修繕の予算は、前の年の10月から組み始めます
介護施設の翌年度の修繕の予算は、前の年の10月ごろから組み始めます。4月から工事を動かすには、3月までに予算の承認を受けておく必要があります。そこから逆算すると、見積や本部との調整に使えるのは、10月から2月までの5か月ほどです。
社会福祉法人では、理事長が会計年度の始まる前の日までに予算を作り、理事会の承認を受けます。年度の途中で予算を補う補正予算も、理事会の承認が要ります。株式会社が運営するホームでも、本社の予算の締切から逆算して動くのは同じです。
修繕の予算づくりの1年の動き(10月〜3月)| 月 | 施設ですること | 法人の本部ですること |
|---|
| 10月 | 翌年度にする工事を、計画・点検の指摘・修理の記録から洗い出す | 予算の作り方と、施設の案の締切を知らせる |
|---|
| 11月 | 更新の工事の概算見積を、同じ条件で2〜3社から取る | 補助を使えそうな工事を、施設から聞き取る |
|---|
| 12月 | 3つの区分で施設の案をまとめ、本部に出す | 施設の案を集め、法人全体の額を出す |
|---|
| 1月 | 本部の聞き取りに答え、急ぐ度合いを直す | 工事に順番をつけ、積立金の取り崩しを決める |
|---|
| 2月 | 見積の取り直しや、工事の範囲の見直しを終える | 事業計画と予算の案を作る |
|---|
| 3月 | 4月からの発注に向けて、業者の日程を押さえる | 理事会で予算の承認を受ける |
|---|
図1 10月に始めると、見積と調整に5か月ほど使える。
法人によって、締切の月は前後します。本部の締切が12月なら10月の洗い出しで間に合い、締切が1月なら11月からでも間に合います。まず自分の法人の締切の月を確かめ、そこから2か月さかのぼった月を始まりにします。
補助を使う工事は、さらに早く動きます。県が翌年度分の調査を夏から秋に行い、10月にはもう締め切っていることもあるからです。令和9年度の補助に向けて今から何をそろえるかは令和9年度の修繕の補助は、まず県の調査が済んだかを確かめますにまとめています。
予算は、修繕・更新・予備費の3つの区分に分けます
修繕の予算は、1本の数字で出すより、修繕・更新・予備費の3つの区分に分けて組みます。3つは、額の決め方も、承認の受け方も、会計の扱いも違うからです。1本にまとめると、どの数字が何を根拠に出ているのかが、本部にも理事会にも見えなくなります。
修繕の予算の3つの区分| 区分 | 入れるもの | 額の決め方 | 会計の扱いの見込み |
|---|
| 修繕 | 毎年の小さな修理、点検で見つかった補修、部品の交換 | 過去3年の実績に、点検の指摘を足す | 修繕費になるものが多い |
|---|
| 更新 | 設備の入れ替え、屋上・外壁の改修、性能を上げる改修 | 長期修繕計画の年度と、概算見積から | 固定資産になるものが混ざる |
|---|
| 予備費 | 予定外の故障、急ぎの修理 | 突発の修理の記録と、代わりのない設備の修理費から | 使った工事の中身で決まる |
|---|
図2 3つの区分は、額の決め方がそれぞれ違う。
3つに分けておくと、本部との話し合いも短くなります。修繕の区分には実績の表、更新の区分には見積書、予備費には突発の修理の一覧を添えれば、額の根拠をそれぞれ1枚で示せるからです。削るかどうかの話も、「この更新を1年ずらせるか」という形で具体的に進みます。
会計の扱いは、予算の段階ではまだ見込みです。同じ空調の工事でも、部品を替えて元に戻すなら修繕費、新しい機器に入れ替えるなら固定資産になることが多くあります。社会福祉法人の資金収支予算では、修繕費は「修繕費支出」の行に、固定資産になる工事は「固定資産取得支出」の行に入ります。
年間の修繕費がどのくらいになるか、前の年より増えたときにどう読むかは介護施設の修繕費は、相場より5年分の実績で読みますにまとめています。この記事では、その見込みを、翌年度の予算の3つの区分にどう入れるかを説明します。
秋から始めるのは、見積と承認に時間がかかるからです
予算づくりを秋に始める理由は3つあります。概算見積がそろうまでに時間がかかること、本部と施設の間で何度かやり取りがあること、そして4月の早いうちに動かしたい工事があることです。
- 概算見積に1〜2か月かかる更新の工事は、業者が現地を見てから見積を出します。2〜3社に頼むと、日程を合わせるだけで数週間かかります。
- 本部とのやり取りが2〜3回ある施設の案を出したあと、根拠の確かめや順番の入れ替えで、聞き取りが何度か入ります。
- 4月に動かしたい工事がある空調の更新は夏の前に、屋上の防水は梅雨の前に終えたい工事です。見積が古いと、4月に取り直すことになります。
概算見積は本見積の前の目安ですが、秋のうちに条件をそろえて取っておくと、4月に正式な見積を頼むとき、同じ業者が短い日数で出せます。比べるための条件のそろえ方は見積の比較表は、条件書で6つをそろえてから作りますが参考になります。
反対に、2月や3月に予算づくりを始めると、見積がないまま前の年の数字を写すことになりがちです。そうすると、更新の工事は4月から見積を取り直し、稟議と発注で2〜3か月が過ぎます。空調の更新が7月にずれこみ、いちばん暑い時期に工事をする、ということが起きます。
秋に始めるときの最初の仕事は、材料を1か所に集めることです。長期修繕計画の表、前の年度の点検の報告書、修理の記録、請求書の束の4つがあれば、10月のうちに洗い出しが終わります。どれかが見つからなくても、あるものから始めます。
修繕の区分は、過去3年の実績から決めます
修繕の区分の額は、過去3年ほどの実績から決めます。毎年出る小さな修理は、年ごとの差が小さく、実績の平均でかなり近い額になるからです。ただし、実績をそのまま平均すると、たまたま大きな工事が入った年に引っぱられます。3年分の数字から、更新や突発にあたる工事を外してから平均します。
修繕の区分の額の出し方(例)| 手順 | 中身 | 例 |
|---|
| 1. 3年分の実績を並べる | 決算の修繕費と、請求書の一覧 | 820万円・1,150万円・760万円 |
|---|
| 2. 一度きりの工事を外す | 入れ替えや改修は、更新の区分の材料へ移す | 2年目の給湯器の交換280万円を外す |
|---|
| 3. 平均を出す | 外したあとの3年分の平均 | (820+870+760)÷3=約817万円 |
|---|
| 4. 点検の指摘を足す | 翌年度に直すと決めた補修 | 防火戸の調整15万円、外壁の部分補修60万円 |
|---|
| 5. 単価の上がり分を足す | 同じ修理の、最近の見積と前回の請求の差 | 約30万円 |
|---|
| 6. 区分の額にする | 3〜5を足して、千円単位で丸める | 約922万円 |
|---|
表の2で外すのは、1回で終わる工事です。給湯器や空調の入れ替え、屋上の改修などは毎年出るものではないので、修繕の区分の平均に入れると、翌年度の額がふくらみます。外した工事は、更新の区分の材料として別にとっておきます。
夜間や休日に急いで頼んだ修理にも、印をつけておきます。急ぎの修理は毎年同じだけ出るとは限らず、出るときは時間帯の割増が乗って高くなります。この分は修繕の区分の平均から外し、次の予備費を決める材料にします。
3年分の実績がない施設は、あるだけの年数で出し、足りない分は工事ごとの費用の目安で補います。開設から間もない施設は、保証で直していた不具合が、保証の期間が終わると修繕費として出てきます。保証の終わる年に合わせて、額を見直します。
仕分けを早く終えるには、修理の記録を設備ごとにたどれるようにしておくことです。どの機器で何回修理したかが分かれば、一度きりか、毎年出るものかがすぐに分かります。機器ごとの記録の持ち方は機器台帳は、竣工図と現地と保守の会社の3つで作りますにあります。
更新の区分は、長期修繕計画と概算見積から決めます
更新の区分には、設備の入れ替えと、屋上・外壁などの大きな改修を入れます。額は、長期修繕計画で翌年度に置いた工事を起点に、秋に取った概算見積で決めます。計画の表の金額は数年前の単価のことが多いので、そのまま予算に写さず、見積で置き換えます。
長期修繕計画の5年分の表があれば、その1年目の列が、更新の区分の下書きになります。計画の作り方は長期修繕計画は、30年・5年・単年の3つで持ちますにまとめています。計画がない施設は、機器の年式と修理の回数、部品の見通しから、翌年度に入れ替えが要りそうなものを拾います。更新の時期を決める材料は設備の年数は、3種類を並べてから更新の時期を決めますが参考になります。
更新の区分に入れる工事の書き方| 項目 | 書くこと | 例 |
|---|
| 工事の名前と場所 | 何を、どこで、何台か | 2階居室の空調の更新(室内機8台・室外機2台) |
|---|
| 入れる理由 | 年式、修理の回数、部品の見通し | 設置から16年、前の年度に3回修理、部品の供給が終わる |
|---|
| 概算の額 | 概算見積の額と、取った社数 | 480万円(2社の概算のうち高いほう) |
|---|
| 仮設と割増 | 養生や時間帯の割増が入っているか | 居室の移動と養生を含む |
|---|
| 会計の扱いの見込み | 修繕費か、固定資産か | 固定資産の見込み(経理の担当と確かめた) |
|---|
| 急ぐ度合い | 1年ずらせるか | ずらせない(夏の前に終えたい) |
|---|
概算見積が2社で大きく違うときは、仕様の違いを先に確かめます。機器の能力や台数、撤去や配管の扱いが違うだけのことがよくあります。違いが分からないまま組むなら、高いほうの額で組んでおくと、4月の本見積で予算を超えにくくなります。
入居者の方がいる中の工事では、仮設・養生・時間帯の割増が総額の2割〜4割になることがあります。概算見積にこの分が入っているかを確かめないと、4月の本見積で予算を超えます。中身と確かめ方は仮設・養生・割増の割合は、施設が渡す条件で変わりますにあります。
会計の扱いの見込みは、予算を組む段階で経理の担当と決めます。修繕費になるか、資本的支出として固定資産になるかで、予算の行も決算の数字も変わるからです。見積で何を分けてもらうと判定しやすいかは修繕費か資本的支出かは、見積の分け方で判断しやすくなりますにまとめています。
予備費は、突発の修理の記録と、代わりのない設備から決めます
予備費は、予定外の故障に備えて、あらかじめ置いておく枠です。介護施設では、給湯器や特殊浴槽、空調が止まると、その日の暮らしに響きます。予算がないことを理由に修理を待つことはできないので、すぐに動ける枠を先に持っておきます。
予備費の額を、修繕の予算の何割と決める方法もあります。ただ、割合だけで決めると、設備の古さや台数が反映されません。次の2つの材料から額を出し、大きいほうを目安にすると、本部にも説明しやすくなります。
予備費の額の決め方| 材料 | 出し方 | 向いている施設 |
|---|
| 突発の修理の記録 | 過去3年の予定外の修理の合計を年ごとに出し、多かった年の額を見る | 修理の記録がそろっている施設 |
|---|
| 代わりのない設備 | 1台しかない給湯器や特殊浴槽、エレベーターが止まったときの、大きな修理1件分の費用 | 設備が1台ずつしかない小さな施設 |
|---|
| 両方を比べる | 2つのうち大きいほうを、予備費の目安にする | 築15年を超え、入れ替えが近い設備が多い施設 |
|---|
図3 修繕は予定して使い、予備費は予定外に備えて使う。
代わりのない設備の修理費には、工事ごとの目安が参考になります。当窓口の目安では、特殊浴槽の修理が3万〜80万円、水漏れや詰まりの修理が1万5,000円〜8万円です。年式が古く、修理では済まずに入れ替えになりそうな設備は、予備費ではなく更新の区分で組みます。
予備費を使うときの決まりも、年度の初めに決めておきます。誰の承認で使えるか、いくらまでなら施設長の判断でよいか、使ったら本部にいつ伝えるか、の3つです。予備費の扱いを法人の経理規程に書いていることもあるので、規程を確かめてから施設の中の決まりにします。
予定外の故障のとき、すぐ入れ替えに進むか、まず修理で済むかを確かめるかで、予備費で収まるかが変わります。特殊浴槽の故障を経験したグループホームの施設長のお話です。
だからこそ、故障したからすぐ買い替えるのではなく、まず修繕できるのか相談できる窓口があるのは心強いと感じました。
ご利用者の声 大分県・グループホーム/施設長
取材にもとづき掲載しています(施設名は非公開)。内容はご本人の申告によるもので、個人の感想です。
急ぎの修理は、時間帯の割増で高くなりがちです。土日や祝日に頼める先を平日のうちに決めておくと、予備費の減り方を小さくできます。その備え方は土日祝に修理を頼める業者は、平日のうちに決めておきますにあります。
大きな更新には、積立金で毎年少しずつ備えます
屋上防水や外壁の改修、特殊浴槽の入替は、1回の金額が大きく、その年の予算だけでは組めないことがあります。当窓口の目安では、屋上防水の改修が500万〜3,000万円、外壁の塗装・補修が800万〜3,000万円です。特殊浴槽の入替は350万〜1,100万円です。こうした工事は、来る年が分かった時点から、毎年少しずつ積み立てて備えます。
積み立てる額は、工事の見込みの額を、その工事が来る年までの年数で割って出すのが基本です。長期修繕計画の30年の表で、大きな工事が重なる年と額を見て、そこから逆算します。
積み立てる額の出し方(例)| 大きな工事 | 来る年 | 見込みの額 | 1年あたりの積立 |
|---|
| 特殊浴槽2台の入替 | 4年後 | 1,400万円 | 350万円 |
|---|
| 屋上防水の改修 | 7年後 | 2,100万円 | 300万円 |
|---|
| 外壁の塗装・補修 | 10年後 | 2,500万円 | 250万円 |
|---|
| 合計 | — | 6,000万円 | 900万円(毎年見直す) |
|---|
この例では、毎年900万円を積み立てる計算になります。毎年の収支から出せる額には限りがあるので、補助を使える工事はどれか、借入れを組み合わせるか、工事の年をずらせるかを合わせて考えます。積立だけで全額をまかなう必要はありません。
近い工事ほど、1年あたりの額は大きくなります。表の特殊浴槽のように4年後に来る工事は、今から積み始めても毎年の負担が重くなります。工事が来る年の10年ほど前から積み始められるよう、計画の山は早めに見つけておきます。
延床面積から、大規模修繕の総額の桁と、1年あたりの積立の目安をつかむ方法は大規模修繕の費用は㎡単価で桁をつかみ、量・単価・時期の3つで抑えますにあります。施設の計画がまだない段階では、その桁を仮の目標にして積み立てを始め、計画ができたら置き換えます。
社会福祉法人の積立金は、同じ額の積立資産と対で持ちます
社会福祉法人の会計では、将来の特定の目的に備える積立金を、理事会の議決にもとづいて積み立てます。積立金には、「〇〇施設修繕積立金」のように、目的が分かる名前を付けます。
積立金を積み立てるときは、同じ額の積立資産を、預金などの形で持ちます。積立金は帳簿の上の純資産の区分で、それだけではお金の置き場所が決まらないからです。積立資産を取り崩すときは、対になる積立金も同じ額だけ取り崩します(「社会福祉法人会計基準の運用上の取扱いについて」19)。
積み立てられる額にも決まりがあります。その年度の当期末繰越活動増減差額に、その年度に取り崩した積立金の額を足して、余りが出た場合に、その範囲で積み立てます。余りが出ない年度は、積立金を積めません。
積立金と積立資産の、予算と決算での出方| 場面 | 積立金(純資産) | 積立資産(資産) |
|---|
| 積み立てる年 | 事業活動計算書に「その他の積立金積立額」 | 資金収支に「積立資産支出」。預金などで持つ |
|---|
| 持っている間 | 貸借対照表の純資産に、目的の名前で残る | 貸借対照表の資産に、同じ額で残る |
|---|
| 取り崩す年 | 「その他の積立金取崩額」で同じ額を減らす | 資金収支に「積立資産取崩収入」。工事の支払いに充てる |
|---|
図4 帳簿の上の積立金と、お金の積立資産を、同じ額でそろえる。
資金の管理のために、積立金を積まずに積立資産だけを持つこともできます。その場合は、積立金・積立資産の明細書の摘要に、その理由を書きます。どちらの形にするか、名前をどう付けるかは、顧問の会計の専門家と決めます。
株式会社や医療法人が運営する施設では、会計の決まりが違います。修繕に備えるお金を、引当金として帳簿に載せるか、預金を分けておくだけにするかは、会社の会計の方針と税の扱いで変わります。税の扱いは、税理士に確かめてから決めます。
積立金を使う年は、予算と理事会の順番をそろえます
積み立てた積立金を使って工事をする年は、その取り崩しを翌年度の予算に入れておきます。資金収支予算では、取り崩す額を「積立資産取崩収入」の行に、工事の支払いを修繕費支出か固定資産取得支出の行に入れます。予算に入れておけば、3月の理事会の承認の中で、取り崩しの見込みも示せます。
図5 取り崩しは、予算の案の段階から書いておく。
法人の経理規程で、積立金の取り崩しに、予算とは別に理事会の議決が要ると決めていることもあります。規程を確かめ、工事の契約の前に議決が済むよう、理事会の日程から逆算します。理事会に出す資料の組み立ては理事会が見るのは見積ではなく、傷み・30年の総額・資金・先送りの4つですが参考になります。
社会福祉法人の工事の請負には、見積合わせの決まりもあります。2社の見積で足りる上限は、令和8年4月から400万円以下になりました。それを超えると、3社以上から見積を取ります。春に契約するなら、予算を組む秋のうちに、何社に頼むかを決めておきます。
補助と積立金を組み合わせる工事では、補助の交付の決定より前に契約や着工をしないよう、取り崩しの時期も合わせます。補助が出なかった場合に、積立金をどこまで使うか、工事の範囲を減らすかも、予算の案の段階で決めておきます。
物価の上がり分は、見積の日付と単価で入れます
工事の単価は、材料と職人の手間の値上がりで、数年前とは変わっています。予算に入れる金額の根拠は、新しいものほど強くなります。古い見積や計画の表の金額をそのまま使うと、4月に本見積を取ったときに、予算を超えることがあります。
予算に入れる金額の根拠と、その扱い| 根拠 | 強さ | 予算での扱い |
|---|
| 今年の秋に取った概算見積 | 強い | そのまま使う。見積の有効期限も書いておく |
|---|
| 前の年に取った見積 | 中くらい | 同じ業者に、今の単価で出し直せるかを聞く |
|---|
| 2年以上前の見積や請求書 | 弱い | 取り直す。間に合わなければ「仮」と書く |
|---|
| 一般の費用の目安 | 弱い | 桁をつかむだけに使い、見積がそろったら置き換える |
|---|
物価の上がり分を、一律の率で足していく方法もあります。けれども、根拠のある率を決めるのはむずかしく、本部に聞かれたときに説明しにくくなります。同じ工事の前回の請求書と、今回の見積の単価を並べて差を示すほうが、伝わりやすくなります。
見積の有効期限は、見積書の端に書かれています。期限が過ぎた見積で予算を組むときは、業者に、今の単価で出し直せるかを聞いておきます。出し直しに応じてもらえない場合は、その工事を「仮」として予算に入れ、4月に取り直す前提で本部に伝えます。
モデルケース:前の年度の数字を写して予算を出していた特養
モデルケース:定員100名の特別養護老人ホーム(社会福祉法人・築19年)
空調の更新が、夏の前に終わるようになった
変わったこと(結果)
予算づくりを10月に始め、3つの区分に分けて組んだ年度は、居室の空調8台の更新が、5月の連休の前に終わりました。前の年までは、工事が7月の暑い時期にずれこんでいました。年度の途中で補正予算を理事会に諮ることもなく、予定外の修理12件は、予備費の中に収まりました。
背景と、困っていたこと
事務長は毎年1月に、前の年度の修繕費に1割ほど足した額を、1本の数字で本部に出していました。見積を取るのは予算が決まった4月からで、空調の更新は、稟議と発注で6月までかかっていました。予備費の区分はなく、給湯器のポンプが止まった年には、3月の理事会で補正予算を諮りました。本部からは毎年、額の根拠を聞かれていました。
決めたこと
事務長は、10月に長期修繕計画の翌年度分と点検の指摘を洗い出し、工事を修繕・更新・予備費の3つに分けました。空調の更新は、11月に2社から概算見積を取りました。修繕の区分は、過去3年の実績から一度きりの工事を外して出しました。予備費は、突発の修理が多かった年の額と、給湯器1台の大きな修理費を比べて決めました。
進めてみて分かったこと
迷ったのは、予備費を置くと、本部から「使い道の決まっていないお金」と見られないか、ということでした。突発の修理の3年分の一覧を添えて出したところ、本部は額を認め、使ったら翌月に報告する決まりを付けました。使う線を先に決めたことで、止まった設備の修理を、その日のうちに頼めるようになりました。