介護施設の設備は、6つの分野に分かれます
介護施設の設備は、給排水、空調、電気、防災、昇降機、介護の専用機器の6つの分野に分けると、頼み先が見えてきます。分野ごとに、かかわる法令も、要る資格も、部品を持っている会社も違うからです。「設備に強い業者」を探す前に、施設の設備をこの6つに分けてみます。
介護施設の設備の6つの分野| 分野 | 施設の主な設備 | 止まると困ること |
|---|
| 給排水 | 給水管・受水槽・給水ポンプ・給湯器・排水管・トイレ・水栓 | 入浴と排泄の介助、食事の支度、手洗い |
|---|
| 空調 | 業務用エアコン・換気扇・全熱交換器 | 居室の室温、夏の熱中症、冬の冷え |
|---|
| 電気 | 分電盤・配線・照明・コンセント・キュービクル・非常用の発電機 | 照明、医療機器や冷蔵庫、ほかの設備の電源 |
|---|
| 防災 | 自動火災報知設備・スプリンクラー・消火器・誘導灯・非常放送 | 火災のときの通報・消火・避難 |
|---|
| 昇降機 | エレベーター・段差解消機・階段昇降機 | 2階以上の入居者の方の移動、食事の運搬 |
|---|
| 介護の専用機器 | 特殊浴槽・ナースコール・リフト・見守りの機器 | 入浴の介助、呼び出しへの対応 |
|---|
図1 分野ごとに、法令・資格・部品を持つ会社が違う。
6つのうち、給排水・空調・電気は、建物の設備として多くの会社が扱う分野です。防災と昇降機は、法令で点検の決まりがあり、点検の契約先が修理の入口になります。介護の専用機器は、機器ごとにメーカーや代理店が決まっていて、ほかの会社では直せない部分があります。
同じ「設備会社」でも、得意は給排水と空調のこともあれば、電気だけのこともあります。分野ごとに見ると、「設備に強い」という言葉が、どの分野の強さを指しているのかを確かめられます。
分野ごとに、強い業者と確かめる資格が違います
設備の修理に強い業者は、分野ごとに違います。分野ごとの強い頼み先と、確かめる資格や登録は次のとおりです。資格や登録は、その分野の作業を任せてよいかを、外から確かめられる数少ない手がかりです。
設備の分野ごとの、強い業者と確かめる資格・登録| 分野 | 強い業者 | 確かめる資格・登録 | 確かめ方 |
|---|
| 給排水 | 水道局の指定工事店、設備会社(管工事) | 指定給水装置工事事業者(水道局ごとの指定)。排水は自治体の指定工事店のことが多い | 水道局の名簿、指定の番号 |
|---|
| 空調 | 空調の工事業者、メーカーの修理窓口 | 第一種フロン類充塡回収業者(都道府県の登録)、冷媒フロン類取扱技術者 | 登録の番号、点検の記録を残すか |
|---|
| 電気 | 電気工事業者、電気の保安の委託先 | 電気工事士(第一種・第二種)、登録電気工事業者 | 都道府県の名簿、来る人の免状 |
|---|
| 防災 | 消防設備の点検・工事の会社 | 消防設備士(工事は甲種、整備と点検は乙種も)、消防設備点検資格者 | 免状の種類、点検の報告書の名前 |
|---|
| 昇降機 | 保守会社(メーカー系・独立系) | 保守の契約、法令の定期検査 | 契約書、閉じ込めのときの出動の時間 |
|---|
| 介護の専用機器 | メーカー・代理店 | 法令の資格より、メーカーの保守の体制 | 機器の銘板、保守の契約書 |
|---|
図2 設備の修理に強い先は、分野ごとに別の会社になることが多い。
「設備業者」とひとまとめに呼ばれる会社の多くは、給排水と空調を中心に受ける管工事の会社です。電気や消防は、別の会社と組んでいることがよくあります。工務店や設備会社、メーカーなど、頼み先の業態ごとの守備範囲は修理や営繕の頼み先は、6つの業態から工事ごとに選びますにまとめています。
電気の分野は、施設が低圧で受電しているか、高圧で受電しているかで、頼み先と要る資格が変わります。電気の頼み先の決め方は電気設備の修理を頼む先は、受電の形と作業の中身で決まりますでくわしく書いています。
「設備に強い」の中身は、3つの問いで確かめます
「設備に強い」と言う会社の中身は、3つの問いで確かめられます。どの分野を社員で直せるか、その分野の資格や登録を持つ人が来るか、部品と図面をどこから取るか、です。答えが分野ごとに具体的なほど、その分野に強い会社です。
- どの分野を、社員で直せますか「給排水と空調は社員で、電気は協力会社です」のように、分野ごとに答えられるかを見ます。
- 当日は、どの資格の方が来ますか電気なら電気工事士、空調なら冷媒を扱える人、消防なら消防設備士が来るかを聞きます。
- 部品と図面は、どこから取り寄せますかメーカーから直接取れるか、代理店を通すか、在庫を持っているかで、直るまでの日数が変わります。
3つ目の部品の問いは、見落とされがちです。設備の修理は、職人の腕より、部品がそろうかどうかで日数が決まることがよくあります。メーカーと直接の取引がある会社や、よく使う部品を在庫している会社は、同じ分野の中でも直るまでが早くなります。
答えを聞いたら、分野ごとに「社員で直す」「協力会社に回す」「受けない」を書き分けておきます。同じ会社でも、分野によって強さが違うことが一目で分かります。会社ごとの受け持ちの境界の聞き方は対応範囲の広さより、境界が明確な会社を選びますにまとめています。
強い会社のふるまいは、分野ごとに違います
同じ「強い」でも、分野によって表れ方が違います。分野ごとに、強い会社が当たり前にしていることを知っておくと、最初の電話や1回目の修理で見分けられます。
分野ごとの、強い会社の見分け方| 分野 | 強い会社がしていること | 聞き方の例 |
|---|
| 給排水 | 漏れた場所が分からないときの調べ方を持っている。配管の材質と年数から、直すか替えるかを話せる | 床下や壁の中の漏れは、どう調べますか |
|---|
| 空調 | 型番から冷媒の種類と部品の有無を答えられる。点検と修理の記録を残す | この型番の部品は、まだ手に入りますか |
|---|
| 電気 | 受電の形を先に聞いてくる。工事で電気を止める範囲と時間を先に話す | 工事のとき、どの部屋の電気が何分止まりますか |
|---|
| 防災 | 点検で見つかった不具合を、急ぐものと次の点検でよいものに分けて話せる | この不具合は、いつまでに直せばよいですか |
|---|
| 昇降機 | 閉じ込めのときの出動の時間と、部品の手配の早さを答えられる | 閉じ込めのとき、ふだん何分で着きますか |
|---|
| 介護の専用機器 | 修理で済むか買い替えか、部品がいつまで手に入るかを話せる | この機種の部品は、いつまで手に入りますか |
|---|
表の聞き方に、すぐ具体的な答えが返ってくるかを見ます。「来てみないと分かりません」という答えでもかまいません。何を見れば分かるのか、来るまでに施設で何を控えておけばよいのかを話せる会社は、その分野に慣れています。
水道局の指定工事店と、冷媒を扱う登録の確かめ方は水道は指定工事店、空調はフロンの登録で、頼む業者を選びますにまとめています。
介護の専用機器は、メーカー・代理店が中心になります
特殊浴槽やナースコールなど、介護の専用機器の修理は、メーカーや代理店が中心になります。本体の部品や制御の仕組み、直したあとの安全の確かめ方を持っているのが、メーカーとその保守を任された会社だからです。ほかの会社に頼めるのは、機器のまわりの配管や電源などに限られることが多くなります。
専用機器の修理が、メーカー・代理店中心になる理由| 理由 | 中身 | 施設がしておくこと |
|---|
| 部品を持っている | 本体の部品は、メーカーと代理店の経路でしか手に入らないことが多い | 部品がいつまで手に入るかを、保守の会社に聞いておく |
|---|
| 制御の仕組みを扱える | 制御の基板や設定は、専用の道具や手順がないと直せない | エラーの表示を写真で残す |
|---|
| 安全の確かめ方が決まっている | 入居者の方の体を支える機器は、直したあとの確かめ方が決まっている | 直したあとの確かめの記録をもらう |
|---|
| 保証と保守の契約がある | ほかの会社が手を入れると、保証や契約の対象から外れることがある | 保守の契約書で、受け持ちの範囲を見る |
|---|
図3 本体はメーカー・代理店、まわりは設備や電気の会社が受け持つことが多い。
専用機器でも、すべてをメーカーに頼む必要はありません。浴槽へお湯を送る給湯の不具合や、ナースコールの電源の不具合は、設備や電気の会社のほうが早く直せることがあります。どこまでが本体かを保守の契約書で確かめ、本体の外側は日ごろの会社に頼む、と分けておきます。
ナースコールの本体と、配線・電源の受け持ちの分け方はナースコールの修理、代理店以外に頼めるかにまとめています。特殊浴槽が止まると、買い替えを勧められて迷うことがあります。修理で使い続けるか買い替えるかの見分け方は特殊浴槽の修理費は、残りの年数で割って比べますで書いています。
だからこそ、故障したからすぐ買い替えるのではなく、まず修繕できるのか相談できる窓口があるのは心強いと感じました。
ご利用者の声 大分県・グループホーム/施設長
取材にもとづき掲載しています(施設名は非公開)。内容はご本人の申告によるもので、個人の感想です。
昇降機と消防の設備は、点検の契約先が修理の入口です
エレベーターと消防の設備は、法令で点検の決まりがある設備です。点検を受け持っている契約先が、設備の状態をいちばんよく知っているため、修理の入口もその契約先になります。
法令の点検がある設備と、修理の入口| 設備 | 点検の決まり | 修理の入口 | 確かめておくこと |
|---|
| エレベーター | 建築基準法の定期検査と、保守会社の点検 | 保守会社 | 閉じ込めのときの緊急の連絡先、契約に修理が含まれるか |
|---|
| 消防用設備 | 機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごと。介護施設は1年に1回、消防署に報告 | 点検の会社(消防設備士) | 点検の報告書で指摘された不具合と、直す時期 |
|---|
| 受水槽(貯水槽) | 容量によって、清掃と検査の決まりが変わる | 清掃・点検の会社、設備会社 | 清掃と検査の記録、給水ポンプの保守の契約先 |
|---|
消防用設備の点検は、延べ面積が1,000㎡以上の施設などでは、消防設備士か消防設備点検資格者がする決まりです。点検で見つかった不具合の修理(整備)の多くも、消防設備士の仕事です。設備を新しく付ける工事は、甲種の消防設備士でないとできません。点検の会社が工事まで受けるのか、別の会社を紹介するのかを聞いておきます。
エレベーターの保守会社には、メーカー系と独立系があります。部品の手配の早さや費用が違うため、保守会社を替えるときは、閉じ込めのときに何分で来られるかと、部品の取り寄せにかかる日数を比べます。
エレベーターが止まったときの閉じ込めの連絡と、2階以上の生活の段取りはエレベーターが止まった。閉じ込めの連絡先と、2階以上の生活にまとめています。消防の設備の点検の頻度と報告、避難に関わる廊下の決まりは、消防設備の点検は年2回、消防署への報告は年1回ですで書いています。
分野をまたぐ不具合では、最初に見る役を決めておきます
設備の不具合の中には、2つ以上の分野にまたがるものがあります。天井から水が漏れて照明が消えた、特殊浴槽のお湯がぬるい、といった不具合です。分野ごとの会社に別々に頼むと、原因の押し付け合いや、2社の到着を順に待つことが起きます。
分野をまたぐ不具合と、起きやすいこと| 不具合 | またぐ分野 | 起きやすいこと | 先に決めておくこと |
|---|
| 天井から水が漏れ、照明やコンセントが濡れた | 給排水・電気 | 漏電の心配があるのに、水回りの業者だけを呼ぶ | 濡れた電気の設備には触らず、電気の業者にも知らせる |
|---|
| 特殊浴槽のお湯がぬるい | 専用機器・給湯 | 浴槽のメーカーは給湯を、給湯の業者は浴槽を疑う | 蛇口のお湯の温度を先に測り、どちらを先に呼ぶかを決める |
|---|
| 室内機から水が垂れる | 空調・排水 | 水回りの業者を呼んだら、空調の業者の受け持ちだった | ドレン管(冷房で出る水の管)は、空調の業者と決めておく |
|---|
| 浴室や厨房の近くで火災報知器が鳴る | 防災・空調・給湯 | 湯気や結露が原因なのに、感知器だけを替える | 点検の会社に、鳴った時間と場所の様子を伝える |
|---|
| 一部の部屋のナースコールが鳴らない | 専用機器・電気 | 電源の不具合なのに、代理店の到着を待つ | 止まった範囲を確かめ、電源が疑わしければ電気の業者にも見てもらう |
|---|
図4 水と電気が重なるときは、人を離してから両方の業者に知らせる。
またぐ不具合では、どの会社が最初に見て、ほかの会社につなぐかを決めておくと、施設の担当者が間に立つ時間が減ります。たとえば、日ごろの設備会社に「最初に見る役」を頼み、本体の故障と分かったらメーカーへ、電気と分かったら電気の業者へつないでもらう形です。
最初に見る役の会社には、つなぐ先の連絡先を一覧で渡しておきます。天井裏や壁の中など、建物と設備の工事がぶつかる場所の扱いは建物と設備を一括で頼むと、境目の押し付け合いがなくなりますにまとめています。
設備を1社に頼みたいときは、入口だけを1つにします
すべての分野を1社で直せる会社は、ほとんどありません。それでも連絡先を1つにしたいときは、修理そのものではなく、相談の入口だけを1つにします。入口の会社が分野を見分けて、その分野に強い会社につなぐ形です。
- 設備会社を入口にする給排水と空調を受ける設備会社に最初に見てもらい、電気・消防・専用機器は、その会社からつないでもらいます。
- 施設管理の会社を入口にする点検や保守を任せている施設管理の会社に、修理の受付と振り分けまで頼みます。契約に含まれるかを確かめます。
- 窓口を入口にする相談を窓口に送り、分野ごとに施工の会社を手配してもらいます。当窓口では、1回のご依頼で最大3社の見積をそろえます。
どの形でも、入口の会社が強いのは自分の分野だけです。入口の会社が見分けを誤ると、強い会社につながるまでに日数がかかります。入口を1つにしても、分野ごとの強い会社の連絡先は、施設でも控えておきます。
設備の故障をまとめて頼む3つの形の比べ方は介護施設の設備の故障を、まとめて頼む形は3つありますにまとめています。
分野ごとに依頼先を1つずつ決め、一覧にします
分野ごとの強い会社が分かったら、分野ごとに依頼先を1つずつ決め、1枚の一覧にします。止まったときに一覧を見れば、誰でも同じ先に連絡できるようにするためです。設備の台数が多い施設でも、まずは分野ごとに1行から始めます。
分野ごとの依頼先の一覧に書く項目| 項目 | 書き方の例 |
|---|
| 分野と設備 | 給排水:給湯器2台(1階機械室)、給水ポンプ1台 |
|---|
| 型番と設置年 | 銘板の写真から書き写す。分からなければ「不明」と書く |
|---|
| 平日の依頼先 | 会社名、担当者、電話番号 |
|---|
| 夜間・休日の依頼先 | 保守の契約先の緊急の連絡先。なければ空欄にして、平日のうちに探す |
|---|
| 資格・登録 | 指定の番号、登録の番号、来る人の資格 |
|---|
| 保守の契約 | 有無、契約の種類、修理が含まれるか |
|---|
| 最後に頼んだ日と中身 | 2026年9月、給湯器の点火の不良で部品を交換 |
|---|
図5 分野ごとに1行から始め、修理のたびに書き足す。
一覧は、事務室と夜勤の詰所の両方に置きます。夜勤の職員が見る一覧には、夜間・休日の連絡先と、いくらまでなら職員の判断で頼んでよいかを、大きく書いておきます。
設備の一つひとつを台帳にする方法は機器台帳は、竣工図と現地と保守の会社の3つで作りますにまとめています。業者ごとの連絡先と依頼の履歴を残す台帳は修理業者を毎回探す手間は、業者台帳で消せますで書いています。
モデルケース:特殊浴槽と火災報知器で二度手間が続いたユニット型特養
モデルケース:定員80名のユニット型特別養護老人ホーム
分野ごとに依頼先を分けて、二度手間が減った
変わったこと(結果)
設備を6つの分野に分け、分野ごとに依頼先を1つずつ決めた一覧を作りました。特殊浴槽が止まってから技術者が来るまでが、3日から翌日に縮みました。1回の不具合で2社に払っていた出張費が1社分になり、事務長が1件の不具合でかける電話は、5〜6本から1〜2本に減りました。
背景と、困っていたこと
この特養は、給排水と空調に強い設備会社に、設備の修理をすべて頼んでいました。特殊浴槽がエラーで止まると、まず設備会社が来て給湯を調べ、本体の基板の故障と分かってからメーカーに連絡するため、直るまでに3日かかっていました。浴室の近くで火災報知器が鳴ったときは、設備会社と消防の点検の会社が、それぞれ相手の側に原因があると考え、原因が分かるまで2週間かかりました。
決めたこと
事務長は、設備会社との付き合いは続けたまま、分野ごとに依頼先を分けました。特殊浴槽は保守契約のあるメーカーに、火災報知器は点検の会社に直接連絡し、給湯や配管が疑われるときだけ設備会社を呼ぶ、と決めました。分野をまたぐ不具合では設備会社を「最初に見る役」とし、本体の故障と分かったら、その場でメーカーにつないでもらうことにしました。
進めてみて分かったこと
事務長が迷ったのは、長く頼んできた設備会社の仕事を減らしてよいのか、という点でした。実際には、設備会社も自社の分野に集中できるようになり、給湯器の更新の相談では、型番と部品の有無を先に調べてから来るようになりました。