頼む先は、4つに分かれます
介護施設で電気の不具合が起きたとき、頼む先は大きく4つに分かれます。建物の配線、コンセント、スイッチ、照明器具、分電盤などを直す電気工事の業者。高圧で受電している施設で、キュービクルや保安を受け持つ電気主任技術者。ナースコールや特殊浴槽、エレベーターなどの機器を直すメーカーや保守の会社。火災報知器や誘導灯などの消防用設備を受け持つ消防設備の業者です。
図1 介護施設の電気の不具合で、頼み先になる4つ。
同じ「電気が来ない」という症状でも、原因が建物の配線にあるのか、機器そのものにあるのかで、頼む先が変わります。迷ったときは、まず1つの機器だけが止まっているのか、同じ回路のほかのものも止まっているのかを確かめると、配線か機器かの見当が付きます。
建物全体が停電したとき、ブレーカーが落ちたときの最初の動き方は、介護施設が停電。上げてはいけないブレーカーがありますにまとめています。この記事では、修理を頼む先と、職員がしてよい作業の線引きを中心に書きます。
最初に見るのは、受電の形です
電気の修理の頼み先と、作業に要る資格を決める大きな分かれ目が、施設の受電の形です。電力会社から低い電圧で電気を受けている施設と、高い電圧で受けて敷地の中で変圧している施設とで、法令の扱いが変わります。
受電の形の見分け方| 項目 | 低圧で受電 | 高圧で受電 |
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| 敷地の中の設備 | キュービクルがない | キュービクル(受変電設備)がある |
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| よく見る施設 | グループホーム、小規模な施設 | 特養、老健など中規模以上の施設 |
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| 電気の保安 | 電力会社などによる定期的な調査(おおむね4年に1回) | 施設が電気主任技術者を選ぶ(外部に委託することが多い) |
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| 法令の区分 | 一般用電気工作物 | 自家用電気工作物 |
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図2 受電の形で、修理の頼み先と資格が変わる。
高圧で受電している施設は、電気の保安を任せている電気主任技術者(電気の保安を受け持つ法人や個人に委託していることが多い)がいます。月ごとの点検に来ている担当者の連絡先は、保安の契約書や点検の報告書に書かれています。キュービクルまわりの異常や、施設全体に関わる不具合は、まずこの担当者に連絡します。
作業の中身で、要る資格が決まります
電気の工事は、電気工事士法で、資格のある人でなければしてはいけない作業が決められています。どの資格が要るかは、施設の受電の形と、作業の範囲で変わります。業者に頼むときも、作業する人がその資格を持っているかを確かめます。
作業と、要る資格の目安| 作業の対象 | 要る資格の目安 | 主な頼み先 |
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| 低圧で受電している施設の配線・コンセント・照明 | 第二種電気工事士(または第一種) | 電気工事の業者 |
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| 高圧で受電している施設の配線・設備 | 第一種電気工事士(600V以下の簡単な工事は認定電気工事従事者も) | 電気工事の業者 |
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| キュービクルの点検・保安の判断 | 電気主任技術者 | 保安の委託先 |
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| 火災報知器・誘導灯などの工事と点検 | 消防設備士、消防設備点検資格者 | 消防設備の業者 |
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資格の細かな範囲は、作業の内容で変わります。迷うときは、業者や保安の担当者に確かめてください。
照明器具を替える、コンセントを増やす、スイッチを替えるといった作業は、たとえ数分で終わる作業でも、電気工事士の資格が要る作業です。「家でもやったことがある」という職員がいても、施設では業者に頼むのが原則です。
業者を確かめる、4つのこと
電気工事の業者は、どこでもよいわけではありません。電気工事業を営むには、都道府県などへの登録や届け出が必要です。登録した業者は、営業所に主任電気工事士を置き、営業所に標識を掲げることになっています。
- 登録を確かめる登録電気工事業者(または届け出をした業者)かを、業者に聞くか、都道府県の名簿で確かめます。
- 作業する人の資格を聞く当日来る人が、作業に合った電気工事士の資格を持っているかを聞きます。
- 建設業の許可を見る1件の工事が500万円以上になるときは、電気工事業の建設業の許可が要ります。
- 賠償の保険を確かめる工事中の事故や、入居者・建物への損害に備えた保険に入っているかを確かめます。
介護施設では、工事のために電気を止めると、ナースコールや電動ベッド、エアマット、医療に使う機器に影響が出ることがあります。電気を止める時間と範囲を、事前に業者と打ち合わせられるかも、業者を選ぶときの大事な点です。
職員がしてよいことと、してはいけないこと
職員が電気の不具合に気づいたとき、その場でしてよいことと、してはいけないことがあります。線引きを施設の決まりとして書いておくと、夜勤の職員も迷わずに済みます。
職員がしてよいこと・してはいけないこと| 区分 | 作業の例 |
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| してよい | 電球や照明の管を、決まった種類のものに取り替える |
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| してよい | 取扱説明書に沿って、落ちたブレーカーを1回だけ上げる |
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| してよい | 機器の電源プラグを抜き差しする、使用中止の表示をする |
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| してはいけない | コンセントやスイッチの取替え、照明器具の取替え |
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| してはいけない | 配線の延長や分岐、壁の中の配線の修理 |
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| してはいけない | 分電盤の中、キュービクルの中に手を入れる |
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図3 職員がしてよい作業か、業者に頼む作業かの分かれ目。
落ちたブレーカーを上げても、またすぐ落ちるときは、漏電や使いすぎが疑われます。何度も上げ直すと、焦げや火災につながることがあるため、それ以上は触らずに業者に連絡します。
法令でいう「軽微な工事」の範囲
電気工事士法では、資格がなくてもできる「軽微な工事」が決められています。たとえば、電圧の低い差込み接続器などにコードをつなぐ作業、機器の端子に電線をねじ止めする作業、ヒューズの取付けや取外し、インターホンなどの小型の変圧器の二次側(電圧の低い側)の配線などです。
ただ、この範囲に入る作業でも、介護施設では職員にさせないと決めておく方が安全です。どの作業が「軽微な工事」に当たるかの判断は難しく、施設の中のコンセントや配線は、入居者の方の生活と安全に直結しているからです。火災報知器の感知器などは、電気工事士法とは別に、消防法で消防設備士が受け持つことになっています。
図4 施設の中での、電気の作業の受け持ちの例。
延長コードとたこ足配線を、見直す
介護施設の居室では、電動ベッド、エアマット、テレビ、加湿器、充電器などで、コンセントが足りなくなりがちです。延長コードやたこ足配線が増えると、使いすぎや、ほこりがたまって火花が出る現象(トラッキング)の原因になります。
延長コードで、見直すこと| 見ること | 目安 |
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| 使っている機器の合計 | 延長コードに書かれた容量(例:1500Wまで)を超えていないか |
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| コードの状態 | 束ねたまま使っていないか、家具の下で踏まれていないか |
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| 差込みのまわり | ほこりがたまっていないか、変色していないか |
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| 置き場所 | 水まわりや、ベッドの下に入り込んでいないか |
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コンセントが足りないことが続くなら、延長コードで済ませるのではなく、電気工事の業者に、コンセントを増やす工事を相談します。エアマットなど止まると困る機器は、停電のときに使える非常用のコンセント(発電機などにつながる回路)に挿しているかも、あわせて確かめます。
症状ごとの、頼み先の目安
電気の不具合は、症状からおおよその頼み先の見当を付けられます。急ぐかどうかもあわせて決めておくと、夜間や休日の判断が速くなります。
症状と、頼み先の目安| 症状 | 急ぎ | 主な頼み先 |
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| コンセントやスイッチから焦げたにおい・熱 | すぐ(使用をやめる) | 電気工事の業者 |
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| 同じ漏電ブレーカーがくり返し落ちる | すぐ | 電気工事の業者(高圧の施設は保安の担当者にも) |
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| 1つのコンセントだけ使えない | 急がない(ためてよい) | 電気工事の業者 |
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| 照明がつかない(球を替えても) | 場所による | 電気工事の業者 |
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| キュービクルの警報、建物全体の異常 | すぐ | 保安の担当者 |
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| ナースコールの一部が鳴らない | すぐ | メーカー・保守の会社 |
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照明がつかないときの切り分けは照明とエアコンは、分野が違います。ただ、まとめて頼めます、ナースコールの修理の頼み先はナースコールの修理、代理店以外に頼めるか、雨漏りで電気設備に水がかかったときは雨漏りは、原因を見つけるまでが工事の半分ですにまとめています。
非常用の電源も、頼み先が分かれます
停電のときに使う非常用の発電機や、非常用のコンセント、非常用の照明も、介護施設の電気設備の一部です。日ごろは使わないため、いざというときに動かないことに気づきにくい設備です。点検と修理の頼み先は、設備の種類で分かれます。
非常用の電源と、頼み先の目安| 設備 | 主な頼み先 | 確かめること |
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| 非常用の発電機 | 発電機のメーカーや保守の会社、保安の担当者 | 定期的に動かして確かめているか、燃料の量 |
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| 非常用のコンセント | 電気工事の業者 | どのコンセントが発電機につながっているか |
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| 非常用の照明・誘導灯 | 電気工事の業者、消防設備の業者 | 電池の交換の時期、点灯の確認 |
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どのコンセントが非常用の回路につながっているかは、色や表示で分けられていることが多いものの、施設によって違います。業者に一度確かめてもらい、職員が分かるように表示しておくと、停電のときに止まると困る機器をすぐにつなぎ替えられます。
モデルケース:職員が直していた作業を見直した施設
モデルケース:定員50名の特養(高圧で受電)
コンセントの交換を、職員が続けていた
変わったこと(結果)
電気の作業の線引きを1枚にまとめてから、職員が配線やコンセントに手を加えることはなくなりました。不具合の報告は営繕の担当にまとまり、急がないものは月に1回、電気工事の業者にまとめて頼む形になりました。
背景と、困っていたこと
施設では、電気に詳しい職員が、壊れたコンセントやスイッチを自分で取り替えていました。保安の担当者の月の点検のときに、取り替えたコンセントの付け方が合っていないことが分かり、資格が要る作業だと指摘を受けました。
その後に決めたこと
施設は、職員がしてよい作業と、業者に頼む作業を表にして、各フロアに貼りました。それまでに職員が手を加えた場所は、電気工事の業者に1か所ずつ点検してもらい、必要なところを付け直しました。