営繕の仕事は、6つに分けられます
「営繕を丸ごと外注したい」と考えるとき、まず営繕の仕事を細かく分けてみます。営繕の仕事は、不具合に気づくところから、記録を残して次の計画を立てるところまで、いくつもの段階でできています。
営繕の仕事の6つの段階| 段階 | 中身 |
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| 気づく | 見回りや、職員・入居者の方からの声で、不具合を見つける |
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| 受け付ける | 不具合の話を1か所に集め、何がどこで起きているかを整理する |
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| 判断する | 直すか替えるか、急ぐかどうか、いくらまでかけるかを決める |
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| 手配する | 業者を選び、見積を取り、工事の日程を組む |
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| 立ち会って確かめる | 工事の日に立ち会い、直ったかどうかを確かめる |
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| 記録して計画する | 修理の記録を残し、次の更新や修繕の計画を立てる |
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図1 営繕の仕事を6つに分けると、外に任せられる範囲が見えてくる。
今、誰がどの段階を担っているかも、あわせて書き出してみます。多くの施設では、気づくのは介護職員、受け付けるのはリーダーの職員、判断から手配までは事務長、というように、1つの修理に何人もが関わっています。どこで時間がかかっているかが見えると、外に任せる段階を選びやすくなります。
こうして分けてみると、「丸ごと外注」と言っても、6つの段階のそれぞれで、外に任せられるものと任せにくいものがあることが分かります。
外に出しやすい仕事と、施設に残る仕事
6つの段階のうち、受け付ける、手配する、記録して計画するの3つは、外に任せやすい仕事です。判断するも、判断の材料をそろえるところまでは任せられます。いっぽう、気づくことと、最後に費用を承認して決めることは、どうしても施設に残ります。
6つの段階ごとの、外注のしやすさ| 段階 | 外注のしやすさ | 施設に残ること |
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| 気づく | 一部だけ | 日々の暮らしの中での気づきは、職員にしかできない |
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| 受け付ける | しやすい | 施設の中で話を集める担当を決めておく |
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| 判断する | 材料づくりまで | 費用の承認と、最後に決めること |
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| 手配する | しやすい | なし(日程の希望を伝える) |
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| 立ち会って確かめる | 一部だけ | 鍵の開け閉めや、入居者の方への声かけ |
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| 記録して計画する | しやすい | 計画を承認すること |
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図2 外に任せても、気づくことと決めることは施設に残る。
「気づく」が止まると、ほかの5つも止まってしまいます。業者がどれだけ早く動いても、不具合の話が施設の中で止まっていれば、直るのは遅くなります。外注するときこそ、職員から不具合の話が上がってくる仕組みを整えておきます。施設の中の窓口の作り方は修繕の窓口は、外と中の両方を一本にして効果が出ますにまとめています。
外注の形は、常駐・巡回・窓口の3つです
営繕を外に任せる形は、大きく3つに分かれます。施設の規模と、修理がどのくらいの頻度で出るかによって、向いている形が変わります。
営繕を外に任せる3つの形| 形 | 中身 | 向いている施設 |
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| 常駐型 | 営繕の担当者が、決まった曜日や毎日、施設に通う | 大きな施設や、修理が毎日のように出る施設 |
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| 巡回型 | 月に1回など、決まった日に回って小さな修理をまとめて直す | 中くらいの施設や、急がない修理が多い施設 |
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| 窓口型 | 相談を受けて、分野ごとの業者を手配し、記録をまとめる | 小さな施設や、修理の分野がばらばらの施設 |
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費用の出方も形によって違います。常駐型は人の手間に対して月ごとに払う形が多く、巡回型は回る日ごとや直した件数ごと、窓口型は工事ごとの見積に手数料が加わる形などがあります。同じ「外注」でも、何に対して払っているのかを比べて選びます。
3つは組み合わせることもできます。たとえば、月に1回の巡回で小さな修理を直し、急ぎの故障や大きな工事は窓口に相談する、という形です。施設管理の会社と契約している場合は、その契約に修理が含まれているかも確かめておきます。施設管理の契約と修理の関係はビルメンテナンスの委託費と、修理の費用は分けて見ますにまとめています。
施設に営繕の担当者がいるかどうかで、任せ方が変わります
同じ「丸ごと外注」でも、施設に営繕の担当者がいるかどうかで、任せ方が変わります。担当者がいる場合は、担当者の手が回らない部分を外に任せます。いない場合は、窓口と判断の材料づくりまで外に任せ、施設長や事務長は承認だけをする形にします。
図3 担当者がいるかどうかで、任せる範囲が変わる。
担当者がいる場合は、担当者が外の相手の窓口になります。担当者が施設の建物の癖や業者との付き合いを知っているので、外に任せる仕事を絞っても効果が出やすくなります。担当者の時間を、見回りや入居者の方の困りごとに向けられるようになるのも利点です。
担当者がいない場合でも、施設の中で「不具合の話を集める人」は決めておきます。営繕の専門の人でなくてかまいません。事務の職員やリーダーの職員が、職員からの話を受けて外の窓口に伝える役を担えば、外注はうまく回ります。外注するか、施設の中でするかの分かれ目は営繕の外注と内製は、5つの条件で分かれますで書いています。
契約で、先に決めておくこと
営繕を外に任せるときは、契約の中身を先に決めておきます。決めずに始めると、「これは頼んでいない」「それは含まれていると思っていた」という行き違いが起きやすくなります。
営繕を外に任せる契約で決めておくこと| 決めること | 決め方の例 |
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| 任せる範囲 | 6つの段階のうち、どこからどこまでを任せるか |
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| 承認の金額 | 一定の金額までは担当者の判断で進め、それを超えたら施設の承認を取る |
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| 急ぎの対応 | 夜間や休日に止まったとき、誰が受けて、どのくらいで動くか |
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| 報告の頻度 | 修理の一覧と費用を、毎月まとめて報告してもらう |
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| 費用の形 | 月ごとの定額か、件数ごとか、工事ごとの見積か |
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とくに大事なのは「承認の金額」です。すべての修理に施設の承認を取ると外に任せた意味が薄れ、まったく承認を取らないと思わぬ費用が出ることがあります。小さな修理は任せ、一定の金額を超えたら必ず相談してもらう、という線を引いておきます。発注の名前と責任の考え方は修繕管理の代行は、誰の名前で発注するかで責任が変わりますにまとめています。
老人ホームの修繕を一括して任せるとき
有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、入居者の方が暮らす施設では、修繕を一括して任せるときに気をつけることがあります。工事の時間帯、入居者の方やご家族への説明、居室に入るときの決まりなど、暮らしの場ならではの決まりごとを、任せる相手と共有しておくことです。
老人ホームの修繕を任せるときに、共有しておくこと| 共有すること | 中身の例 |
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| 工事の時間帯 | 食事・入浴・お昼寝の時間を避ける |
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| 居室に入るときの決まり | 職員が付き添う、入居者の方に声をかけてから入る |
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| ご家族への説明 | 大きな工事の前には、施設からお知らせを出す |
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| 退居後の原状回復 | 空いた居室の修繕を、次の入居までに終える段取り |
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特別養護老人ホームでは、入居者の方の多くが日中も施設で過ごしています。工事の音やにおい、知らない人の出入りに配慮が要るので、任せる相手には、介護施設での工事に慣れているかも確かめておきます。
有料老人ホームでは、居室の原状回復が早く終わるかどうかが、次の入居の時期にも関わります。退居が決まったら外の担当者にすぐ伝え、工事の日程を早めに組んでもらう流れを作っておくと、空室の期間を短くできます。
任せる前に、施設の中で整えておくこと
外に任せる前に、施設の中で整えておくと、任せたあとがぐっと楽になることが3つあります。どれも完ぺきでなくてかまいません。分かる範囲で書き出しておくだけで、任せる相手が早く施設の事情をつかめます。
任せる前に整えておくこと| 整えること | 中身 |
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| 今の業者の一覧 | どの分野を、どの業者に、いくらくらいで頼んでいたか |
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| 図面と設備の一覧の置き場所 | 竣工図や設備の型番・年式が、どこにあるか |
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| 承認の流れ | 誰が、いくらまでの修理を決めてよいか |
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とくに今の業者の一覧は、前の担当者の頭の中にしかないことがよくあります。担当者が辞める前に聞き取っておくか、過去の請求書をさかのぼって書き出しておくと、外に任せたあとも、これまでの業者との付き合いを生かせます。
丸ごと任せるまでは、段階的に進めます
最初から6つの段階をすべて任せると、施設の側も任せる相手の側も、慣れるまでに時間がかかります。受け付けると手配するから始めて、うまく回ったら記録と計画まで広げていくほうが、行き違いが少なくなります。
図4 外に任せる範囲を、段階的に広げていく。
最初の段階で任せる修理は、急ぎではないものから選ぶと、施設も相手も落ち着いて流れを確かめられます。
段階を進めるたびに、修理の件数、直るまでの日数、費用、職員の手間を前と比べます。うまくいかない段階があれば、そこだけ施設に戻すこともできます。外注へ移る3か月の進め方は修繕の外注は、12週間を4つの段に分けて移しますにまとめています。
任せたあとに施設に残る仕事は、これだけです
丸ごと任せたあと、施設の担当者に残る仕事は、思っているより少なくなります。どのくらいの頻度で何をするのかを、先に表にしておくと、担当する人も引き受けやすくなります。
外に任せたあとの、施設の担当者の仕事| 頻度 | 施設の担当者がすること |
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| 毎日 | 職員から上がってきた不具合の話を受け、外の窓口に送る |
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| 毎週 | 急ぎの修理が止まっていないかを確かめる |
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| 毎月 | 修理の一覧と費用の報告を読み、決められた金額を超える修理を承認する |
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| 毎年 | 翌年度の修繕の計画と予算の下書きを確かめて、承認する |
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毎日の仕事も、話を受けて送るだけなので、1日に数分で済むことがほとんどです。営繕の専門の知識がなくても担えるように、外の窓口に送るときの書き方を決めておくと、担当者が替わっても続けられます。
モデルケース:営繕の担当者が辞めた有料老人ホーム
モデルケース:定員60名の住宅型有料老人ホーム
事務長が修理の電話に追われなくなった
変わったこと(結果)
営繕の担当者の退職をきっかけに、受付から手配、記録までを外に任せたところ、事務長が修理のことで業者とやり取りする時間が大きく減りました。毎月届く修理の一覧で、どこに何件の修理があり、いくらかかったかが分かるようになり、翌年度の予算も組みやすくなりました。
背景と、困っていたこと
このホームでは、長く勤めた営繕の担当者が、修理の受付から業者の手配までを一人で担っていました。担当者が退職すると、職員からの修理の話がすべて事務長に集まり、業者を探す時間と電話の時間で、本来の仕事が回らなくなりました。どの業者に何を頼んでいたのかも、担当者の頭の中にしかありませんでした。
決めたこと
ホームは、営繕の仕事を6つに分け、受け付ける・手配する・記録するを外に任せることにしました。職員からの修理の話はリーダーの職員が集めて外の窓口に送り、一定の金額を超える修理だけ事務長が承認する、と決めました。最初の3か月は受付と手配だけを任せ、その後、記録と翌年度の計画の下書きまで広げました。