 | 止まると困ること | 工事のときに気をつけること |
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| 特殊浴槽・浴室 | 入浴ができなくなる | 入浴日を避ける、清拭や別の浴室への振替を決める |
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| 給湯 | 入浴・洗面・厨房が止まる | 仮設の給湯や、止める時間を短くする段取り |
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| 空調 | 体調を崩す方が出る | 季節を選ぶ、1系統ずつ工事する |
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| 厨房 | 食事が出せなくなる | 給食の委託先と、代わりの食事を決める |
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| ナースコール | 呼び出しができなくなる | 止める時間の見守りの体制を決める |
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特殊浴槽が止まったときの入浴の振替は特殊浴槽が止まった。入浴は清拭に替えられますに、入居者が暮らしたまま進める大規模な工事の工程表は居ながら工事の工程表は、工事と暮らしの予定を重ねて作りますにまとめています。業者には、食事・入浴・お昼寝・夜間の時間を、1枚の紙にして渡すと話が早くなります。
社会福祉法人の、契約の決まりを先に確かめます
特養の多くは社会福祉法人が運営しています。社会福祉法人には、工事などの契約のしかたについて、国から考え方が示されていて、法人ごとに経理規程で決めています。一定の金額を超える工事は、複数の会社から見積を取る、入札をする、理事会に諮る、といった決まりがあることが多いものです。
図2 社会福祉法人の経理規程で、業者を選ぶ前に確かめること。
建物が市町村などの持ち物で、法人が運営を任されている施設(公設民営など)では、どこまでの修繕を法人が受け持ち、どこからを持ち主が受け持つかが、協定書や契約で決められていることがあります。大きな修繕を考えるときは、まずその取り決めを確かめます。
この線を知らずに1社だけに見積を頼んでしまうと、あとから取り直しになり、工事が遅れます。補助金を使う工事では、補助の決まりでさらに選び方の条件が付きます。補助金を使うときの選び方は補助を使う工事では、相見積か入札かを交付の条件で確かめますに、大規模修繕の頼み方の3つの方式は大規模修繕は着工の2年前に動き出し、石綿の調査は設計の段階で済ませますにまとめています。
ユニット型と従来型で、修繕の進め方が変わります
特養の建物には、大きく分けてユニット型と従来型があります。ユニット型は、おおむね10人ほどの少人数のまとまり(ユニット)ごとに、個室と共同生活室を置く作りです。従来型は、多床室(相部屋)や個室を廊下に沿って並べ、浴室や食堂を施設全体で使う作りです。両方を持つ施設もあります。
ユニット型と従来型の、修繕で違うところ| 項目 | ユニット型 | 従来型 |
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| 浴室 | ユニットごとに個浴があり、機械浴は共用のことが多い | 大きな浴室に、特殊浴槽を複数台まとめて置くことが多い |
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| キッチン・食堂 | ユニットごとに小さなキッチン | 施設全体の厨房と大きな食堂 |
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| 空調 | 個別の機器が多く、台数が多い | 中央の方式や、大きな系統が多い |
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| 修繕の出方 | 小さな工事が数多く出る | 大きな工事がまとまって出る |
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| 止まったときの影響 | 1つのユニットにとどまりやすい | 施設全体に広がりやすい |
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どちらの型かは、施設の指定の内容(ユニット型か従来型か)で分かります。建てたあとに一部をユニット化した施設や、増築で型が混ざっている施設もあるため、業者に伝えるときは、フロアや棟ごとの型を書いておくと、工事の範囲を誤らずに済みます。
図3 ユニット型と従来型の、修繕の違い。
ユニット型の修繕は、数の多さとの付き合いです
ユニット型では、浴室、トイレ、キッチン、洗濯機の置き場などがユニットごとにあるため、同じ種類の設備が施設の中にいくつも並んでいます。1つが壊れても、隣のユニットのものを借りて急場をしのげることが多い反面、修理の件数はどうしても多くなります。
ユニット型で多い修繕と、頼み方| よくある修繕 | 頼み方の目安 |
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| 個浴の水栓・シャワー・排水 | 近くの設備会社に、ためてまとめて頼む |
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| ユニットのキッチンの水栓やIH | 設備会社や電気工事の業者に、巡回で見てもらう |
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| 居室の扉・引き戸の調整 | 工務店や建具の業者に、月1回などまとめて頼む |
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| 個別の空調機の故障 | 空調の業者に。台数が多いので台帳で年数を管理する |
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ユニットごとに職員が決まっていることが多いため、不具合に気づいた職員から、ユニットの名前と場所を添えて報告してもらう決まりにしておくと、業者に頼むときに場所を探す手間が減ります。
件数が多い分、日常の小さな修理を近くの業者に月1回まとめて頼む形が合っています。同じ機器が何台もあるため、年数を台帳にまとめておくと、まとめて更新する時期も見えてきます。ユニット化の考え方そのものはユニット化するかどうかは、入居者・職員・経営の3つで決めますにまとめています。
従来型の修繕は、止まったときの備えが中心です
従来型では、大きな浴室、施設全体の厨房、中央の給湯や空調など、設備が1か所にまとまっていることが多くあります。1つが止まると施設全体に響くため、止まったときの備えと、計画的な更新が中心になります。
従来型で気をつける設備と、備え| 設備 | 備えの目安 |
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| 大浴場の特殊浴槽 | 台数を分けて点検し、1台止まっても入浴を回せる組み方にする |
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| 中央の給湯 | 複数台の組み方にして、1台が止まっても湯が出るようにする |
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| 施設全体の厨房 | 給食の委託先と、止まったときの代わりの食事を決めておく |
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| 大きな系統の空調 | 止まったときの仮設の空調の手配先を決めておく |
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従来型の施設では、多床室の間仕切りや個室化など、暮らし方を変える改修を考える場面も出てきます。多床室の改修やユニット化の改修の進め方は多床室の改修は、空ける居室の数で工事の区切りが決まりますにまとめています。
型に合わせて、頼み先を分けて組みます
特養の修繕は、1社にすべてを頼むよりも、日常の小さな修理と大きな工事で頼み先を分け、型に合わせて組むと回りやすくなります。
型ごとの、頼み先の組み方の例| 修繕の種類 | ユニット型の例 | 従来型の例 |
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| 日常の小さな修理 | 近くの設備会社・工務店に月1回まとめて | 近くの設備会社・工務店に、急ぎと分けて |
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| 浴室・特殊浴槽 | 個浴は設備会社、機械浴はメーカーや保守の会社 | メーカーや保守の会社と、台数に合った保守契約 |
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| 空調 | 空調の業者と台帳で年数を管理 | 空調の業者と、系統ごとの更新計画 |
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| 大規模な改修 | 見積合わせ・入札で比べる | 設計と施工を分けるなど、方式を先に決める |
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図4 特養の修繕の頼み先を組む流れ。
分野をまたぐ相談や、見積を同じ条件でそろえたいときは、窓口型のサービスを日常の頼み先に加える方法もあります。頼み先を金額と急ぎで仕分ける考え方は修繕の頼み先は、金額と急ぎの2つで4つに分かれますにまとめています。
定員29名以下の、地域密着型の特養
定員29名以下の地域密着型の特養は、建物も設備も小さく、職員の数も限られます。浴室や厨房が1つずつしかないことも多く、1つ止まると代わりがありません。その一方で、工事の規模は小さいため、地元の工務店や設備会社に頼みやすい面もあります。
地域密着型の特養で、気をつけること| 項目 | 気をつけること |
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| 設備の数 | 浴室・給湯・厨房が1つずつのことが多く、止まると代わりがない |
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| 職員の数 | 工事の立ち会いや入居者の見守りに、人を割きにくい |
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| 併設の施設 | 本体の特養やほかの事業所と建物を分けているか、一緒かで工事の範囲が変わる |
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小さな施設ほど、止まったときの代わりの手段(別の施設の浴室を借りる、仮設の給湯を手配する)を、平常時に決めておくことが大事です。窓口や業者には、併設の施設があるかどうかも伝えておきます。
築年数で、出てくる工事が変わります
特養の修繕は、建ててからの年数でおおよその出方が変わります。型にかかわらず、年数ごとの目安を持っておくと、予算や補助金の準備を前もって進められます。
築年数と、出てくる工事の目安| 築年数 | 出てくることが多い工事 |
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| 〜10年 | 建具の調整、水栓や照明の修理、小さな補修 |
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| 10〜20年 | 空調・給湯・特殊浴槽の更新、外壁のシーリング、屋上防水 |
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| 20〜30年 | 外壁や屋上の大規模な改修、給水・排水の配管、エレベーター |
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| 30年〜 | 配管の更新や、建て替えと改修の比較 |
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特養は建物が大きく、工事の金額も大きくなりやすいため、10年先までの大きな工事を一覧にしておくと、補助金の申請や理事会への説明の準備を、余裕を持って始められます。
年数はあくまで目安で、使い方や地域の気候で前後します。とくに特殊浴槽や給湯は、使う回数が多い特養では早めに傷むことがあります。老健や有料老人ホームとの傷み方の違いは老健と有料では、傷む場所も、工事を入れる機会も違いますにまとめています。
特養の修繕を頼める業者の種類
特養の修繕を頼める業者には、いくつかの種類があります。得意なことが違うため、組み合わせて使うのが一般的です。
特養の修繕を頼める業者と、得意なこと| 頼み先 | 得意なこと |
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| 地元の工務店・設備会社 | 日常の小さな修理、近さを生かした急ぎの対応 |
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| 特殊浴槽などのメーカー・保守の会社 | その設備の修理と点検、部品の手配 |
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| 空調・電気の工事業者 | 空調機の修理と更新、電気設備やナースコールの配線 |
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| ビル管理の会社 | 点検や設備の管理を、契約の中でまとめて |
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| 設計事務所 | 大規模な改修の設計と、工事の監理 |
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| 窓口型のサービス | 分野をまたぐ相談、業者の手配、見積の比較 |
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特養では、同じ業者に何年も頼み続けていることがよくあります。長く頼んでいる業者は施設の事情をよく知っていますが、法人の規程で決められた見積合わせを省いてしまうと、運営の指導や監査で説明を求められることがあります。長い付き合いの業者にも、規程に沿った比べ方をお願いしておきます。
どの業者でも、入居者が暮らす中での工事に慣れているかが大事です。最初の電話で、食事や入浴の時間を避けて作業を組めるか、ユニットごとに区切って工事できるかを聞いてみると、慣れの度合いが分かります。
相談・見積は無料|同じ条件で最大3社
このお問い合わせ1本で、
最大3社の見積がそろいます。
モデルケース:従来型の特養で、浴室の止まり方を変えた施設
モデルケース:従来型・定員80名の特養
大浴場の特殊浴槽が1台止まるたびに、入浴が回らなくなっていた
変わったこと(結果)
特殊浴槽2台の保守を同じ会社にまとめ、点検の時期を1台ずつずらしました。翌年、1台が故障したときも、もう1台と清拭を組み合わせて入浴を回すことができ、入浴の予定を大きく崩さずに済みました。
背景と、困っていたこと
この施設は、大浴場に特殊浴槽を2台置く従来型の特養でした。2台は別々の時期に別の会社から入れたもので、点検も故障のときの連絡先もばらばらでした。1台が止まると、どこに連絡するかを調べるところから始まり、復旧まで入浴の予定が崩れていました。
その後に決めたこと
法人の経理規程に沿って2社から保守の見積を取り、理事会で承認を受けて1社にまとめました。あわせて、給湯の機器を複数台の組み方にする更新を、翌年度の予算に入れました。