小さい工事が、断られたり後回しになったりする理由
小さな修理を頼んだときに、業者があまり乗り気でないように見えるのには、はっきりした理由があります。業者の側から見ると、作業そのものは10分で終わっても、そのために使う時間は10分では済まないのです。
小さい工事が、業者にとって割に合いにくい理由| 理由 | 業者の側で起きていること |
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| 移動の時間 | 施設までの行き帰りに、30分〜1時間以上かかることがある |
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| 準備と片付け | 入館の手続き、養生、片付けに、作業より長い時間がかかる |
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| 材料の手配 | 部品の型番を調べて取り寄せ、もう一度来ることになる |
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| 見積の手間 | 小さな工事でも、見積を作って承認を待つ手間は同じ |
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| ほかの仕事との兼ね合い | 1日の予定に入れにくく、大きな仕事の合間に回される |
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図1 小さな修理1件で、業者が実際に使う時間。
とくに、介護施設は入館の手続きや、入居者の方への配慮が要る建物です。業者は作業の前に職員への声かけや養生をし、終わったあとは片付けと清掃をします。こうした時間は、修理が小さくても同じようにかかります。
施設から見ると「ちょっとした修理」でも、業者から見ると半日を使う仕事になります。だから、小さな修理だけを1件頼むと、断られたり、ほかの仕事のついでの日まで待たされたりするのです。
職人の手間は、「人工」という単位で数えます
建設や修繕の仕事では、職人1人が1日働く手間を「1人工(いちにんく)」と数えます。工事の見積も、何人の職人が何日かかるか、つまり何人工かを元に組み立てられることが多いものです。半日なら0.5人工のように数えることもありますが、業者によっては、半日より短い作業でも半日分や1日分を最低の単位にしていることがあります。
図2 職人の手間を数える「人工」の考え方。
つまり、10分の修理でも、業者が半日を最低の単位にしていれば、費用は半日分に近くなります。反対に、同じ半日の中で5件、6件と修理ができれば、1件あたりの費用はぐっと下がります。料金の形(人工・出来高・定額・実費)の違いは営繕の外注費は、4つの料金の形で見え方が変わりますにまとめています。
まとめて頼むと、施設と業者の両方が楽になります
小さな修理を1件ずつ頼む場合と、まとめて頼む場合を比べてみます。数字は分かりやすくするための例ですが、どちらが楽かははっきりしています。
小さな修理5件を、別々に頼む場合とまとめて頼む場合(例)| 項目 | 1件ずつ5回頼む | まとめて1回で頼む |
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| 業者の訪問 | 5回 | 1回 |
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| 移動と準備の時間 | 1回2時間として、合わせて10時間 | 2時間 |
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| 施設の立ち会い | 5回、そのたびに職員が対応 | 1回、まとめて対応 |
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| 見積と承認 | 5回 | 1回 |
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| 業者の受けやすさ | 断られたり、後回しになったりしやすい | 半日の仕事として受けやすい |
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数字は説明のための例です。実際の時間や費用は、施設と業者の条件で変わります。
まとめて頼むと、業者は1回の訪問で半日分の仕事ができるので、日程を組みやすくなります。施設にとっても、立ち会いや見積の回数が減り、職員の手間が小さくなります。介護施設で多い小修繕と、それぞれの作業時間の目安は「ちょっとした修理」は、職人の種類ごとに束ねて頼みますにまとめています。
ためてよい修理と、すぐに頼む修理
何でもためればよいわけではありません。入居者の方の安全や衛生に関わるもの、止まると生活が回らなくなるものは、ためずにすぐ頼みます。ためてよいのは、見た目や使いにくさの問題で、しばらく待っても困らないものです。
図3 小さな修理を、ためるかすぐ頼むかの分かれ道。
ためてよい修理と、すぐ頼む修理の例| 分け方 | 修理の例 |
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| すぐ頼む | 手すりのぐらつき、床のめくれ・段差、水漏れ、トイレが流れない、照明が消えて暗い廊下、扉が閉まらない居室 |
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| ためてよい | 壁の小さな穴や傷、戸当たりのゴムの劣化、紙巻器のゆるみ、網戸の破れ、カーテンレールの外れ(使える状態のもの) |
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迷ったときは「入居者の方が転んだり、けがをしたりしないか」「衛生や生活が止まらないか」で考えます。迷うものは、すぐ頼む側に入れておく方が安全です。
職員から修理が上がってくる仕組みを作る
まとめて頼むには、職員が見つけた小さな修理を、1か所に集める仕組みが要ります。口頭で事務室に伝えるだけだと、忘れられたり、同じ修理が何度も伝えられたりします。
- ため置きの表を作る紙でもデータでもよいので、場所・症状・気づいた日・写真の有無を書く表を作ります。
- 気づいたら書く職員は、小さな修理に気づいたら、その場で表に書き込みます。写真があれば添えます。
- 急ぎを見分ける表をまとめる担当が、すぐ頼むものとためるものを分けます。
- まとめて頼む決めた日に、ためた修理の一覧を業者に送ります。
- 結果を返す直った内容を表に書き、気づいた職員に知らせます。
いちばん大事なのは、最後の「結果を返す」です。書いた修理が直ったと分かると、職員は次からも書いてくれます。書いても何も変わらないと、そのうち誰も書かなくなります。
小修繕を受けてもらいやすい、頼み方
同じ小さな修理でも、頼み方しだいで業者の受けやすさが変わります。業者が知りたいのは、何を、どこで、どれだけ直すのかと、何を持って行けばよいかです。
受けてもらいやすい頼み方| 伝えること | 業者にとって助かる理由 |
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| 場所と症状の一覧 | 何件、どこで、どんな作業かが分かり、半日の予定を組める |
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| 写真と寸法 | 部品や材料を先にそろえられ、もう一度来なくて済む |
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| 部品の型番 | 戸車や水栓の型番が分かれば、同じものを持って来られる |
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| 来てよい時間帯の幅 | 「この週の午後ならいつでも」と幅があると、予定に入れやすい |
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| 入館と駐車場 | 入館の手続きと駐車場所が分かると、当日の時間の無駄が減る |
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図4 小さな修理を頼むときに、依頼に添えるもの。
一覧は、施設の中を回る順に並べておくと、業者は移動の無駄なく作業できます。たとえば、1階の東側から順に、2階、3階と並べるだけで、当日の作業がはかどります。
写真は、近くから1枚、少し離れて場所が分かるように1枚の2枚があると、業者は状況をつかみやすくなります。型番は、部品のシールや銘板に書かれていることが多いので、写真に写しておきます。
小修繕を頼める会社の種類
小さな修理を頼める会社には、いくつかの種類があります。得意な仕事と、頼めない仕事を知っておくと、頼み先を迷いません。
小修繕を頼める会社と、向いている修理| 頼み先 | 向いている修理 | 気をつけること |
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| 多能工の会社・便利屋 | 建具の調整、小さな穴埋め、器具の取り付けなど | 電気工事や水道の工事は、資格や指定がないとできない |
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| 地元の工務店 | 内装・建具・大工仕事の小修理 | 大きな仕事の合間になり、日程が先になることがある |
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| 設備会社 | 水栓・トイレ・配管の小修理 | 設備以外は受け持たないことが多い |
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| 電気工事の会社 | 照明・コンセント・スイッチの修理 | 電気工事士の資格が要る作業はこちらに |
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| 窓口型のサービス | 分野をまたぐ小修繕の一覧をまとめて手配 | 実際に来る施工業者を確かめる |
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とくに電気の工事は、照明器具の取り替えやコンセントの修理でも、電気工事士の資格が要る作業があります。資格のない人が作業すると法令違反になるため、どこまでが資格の要る作業かは電気設備の修理を頼む先は、受電の形と作業の中身で決まりますで確かめてください。
小修繕の請求書は、4つに分けて見ます
小さな修理の請求書は、金額が小さい分、中身を確かめずに払ってしまいがちです。けれども、まとめて頼むようになると、1回の請求の中に何件もの修理が入ります。何にいくらかかったのかを、4つに分けて見る習慣をつけておくと、次に頼むときの目安になります。
小修繕の請求書で見る4つ| 項目 | 見るポイント |
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| 出張・移動の費用 | 1回の訪問ごとにかかる。まとめるほど1件あたりは小さくなる |
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| 作業の費用 | 人工や作業ごとの単価。件数と時間が合っているか |
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| 部品・材料の費用 | 型番と数が書かれているか。取り寄せた部品の代金 |
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| 処分の費用 | 外した部品や古い器具の処分が入っているか |
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「小修繕一式」とだけ書かれた請求書は、何にいくらかかったのかが分かりません。まとめて頼むときは、修理ごとに作業と部品を書いてもらうよう、最初にお願いしておきます。
職員ができる手入れと、頼む修理の線
小さな修理の中には、職員が日ごろの手入れで防げるものもあります。たとえば、引き戸のレールにたまったほこりを取るだけで、戸の動きがよくなることがあります。ただし、職員がしてよいことには線があります。
職員ができる手入れと、業者に頼む修理の例| 分け方 | 例 |
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| 職員ができる手入れ | レールや排水口のほこり・ごみ取り、ゆるんだねじの締め直し(電気の器具を除く)、フィルターの掃除 |
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| 業者に頼む修理 | 電気の配線や器具の交換、水道の配管の修理、ガスの機器、高い所の作業、手すりの取り付け直し |
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電気・水道・ガスに関わる作業や、手すりのように入居者の方の体を支える部分は、職員が直すのではなく業者に頼みます。けがや事故を防ぐためにも、線を職員で共有しておきます。
件数に合わせて、まとめる間隔を決めます
どのくらいの間隔でまとめて頼むかは、施設で出てくる小さな修理の件数で決めます。間隔が長すぎると、ためている間に困ることが増え、短すぎるとまとめる意味が薄れます。
小さな修理の件数と、まとめる間隔の目安| 月の件数 | まとめる間隔の目安 |
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| 月に数件 | 2か月に1回、または件数がたまったとき |
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| 月に10件前後 | 月に1回 |
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| 月に20件以上 | 月に2回、または定期の巡回の契約を考える |
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季節によって、件数が増える修理もあります。梅雨の前には網戸や窓まわり、夏の前には空調のフィルターや室外機のまわり、冬の前には給湯や窓のすき間など、季節の前にまとめて見てもらうと、困る前に直せます。
まとめる日を毎月同じ日に決めておくと、職員も業者も予定を立てやすくなります。巡回の1日の時間割は小さな修繕は、月1回の巡回で1日7〜10件を直せますに、定期の契約の決め方は定期の営繕契約は、頻度・範囲・費用の順に決めますにまとめています。
モデルケース:小さな修理を1件ずつ頼んでいた施設
モデルケース:定員50名の介護老人保健施設
小さな修理が、いつまでも直らなかった
変わったこと(結果)
急がない小さな修理を月に1回まとめて頼むようにしてから、ためていた修理がおおむね1か月以内に直るようになりました。事務長が業者に電話する回数も、月に何度もあったものが月1回の連絡で済むようになりました。
背景と、困っていたこと
以前は、職員から小さな修理の話があるたびに、事務長がその都度、知り合いの工務店に電話していました。工務店は大きな仕事の合間にしか来られず、小さな修理は何週間も待つことが多く、そのあいだに同じ修理の話が何人もの職員から事務長に届いていました。
決めたこと
施設は、詰所にため置きの表を置き、職員が場所と症状を書き込むようにしました。手すりのぐらつきなど急ぐものはその日のうちに連絡し、それ以外は毎月第2週にまとめて、写真付きの一覧を業者に送ることにしました。