外注の範囲は、3つの事情で決まります
有料老人ホームの営繕は、特養や老健と同じように見えて、事情が少し違います。外注の範囲を考えるときは、次の3つを先に押さえておくと、どの仕事を外に任せるかが決めやすくなります。
有料老人ホームならではの、3つの事情| 事情 | 営繕で起きること |
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| 居室は入居者の方の住まい | 退居のたびに、次の方のための原状回復の工事が出る |
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| 見学の方とご家族が見ている | エントランス・食堂・浴室の傷みや汚れが、入居の判断に響く |
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| 運営会社の本部が決める | 見積の取り方や発注の承認が、本部の決まりに沿う |
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図1 有料老人ホームの営繕の外注を決める3つの柱。
特養と老健の事情の違いは老健と有料では、傷む場所も、工事を入れる機会も違いますにまとめています。この記事では、有料老人ホームの営繕を外に任せるときの範囲と、頼み先の組み方を中心に書きます。
介護付と住宅型で、営繕の範囲が少し違います
有料老人ホームには、主に介護付と住宅型があります。介護付は、ホームの職員が介護を行う施設で、住宅型は、介護が必要なときに外の事業所のサービスを使う住まいです。営繕で見ると、居室の中のものを誰が受け持つかに違いが出ます。
介護付と住宅型で、営繕で違うところ| 項目 | 介護付 | 住宅型 |
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| 居室の設備 | ホームの設備として扱うことが多い | ホームの設備と、入居者の持ち込みが混ざりやすい |
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| 持ち込みの家具・家電 | 少なめのことが多い | 多いことがある。修理は入居者の側が多い |
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| 退居後の工事 | 原状回復とホームの基準への戻し | 原状回復に加え、持ち込みの撤去の確認 |
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| 職員の立ち会い | ホームの職員が立ち会いやすい | 職員が少ない時間帯があり、立ち会いの調整が要る |
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住宅型では、入居者の方が自分で家電の修理を頼むこともあります。そのときに、外部の業者が居室に入る日時をホームが知らないと、見守りや防犯の面で困ることがあります。入居者の方が自分で業者を頼むときも、ホームに一言伝えてもらう決まりにしておくと安心です。
どちらの場合も、入居の契約書や重要事項の説明書に、居室の設備の修理を誰が受け持つかが書かれていることがあります。外注の範囲を決める前に、契約書の書き方を確かめておくと、入居者やご家族との行き違いを防げます。
外に任せられる仕事と、ホームに残す仕事
営繕の仕事は、外に任せられるものと、ホームに残した方がよいものに分けられます。すべてを外に任せることはできませんが、残す仕事を決めておくと、外注の効果がはっきりします。
図2 外に任せられる仕事と、ホームに残す仕事。
外に任せられる仕事と、任せ方の例| 仕事 | 任せ方の例 |
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| 原状回復の工事 | 退居の連絡から何日で仕上げるかを決めて、居室ごとに頼む |
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| 共用部の小修繕 | 月に1回などの巡回で、たまった修理をまとめて直してもらう |
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| 緊急の修理 | 夜間や休日の受付と、業者の手配までを任せる |
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| 設備の点検・保守 | 空調や給湯など、設備ごとの保守の契約にする |
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営繕の仕事を6つに分けて、どこまで外注できるかを考える方法は営繕を丸ごと外注しても、施設に残る仕事がありますにまとめています。有料老人ホームでは、とくに入居者やご家族との窓口をホームに残すことが大事です。工事の日程や音のお知らせを、入居者の方がよく知る職員から伝えると、安心して過ごしていただけます。
原状回復は、退居から入居までの日数で外注先を選びます
退居のあと、居室が空いている日数が長くなるほど、ホームの収入は減ります。原状回復の外注先は、金額だけでなく、何日で仕上げてくれるかで選ぶことが大事です。日数は、工事そのものより、連絡と見積と日程の調整にかかっていることが多いものです。
図3 退居から次の入居までの原状回復の流れ。
原状回復の日数を縮めるために、決めておくこと| 段階 | 決めておくこと |
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| 退居の連絡 | 退居が決まった日に、外注先へ居室の番号と退居日を伝える |
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| 立ち会い・写真 | 退居の日に、職員が居室の写真を撮って外注先に送る |
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| 見積・承認 | よくある工事は単価を決めておき、一定の金額までは本部の承認なしで進める |
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| 工事 | クロス・床・設備の点検をまとめて、1回の訪問で仕上げる |
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| 清掃・確認 | 工事のあとの清掃と、職員の確認の日をあらかじめ決めておく |
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原状回復の費用を、入居者の負担とホームの負担にどう分けるかは退去の原状回復は、修繕と改修を分けると負担が決まりますにまとめています。外注先とは、よくある工事の単価を先に決めておくと、見積を待つ日数が減ります。
見学の方が見る場所は、外注の中で手厚くします
入居を考えている方やご家族は、見学のときに建物のあちこちを見ています。設備が古いこと自体よりも、傷や汚れ、照明の切れ、においといった、手入れが行き届いているかどうかが印象に残ります。
見学の方が見る場所と、外注で気をつけること| 場所 | 見られること | 外注で気をつけること |
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| エントランス | 自動ドア、床、照明、案内の表示 | 傷や照明の切れを、巡回のたびに直してもらう |
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| 食堂・リビング | テーブル、床、壁、窓まわり | 食事の時間を避けて直す。においの元も確かめる |
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| 浴室・脱衣所 | カビ、手すり、床のすべりにくさ | 目地のカビや床の傷みを、定期的に見てもらう |
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| 廊下 | 手すり、壁の傷、床のめくれ | 車椅子の当たる高さの壁の傷を、まとめて直す |
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| 見学用の居室 | 居室の広さと設備の状態 | 原状回復の仕上げの水準を、この居室に合わせる |
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ご家族は、面会のたびに同じ場所を通ります。廊下の壁の傷や、トイレの水栓のゆるみがいつまでも直らないと、ホームの手入れへの心配につながります。小さなことほど、早めに直っていることが信頼につながります。
共用部の小さな傷みは、1つずつ直していると費用がかさみます。巡回の日にまとめて直してもらう方法が向いています。見学の予定がある日に工事が重ならないよう、外注先と予定を共有しておくことも大切です。
入居中の居室での修理は、住まいへの配慮が要ります
有料老人ホームでは、入居者の方が暮らしている居室の中で、照明や水栓、建具の修理をすることもよくあります。居室は住まいなので、外注先の作業員が入るときには、施設の共用部とは違う配慮が要ります。
入居中の居室で修理するときの配慮| 場面 | 配慮すること |
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| 入る前 | 入居者の方の了解を得て、職員が一緒に入る。ご家族の希望があれば先に伝える |
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| 作業中 | 貴重品や私物に触れない。動かすときは職員が立ち会う |
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| 音とほこり | お昼寝や食事の時間を避け、ほこりが出る作業は養生をする |
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| 終わったあと | 元の位置に戻したかを職員と確かめ、直した内容を入居者の方にも伝える |
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こうした配慮は、外注先に任せきりにせず、ホームの決まりとして紙にして渡しておくと、作業員が替わっても同じように動いてもらえます。入居者の方が不安に感じたことは、すぐに外注先と共有して、次の作業に生かします。
複数のホームを運営する会社は、本部で頼み先をそろえます
有料老人ホームは、1つの会社がいくつものホームを運営していることが多くあります。ホームごとに頼み先がばらばらだと、単価も仕上がりもそろわず、本部では比べることができません。
図4 頼み先をホームごとに決めるか、本部でそろえるか。
本部でそろえるときは、ホームの職員の声も聞いておきます。長く頼んでいる地元の業者がいるホームでは、急ぎの対応だけはその業者に残すなど、現場の事情に合わせた分け方にすると、切り替えがうまく進みます。
すべてを1社にまとめる必要はありません。原状回復や空調など分野ごとに、全ホーム共通の頼み先を決め、離れた地域のホームは地域ごとに分けるのが現実的です。複数の施設で業者をそろえる3か月の進め方は修繕業者の統一は、分野ごとに3か月で進めますにまとめています。
有料老人ホームの営繕を外注できる会社の種類
外注できる会社には、いくつかの種類があります。得意なことが違うため、仕事ごとに組み合わせます。
有料老人ホームの営繕を外注できる会社| 頼み先 | 得意なこと | 気をつけること |
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| 原状回復・内装の会社 | クロス・床・建具の張り替えと仕上げ | 設備の不具合は別の会社になることがある |
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| 地元の工務店・設備会社 | 近さを生かした小修繕と急ぎの対応 | 担当者が少なく、繁忙期は日数がかかる |
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| ビルの管理の会社 | 点検・保守・清掃をまとめた契約 | 修理は別の費用になることが多い |
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| 設備の保守の会社 | 空調・給湯・エレベーターなどの保守 | その設備のほかは受け持たない |
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| 窓口型のサービス | 分野をまたぐ相談と業者の手配 | 実際に施工する会社を確かめる |
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どの会社に頼むときも、入居者の方が暮らしている中で工事に慣れているかを確かめます。慣れているかの見分け方は「介護施設専門」に、資格や登録はありません。慣れているかは、段取りで見分けますに、料金の形(人工・出来高・定額・実費)は営繕の外注費は、4つの料金の形で見え方が変わりますにまとめています。
モデルケース:原状回復を外注して、空室の日数が縮んだホーム
モデルケース:居室60室の介護付有料老人ホーム
退居から入居までの日数が、半分ほどになった
変わったこと(結果)
原状回復を外注して、退居の日から次の方の入居ができるまでの日数が、これまでのおよそ半分になりました。見積を待つ日数がなくなったことが、いちばん大きな変化でした。
背景と、困っていたこと
このホームでは、退居があるたびに、事務の担当者が業者を探して見積を取り、本部の承認を待ってから工事を頼んでいました。クロスと床と設備の点検をそれぞれ別の業者に頼んでいたため、日程の調整にも時間がかかり、居室が空いたままの日が続いていました。
決めたこと
原状回復の会社と、クロスや床の張り替えなどよくある工事の単価を先に決め、一定の金額までは本部の承認なしで進められるよう、本部と取り決めました。退居の日には職員が写真を撮って送り、工事は1回の訪問で仕上げてもらう形にしました。