非常用自家発電や受水槽の整備には、防災・減災の交付金が使えます
非常用自家発電や受水槽の整備に使える国の補助は、地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金です。この交付金の中に、高齢者施設などの防災・減災の対策を支える事業があります。2026年度の国の資料では、防災・減災の対策として、次の事業が挙げられています。
防災・減災の交付金で対象になる主な事業(2026年度の国の資料)| 事業 | 中身 |
|---|
| 非常用自家発電設備の整備 | 燃料タンクを含む発電設備を備える |
|---|
| 給水設備の整備 | 受水槽や、地下水を使う給水設備を備える |
|---|
| 水害対策の強化 | 水害対策に伴う改修など |
|---|
| 換気設備の設置 | 感染のリスクを下げるための換気設備など |
|---|
| ブロック塀などの改修 | 災害で倒れるおそれのある塀を直す |
|---|
| スプリンクラー設備などの整備 | 消防の法令の改正で、新たに要る施設に |
|---|
| 大規模修繕など | 社会福祉連携推進法人などの施設の修繕や、国土強靱化の対策と一体の修繕 |
|---|
図1 電気・水・水害への備えが、同じ交付金の中に並んでいる。
2026年度は、建設のコストの上昇を受けて、交付金の基準単価の上限が7.7%相当引き上げられました。古い見積のままでは、今の工事費とずれるので、見積は今の単価で取り直します。国の予算は当初より補正予算が大きい年があり、2025年度の補正予算では83億円(うち国土強靱化の分62億円)が組まれました。
窓口は、定員で分かれます。定員30人以上の施設は都道府県、29人以下の施設は市区町村が受け持ちます。補助の割合と上限は、事業ごとに要綱で決まるので、担当に確かめます。翌年度の補助に向けた調査の時期と、今秋そろえる見積と書類は令和9年度の修繕の補助は、まず県の調査が済んだかを確かめますにまとめています。
設備を選ぶ前に、停電の間に何を何時間動かすかを決めます
発電機や蓄電池を選ぶ前に、停電の間に何を、何時間動かすかを決めます。これが決まらないと、発電機の大きさも、燃料の量も、蓄電池の容量も決められません。BCPに「発電機で対応」とだけ書いてある施設では、まずここから見直します。
停電のときに優先して動かすものの例| 設備・機器 | 止まると起きること | 動かす時間の考え方 |
|---|
| たんの吸引器・酸素濃縮器などの医療機器 | 命に関わる | 停電の間ずっと。機器の電池が持つ時間も確かめる |
|---|
| ナースコール・見守り機器 | 呼び出しが届かない | 停電の間ずっと |
|---|
| 廊下・詰所・トイレの照明 | 夜の介助ができない。転ぶ | 夜を中心に |
|---|
| 電話・インターネットの機器、携帯の充電 | 家族や行政と連絡がとれない | 決めた時間に |
|---|
| 給水ポンプ | 上の階に水が上がらない。トイレが流せない | 水を使う時間に合わせて |
|---|
| 薬と食材の冷蔵庫 | 薬や食材が傷む | 扉を開ける回数を減らして |
|---|
| 集まる部屋の空調 | 夏の熱中症、冬の冷え | 夏と冬に、1〜2部屋に絞って |
|---|
| エレベーター | 上の階の移動と避難ができない | 要るときだけ |
|---|
図2 同時に使う合計で発電機の大きさが、1日の量で燃料や蓄電池の容量が決まる。
計算は、かけ算と足し算です。同時に動かす機器の消費電力を足すと、発電機に要る大きさの目安になります。1台ごとの消費電力に動かす時間をかけて足すと、1日に要る電気の量になります。仮に、照明の合計が2kWで12時間なら、24kWhです。
医療機器を使う入居者の方がいるときは、機器の内蔵の電池が何時間持つかも、1人ずつ書き出します。モーターで動く機器は、動き始めに大きな電気を使うので、発電機の大きさは業者に計算してもらいます。停電した直後に何をするかは介護施設が停電。上げてはいけないブレーカーがありますにまとめています。
今ある非常用の発電機に、何がつながっているかを確かめます
非常用の発電機がある施設でも、停電のときに使える範囲は限られることがあります。消防や建物の決まりで付けた発電機は、スプリンクラーや屋内消火栓、非常用の照明などのためのものです。ふだんの照明やコンセント、医療機器の回路には、つながっていないことがあります。
図3 消防のための発電機だけでは、暮らしを続ける電気が足りないことがある。
今の非常用の発電機について確かめること| 確かめること | 見る資料・場所 | 分かること |
|---|
| 発電機の大きさ | 発電機の銘板、竣工図 | 同時に動かせる量 |
|---|
| つながっている回路 | 分電盤の表示、電気の系統の図 | 停電のときに電気が来る場所 |
|---|
| 燃料の種類と量 | 燃料タンクの表示、点検の報告書 | 補給なしで動かせる時間 |
|---|
| 起動と切り替え | 取扱説明書、点検の業者 | 自動か手動か。誰が操作するか |
|---|
| 点検の記録 | 消防設備の点検の報告書 | 前回の点検の結果と、直すべき所 |
|---|
非常用の回路は、分電盤やコンセントの色や表示で分けていることがあります。どの印がそうかは、施設ごとに違うので、電気の業者に確かめます。消防のための発電機に、ふだんの機器をつなぎたいときは、消防の設備に要る電気に支障が出ないかを、業者に計算してもらいます。
受電の形によって、確かめる相手が違います。高圧で受電している施設は、電気の保安の担当者にも聞きます。受電の形と、電気設備の頼み先の違いは電気設備の修理を頼む先は、受電の形と作業の中身で決まりますにまとめています。
発電機・蓄電池・太陽光・電源車は、使える時間と範囲が違います
停電に備える手段には、据え置きの発電機、持ち運べる発電機、蓄電池、太陽光、電源車があります。どれも、使える時間と範囲が違います。1つで全部をまかなうのではなく、足りない所を埋めるように組み合わせます。
停電に備える手段の比べ方| 手段 | 使える範囲 | 使える時間 | 気をつけること |
|---|
| 据え置きの発電機 | つないだ回路 | 燃料のある間。補給すれば続く | 燃料の保管と点検。音と排気 |
|---|
| 持ち運べる発電機 | 延長コードでつないだ機器 | 燃料のある間 | 屋内で使わない。燃料の保管と、扱える職員 |
|---|
| 蓄電池 | 前もって決めた回路や機器 | 容量の分。充電できれば続く | 容量で費用が大きく変わる |
|---|
| 太陽光 | 自立運転のコンセント。蓄電池と組めば決めた回路 | 晴れた日中。夜と雨は使えない | 屋根と防水、停電のときの切り替えを先に確かめる |
|---|
| 電源車 | 受け入れの口につないだ範囲 | 来てから、燃料のある間 | 来るとは限らない。つなぐ口と手順が要る |
|---|
図4 停電の長さに合わせて、手段をつないでいく。
持ち運べる発電機の排気には、一酸化炭素が含まれます。屋内や、窓・吸気口の近くでは使いません。誰が、どこで、どの機器をつなぐかを決め、年に1回は外で動かしてみます。
太陽光で使えるのは、晴れた日中の、自立運転のコンセントの電気が中心です。屋根に載せる前に確かめることは太陽光は、補助金より先に屋根と電気の使い道を確かめますにまとめています。電源車は、電力会社や自治体が配置を決めるので、呼べば来るとは限りません。受け入れるなら、つなぐ口と手順を前もって決めておきます。
水の備えは、給水の方式と、水を取り出す方法で決まります
断水への備えも、電気と同じように、何に、どれだけ使うかから考えます。家庭の備えでは、飲み水と調理の水で、1人1日3リットルが目安とされます(農林水産省)。介護施設では、これに口のケア、清拭、手洗い、トイレの水が加わります。
図5 給水の方式で、断水への備え方が変わる。
受水槽がある施設では、槽にたまった水を、非常用の給水栓から取り出せることがあります。ただ、停電でポンプが止まると、上の階には水を送れません。給水ポンプを発電機の回路に入れるかは、電気の備えと一緒に決めます。断水した日の水の取り出し方は介護施設が断水したとき、水を取り出す方法がありますにまとめています。
断水に備える手段| 手段 | 中身 | 気をつけること |
|---|
| 受水槽の水を使う | 非常用の給水栓から、槽にたまった水をくむ | 停電でポンプが止まると、上の階へ送れない |
|---|
| 緊急遮断弁 | 地震の揺れで受水槽の出口を閉じ、水を槽に残す | 閉じたあとに開ける手順を決めておく |
|---|
| 地下水を使う給水設備 | 井戸の水をろ過して使う | 水質の検査と、ポンプの電源が要る |
|---|
| 給水車の受け入れ | 自治体の給水を受け取る | 置き場所、運ぶ容器と人手 |
|---|
| 飲み水の備蓄 | ペットボトルなどで置いておく | 入れ替える時期を決める |
|---|
| トイレの備え | 携帯トイレや凝固剤 | 流せない間の量と、ごみの置き場 |
|---|
受水槽を大きくすれば安心、とは限りません。水が入れ替わりにくくなり、水質の面で心配が出ることがあります。容量を変えるときは、1日に使う水の量をもとに、設計者と決めます。受水槽の清掃と検査の決まりは受水槽は有効容量10㎥を超えると、清掃と検査が1年以内ごとの義務ですにあります。
水害に備えるときは、電気と水の設備の高さを見ます
大雨や川の氾濫で建物に水が入ると、地下や1階にある電気と水の設備が止まります。受変電設備、発電機、分電盤、給水ポンプが水につかると、水が引いたあとも、点検と修理が終わるまで使えません。
まず、市区町村のハザードマップで、施設の場所が浸水の想定区域に入るか、想定の深さはどれくらいかを確かめます。そのうえで、それぞれの設備が、想定の深さより高い所にあるかを見ます。
水害で止まりやすい設備と、備えの例| 設備 | よくある置き場所 | 備えの例 |
|---|
| 受変電設備 | 地上や地下の電気室 | かさ上げ、止水板、上の階への移設 |
|---|
| 非常用の発電機 | 屋外の地上、地下 | 想定の深さより高い所に置く |
|---|
| 給水ポンプ・受水槽 | 地下や1階の機械室 | 機械室の出入口に止水板 |
|---|
| 分電盤 | 1階の廊下や機械室 | 上の階の回路を、別の盤から送れるようにする |
|---|
| エレベーター | 昇降路の底に機器がある | 浸水のおそれがあるときは、かごを上の階に止める |
|---|
防災・減災の交付金には、水害対策の強化の事業があります。設備の移設や止水の改修を考えるときは、交付金の対象になるかを担当に聞きます。浸水の想定が深い施設では、建物の中で上の階に移る避難の手順も、BCPに書いておきます。
交付金を使うときは、内示の前に契約しません
交付金を使う工事は、工事の前の年から手続きが始まります。県や市区町村が翌年度分の希望を集め、協議と内示を経て、工事に進みます。兵庫県の2026年度分の募集を例にすると、求められることは次のとおりです。
交付金の協議で求められることの例(兵庫県・2026年度分)| 項目 | 中身 |
|---|
| 対象の事業 | 非常用自家発電設備、水害対策の強化、給水設備、換気設備、大規模修繕など |
|---|
| 協議の締切 | 一次協議は4月21日(必着) |
|---|
| 添付する書類 | 平面図、位置図、写真、見積書(複数を推奨)、補助の対象の面積を確かめる表など |
|---|
| 発電機の条件 | 長い停電でも機能を保つための電源。アンカーボルトなどで転倒を防ぎ、地震に耐える |
|---|
| 着手の時期 | 内示より前に着手(工事の契約を含む)したものは対象外 |
|---|
発電機の整備では、停電のときに何を動かすための発電機かを、協議の書類で説明できるようにしておきます。停電のときに何を何時間動かすかの表が、そのまま説明の材料になります。
業者から「早く契約すれば機器を押さえられる」と言われても、内示の前には応じません。交付の決定の前に着工してはいけない理由と、申請から完了までの流れは補助を使う工事は、交付決定の通知が届くまで契約しませんにまとめています。
補助を使う工事では、業者を入札や見積合わせで選ぶ決まりがつくことがあります。その進め方は補助を使う工事では、相見積か入札かを交付の条件で確かめますにあります。
燃料と試運転は、平時の仕事として担当を決めます
発電機は、停電の日にだけ動かす設備です。ふだん動かしていないぶん、いざという日に動かないことがあります。燃料と試運転を、平時の仕事として、担当と頻度を決めておきます。
発電機の平時の運用| 運用 | 中身 | 頻度と担当の例 |
|---|
| 試しに動かす | 起動して、電圧・音・排気・燃料の漏れを見る | メーカーの示す間隔で。営繕の担当と業者 |
|---|
| 消防の点検 | 消防用設備の非常電源として、機器点検と総合点検 | 6か月ごとと1年ごと。消防設備の業者 |
|---|
| 燃料の量 | 残りの量を記録し、決めた量を下回ったら補給 | 毎月。担当の職員 |
|---|
| 燃料の入れ替え | 古くなった燃料を入れ替える | メーカーや燃料の業者の目安で |
|---|
| 補給の取り決め | 災害のときに、誰が、どれだけ運ぶか | 年に1回、相手と確かめる |
|---|
| 切り替えの訓練 | 夜勤の職員でも、手順どおりに動かせるか | BCPの訓練に入れる |
|---|
消防用設備の非常電源として付けた発電機は、消防法の点検の対象です。2018年6月の改正で、総合点検での負荷をかけた運転は、内部の観察などに替えられるようになりました。予防のための保全をしている場合は、その周期を6年に1回に延ばせます。消防設備の点検の頻度は消防設備の点検は年2回、消防署への報告は年1回ですにまとめています。
燃料を多く置くときは、量によって消防への届出が要ります。軽油なら、200リットル以上1,000リットル未満が少量危険物で、市町村の火災予防の条例による届出の対象です。1,000リットル以上は、危険物の施設としての許可が要ります。
燃料タンクの中だけでは、動かせる時間に限りがあります。燃料の販売店と、災害のときに優先して運んでもらう取り決めを結べないか、相談しておきます。相手と連絡先はBCPに書き、夜勤の職員も分かる場所に貼ります。
災害の種類で、止まるものと止まる長さが変わります
同じ停電でも、災害の種類で、止まるものと止まる長さが変わります。BCPの想定は、施設のある地域で起きやすい災害から考えます。
災害の種類と、止まりやすいもの| 災害 | 止まりやすいもの | 備えで見ること |
|---|
| 地震 | 電気・水・ガス、配管の破損 | 発電機を倒れないよう固定する、受水槽の緊急遮断弁 |
|---|
| 台風 | 電気(倒木などで長引くことがある) | 燃料の量と補給、屋外の機器の固定 |
|---|
| 大雨・洪水 | 地下や1階の電気と水の設備 | 設備の高さ、止水板、上の階への移設 |
|---|
| 大雪 | 電気、燃料の配送 | 燃料を多めに持つ、屋外の吸排気の口がふさがらないか |
|---|
| 猛暑の中の停電 | 空調 | 集まる部屋の空調を、発電機の回路に入れるか |
|---|
地震では、電気より水が長く止まることがあります。施設の中の配管が傷むと、水道が戻っても、施設では水が使えないことがあるからです。電気と水を、それぞれ何日止まる想定にするかは、市区町村の被害の想定を参考に決めます。
BCPの自然災害の計画は、運営指導で、電気と水の備えの記録を見られることがあります。建物と設備について見られる記録と、よくある指摘は運営指導の建物・設備は、届け出と記録と実態を見られますにまとめています。
モデルケース:停電の夜を経て、発電機の回路から見直した特別養護老人ホーム
モデルケース:定員70名の特別養護老人ホーム(ユニット型・2階建て)
停電のときに動かすものを決め、交付金で発電機を備えた
変わったこと(結果)
交付金を使って、暮らしを続けるための発電機を新しく備えました。停電のときに動かせるのは、たんの吸引器を使う入居者の方3名の電源、ナースコール、食堂の空調1台、薬と食材の冷蔵庫、給水ポンプです。燃料の補給なしで、約2日動かせます。切り替えの手順は1枚にまとめ、夜勤に入る職員9名全員が、訓練で一度は操作しました。
背景と、困っていたこと
前の年の秋、台風で9時間の停電がありました。発電機はありましたが、消防のための設備用で、居室のコンセントには電気が来ませんでした。吸引器は持ち運べる蓄電池2台で回し、薬は保冷剤で守りました。BCPには「発電機で対応」とだけ書かれていて、実際に何が動くかを知っている職員はいませんでした。
決めたこと
施設長は、停電のときに動かすものを、優先の順に表にすることから始めました。機器の銘板から消費電力を1台ずつ調べ、同時に使う合計と1日の量を出しました。その数字をもとに2社に見積を頼み、法人の本部から県に協議を出しました。内示を待って契約し、燃料は地元の販売店と、災害のときの補給の取り決めを結びました。
進めてみて分かったこと
表を作る途中で、給水ポンプが発電機の回路に入っていないと、2階のトイレが流せなくなると気づきました。数字で示せたことで、本部の会議では、発電機の大きさの理由を1回で説明できました。