営繕は、建物と設備を使える状態に保つ仕事の全体です
介護施設の営繕とは、建物と設備を、入居者の方と職員が安全に使える状態に保つ仕事の全体を指す言葉です。「営」はつくる・いとなむ、「繕」はつくろう(直す)という意味です。2つを合わせて、建物をつくり、直しながら使い続けることを表します。
国の建物について定めた官公庁施設の建設等に関する法律は、「営繕」を「建築物の建築、修繕又は模様替」と定めています。この法律でいう建築物には、建物についている設備も含まれます。広い意味の営繕は、建てることから、直すこと、造り替えることまでを含む言葉です。
介護施設の現場で「営繕」と言うときは、もう少し狭い意味で使うことが多くあります。新しく建てることは別の計画として扱い、今ある建物と設備を保つ仕事を営繕と呼ぶ使い方です。中身は、保守・修繕・改修・更新の4つと、その手配や記録です。この記事でも、この意味で営繕という言葉を使います。
営繕と、その中に含まれる4つの言葉| 言葉 | 意味 | 介護施設の例 | 行う時期 |
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| 営繕 | 建物と設備を使える状態に保つ仕事の全体 | 下の4つと、その手配・記録・計画 | 一年中 |
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| 保守 | 壊れないように、点検・清掃・調整・消耗品の交換をする | エレベーターや特殊浴槽の定期の点検、空調のフィルターの清掃 | 決まった周期で、壊れる前に |
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| 修繕 | 壊れた所や傷んだ所を、元の状態に戻す | 水漏れの修理、外れた手すりの付け直し、剥がれた床の張り替え | 壊れたとき・傷んだとき |
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| 改修 | 元より性能を上げる、または使い方を変える | 大浴場を個浴に分ける、段差をなくす、断熱の窓に替える | 計画を立てて |
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| 更新 | 寿命の来た設備や部材を、丸ごと新しいものに替える | 給湯器や業務用エアコン、ナースコールの入れ替え | 直すより替えるほうがよいとき |
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図1 営繕という全体の中に、保守・修繕・改修・更新の4つが入る。
4つの言葉は、目的で分かれます。壊れる前に手を入れるのが保守、壊れたら元に戻すのが修繕、元より良くするのが改修、丸ごと新しくするのが更新です。どれも、営繕という全体の中の一部です。営繕の仕事にどんな領域があり、何が含まれるかの一覧は営繕業務は、7つの領域と4種類の仕事。地図にすると、抜けが見えますにまとめています。
営繕と修繕の違いは、全体か一部かです
営繕と修繕の違いは、指している範囲の広さです。修繕は、壊れた所や傷んだ所を元の状態に戻す仕事だけを指します。営繕は、その修繕に加えて、保守・改修・更新と、業者の手配や記録までを含む全体の呼び名です。修繕は営繕の一部、と覚えておくと迷いません。
2つの言葉は、使われる場面も違います。「営繕担当」「営繕費」のように、人の役割や予算のまとまりに付けるときは、営繕を使います。「浴室の修繕」「外壁の修繕」のように、1件ごとの工事に付けるときは、修繕を使うことが多くあります。
営繕と修繕の違い| くらべる点 | 営繕 | 修繕 |
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| 指す範囲 | 保守・修繕・改修・更新と、手配・記録・計画の全体 | 壊れた所・傷んだ所を元に戻す工事 |
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| 目的 | 建物と設備を、使える状態に保ち続ける | 壊れる前の状態に戻す |
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| よく付く言葉 | 営繕担当、営繕費、営繕業務 | 〇〇の修繕、修繕工事、大規模修繕 |
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| お金の出方 | 毎年くり返し出る費用と、計画して出す大きな費用の両方 | 壊れたときに出る費用が中心 |
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| 担う人 | 営繕担当や事務長が、仕事の全体を回す | 業者が工事をし、施設が頼んで仕上がりを確かめる |
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図2 修繕は、営繕という全体の中の「元に戻す」部分にあたる。
たとえば、「トイレの水が止まらない」を直すのは修繕です。便器を節水型の新しいものに替えるのは更新、トイレを車いすで使える広さに変えるのは改修です。この3つに、日々の見回りや業者の手配、修理の記録まで含めたものが営繕です。
言葉の違いが問題になるのは、お金と手続きの話になったときです。同じ「トイレの工事」でも、修繕か改修かで、予算の置き場所、会計の扱い、補助の対象が変わります。このあとの節で、1つずつ見ていきます。
修繕は「元に戻す」、改修は「上げる・変える」です
修繕と改修の分かれ目は、工事のあとの状態が、元と同じか、元より上がるかです。修繕は、傷んだ所を元の状態か、支障なく使える状態に戻す工事です。改修は、元より性能を上げる工事や、部屋の使い方を変える工事です。改修の中に、修繕が混ざることもよくあります。
図3 工事のあとの状態が元と同じなら修繕、性能が上がるか使い方が変われば改修。
同じ場所の工事でも、修繕と改修に分かれる例| 場所 | 修繕にあたる工事 | 改修にあたる工事 |
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| 浴室 | 割れたタイルを張り直す。水栓を直す | 大浴場を個浴に分ける。床を滑りにくい材料に替える |
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| トイレ | 詰まりを直す。壊れた便座を同じものに替える | 車いすで入れる広さに変える。手すりを付け足す |
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| 居室 | 傷んだ壁紙や床を、同じ材料で張り替える | 多床室を個室に区切る。相談室に用途を変える |
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| 廊下 | 剥がれた床材を張り直す | 段差をなくす。手すりを両側に付け足す |
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| 屋上 | 傷んだ防水層を、同じ工法で張り替える | 断熱材を加えた防水に替える |
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| 窓 | 割れたガラスを、同じものに替える | 断熱の二重窓にする。転落を防ぐ金具を付ける |
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建築基準法にも、近い区別があります。「大規模の修繕」は、壁・柱・床・はり・屋根・階段といった主要構造部の一種以上について、過半を直す工事です。「大規模の模様替」は、同じく主要構造部の一種以上について、過半を造り替える工事です。
どちらかにあたる工事は、建物の用途や規模によって、確認申請が要ります。介護施設は特殊建築物にあたることが多いので、壁や床、屋根に広く手を入れる工事は、設計者や自治体に早めに確かめます。
表のように、同じ場所でも、工事の中身で修繕と改修に分かれます。傷んだ浴室の床を直すついでに滑りにくい材料に替えれば、元に戻す部分と性能を上げる部分が混ざった工事になります。この混ざり方を見積の段階で分けておくと、あとで予算や会計の話をするときに困りません。
保守と更新は、設備の一生のどこで行うかで分かれます
保守と更新は、設備の一生の、どの時期に行う仕事かで分かれます。保守は、使っている間ずっと、壊れないように手入れする仕事です。更新は、寿命が近づいた設備を、丸ごと新しいものに替える仕事です。その間に、壊れたら直す修繕が入ります。
図4 保守と修繕をくり返し、直すより替えるほうがよくなったら更新する。
保守は、メーカーや保守の会社と結ぶ保守契約で行うことが多くあります。エレベーター、特殊浴槽、ナースコール、空調、消防用設備などです。点検だけの契約もあれば、消耗品や部品の交換まで含む契約もあります。点検・保守と修繕の頼み先の違いはメンテナンス業者と修繕業者は、別のものですで書いています。
保守・修繕・更新を、設備ごとに分けた例| 設備 | 保守 | 修繕 | 更新 |
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| 業務用エアコン | フィルターの清掃、フロンの簡易点検 | 基板やファンモーターの交換 | 室外機と室内機の入れ替え |
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| 給湯器 | 燃焼の点検、部品の定期交換 | 点火の不良や水漏れを直す | 本体の入れ替え |
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| 特殊浴槽 | 定期の点検、消耗部品の交換 | リフトや昇降の故障を直す | 本体の入れ替え |
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| ナースコール | 呼び出しの試験、子機の点検 | 子機やボタンの交換 | 親機を含めた入れ替え |
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| エレベーター | 保守会社の定期の点検 | 部品の交換、扉の調整 | 制御盤や巻上機の入れ替え |
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更新は、修繕を続けるより、替えたほうがよいと判断したときに行います。判断の材料は、使った年数、部品が手に入るか、修理の回数と費用、止まったときの影響です。設備ごとの年数の見方は設備の年数は、3種類を並べてから更新の時期を決めますにまとめています。
修理で済むのか、替えたほうがよいのかは、施設だけでは決めにくいところです。エアコンが急に冷えなくなったときに、当窓口に相談された事務長の声です。
施設側としては、修理で済むのか、交換したほうがいいのか判断しづらかったのですが、必要な対応について説明してもらえたので、施設長とも相談しながら進めることができました。
ご利用者の声 東京都内・介護施設/事務長
取材にもとづき掲載しています(施設名は非公開)。内容はご本人の申告によるもので、個人の感想です。
現場では、言葉が混ざって使われます
実際の現場では、5つの言葉がきれいに分けて使われているとは限りません。「メンテナンス」「リフォーム」「リニューアル」のような言葉も入ってきます。業者や法人本部と話すときは、相手の言葉を5つの言葉に置きかえて聞くと、行き違いが減ります。
よく聞く言葉を、5つの言葉に置きかえる| よく聞く言葉 | 多くの場合の中身 | 置きかえると | 確かめること |
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| メンテナンス | 点検、手入れ、壊れたときの修理まで混ざる | 保守(ときに修繕) | 契約に修理が含まれるか |
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| リフォーム | 内装や水回りを新しくする | 改修か更新(ときに修繕) | 元に戻すだけか、性能を上げるか |
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| リニューアル | 設備や内装をまとめて新しくする | 更新と改修 | 何を丸ごと替えるか |
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| 原状回復 | 退居後の居室を元の状態に戻す | 修繕 | 手すりの付け足しなどが混ざっていないか |
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| 小修繕 | 数千円から数万円の小さな修理 | 修繕 | 法人の決裁の金額の線 |
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| 大規模修繕 | 屋上防水や外壁など、足場をかけて行う周期的な工事 | 修繕と改修 | 建築基準法の「大規模の修繕」と同じとは限らない |
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| 模様替え | 内装の仕上げや間取りを変える | 改修 | 部屋の用途を変えるかどうか |
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とくに気をつけたいのが「大規模修繕」です。現場では、十数年ごとに足場をかけて行う屋上や外壁の工事を、大規模修繕と呼ぶことが多くあります。いっぽう、建築基準法の「大規模の修繕」は、主要構造部の過半を直す工事を指す言葉で、範囲が違います。
補助の要綱でも、「大規模修繕」の中身は自治体ごとに決められています。言葉が同じでも、同じ工事を指しているとは限りません。言葉だけで判断せず、要綱に書かれた対象の工事と、自分の工事の中身を並べて確かめます。
ほかの言葉の意味を確かめたいときは、用語集も使えます。法人の中で使う言葉は、この表のように「よく聞く言葉」と「5つの言葉」の対応を決めておくと、担当者が替わっても通じます。
言葉によって、予算の置き場所が変わります
言葉で1つ目に変わるのは、予算の置き場所です。保守と修繕は、毎年くり返し出る費用として、ふだんの運営の予算に入れます。改修と更新は、金額が大きく、価値を高めることが多いので、施設整備や設備の購入の予算として別に組むことが多くあります。
社会福祉法人の会計基準では、修繕費は事務費の中の科目です。勘定科目の説明では、建物や器具・備品の修繕や模様替の費用とされ、改良して耐用年数を延ばすような資本的支出は含みません。建物の取得のような支出は、施設整備等による支出の区分に置かれます。
株式会社や医療法人は、それぞれの会計の決まりで科目を立てます。ただ、ふだんの費用と、資産になる支出を分ける考え方は同じです。科目の名前は、法人の経理規程で確かめます。
言葉ごとの、予算の置き場所の例| 言葉 | 予算の置き場所の例 | 金額の出方 | 予算を組むときの材料 |
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| 保守 | ふだんの運営の予算(保守や委託の費用) | 毎年ほぼ同じ | 保守契約の一覧と金額 |
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| 修繕 | ふだんの運営の予算(修繕費) | 年によって上下する | 前の年までの修理の件数と金額 |
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| 改修 | 施設整備の予算 | 計画した年にまとまって出る | 見積と、補助を使うかどうか |
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| 更新 | 設備の購入や施設整備の予算 | 寿命の年にまとまって出る | 機器の年数と、更新の計画 |
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言葉を分けずに「営繕費」として1つの予算にまとめると、年度の途中で困ることがあります。たとえば給湯器の更新に数百万円を使うと、その年の小さな修理に回すお金が足りなくなります。ふだんの修繕と、計画して行う改修・更新を分けて組んでおけば、急な故障にも計画の工事にも、お金を回しやすくなります。
大きな改修や更新は、何年も前から時期が見えています。毎年少しずつ積み立てて備える法人もあります。修繕の予算の組み方は修繕の予算は、前の年の秋から3つの区分で組みますで書いています。
言葉で、修繕費か資本的支出かの見当がつきます
言葉で2つ目に変わるのは、会計の扱いです。工事の費用は、その年の費用にする修繕費と、資産として計上して何年かに分けて費用にする資本的支出に分かれます。分け方は、言葉ではなく工事の中身で決まります。ただ、言葉の区別とかなり重なっています。
法人税基本通達は、壊れた所を元の状態に戻すための費用を修繕費としています(7-8-2)。価値を高めたり耐久性を増したりする部分は、資本的支出です(7-8-1)。修繕は修繕費、改修は資本的支出に近い、と考えると見当がつきます。設備を丸ごと替える更新は、新しい資産の取得として扱われることがあります。
言葉と、会計の扱いの傾向| 言葉 | 会計の扱いの傾向 | 分かれ目になること |
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| 保守 | その年の費用 | 部品の交換が、特に性能の高いものへの交換でないか |
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| 修繕 | 修繕費になりやすい | 元に戻すだけか。20万円未満か、おおむね3年以内の周期か |
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| 改修 | 資本的支出になりやすい | 性能を上げる部分と、元に戻す部分の金額 |
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| 更新 | 新しい資産の取得や資本的支出として扱われることがある | 設備の単位と、取り替える範囲 |
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金額と周期にも目安があります。1つの計画の工事が20万円未満のものや、おおむね3年以内の周期で行うものは、修繕費にできます(7-8-3)。どちらか明らかでない金額が60万円未満か、前期末の取得価額のおおむね10%以下のときも、修繕費にできます(7-8-4)。
判定するのは、法人の経理と、顧問の会計の専門家です。頼む側にできるのは、判定の材料をそろえることです。見積の分け方と判定の進め方は修繕費か資本的支出かは、見積の分け方で判断しやすくなりますにまとめています。資産になったあとの耐用年数と減価償却は、建物附属設備の耐用年数は、設備の区分で決まりますで書いています。
言葉によって、補助の対象になるかが変わります
言葉で3つ目に変わるのは、補助の対象です。国や自治体の補助は、大規模修繕や改修のように、施設の機能を保ったり高めたりする工事を対象にするものが中心です。毎年の小さな修理や、保守の費用は、補助の対象になりにくいと考えておきます。
たとえば、地域医療介護総合確保基金を使った自治体の補助には、介護施設の大規模修繕を対象にするものがあります。名古屋市の要綱では、おおむね10年たって使用に耐えなくなった部分の改修を対象にしています。浴室や食堂の改修、外壁や屋上の防水、給排水・電気などの設備や冷暖房設備の改造です。避難経路の整備やバリアフリー化なども挙げています。対象の工事と条件は、自治体ごとに違います。
言葉と、補助の対象になりやすさ| 言葉 | 補助の対象になりやすさ | 理由と、確かめること |
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| 保守 | なりにくい | 毎年の運営の費用にあたるため |
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| 修繕(小さな修理) | なりにくい | 金額が小さく、ふだんの費用にあたるため |
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| 修繕(大規模修繕) | なることがある | 要綱の「大規模修繕」の中身と、年数などの条件を確かめる |
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| 改修 | なりやすい | バリアフリー化・防災・省エネ・ユニット化など、目的が要綱に合うか |
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| 更新 | 目的によってなる | 非常用の発電設備や空調など、防災や省エネの目的に合うか |
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補助を使う工事では、見積の言葉が、そのまま申請の書類に使われます。件名が「浴室修繕工事」で中身が個浴への改修なら、要綱の区分とずれることがあります。補助の対象になる部分とならない部分を、見積の行で分けておくと、申請のときに書き直さずに済みます。
交付の決定より前に契約や着工をすると、補助の対象にならないことにも気をつけます。基金を使った大規模修繕の補助の仕組みは基金で大規模修繕の補助を受けるには、まず創設の条件を確かめますにまとめています。
言葉によって、頼み先と契約の形が変わります
言葉で4つ目に変わるのは、頼み先と契約の形です。保守は、設備ごとのメーカーや保守の会社と、年単位の保守契約を結ぶのがふつうです。修繕は、その都度、設備業者や工務店に工事を頼みます。改修は、規模によって設計者に図面を頼み、工事の会社を選びます。更新は、メーカーや設備業者に、機器と工事をあわせて頼みます。
言葉ごとの、頼み先と契約の形| 言葉 | 主な頼み先 | 契約の形 | 気をつけること |
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| 保守 | メーカー、保守の会社 | 年単位の保守契約(委託) | 点検だけか、部品の交換まで含むか |
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| 修繕 | 設備業者、工務店、メーカー | 1件ごとの工事の請負 | 小さな修理を受けてくれるか |
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| 改修 | 設計者、工事の会社 | 設計の委託と、工事の請負 | 確認申請や補助の手続きが要るか |
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| 更新 | メーカー、設備業者 | 機器の購入と、工事の請負 | 撤去と処分、止まる期間の代わり |
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工事の金額にも気をつけます。1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事は、その業種の建設業の許可を持つ会社に頼みます。改修や更新はこの金額を超えやすいので、見積を頼む前に許可の有無を確かめます。
営繕の仕事は、外に任せてかまいません。保守・修繕・改修・更新のどれを、どこまで任せるかを決めれば、施設の手間を減らせます。外注してよいかの判断と、デメリットへの手の打ち方は営繕は外注してかまいません。デメリットは契約の前に手を打てますで書いています。外に出せる仕事と、施設に残る仕事の分け方は営繕を丸ごと外注しても、施設に残る仕事がありますにあります。
見積では、行ごとに言葉を分けてもらいます
言葉の違いを予算・会計・補助につなぐ入口は、見積です。見積の件名と行に、修繕・改修・更新のどれにあたるかを書き分けてもらうと、そのまま稟議と予算に使えます。一式のまま受け取ると、あとで施設の側が分け直すことになります。
図5 行ごとに4つの見出しのどれかを付けてもらうと、予算と会計に分けやすい。
- 件名は、中身に合わせる「浴室修繕工事」と1つの言葉でくくらず、「浴室の修繕と個浴への改修」のように、中身の言葉を並べてもらいます。
- 行ごとに、見出しを付けてもらう各行の頭に、修繕・改修・更新のどれかを書いてもらいます。迷う行は「要相談」でかまいません。
- 共通の費用は、別の行にする仮設・養生・諸経費のように工事全体にかかる費用は、どれかに混ぜず、別の行にしてもらいます。
- 理由を一言添える「予算の区分と会計の判定に使うため」と伝えると、業者も分け方の見当がつきます。
業者が付けた見出しが、そのまま会計の判定の結果になるわけではありません。修繕と書かれた行でも、性能を上げる中身なら、経理の判定は資本的支出になることがあります。業者に付けてもらうのは、判定の材料としての見出しです。
法人の中で、言葉の意味をそろえておくことも欠かせません。施設ごとに「修繕」の意味が違うと、本部は予算を並べて比べられません。5つの言葉の意味を1枚の表にして、見積の依頼、稟議、予算の書類で同じ言葉を使います。稟議書の書き方は修繕の稟議書は、承認者の4つの問いに答えて書きますにまとめています。
相談・見積は無料|同じ条件で最大3社
このお問い合わせ1本で、
最大3社の見積がそろいます。
モデルケース:浴室の「修繕」の見積に、改修が混ざっていた特養
モデルケース:定員70名の特別養護老人ホーム(社会福祉法人)
稟議の差し戻しが、1年で7件から1件に
変わったこと(結果)
見積と稟議に使う言葉を5つに決めてから1年で、法人本部からの稟議の差し戻しが、前の年度の7件から1件に減りました。見積を受け取ってから稟議が通るまでの日数も、平均3週間ほどから1週間ほどになりました。浴室の工事は、修繕の部分を今年度の修繕費で行うと決まりました。個浴への改修の部分は、市の補助の要綱に合うかを確かめてから、翌年度に回します。
背景と、困っていたこと
このホームでは、浴室の床と水栓の傷みが目立ち、事務長が「浴室修繕工事」として見積を取りました。届いた見積には、床を滑りにくい材料に替える工事と、大浴場の一部を個浴に分ける工事が、一式で入っていました。本部の経理からは、どこまでが修繕で、どこからが資産になるのかを聞かれ、稟議が2回差し戻されました。同じ年度には、給湯器の入れ替えを「給湯器修繕」と書いた稟議も、同じ理由で戻っていました。
決めたこと
事務長が迷ったのは、言葉をそろえると、長年の呼び方に慣れた職員や業者に手間をかけることでした。決め手は、本部の経理の担当が「行が4つの見出しで分かれていれば、予算の区分はこちらで決められる」と話したことです。ホームは、営繕・保守・修繕・改修・更新の意味を1枚の表にして、業者への見積の依頼文に添えることにしました。浴室の見積は、修繕・改修・共通の費用の3つに行を分け直してもらいました。
進めてみて分かったこと
行を分けてみると、浴室の工事のうち、元に戻す修繕の部分は全体の4割ほどでした。修繕の部分だけを先に行ったので、入浴を清拭に替える日も短く済みました。業者からは、次からは最初から分けて出すと言われ、見積の取り直しもなくなりました。