困りごとは、6つに分けると整理できます
施設の困りごとを書き出してみると、修理の話と、判断の話と、人とのやり取りの話が、ひとつの文の中に混ざっていることがよくあります。まず6つに分けてみると、それぞれに向いた相談先と、急ぐかどうかが見えてきます。
介護施設の困りごとの6つの分け方| 分け方 | 困りごとの例 |
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| 直したい | 扉が閉まりにくい、壁に穴があいた、照明が切れた |
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| 止まって困る | 給湯が出ない、空調が止まった、エレベーターが動かない |
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| 判断したい | 直すか替えるか、今年やるか来年にするか、どの工法にするか |
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| 説明したい | 本部や理事会への説明、ご家族への工事のお知らせ |
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| 記録が足りない | 前の担当者の記録がない、設備の年式や契約先が分からない |
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| 業者とのやり取りに困る | 連絡がつかない、言いにくいことがある、請求の中身が分からない |
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図1 介護施設の困りごとを6つに分ける。
分けるときに迷うものは、2つに入れてかまいません。たとえば「空調の効きが悪い」は、「直したい」でもあり、「直すか替えるかを決めたい」でもあります。迷うものほど、相談のときに大事な話になります。
6つのうち、修理の業者がそのまま答えられるのは「直したい」と「止まって困る」です。残りの4つは、修理そのものではありませんが、施設の職員の時間をいちばん使っている困りごとでもあります。
「何でも相談できる」の中身を、確かめます
「何でも相談できます」とうたう窓口や会社はたくさんあります。けれども、「何でも」の中身は会社によって違います。相談してから「それはうちでは分かりません」と言われないよう、最初に確かめておくことがあります。
「何でも相談できる」の中身を確かめる質問| 確かめること | 聞き方の例 |
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| 相談を受ける範囲 | 修理のほかに、判断や説明の資料づくりの相談も受けていますか |
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| 答える人 | 相談に答えるのは、どんな経験や資格を持つ人ですか |
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| 費用 | 相談だけなら無料ですか。費用がかかるのはどこからですか |
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| つなぐ先 | 自分たちで答えられないことは、どこにつないでくれますか |
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| 記録 | 相談の内容と答えを、あとから見られる形で残してもらえますか |
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とくに「答える人」は大事です。修理の経験が長い人、設備の資格を持つ人、建築士など、誰が答えるかによって、答えの深さが変わります。相談の内容によって答える人が替わるのか、いつも同じ人が受けるのかも聞いておくと、相談のしやすさが分かります。
大事なのは、「何でもできます」と言うかどうかより、「これは私たちではなく、ここに相談してください」と言えるかどうかです。できないことをはっきり言える相手のほうが、結果として安心して任せられます。窓口でもできないことはワンストップの営繕でも、できないことが4つありますに、信頼できる相手の見分け方は業者が信頼できるかは、5つの場面の行動で分かりますにまとめています。
困りごとによって、相談先が変わります
すべての困りごとを1か所で答えられる相手はいません。困りごとの種類によって、答えを持っている人が違うからです。相談先を知っておくと、たらい回しにされる時間が減ります。
困りごと別の相談先| 困りごと | 主な相談先 |
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| 修理・故障 | 修繕の窓口、設備会社、工務店、メーカーの修理窓口 |
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| 直すか替えるかの判断 | 修繕の窓口、設備会社、メーカー(部品の残り年数) |
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| 建物の構造・耐震・大きな改修 | 建築士、設計事務所 |
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| 指定基準・届け出 | 事業所の指定を受けた都道府県や市の担当課 |
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| 補助金 | 都道府県や市の介護保険・高齢者福祉の担当課 |
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| 工事の契約のもめごと | 建設工事紛争審査会、弁護士 |
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相談先を選ぶときは、「その人は、この困りごとの答えを決める立場にあるか」を考えます。たとえば部屋の使い方を変えてよいかは、業者ではなく指定を受けた行政が決めることです。決める立場にない人の「たぶん大丈夫です」をうのみにすると、あとで手戻りになります。
工事の請負契約をめぐってもめごとが起きたときには、建設業法にもとづいて国や都道府県に置かれている建設工事紛争審査会で、あっせん・調停・仲裁を申し立てることができます。裁判より手続きが簡単なことがあり、もめごとが大きくなる前の選択肢として知っておくと役立ちます。指定基準の窓口の見分け方は大阪で修繕をまとめて頼む前に、改修の相談先が府か市かを確かめますにまとめています。
相談の前に、困りごとを1枚にまとめます
困りごとをそのまま話すと、話す人も聞く人も、どこが大事なのかが分からなくなります。相談の前に1枚にまとめておくと、相談の時間が短くなり、答えも具体的になります。
困りごとを1枚にまとめるときの項目| 項目 | 書く内容の例 |
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| いつから | 先月の半ばから、毎朝のように |
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| どこで | 2階東側の居室、浴室の脱衣所 |
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| 何が | 扉が重い、床が浮いている、においがする |
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| 誰が困っているか | 入居者の方、夜勤の職員、ご家族 |
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| 急ぎか | 転倒の心配がある、来月の見学までに直したい |
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| 今までにしたこと | 業者に一度見てもらった、職員が仮に直した |
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| 写真 | 近くから1枚、少し離れて1枚 |
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図2 困りごとを書き出してから記録するまでの流れ。
1枚にまとめた紙は、相談したあとも捨てずにとっておきます。相談の答えや決めたことを書き足していくと、そのまま困りごとの記録になり、次に担当する人への引き継ぎにも使えます。
とくに「誰が困っているか」は、書き忘れやすい項目です。同じ扉の不具合でも、入居者の方が開けられなくて困っているのか、職員が夜の見回りで困っているのかで、直し方や急ぎ方が変わります。
工事にならない答えも、あります
相談の結果が、いつも工事になるとは限りません。直すより様子を見たほうがよいこと、替えたほうが長い目で安く済むこと、今は何もしなくてよいこともあります。工事を請け負う会社にとっては売上にならない答えですが、施設にとっては大事な答えです。
図3 相談の答えには、工事にならないものもある。
工事にならない答えの例| 答え | どんなときか |
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| 様子を見る | 小さなひび、わずかな傾きなど、すぐに広がらないもの |
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| 点検のときに見てもらう | 次の定期点検が近く、そのときに見れば足りるもの |
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| 使い方を変える | 設備の設定や使い方で困りごとが消えるもの |
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| 何もしない | 見た目だけの問題で、入居者の方の安全や生活に関わらないもの |
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工事にならない答えを出してくれる相手は、施設の側に立って考えてくれている相手でもあります。相談のたびに必ず工事の見積が出てくる場合は、ほかの相談先の意見も聞いてみると、判断の材料が増えます。
様子を見ると決めたときは、いつまで見るのか、どうなったら直すのかを決めて記録しておきます。何も決めずに様子を見ると、気づいたときには大きな工事になっていた、ということが起きます。
本部や理事会への説明も、困りごとのひとつです
直すことは決まっているのに、本部や理事会にどう説明すればよいか分からない、という相談もよくあります。説明の資料は、修理の業者が作ってくれるものではありません。けれども、業者や窓口から材料をもらうことはできます。
説明の資料に使える材料と、もらい先| 材料 | もらい先 |
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| 今の状態の写真 | 現地を見た業者、窓口 |
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| 直さない場合に起きること | 設備会社、メーカー(部品の残り年数など) |
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| 費用の比べ方 | 同じ条件でそろえた見積 |
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| 工事の時期と止まる期間 | 業者の工程の案 |
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図4 本部や理事会に説明するときの、資料の並べ方。
説明の資料は、「なぜ今か」「いくらが妥当か」「ほかの方法はないか」「直さない場合の費用」の順に並べると、読む人に伝わりやすくなります。稟議の書き方は修繕の稟議書は、承認者の4つの問いに答えて書きますにまとめています。
業者とのやり取りに困ったときは、書面で伝えます
業者との間で言いにくいことがある、というのも、よくある困りごとです。連絡がつかない、聞いていない追加の請求が来た、仕上がりが気になる、といったことは、口頭で何度伝えても、話がかみ合わないまま時間が過ぎてしまうことがあります。
業者とのやり取りで困る場面と、伝え方| 場面 | 伝え方 |
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| 連絡がつかない | 連絡した日時と内容を記録し、返事の期限を書いたメールや文書を送る |
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| 聞いていない追加の請求 | 追加の中身と、いつ誰が了承したかを書面で出してもらう |
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| 仕上がりが気になる | 気になる所の写真を撮り、どう直してほしいかを書いて渡す |
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| 担当者が替わって話が通じない | これまでの経緯を1枚にまとめ、会社の責任者にも同じものを渡す |
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伝えるときは、起きた事実と、施設の希望を分けて書きます。事実だけを書くと相手は何をすればよいか分からず、希望だけを書くと相手は事実を確かめられません。それでも話が進まないときは、契約の内容を確かめたうえで、別の相談先を考えます。
相談にかかる費用は、どこから発生するか
相談だけなら無料、という窓口や会社は多くあります。ただ、相談が進んで、調べることや書類を作ることが必要になると、費用がかかるのがふつうです。どこから費用がかかるのかを、最初に聞いておくと安心です。
無料のことが多い相談と、費用がかかることが多い仕事| 分け方 | 例 |
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| 無料のことが多い | 困りごとを聞いて、相談先や進め方を伝える。見積を取る |
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| 費用がかかることが多い | 建物の劣化の調査、設備の詳しい診断、設計、修繕計画の作成、報告書の作成 |
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相談の途中で「ここから先は費用がかかります」と言われたら、そこで一度立ち止まって、本部の承認が要るかを確かめます。
費用がかかる仕事に進むときは、何にいくらかかり、何が出来上がるのかを、書面で確かめてから頼みます。調査やコンサルティングの費用の考え方は営繕の代行は手間に、コンサルは判断の材料に費用を払いますにまとめています。
モデルケース:困りごとを1枚にまとめて相談した施設
モデルケース:定員60名の介護付有料老人ホーム
ばらばらだった困りごとに、順番がついた
変わったこと(結果)
困りごとを1枚にまとめて相談したところ、急いで直すもの、次の点検で見てもらうもの、本部に説明して来年度に回すものの3つに分かれました。事務長が頭の中で抱えていた十数個の困りごとに、はじめて順番がつきました。
背景と、困っていたこと
前の担当者が急に辞め、事務長が営繕も見ることになりました。扉の不具合、浴室のにおい、空調の効きの悪さ、外壁のひび、業者からの請求書の中身など、何から手をつければよいのか分からない状態でした。業者に電話をしても、それぞれの業者は自分の分野のことしか答えてくれませんでした。
決めたこと
事務長は、困りごとを思いつくまま1枚に書き出し、6つに分けてから相談しました。急ぐものは1週間以内に直し、外壁のひびは様子を見る期間と見直す日を決め、空調は来年度の更新の候補として本部に説明することにしました。