介護施設と同じところ、違うところ
福祉施設の建物や設備は、介護施設とよく似ています。給湯や空調、トイレや浴室の設備、建具や床の傷み方は、ほとんど同じ考え方で直せます。違いが出るのは、利用する人の特性に合わせた仕様と、工事の進め方です。
介護施設と福祉施設の、修繕で同じところと違うところ| 項目 | 同じところ | 違うところ |
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| 設備の直し方 | 給湯・空調・トイレ・浴室の仕組みはほぼ同じ | 使い方や使う時間帯が施設によって違う |
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| 建物の傷み方 | 床・壁・建具が早く傷むのは同じ | 強い力がかかる場所や、子どもの手が届く場所がある |
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| 工事の進め方 | 利用者の方がいる中で工事をすることが多い | 音・光・においへの感じ方が違い、予告の仕方が大事 |
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| 基準と手続き | 設備の基準があり、変えるときは確かめが要る | 施設の種類ごとに基準と窓口が違う |
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図1 福祉施設の修繕で、見積の前に決めておく4つのこと。
この4つを見積の前に決めておくと、業者は仕様と工程を組みやすくなり、工事のあとに「使いにくい」「また壊れた」ということが減ります。
施設の種類ごとに、気をつけることが違います
福祉施設には、入所して暮らす施設、夜に暮らす住まい、日中に通う事業所、子どもが通う・暮らす施設など、いくつもの種類があります。種類によって、工事ができる時間帯や、気をつけることが変わります。
福祉施設の種類と、修繕で気をつけること| 施設の種類 | 修繕で気をつけること |
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| 障害者支援施設(入所) | 昼も夜も利用者の方がいる。工事の時間帯と、立ち入り禁止の区画を決める |
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| 共同生活援助(グループホーム) | 住まいとしての家庭的な作り。日中に利用者の方が出かけている時間に工事しやすい |
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| 生活介護・就労系の事業所(通所) | 日中に利用者の方が通う。休みの日や夕方以降に工事を寄せやすい |
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| 放課後等デイサービス・児童発達支援 | 子どもが使う。指はさみ・転落・誤飲への備えと、午前中の工事 |
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| 児童養護施設など(入所) | 子どもが暮らす。学校に行っている時間と、長い休みの時期を使う |
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図2 施設の種類ごとに、利用者の方が施設にいる時間が違う。
通所の事業所は、利用者の方がいない時間帯を使えるため、入所の施設より工事の自由度が高くなります。反対に、入所の施設やグループホームでは、住まいの中での工事になるため、介護施設と同じように生活の予定と重ねて工程を組みます。小さな施設ならではの備えは木造2階の屋根や階段を作り直すなら、2025年4月から確認申請が要りますにまとめています。
音・光・においに敏感な方がいる施設では
利用者の方の中には、大きな音や突然の音、ちらつく光、強いにおいに強く反応する方がいます。工事の音やにおいは、ふだんの生活にはないものなので、思わぬ混乱につながることがあります。どんな音がいつ出るかを先に知らせることと、強い刺激を減らす工法を選ぶことが大事です。
感覚への配慮と、工事で決めること| 感覚 | 工事で起きやすいこと | 決めておくこと |
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| 音 | ドリルやはつりの大きな音、突然の音 | 音の出る作業の時間帯を決め、前もって知らせる |
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| 光 | 仮設の照明のまぶしさ、照明のちらつき | 仮設の照明の向きと、取り替える照明の色や明るさ |
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| におい | 塗料・接着剤・溶剤のにおい | においの少ない材料を選び、換気の時間を取る |
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| 触り心地 | 新しい床材や壁紙の手ざわりの変化 | 床や手すりの材料を、職員と見本で確かめる |
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予告は、「〇時から〇時まで、この場所で音が出ます」と、具体的に伝えます。言葉だけでなく、絵や写真を使った予定表を貼ると、伝わりやすい方もいます。工事の音と粉じんを減らす工法は騒音と粉じんは、時間帯だけでなく工法と区画でも減らせますに、環境の変化を小さくする考え方は認知症のある方への配慮は、工事の段取りで変化を小さくすることですにまとめています。
強い力がかかる場所は、壊れにくい材料を選びます
施設によっては、壁や扉、窓に強い力がかかることがあります。利用者の方の行動の特性によるもので、同じ場所が何度も壊れるときは、元と同じ材料で直すだけでは、また同じことが起きます。直すときに、壊れにくい材料や金物に替えることを考えます。
壊れにくくしたい場所と、選び方の例| 場所 | 選び方の例 |
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| 壁 | 下地を補強し、腰の高さまで丈夫な板を張る |
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| 扉・建具 | 丈夫な蝶番や戸車、壊れにくい引手に替える |
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| 窓ガラス | 割れにくいガラスや、飛び散りを防ぐフィルムにする |
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| 照明 | 器具にカバーやガードを付ける |
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| コンセント・スイッチ | いたずらや抜き差しを防ぐカバーを付ける |
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図3 同じ場所が何度も壊れるときの2つの直し方。
何度も壊れる場所は、壊れた日と場所、直した費用を記録しておくと、替えるかどうかを決める材料になります。直す回数が多い場所ほど、少し費用をかけて丈夫にした方が、年間の費用も、職員の手間も小さくなります。
壊れにくくするときも、閉じ込められた感じや冷たい印象にならないよう、色や仕上げに気をつけます。どこまで丈夫にするかは、利用者の方の様子をよく知る職員と話し合って決めます。
子どもが使う施設は、指はさみ・転落・誤飲に備えます
放課後等デイサービスや児童発達支援、児童養護施設など、子どもが使う施設では、大人の施設とは違う危なさがあります。子どもは思いがけない所に手を入れたり、高い所に登ったり、小さな物を口に入れたりします。修繕のついでに、こうした危なさを減らしておきます。
子どもが使う施設で、修繕のときに備えること| 危なさ | 備えの例 |
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| 指はさみ | 扉の吊り元に指はさみ防止のカバーを付け、閉まる速さを調整する |
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| 転落 | 窓に開く幅を止める金物を付け、柵や手すりのすき間を確かめる |
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| 誤飲 | 工事で出た小さなねじや部品を残さない。外れやすい小さな部品を使わない |
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| ぶつかる | 柱や家具の角に、やわらかいカバーを付ける |
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| 感電 | 子どもの手の届く高さのコンセントにカバーを付ける |
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とくに工事のあとは、床や棚に小さなねじや部品が落ちていないかを、職員と業者で一緒に確かめます。子どもは大人より低い目線で床を見ているので、片付けの確認は、しゃがんだ高さで行うと見落としが減ります。
間取りや設備を変える前に、基準を確かめます
福祉施設には、施設の種類ごとに、部屋の広さや設備についての基準があります。国の基準をもとに、都道府県や市が条例で定めています。元に戻す修繕なら問題になることは少ないのですが、部屋を仕切り直す、設備の場所を移す、といった工事は、基準に合うかを先に確かめます。
- 変える内容を書く仕切りの位置、部屋の広さ、設備の場所など、変わる点を図面に書きます。
- 窓口を確かめる事業所の指定を受けた都道府県や市の担当課を確かめます。政令市や中核市では市が窓口になることが多くあります。
- 相談してから決める図面を持って相談し、届け出が要るか、基準に合うかを確かめてから工事を決めます。
窓口の見分け方は大阪で修繕をまとめて頼む前に、改修の相談先が府か市かを確かめますにまとめています。もとが別の用途だった建物を福祉施設にしている場合は、設備の容量や間取りの制約があることもあり、転用した建物の修繕は、容量・間取り・法令を先に確かめますで確かめ方を書いています。
福祉施設の修繕を頼める会社の種類
福祉施設の修繕を頼める会社は、介護施設と同じように、工務店、設備会社、内装の会社、窓口型のサービスなどです。違いが出るのは、利用者の方がいる中での工事に慣れているか、配慮したいことを聞いて仕様や工程に生かしてくれるかです。
福祉施設の修繕を頼める会社と、確かめること| 頼み先 | 得意なこと | 確かめること |
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| 介護施設や福祉施設の工事に慣れた会社 | 利用者の方がいる中での養生と工程 | 福祉施設での工事の経験を、種類ごとに聞く |
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| 地元の工務店・設備会社 | 近さを生かした小修繕と急ぎの対応 | 配慮したいことを伝えたときの受け止め方 |
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| 保育所や学校の工事に慣れた会社 | 子どもの安全への備え | 工事のあとの片付けと確認の仕方 |
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| 窓口型のサービス | 分野をまたぐ相談と業者の手配 | 実際に施工する会社と、配慮の伝わり方 |
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見積を頼むときは、配慮したいことをどのように工程や仕様に入れるかを、各社に同じ条件で聞きます。金額だけでなく、音の出る作業の時間帯、作業員への伝え方、工事のあとの確認の仕方まで比べると、違いが見えてきます。
「慣れています」という言葉だけでなく、どんな種類の施設で、どんな配慮をしてきたかを具体的に聞くと、実際の経験が分かります。慣れているかの見分け方は「介護施設専門」に、資格や登録はありません。慣れているかは、段取りで見分けますにまとめています。
配慮したいことは、1枚にまとめて業者に渡します
配慮したいことを口頭で伝えるだけだと、見積を出す人と現場で作業する人の間で、伝わらないことがあります。1枚の紙にまとめて、見積の前に渡しておくと、仕様にも工程にも反映されやすくなります。
業者に渡す「配慮の1枚」に書くこと| 項目 | 書く内容の例 |
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| 利用者の方の特性 | 大きな音が苦手な方がいる、知らない人が近づくと不安になる方がいる |
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| 避けたい時間帯 | 食事・入浴・送迎の時間、午後の静かに過ごす時間 |
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| 音・におい | 音の出る作業は〇時から〇時まで、においの強い材料は使わない |
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| 立ち入らない場所 | 居室、静養室、子どもが遊ぶ部屋 |
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| 作業員へのお願い | 名札を付ける、大きな声を出さない、工具を置いたままにしない |
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| 連絡の窓口 | 施設の担当者と、当日の連絡先 |
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図4 配慮の1枚を作ってから、次の工事に生かすまでの流れ。
とくに大事なのは、見積の前に渡すことです。見積のあとに配慮を伝えると、作業の時間帯や材料が変わり、費用や日程を組み直すことになります。先に渡しておけば、業者は配慮を入れた見積と工程を最初から出せます。
この1枚は、工事のたびに使い回せます。工事が終わったら、うまくいったことと困ったことを書き足しておくと、次の工事でさらに伝わりやすくなります。
モデルケース:生活介護の事業所で、工事の予告を変えた例
モデルケース:定員30名の生活介護の事業所
工事の日の混乱が、ほとんどなくなった
変わったこと(結果)
トイレの改修の工事で、音の出る作業を利用者の方が帰ったあとの夕方に寄せ、日中の作業は音の小さいものだけにしました。前回の工事では、音に驚いて落ち着かなくなる方が何人もいましたが、今回はほとんど見られませんでした。
背景と、困っていたこと
前回の工事では、業者に「静かにお願いします」と口頭で伝えただけでした。現場の作業員には伝わっておらず、昼前にドリルの音が続いたことで、何人もの利用者の方が落ち着かなくなり、職員がつきっきりで対応することになりました。
決めたこと
事業所は、配慮したいことを1枚にまとめて見積の前に業者に渡し、音の出る作業の時間帯を工程表に書いてもらいました。工事の数日前からは、絵を使った予定表を貼り、職員が利用者の方に工事のことを伝えるようにしました。