修繕業者の統一は、分野ごとに共通の頼み先を決めることです
いくつもの介護施設を持つ法人で「修繕業者を統一する」と言うと、全部の施設の修理を1社に任せる形を思い浮かべがちです。けれども、建具の調整から特殊浴槽の修理、屋上の防水までを、1社で同じ質に保てる会社はまれです。
統一は、分野ごとに、どの施設も同じ頼み先と同じ単価で頼める状態をつくること、と考えると進めやすくなります。そろえるものは、業者の名前だけではありません。
統一でそろえる3つのもの| そろえるもの | 中身 | 全施設でそろえやすいか |
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| 依頼と記録の様式 | 修理を頼むときの書き方、直したあとの報告、費用の記録の形 | そろえやすい。業者が違っても同じ形にできる |
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| 分野ごとの単価 | 出張費、職人の手間賃、夜間や休日の割増、よく使う部品の値段 | 分野ごとならそろえやすい。地域で差が出ることがある |
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| 頼み先の業者 | 分野ごとに、どの施設も同じ業者に頼む | 分野と、施設から業者までの距離による |
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図1 様式と単価を先にそろえると、頼み先が違う施設も同じ物差しで見られる。
3つのうち、いちばん先にそろえるのは様式と記録です。頼み先が施設ごとに違っていても、頼み方と記録の形が同じなら、本部は全施設の修理を並べて見られます。単価は分野ごとにそろえ、頼み先はその次に、分野と施設の距離を見て決めます。
1社にまとめる形には、1社が元請けとして工事を請け負う形と、相談と手配の窓口だけを1つにする形があります。2つの違いは「一社にまとめる」には、二つの意味がありますにまとめています。この記事では、どちらを選ぶ場合にも先に要る、法人としてのそろえ方を扱います。
統一の前に、施設ごとに何がばらばらかを確かめます
統一を始める前に、施設ごとに何が違っているのかを確かめます。ばらばらなのは、業者の名前だけではありません。頼み方、承認の仕方、記録の残し方も、施設ごとに違っていることがほとんどです。
施設ごとにばらばらになりやすいこと| ばらばらなこと | 施設で起きていること | 統一で目指す形 |
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| 同じ修理の費用 | 同じ型の水栓の交換でも、施設によって出張費や部品の値段が違う | 分野ごとの単価表で、どの施設も同じ値段で頼める |
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| 直るまでの日数 | 業者が近い施設は翌日に直り、遠い施設は1週間以上待つ | 急ぎの修理は、どの施設も決めた時間の中で受けてもらえる |
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| 頼み方 | 電話だけで頼む施設と、写真を送る施設がある | 同じ依頼の様式で、場所・症状・写真を送る |
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| 承認の線 | 施設長がいくらまで決めてよいかが、施設ごとに違う | 法人の中で、金額の線を1つに決める |
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| 記録 | 請求書の束しかない施設と、台帳がある施設がある | 全施設が同じ表に、修理の記録を残す |
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この表のどの行でいちばん困っているかを、先に本部で話し合っておきます。費用の差を縮めたいのか、遠い施設の待ち時間を縮めたいのか、本部から全体を見えるようにしたいのか。目的によって、手をつける分野が変わるからです。目的は1つに絞って、施設長たちに伝えます。
ばらばらになる理由の多くは、施設ができた時期と、担当者の付き合いの違いにあります。建てたときの工務店、前の事務長が知っていた設備会社、近所の電気屋。こうした付き合いは担当者が替わると途切れやすく、どの業者に何を頼んでいたかが分からなくなります。営繕が特定の人に集まる仕組みは営繕の属人化は、4つの経路を決まった順にほどきますにまとめています。
3か月の進め方は、数える・決める・試すの3段です
修繕業者の統一は、3か月を1つの区切りにすると進めやすくなります。1か月目に数え、2か月目に決め、3か月目に1つの施設で試します。全施設に広げるのは、試した結果を見てからです。
図2 3か月で決めるのは、統一しやすい分野だけ。ほかの分野は、試した結果を見てから広げる。
修繕業者を統一する3か月の手順| 時期 | すること | 本部の役 | 施設の役 |
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| 始める前の1〜2週間 | 目的と進め方を、施設長の会議で伝える | 目的を1つに絞って示す | 今の業者の一覧と、困りごとを出す |
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| 1か月目 | 全施設の1年分の修理を、同じ表で数える | 表の列と、分野の分け方を決める | 請求書と記録から、修理を書き出す |
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| 2か月目の前半 | 統一しやすい分野を選び、候補の業者に同じ依頼文を送る | 依頼文と単価表の様式を作る | 候補の業者の下見に立ち会う |
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| 2か月目の後半 | 同じ条件で単価を比べ、分野ごとの頼み先を決める | 比べた結果を施設長に示す | 今の業者との付き合いで、残したいものを伝える |
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| 3か月目 | 1つの施設で試し、日数・費用・手間を前と比べる | 比べた数字をまとめる | 試した施設の職員から、困ったことを集める |
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| 3か月のあと | 全施設に広げる順番と、残す業者を決める | 広げる時期を決める | 今の業者に、替える理由と時期を伝える |
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本部の役と施設の役を分けて書いたのは、統一が本部だけの仕事になると、現場の協力を得にくいからです。施設には、数えるための材料と、今の業者との付き合いで残したいものを出してもらいます。
3か月で全部の分野を決めようとはしません。決めるのは、統一しやすい1〜2の分野だけです。残りの分野は、試した結果を見てから、半年から1年かけて順に広げます。修理の手配そのものを外の会社に任せる形へ移るときの12週間の手順は修繕の外注は、12週間を4つの段に分けて移しますにまとめています。
1か月目:全施設の修理を、同じ表で数えます
1か月目は、全施設の1年分の修理を、同じ表に書き出します。いちばん気をつけるのは、施設ごとに書き方を変えないことです。同じ列、同じ分野の分け方で書けば、施設どうしを並べて比べられます。
全施設で使う、修理の集計表の列| 列 | 書くこと | 拾う元 |
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| 施設 | 施設の名前と種類(特養・デイサービスなど) | 本部で先に入れておく |
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| 日付 | 頼んだ日と、直った日 | 業者の報告書、請求書の作業日 |
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| 分野 | 建具・内装、水まわり、電気・照明、空調、給湯、防災設備、昇降機、介護の専用機器、外回り | 本部が決めた分け方から選ぶ |
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| 中身 | 何を直したか(例:居室の引き戸の戸車の交換) | 請求書の明細、業者の報告書 |
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| 業者 | 頼んだ業者の名前 | 請求書 |
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| 費用 | 税込みの支払いの額 | 会計の帳簿の、修繕費の記録 |
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| 急ぎか | その日に頼んだか、待てたか | 施設の担当者に聞く |
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拾う元は、会計の帳簿がいちばん確かです。修繕費として支払った記録を1年分たどれば、業者の名前と金額がそろいます。中身が「修理代一式」としか分からないものは、請求書の控えや業者の報告書で補います。
分野の分け方は、本部が先に決めて全施設に配ります。分け方が施設ごとに違うと、ある施設で「給湯」に入れた修理が、別の施設では「水まわり」に入り、並べても比べられません。迷う修理は「その他」に入れず、本部に聞いてもらう形にしておきます。
数え終わったら、分野ごとに、施設別の件数と費用、直るまでの日数を並べます。件数が多く、施設どうしで費用の差が大きい分野が、統一の効き目が出やすい分野です。修理の記録を業者ごとに残す業者台帳の作り方は修理業者を毎回探す手間は、業者台帳で消せますにまとめています。
分野ごとに、統一のしやすさが違います
数えた修理を分野ごとに並べると、統一しやすい分野と、しにくい分野があることが分かります。統一しやすいのは、件数が多く、作業の中身がどの施設でもおおむね同じで、近くに受けられる業者が多い分野です。
分野ごとの統一のしやすさ| 分野 | 統一のしやすさ | 理由 | そろえ方の例 |
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| 建具・内装の小修理 | しやすい | 戸車の交換や扉の調整など、作業がどの施設でも似ている | 1社に単価表で頼み、月1回の巡回とも組み合わせる |
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| 水まわりの小修理 | しやすい | 水栓や便器の部品の交換が多い。給水の配管の工事は、水道事業者ごとの指定が要る | 指定のある業者を地域ごとに選び、単価表は法人で1つにする |
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| 照明・電気の小修理 | しやすい | 器具の交換が多く、部品も手に入りやすい | 電気工事士のいる1社にまとめる |
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| 法定の点検 | しやすい | 消防用設備などの点検は、回数と中身が決まっている | 点検の契約を法人でまとめ、日程を施設ごとに組む |
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| 空調・給湯 | 施設による | メーカーや台数、年式が施設ごとに違う | 点検は法人でそろえ、修理はメーカーの近い拠点も見て決める |
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| 昇降機・特殊浴槽・ナースコール | しにくい | 本体は、メーカーや代理店、保守の会社が受け持つことが多い | 業者はそろえず、保守の契約の中身と更新の時期をそろえる |
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| 屋上・外壁などの大きな工事 | 工事ごとに選ぶ | 数年に一度で金額が大きく、比べ方の決まりもある | 業者は固定せず、工事ごとに見積を比べる |
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図3 件数が多く中身が似た分野から決めると、効き目が早く出る。
統一しにくい分野でも、まったく手をつけないわけではありません。昇降機や特殊浴槽は、業者をそろえる代わりに、保守の契約の中身を施設どうしで比べます。点検の回数、部品の扱い、駆けつけの時間を並べると、ばらつきが見えてきます。更新の時期が近い機器が複数の施設にあれば、まとめて見積を取る相談もできます。
「設備」は、給排水・空調・電気・防災・昇降機・介護の専用機器に分けて考えます。分けると、分野ごとに強い業者が違うことが見えてきます。分野ごとの業者の見分け方は設備修理に強い業者は、分野ごとに別の会社ですにまとめています。
2か月目:統一しやすい分野から、同じ条件で単価を比べます
2か月目は、統一しやすい分野を1〜2つ選び、候補の業者に同じ条件で見積を頼みます。比べるのは、1件の工事の総額ではなく、分野ごとの単価です。日常の小修理は1件ごとの中身が小さく、総額だけでは高いか安いかが分からないからです。
単価を比べるときに、そろえる条件| そろえる条件 | 中身 | そろえ方の例 |
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| 来てもらう施設 | どの施設まで、同じ単価で来られるか | 全施設の住所を渡し、施設ごとに来られるかを聞く |
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| 出張費と最低料金 | 1回来てもらうだけでかかる費用 | 1施設に来る場合と、同じ日に2施設を回る場合を分けて聞く |
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| 手間賃 | 職人1人の1時間、または1日あたりの手間賃 | 時間で数えるか、日で数えるかをそろえる |
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| 割増 | 夜間・休日・早朝の割増 | 割増の率と、何時からが夜間かを書いてもらう |
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| よく使う部品 | 水栓のパッキン、戸車、照明器具など | 数えた修理から多い部品を選び、品目を指定して値段を聞く |
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| 着くまでの時間 | 急ぎの修理で、着くまでの時間 | 平日の日中、夜間、休日に分けて聞く |
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| 報告の形 | 直したあとに、何を出してもらえるか | 法人の記録の様式に合わせて出せるかを聞く |
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依頼文は1つにまとめ、どの候補にも同じ文を送ります。数えた修理のうち、その分野で多い作業を5〜10個選びます。そして「この作業をこの施設で頼んだらいくらか」を書いてもらうと、単価の差がはっきり出ます。見積の条件のそろえ方は見積の比較表は、条件書で6つをそろえてから作りますにまとめています。
社会福祉法人では、契約の決まりも合わせて確かめます。工事の請負の見積合わせは、令和8年4月から、400万円以下なら2社、超えると3社以上が基本です。1年分をまとめて頼む単価の契約をどう扱うかは、法人の経理規程で確かめておきます。
単価がいちばん安い業者が、統一の相手としていちばん合うとは限りません。全施設に来られるか、急ぎで着くまでの時間、報告の形も並べて決めます。比べた表は、そのまま施設長の会議に出す資料になります。
施設が離れているときは、地域ごとに頼み先を分けます
法人の施設が離れた地域にあるときは、全施設を同じ業者にそろえることにこだわりません。日常の小修理では、業者の移動の時間が、そのまま費用と待ち時間に乗るからです。離れた施設は地域ごとに頼み先を分け、様式と単価の考え方だけを法人でそろえます。
図4 離れた施設は、業者が替わっても、様式と単価表は法人で同じものを使う。
3か月の進め方そのものは変えません。離れた施設があるときに変えるのは、数え方の確かめ方、業者の候補の広げ方、試す順番、記録の届け方の4つです。
離れた施設があるときの、3か月の進め方の変え方| 段階 | ふだんの進め方 | 離れた施設があるとき |
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| 1か月目:数える | 本部が配った表に、施設が書き出す | 最初の10件だけ本部と一緒に書き、分け方のずれを先に直す |
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| 2か月目:単価を比べる | 候補の業者に、全施設に来られるかを聞く | その地域の業者にも、同じ依頼文と単価表の様式を送る |
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| 3か月目:試す | 本部に近い施設で1か月使う | 近い施設の結果を見てから、離れた施設は地元の業者で同じ形を試す |
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| 急ぎの修理 | 近くの業者に残してよいと決める | 同じ。離れた施設ほど、近くの頼み先の連絡先を確かめておく |
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| 記録 | 共通の業者が、法人の様式で報告を出す | 地元の業者の報告も、施設が法人の様式に写して本部に送る |
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県をまたぐときは、給水や排水の工事に要る指定が、水道事業者や市町村ごとに違うことも確かめます。地域の業者を選ぶときは、施設のある地域の指定を持っているかを聞きます。
急ぎの修理だけは、どの施設でも近くの頼み先を1つ持っておきます。共通の業者が車で1時間かかる施設で、夜中に水があふれたら待ってはいられません。急ぎは近くの業者、待てる修理は共通の業者、と分けるのがふつうです。
エリアごとにまとめる意味と、法人が得るもの・現場が失うものはエリアでまとめると、法人は全体が見え、現場は近さを手放しますにまとめています。近くの業者を、着くまでの時間で探す考え方は近くの業者は、市区町村の名前より着くまでの時間で選びますにあります。
現場の不満は、理由を聞いて残すものを決めます
修繕業者の統一は、本部から見ると手間と費用の話です。けれども施設から見ると、慣れた頼み方を替える話です。不満が出るのは当たり前と考え、出てきた不満を、残すものを決める材料に使います。
現場から出やすい不満と、向き合い方| 不満の中身 | 背景にあること | 向き合い方 |
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| いつもの業者のほうが早く来る | 近くの業者に、急ぎの修理を頼んでいる | 急ぎの修理は、近くの業者に残してよいと決める |
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| 建物の癖を知っている業者を替えたくない | 建てたときの工務店が、図面にない配管の位置などを知っている | その業者に、記録の引き継ぎと、年に数回の相談の枠を残す |
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| 頼み方が面倒になった | 電話1本で済んでいた頼み方が、様式を書く形に変わった | 様式の欄を減らし、写真と場所だけでも送れる形にする |
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| 施設で決められることがなくなった | 施設長が自分で頼める範囲が見えない | 施設長が自分で頼んでよい金額と場面を、書面で決める |
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| 統一してから、かえって待つようになった | 共通の業者の手が、ほかの施設でふさがっている | 待った日数を数えて業者と話し、続くなら頼み先を分ける |
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不満は、施設長の会議で口頭で聞くだけでなく、試した施設の職員にも短い用紙で聞きます。何に困ったか、何日待ったかを書いてもらうと、気持ちの話と仕組みの話を分けられます。仕組みの話は直せます。気持ちの話は、統一の目的を伝え直すことで和らぐことがあります。
施設長が自分で頼んでよい範囲は、はっきり決めておきます。たとえば、急ぎの修理で一定の金額までは施設長の判断で近くの業者に頼み、あとで本部に記録を送る、という形です。範囲がはっきりしているほど、施設長は統一に協力しやすくなります。
今の業者に替えることを伝えるときは、早めに、直接、理由と時期を伝えます。急ぎの修理だけは引き続き頼みたい場合も、そのまま伝えます。関係を保ちながら断る伝え方は断り方で、次に頼める関係が残るかが決まりますにまとめています。
3か月目:1つの施設で試して、数字で比べます
3か月目は、決めた頼み先を、1つの施設で1か月使ってみます。いきなり全施設で始めると、うまくいかないときに、どこで止まっているのかが分かりにくくなります。1つの施設なら、本部の担当者も様子を見に行けます。
図5 4つとも、1か月目に数えた表の、同じ施設・同じ分野の数字と比べる。
試す施設は、修理の件数が中くらいで、施設長が統一に前向きな施設を選びます。件数が少なすぎると比べる材料が足りず、多すぎると1か月で手が回りません。本部から通える距離にあると、立ち会いや聞き取りもしやすくなります。
- 比べる相手を決める1か月目に数えた表から、その施設の同じ分野の、前の年の数字を出しておきます。
- 1か月使う統一する分野の修理を、決めた頼み先と単価表で頼みます。
- 数字を並べる日数・費用・電話やメールの数・不満の件数を、前の年と並べます。
- 広げるかを決める施設長の会議で数字を示し、広げる順番と時期を決めます。
数字がよくならなかったときは、すぐに統一をやめず、どこで止まったかを見ます。業者が遅いのか、施設の中で話が止まっているのかで、直すところが違います。施設の中の報告の窓口まで整える進め方は修繕の窓口は、外と中の両方を一本にして効果が出ますにまとめています。
モデルケース:6施設の社会福祉法人が、水まわりと建具から統一した
モデルケース:6施設(定員の合計約330名)を運営する社会福祉法人
水まわりと建具の頼み先が、11社から3社になった
変わったこと(結果)
3か月で、水まわりと建具・内装の小修理の頼み先を、施設ごとにばらばらだった11社から3社にそろえました。法人共通の2社と、離れた1施設の地元の1社です。試した特養では、水まわりの小修理が頼んでから直るまでの日数が、平均6日ほどから2日ほどに縮みました。本部は、全施設の修理の件数と費用を、毎月1枚の表で見られるようになりました。
背景と、困っていたこと
この法人は、同じ県の中に特養2つ、老健1つ、グループホーム2つ、デイサービス1つを運営しています。グループホームの1つだけが、本部から車で1時間半ほど離れた町にあります。修理は施設ごとに、建てたときの工務店や近所の設備会社に頼んでいました。同じ水栓の交換でも、施設によって費用が倍ほど違っていました。本部の担当者は統一したいと考えながら、施設長たちの反発を心配して、何年も手をつけられずにいました。
決めたこと
本部は1か月目に、会計の帳簿から1年分の修理を書き出しました。6施設で約380件あり、そのうち4割ほどが水まわりと建具・内装でした。2か月目は、この2つの分野だけを選び、3社ずつに同じ依頼文で単価を聞きました。老健は急ぎの修理を近所の設備会社に頼み、30分ほどで来てもらえていました。そこで、急ぎの修理は施設長の判断で近くの業者に頼んでよいと決めました。離れたグループホームは地元の業者を残し、法人の単価表で頼むことにしました。決め手は、分野を2つに絞り、急ぎを残すと決めたことで、施設長たちが話に乗れたことでした。
進めてみて分かったこと
いちばん効いたのは、業者を替えたことより、依頼の様式をそろえたことでした。写真と場所が最初からそろうので、業者が部品を持って来て、1回で直せることが増えました。残りの分野は、半年ごとに1つずつ広げています。