同時にするかは、防水の残りの年数で3つに分かれます
屋上に太陽光を載せるとき、防水を同時にやり直すかどうかは、防水があと何年持つかで決まります。パネルは20年ほど使う設備です。その間に防水の改修が来ると、パネルと架台をいったん外し、工事のあとで戻すことになります。
太陽光と屋上防水の3つのパターン| パターン | 防水の状態の目安 | すること | 気をつけること |
|---|
| A そのまま載せる | 前回の改修から年数が浅く、傷みも出ていない | 防水の今の状態を写真と報告書で残してから載せる | 架台を載せても防水の保証が続くかを、施工した会社に確かめる |
|---|
| B 同時に行う | 改修の時期が近い、またはふくれや水たまりが出ている | 防水の改修と太陽光を、1つの工程にまとめる | 2つの業者の受け持ちの分け方を、契約の前に決める |
|---|
| C 防水を先に、太陽光はあとで | 防水は傷んでいるが、太陽光の計画がまだ固まっていない | 防水を先に改修し、あとで載せるときの架台の載せ方だけ決めておく | あとで載せるときに、新しい防水を傷めない載せ方にする |
|---|
防水の持つ年数は、工法によっておおむね10〜20年です。パネルを使う20年ほどのほうが長いことが多いので、どのパターンでも、20年のうちに1回は外して戻すことになりやすいと考えておきます。違いは、その時期と回数です。
図1 防水が15〜20年持つとしたときの目安。持つ年数が短い工法では、改修の回数が増える。
同時に新しくすると、次の防水の改修は、パネルを使い終わるころになります。パネルの入れ替えと防水の改修を同じ時期に合わせられれば、外して戻す手間は実質なくなります。防水の工法ごとの持つ年数と費用の目安は屋上防水と外壁塗装は、総額より年あたりの費用で比べますにまとめています。
防水のほかにも、屋根に載せられる重さ、発電した電気を使い切れるか、停電のときに使える範囲など、載せる前に確かめることがあります。それらは太陽光は、補助金より先に屋根と電気の使い道を確かめますで書いています。
防水の残りの年数は、記録と調査で見当をつけます
防水があと何年持つかは、前回の工事の記録と、今の傷みの両方から見当をつけます。記録だけでは、日当たりや施工の出来による差が分かりません。傷みを見るだけでは、どの工法の何年目かが分かりません。
防水の残りの年数を見当づける材料| 材料 | 分かること | どこで確かめるか |
|---|
| 前回の防水工事の年と工法 | 工法ごとの持つ年数から見た、残りの年数 | 工事の記録、契約書、竣工図 |
|---|
| 保証書 | 保証の残りの年数と、太陽光を載せたときの扱い | 保証書、施工した会社 |
|---|
| 今の傷み | ふくれ、継ぎ目の浮き、水たまり、ひびの広がり | 防水の業者の調査、職員が撮った写真 |
|---|
| 下地の水分 | 下に水が回っていないか。重ねる改修ができるか | 防水の業者の調査(水分の測定など) |
|---|
| 雨漏りの記録 | 最上階の天井の染みが出た場所と時期 | 雨漏りの記録、修理の履歴 |
|---|
調査は、太陽光の業者ではなく、防水の業者か建設会社に頼みます。太陽光の業者は架台と電気が専門で、防水の残りの年数の見立ては、防水の業者のほうが確かです。調べた結果は太陽光の業者にも渡し、架台の載せ方を決める材料にします。
最上階で雨漏りが出たことがある施設は、その原因が直っているかも確かめます。原因が残ったまま載せると、あとで太陽光の工事のせいにされたり、逆に疑ったりすることになります。雨漏りの原因の調べ方は雨漏りは、原因を見つけるまでが工事の半分ですにまとめています。
同時に行う利点は、架台の足元を防水と一続きに作れることです
防水と太陽光を同時に行うと、仮設や資材の揚げ降ろし、入居者の方へのお知らせが1回で済みます。工事中の写真や保証書も、一続きのものとしてそろえられます。何より、架台の足元の防水を、防水の層と一続きに作れるのが大きな利点です。
あとから載せる場合は、できあがった防水の上に架台を置くので、足元の処理があとから付け足す形になります。同時なら、架台の基礎を先に据え、その立ち上がりまで防水を巻き上げる、という作り方ができます。継ぎ目が少ないぶん、雨水が入る所が減ります。
国の手引きでも、防水の層を傷めたときの責任の境目をはっきりさせるために、パネルを載せる前に事業者が防水の工事を行った例が紹介されています。防水と太陽光を1つの流れで組むことは、責任を分けやすくする方法でもあります。
一方で、工期は長くなり、費用も一度に大きくなります。2つの業者が同じ屋上で働くので、作業の順番と、誰がどこを受け持つかの調整が要ります。太陽光の補助金を使う場合は、防水の工事まで補助の対象になるとは限らないので、募集の要項で範囲を確かめます。補助金を使う工事では、業者の選び方にも条件がつきます(補助を使う工事では、相見積か入札かを交付の条件で確かめます)。
雨漏りの責任は、場所ごとに分けて決めます
太陽光を載せた屋上で雨漏りが出ると、防水の傷みなのか、架台や配線の工事のせいなのかが分かりにくくなります。ただ、原因になりやすい場所は、ほぼ決まっています。場所ごとに誰が受け持つかを先に決めておけば、もめずに済みます。
雨漏りの原因になりやすい場所と、受け持ちの例| 場所 | 起きやすいこと | 受け持ちの例 |
|---|
| 防水の層(平らな部分) | 年月による傷み、ふくれ、継ぎ目の浮き | 防水の業者(防水の保証) |
|---|
| 架台の基礎と足元 | 基礎のまわりのすき間、重さやずれによる防水の傷 | 足元の防水は防水の業者、基礎を据えるのは太陽光の業者 |
|---|
| 配線を通した穴 | 配線を屋内へ引き込む穴やすき間からの雨水 | 止水の処理をどちらがするか、1社に決める |
|---|
| 排水口のまわり | 架台や配線が水の流れをさまたげ、水がたまる | 並べ方を決めた側。配置の図で排水口との距離を確かめる |
|---|
| 工事中についた傷 | 工具の落下、資材の引きずり、踏んだ跡 | 傷をつけた側。作業の前と後の写真で確かめる |
|---|
図2 場所ごとに受け持ちを決め、境目に空きが出ないようにする。
建設業の許可の区分では、太陽光の設置の工事は電気の工事に入ります。パネルを屋根に載せるときの屋根の止水の処理も、その工事に含まれるとされています。何も決めなければ、架台の足元や配線の穴の止水は、太陽光の業者の仕事と受け取られることがあります。いっぽう防水の業者は、自分が作った防水の層に、ほかの業者があけた穴までは保証しないのがふつうです。
ですから、穴の止水をどちらが処理し、どちらの保証に入れるかを、はっきり決めます。防水の層と一続きに処理できる防水の業者に任せ、防水の保証に含めてもらう形にすると、境目が空きにくくなります。
責任の分け方は、契約と保証書にこう書きます
責任の分け方は、口約束ではなく、契約書と保証書に書きます。防水と太陽光を2社に分けて頼む場合は、2つの契約の書き方がつながっているかを、施設が確かめます。同じ責任の表を、両方の契約書に付けておくのが確かです。
契約と保証書に書いておくことと、書き方の例| 書くこと | 書き方の例 |
|---|
| 受け持ちの範囲 | 防水の層と架台の足元の防水は防水の業者、架台・パネル・配線は太陽光の業者が受け持つ |
|---|
| 穴をあける所の止水 | 配線を通す穴と、架台を固定する所の止水を、どちらの業者が行い、どちらの保証に入れるか |
|---|
| 保証の範囲 | 防水の保証書の対象に、架台の足元を含める。太陽光の業者は、固定と配線の処理の保証をつける |
|---|
| 雨漏りしたときの調べ方 | 施設が両方の業者に連絡し、両者が立ち会って原因を調べる |
|---|
| 調べる費用 | 原因が分かるまでの調査の費用の持ち方と、原因が分かったあとの精算の仕方 |
|---|
| 屋上での作業の決まり | 防水の上を歩く所や物を置く所は養生する。作業のあとは防水の業者が見て確かめる |
|---|
| 外して戻すとき | 次の防水の改修のとき、パネルを外して戻す費用と手配を誰が持つか |
|---|
図3 原因が分かる前に、どちらか一方だけに直させない。
雨漏りに気づいたら、すぐに書面で両方の業者に知らせます。民法には、工事の不具合(契約の内容に合わないこと)を知らせる期限の決まりがあります。施設がそれを知った時から1年以内に業者に知らせないと、直すことや損害の請求ができなくなります。契約書の約款には、不具合を直してもらえる期間も書かれているので、あわせて確かめます。
工事の契約書で、変更や事故の扱いとあわせて確かめる点は工事の契約書は、追加と事故の扱いから読みますにまとめています。施工の保証、メーカーの保証、契約の責任の違いと、保証書の管理の仕方は工事の保証は、3つに分けて部位ごとに控えますで書いています。
1社にまとめて頼むか、2社に分けて頼むか
防水と太陽光の頼み方は、大きく3つあります。どれを選ぶかで、雨漏りしたときの窓口が変わります。施設に、2社の間に立って調整する人の手があるかどうかも、選ぶときの目安になります。
防水と太陽光の頼み方| 頼み方 | 雨漏りのときの窓口 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|
| 1社を元請けにする | 元請けの1社 | 施設に調整する人の手が足りない | 下で入る業者の保証も、元請けの保証にまとめてもらう |
|---|
| 2社に分けて頼む | 施設が間に立つ | 防水と太陽光の業者を、それぞれ選びたい | 2つの契約の受け持ちの境目が空かないようにする |
|---|
| 太陽光の事業者が防水も行う | 太陽光の事業者 | 電気を買う契約(PPA)で、屋根を長く貸す | 防水の仕様と保証の年数を、施設が確かめる |
|---|
図4 雨漏りのときの窓口が1つになるのは、1社にまとめる形。
許可も確かめます。1件500万円以上の工事では、防水の工事には防水工事業、太陽光の設置の工事には電気工事業の建設業の許可が要ります。建物の工事と設備の工事が同じ現場でぶつかるときの考え方は建物と設備を一括で頼むと、境目の押し付け合いがなくなりますで書いています。
載せたあとに防水を直すときは、外して戻す費用がかかります
太陽光を載せたあとに防水を改修するときは、パネルと架台をいったん外し、防水の工事のあとで戻します。国の手引きでも、施設の改修のときには、設備の一時的な撤去、保管、再設置の費用がかかると書かれています。
外して戻すときにかかる費用の中身| 中身 | 例 |
|---|
| 電気を止めて配線を外す | パワコンを止め、配線を安全に外す電気の工事 |
|---|
| パネルと架台を外して下ろす | 屋上での取り外しと、クレーンなどでの揚げ降ろし |
|---|
| 保管 | 外したパネルの置き場所と、傷めないための保管 |
|---|
| 戻して配線をつなぐ | 架台とパネルを戻し、配線をつないで試運転する |
|---|
| 止まっている間の電気 | 発電が止まる間は、電力会社から買う電気が増える |
|---|
| 足元の防水の作り直し | 新しい防水に合わせて、架台の足元の防水をやり直す |
|---|
費用は、パネルの枚数、架台の形、置き場所があるか、揚げ降ろしの方法で大きく変わります。載せる時点で、将来の改修のときに外して戻す費用の見積も出してもらい、長期の修繕計画に入れておきます。計画の年数の持ち方は長期修繕計画は、30年・5年・単年の3つで持ちますにまとめています。
電気を買う契約(PPA)では、外して戻す費用を誰が持つかを契約で決めます。国の手引きでは、事業者の負担にすると電気の単価が上がることにつながる、と書かれています。自治体の屋根貸しの募集では、事業の期間が終わったら、事業者の負担で設備を撤去し、屋上を元に戻すと決めている例もあります。
載せる場所を選ぶ、一部だけ載せるという方法もあります
屋上の全面に載せず、一部だけに載せる方法もあります。棟ごとに防水の年数が違う施設や、屋上に設備が多い施設では、載せる場所を選ぶだけで、外して戻す手間を減らせます。
- 防水を改修したばかりの棟に載せるほかの棟は、防水の改修に合わせて載せるかを決めます。
- 排水口のまわりを空ける排水口と雨水の通り道をふさがないよう、まわりを空けて並べます。
- 設備の通り道を残す室外機、受変電設備、受水槽の点検と更新のための通り道を残します。
- 穴をあけない載せ方を選ぶ重しの基礎を置く方法なら、防水を貫かずに済みます。
自治体の案内でも、屋根に穴をあけると防水の保証が切れることや、漏水のおそれがあることから、穴はあけないほうが望ましいとされています。重しの基礎を防水の上に置いて接着し、アンカーを打たない方法を条件にしている自治体の屋根貸しの例もあります。
ただし、重しの基礎は重くなるので、屋根に載せられる重さとの兼ね合いで決めます。架台を載せても防水の保証が続くための条件は、工法や防水の業者によって違うので、設計の段階で、防水を施工した会社に確かめます。
同時に行うときは、防水を仕上げてからパネルを載せます
防水と太陽光を同時に行うときは、防水と架台の順番で工程を組みます。基本は、架台の基礎を据え、防水を仕上げて、水をかけて漏れないことを確かめてから、パネルを載せる順番です。パネルを載せてからでは、防水の不具合を見つけにくくなるからです。
図5 防水を仕上げて漏れを確かめてから、パネルを載せる。
同時に行う工事で、介護施設が決めておくこと| 決めること | 中身 |
|---|
| 資材の揚げ降ろしの時間 | クレーンを使う日は、送迎や散歩の時間を外す |
|---|
| 火を使う工法の日 | バーナーを使う日は、火気の見張りと消火器の置き場所を決める |
|---|
| においの出る日 | 換気口や窓が近い居室の入居者の方に、前もって知らせる |
|---|
| 最上階の音 | 機械で穴をあける作業や、重いものを置く作業の時間帯 |
|---|
| 雨の日の予備 | 防水は雨の日に作業できないので、予備の日を工程に入れる |
|---|
| 写真の撮り方 | 足元の防水、配線の穴の止水、水をかけた確かめを、誰が撮るか |
|---|
2つの業者の作業が重なる日は、屋上の使い方を決めます。防水ができあがった所の上を歩くときや、パネルを置くときは、防水を傷めないように養生してもらいます。入居者が暮らしたまま進める工事の工程表の組み方は居ながら工事の工程表は、工事と暮らしの予定を重ねて作りますにまとめています。
モデルケース:防水と太陽光を同時に行い、責任の表を作った有料老人ホーム
モデルケース:定員60名の介護付き有料老人ホーム
責任の表があったので、台風のあとの雨漏りが10日で片づいた
変わったこと(結果)
太陽光を載せた翌年の台風のあと、最上階の居室の天井に小さな染みが出ました。施設は、引き渡しのときに受け取った責任の表に沿って、その日のうちに防水の業者と太陽光の事業者の両方に書面で連絡しました。3日後に両者の立ち会いで水をかけて調べ、原因は配線を屋内に引き込む穴の止水と分かりました。その処理を受け持っていた防水の業者が保証で直し、連絡から補修まで10日で終わりました。施設の費用の負担はなく、入居者の方のお部屋の移動も1回で済みました。
背景と、困っていたこと
このホームは、鉄筋コンクリート造の5階建てで、築17年です。屋上の防水は、築5年目に部分の補修をしたきりで、ふくれが目立ち始めていました。そこへ、電気を買う契約(PPA)で太陽光を載せる提案が届きました。防水の業者に調べてもらうと、あと数年で改修が要るという見立てでした。
決めたこと
施設は、防水の改修と太陽光を同時に行うことにし、防水の業者と太陽光の事業者に別々に頼みました。2社との打ち合わせを2回開き、A4の1枚の責任の表を作りました。防水の層と架台の足元、配線の穴の止水は防水の業者が行い、防水の保証に含める。架台の固定と配線は太陽光の事業者の保証とする。雨漏りのときは、施設が両方に連絡し、立ち会いで原因を調べる。この表を、2つの契約書に同じ形で付けました。
進めてみて分かったこと
最初の打ち合わせで、太陽光の事業者は、配線の穴の止水は自分たちの工事に含まれると考えていました。防水の業者も同じ所を受け持つつもりで、受け持ちが重なっていました。表にして初めて分かった食い違いです。1社に決めたことで、雨漏りのときに、どちらの保証かで迷わずに済みました。