修繕は、金額で4つの帯に分かれます
介護施設の修繕を1年分並べてみると、数千円の部品交換から、数千万円の大規模修繕まで、とても広い幅があります。この幅を4つの帯に分けると、帯ごとに動く人や決め方が違うことが見えてきます。
修繕の金額の4つの帯| 金額の帯 | 工事の例 | 動く人 | かかる日数の目安 |
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| 数万円まで | 戸車やパッキンの交換、照明の交換、扉の調整 | 職人1人 | 当日〜数日 |
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| 50万円くらいまで | 床の部分張り替え、水栓や便器の交換、機器1台の交換 | 職人1〜3人 | 数日〜2週間 |
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| 500万円くらいまで | 空調や給湯の更新、浴室の改修、外壁の部分補修 | 現場の担当者と複数の職種 | 1〜3か月 |
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| 500万円を超える | 外壁と屋上の改修、設備の一斉更新、大規模な改修 | 現場監督、設計者、複数の職種 | 数か月〜1年以上 |
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図1 金額が大きくなるほど、動く人と段取りが増える。
並べるときは、修理の金額だけでなく、何の工事だったか、どの会社に頼んだか、直るまでに何日かかったかも書いておきます。帯ごとに、どの会社にどれだけ頼んでいるかが分かり、頼み方を見直す手がかりになります。
帯の境目の金額は目安です。施設の規模や地域、法人の決まりによって変わります。大事なのは、ちょうどの金額ではなく、帯が変わると頼み方も変わる、ということです。金額と急ぎで頼み先を分ける考え方は修繕の頼み先は、金額と急ぎの2つで4つに分かれますにまとめています。
小さな修理と大きな工事では、動く仕組みが違います
小さな修理は、職人が1人で来て、その場で直して帰る仕事です。電話や写真で中身が決まり、施設の担当者がその場で頼めることも多くあります。大きな工事は、現場監督が工程を組み、いくつもの職種の職人が順番に入る仕事です。図面や仕様書をもとに見積を比べ、本部や理事会の決裁を経て決まります。
図2 金額の帯によって、仕事の進め方そのものが違う。
かかる費用の中身も違います。小さな修理では、出張費や職人の半日分の手間が費用の大きな部分を占めます。大きな工事では、材料や機器の代金に加えて、足場や養生、現場の管理の費用が大きくなります。同じ「修繕費」でも、何にお金を払っているのかが帯によって違うのです。
この違いがあるため、小さな修理が得意な会社は大きな工事の段取りに慣れていないことがあり、大きな工事が得意な会社は小さな修理を後回しにしがちです。どちらが良い悪いではなく、得意な帯が違うのです。小さな修理が業者に断られやすい理由は小さい工事が断られるのは、1人工という単位のせいですで書いています。
「両方できます」の中身を、確かめます
「小さな修理から大規模修繕まで対応できます」という会社は、実際にどうやって両方をこなしているのかを確かめます。自社の職人で小さな修理を受け、大きな工事は協力会社と組んで行う会社もあれば、どちらも協力会社に頼む会社もあります。
「両方できます」を確かめる質問| 確かめること | 聞き方の例 |
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| 小さな修理を受ける人 | 扉の調整や水栓の交換は、どなたが来てくれますか |
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| 受ける金額の下限 | 何円くらいの修理から受けてもらえますか。出張費はかかりますか |
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| 大きな工事の現場監督 | 数百万円の工事では、誰が現場をまとめますか |
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| 建設業の許可 | どの業種の許可をお持ちですか |
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| 過去の工事の金額の幅 | これまでの介護施設の工事で、いちばん小さいものと大きいものは何ですか |
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答え方からも、体制が見えてきます。小さな修理について「うちの職人がすぐ行きます」とすぐ答えられる会社と、「協力会社に確認します」と答える会社では、来るまでの日数が違うことがあります。どちらがよいかは、施設が何を急ぐかによります。
とくに大事なのは、建設業の許可です。工事1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上など)になる工事は、その工事の種類の建設業の許可を持つ会社でなければ請け負えません。小さな修理を頼んでいる会社に大きな工事も頼もうとするときは、許可の業種を先に確かめます。
帯をまたぐときに、行き違いが起きます
いちばん行き違いが起きやすいのは、工事が帯をまたぐときです。小さな修理のつもりで頼んだら、調べてみると大きな工事が必要だと分かった、という場面です。そのまま同じ会社に進めてもらうと、比べる機会がないまま大きな金額が決まってしまいます。
図3 帯をまたいだら、頼み方を切り替える。
帯をまたぐときに起きやすいことと、防ぎ方| 起きやすいこと | 防ぎ方 |
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| 小さな修理のつもりが、大きな工事の見積になった | 想定の帯を超えたら、相見積を取ると先に伝えておく |
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| 大きな工事の会社に頼んだ小さな修理が、後回しになる | 小さな修理は、別の会社か窓口に頼む |
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| 決裁を通さずに、大きな金額が決まってしまう | 帯ごとに決裁の線を決めておく |
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調べてみたら大きな工事が必要だった、という場合でも、今すぐ全部を直さなければならないとは限りません。応急の処置で持たせられるか、どこまでを今年に直し、どこからを来年に回せるかを、見積を出した会社に聞いてみます。そのうえで、比べる時間をつくります。
「想定の帯を超えたら、ほかの会社にも見積を頼みます」と最初に伝えておくことは、相手を疑うことではありません。施設の決まりとして伝えておけば、相手も心づもりができます。
50万〜500万円の中間の帯が、いちばん迷います
4つの帯のうち、判断にいちばん迷うのは、50万円から500万円くらいの中間の帯です。この帯には、空調や給湯の更新、浴室の改修など、施設の生活に直結する工事が多く入ります。
中間の帯が迷いやすい理由| 理由 | 中身 |
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| 会社の得意と合いにくい | 小さな修理の会社には大きく、大規模修繕の会社には小さい |
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| 決裁の境目に重なりやすい | 施設長の判断で決められる金額を超え、本部の決裁が要ることが多い |
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| 設備の専門の知識が要る | 機器の選び方や、止める期間の段取りで費用が変わる |
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| 急ぎの工事になりやすい | 故障をきっかけに、比べる時間がないまま決まりがち |
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この帯の工事は、金額のわりに、施設の担当者が一人で抱えやすいものでもあります。
この帯の工事は、分野の専門の会社を含めて2〜3社の見積を比べるのが基本です。故障がきっかけで急ぐときも、応急の処置で持たせて、比べる時間をつくります。相見積の社数を金額で決める考え方は社会福祉法人の相見積は、400万円を境に2社と3社に分かれますにまとめています。
1社に絞らず、帯ごとに使い分けます
小さな修理から大きな修繕まで一括して任せる、というのは、すべてを1社に請け負わせることだけを意味しません。帯ごとに頼み先と比べ方を決め、窓口だけを1つにする、という形もあります。
帯ごとの頼み先と、比べ方の例| 金額の帯 | 頼み先の例 | 比べ方 |
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| 数万円まで | 多能工の会社、窓口、地元の工務店 | 比べない。単価と出張費を年に1回見直す |
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| 50万円くらいまで | 分野ごとの専門の会社、窓口 | 急がないものは2社くらいで比べる |
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| 500万円くらいまで | 分野の専門の会社、設備会社 | 2〜3社の見積を同じ条件で比べる |
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| 500万円を超える | 建設会社、設計事務所と施工会社 | 設計と施工を分ける方法や入札も考える |
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図4 金額の帯ごとに、比べ方を決めておく。
一社にまとめるときの、施工の一本化と窓口の一本化の違いは「一社にまとめる」には、二つの意味がありますに、大規模修繕の頼み方の3通りは大規模修繕は着工の2年前に動き出し、石綿の調査は設計の段階で済ませますにまとめています。
決める速さも、帯で変えておきます
小さな修理は、早く直すことがいちばん大事です。数千円の修理に本部の決裁を何日も待っていては、その間に入居者の方が不便な思いをします。いっぽう大きな工事は、時間をかけて比べ、決めることが大事です。帯ごとに、誰がどこまで決めてよいかを決めておくと、決める速さを使い分けられます。
帯ごとの決める人の例| 金額の帯 | 決める人の例 |
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| 数万円まで | 施設の営繕担当者や事務長 |
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| 50万円くらいまで | 施設長 |
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| 500万円くらいまで | 本部の担当部署 |
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| 500万円を超える | 本部や理事会 |
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小さな修理を担当者の判断で決められるようにしておくと、職員から上がってきた修理の話を、その日のうちに頼めるようになります。
金額の線は、法人の規程に合わせて決めます。規程に線がない場合は、まず1年分の修繕を並べて、どの金額の工事が何件あるかを見てから決めると、現場の実感にも合った線になります。
小さな修理の会社は、続けて頼むと育ちます
小さな修理を頼む会社は、毎回変えるより、同じ会社に続けて頼むほうがうまくいきます。同じ職人が何度も来るうちに、施設の建物の癖や、入居者の方の暮らしの時間、職員との連絡の仕方を覚えてくれるからです。
- 月に1回の巡回を決める小さな修理をためておき、月に1回まとめて直してもらいます。
- 同じ職人に来てもらう担当の職人を決めてもらい、施設の癖を覚えてもらいます。
- 年に1回見直す単価や出張費、来るまでの日数を、年に1回振り返ります。
小さな修理を任せられる会社が育つと、大きな工事のときにも、建物の傷み方を知っている相手として意見を聞けるようになります。月に1回の巡回の組み方は小さな修繕は、月1回の巡回で1日7〜10件を直せますにまとめています。
一括して任せる前に、決めておく5つのこと
小さな修理から大きな修繕まで、まとめて任せる相手が決まったら、始める前に次の5つを相手と決めておきます。決めずに始めると、帯をまたいだときや、急ぎの修理が重なったときに、誰がどう動くのかが分からなくなります。
一括して任せる前に決めておくこと| 決めること | 決め方の例 |
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| 帯ごとの担当 | 数万円までは巡回の職人、それより大きい工事は現場の担当者 |
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| 相見積に切り替える金額 | 50万円を超える工事は、ほかの会社の見積も取る |
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| 急ぎの修理の受け方 | 入居者の方の安全に関わるものは、当日か翌日に来てもらう |
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| 記録の残し方 | 修理の日・場所・内容・費用を、毎月一覧でもらう |
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| 見直しの時期 | 年に1回、帯ごとの費用と日数を振り返る |
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決めたことは、紙1枚にまとめて、施設と相手の両方で持っておきます。担当者が替わっても、同じ決まりで続けられるようにするためです。
相談・見積は無料|同じ条件で最大3社
このお問い合わせ1本で、
最大3社の見積がそろいます。
モデルケース:帯ごとに頼み方を分けた老人ホーム
モデルケース:定員90名の介護付有料老人ホーム
小さな修理が早くなり、大きな工事は比べて決められた
変わったこと(結果)
小さな修理は月に1回の巡回でまとめて直すようになり、職員から「直してほしい」と言われてから直るまでの日数が短くなりました。空調の更新の工事では、3社の見積を同じ条件で比べたうえで本部の決裁を受け、最初に出てきた見積より費用を抑えて決めることができました。
背景と、困っていたこと
このホームでは、建物を建てた会社に、修理も更新もすべて頼んでいました。小さな修理は後回しになりがちで、大きな工事は比べる機会がないまま決まっていました。本部からは、数百万円の工事なのに相見積がないことを指摘されていました。
決めたこと
ホームは、1年分の修繕を金額の小さい順に並べて4つの帯に分けました。数万円までの修理は多能工の会社の巡回に、50万円を超える工事は分野の専門の会社を含めた相見積に、と帯ごとに頼み方を決め、見積が想定の帯を超えたら比べ方を切り替える決まりも作りました。