最初の3分で、決めること
エレベーターが止まったと聞いたら、最初の3分で確かめるのは一つです。かごの中に人が閉じ込められていないか。介護施設では、車椅子の方や、職員と一緒に移動していた方が中にいることがあります。閉じ込めがあるかないかで、することがまったく変わります。
- 閉じ込めがないかを確かめる止まった階の乗り場から、かごの中に呼びかけます。返事がなくても、中に人がいる可能性を考えて、保守会社に確かめます。
- 閉じ込めなら保守会社につなぐかごの中の非常用のインターホン(非常ボタン)は、多くの場合、保守会社の監視センターにつながります。外からも、保守会社の緊急連絡先に連絡します。
- 体調が悪い方がいれば119番中の方の体調が悪い、呼びかけに答えない、といったときは、ためらわずに119番に通報します。
- 扉を無理に開けない外から扉をこじ開けたり、職員が機械室に入ったりしません。かごが動いて大けがにつながることがあります。
- 使用を止める表示をする各階の乗り場に「使用中止」の表示をし、階段への誘導と、2階以上の生活の段取りに移ります。
図1 エレベーターが止まったときの最初の分かれ道。閉じ込めの確認がいちばん先です。
閉じ込められた方には、外から落ち着いて声をかけ続けます。「保守会社に連絡しました。もうすぐ助けが来ます」と、状況を伝えるだけでも、中の方の不安は小さくなります。車椅子の方なら、ブレーキをかけてもらい、立ち上がらないようにお願いします。声をかける職員は、なるべく同じ人にします。
閉じ込めのときの、連絡と対応
閉じ込めの連絡先は、エレベーターの保守会社です。保守会社の連絡先は、かごの中の掲示、乗り場の掲示、機械室の扉などに書かれています。連絡のときは、施設名と所在地、止まった号機、何階付近で止まったか、中に何人いるか、中の方の体調を伝えます。
閉じ込めのときに伝えること| 項目 | 伝える中身 |
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| 施設名と所在地 | 保守会社が場所を確かめるため |
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| 号機 | 複数のエレベーターがあるときは、どれが止まったか |
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| 止まった位置 | 何階と何階の間か、扉は開いているか |
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| 中の人数と様子 | 入居者か職員か、車椅子か、体調はどうか |
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| 施設でしたこと | 119番に通報したか、声をかけ続けているか |
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保守会社の多くは、遠隔で監視をしていて、閉じ込めの通報があると、技術者を向かわせます。到着までの時間は、地域や時間帯で変わります。中の方の体調が悪いとき、暑さや寒さで危ないとき、長くかかりそうなときは、119番に通報します。救助のあとは、看護職員が体調を確かめ、記録を残します。
図2 エレベーターの閉じ込めのときの流れ。扉を外から無理に開けません。
地震や停電で止まったとき
地震のときは、多くのエレベーターが揺れを感じて最寄りの階に止まり、扉を開ける仕組み(地震時管制運転)を備えています。停電のときも、停電時に最寄りの階まで動いて扉を開ける装置を備えたものがあります。ただし、古いエレベーターには付いていないことがあり、建てた時期によって違います。
地震や停電で止まったあとは、保守会社の点検が終わるまで、使わないでください。揺れでロープや機器がずれていると、動かしたときに事故につながることがあります。大きな地震のあとは、地域のエレベーターが一斉に止まり、保守会社の点検が回ってくるまでに時間がかかることがあります。その間の移動の段取りを、業務継続計画(BCP)に書いておきます。
地震のあとに使えなくなったときは、階段の安全も確かめます。揺れで物が落ちていないか、照明はついているかを見て、入居者の方が階段を使う場面では、必ず職員が付き添います。
図3 地震や停電で止まったときと、故障で止まったときの違い。
止まった原因で、復旧までの日数が変わる
エレベーターが直るまでの日数は、止まった原因と、部品があるかどうかで大きく変わります。扉のセンサーの汚れや調整で済むなら、その日のうちに動くこともあります。制御の基板やモーターの部品の交換が要るときは、取り寄せに日数がかかることがあります。製造が終わって時間がたった機種は、部品が手に入りにくくなります。
止まった原因と、復旧までの目安| 原因の例 | 復旧までの目安 | 気をつけること |
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| 扉のセンサーの汚れ・調整 | その日のうちのことが多い | 扉の溝にごみがたまっていないか |
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| 部品の交換(在庫あり) | 数日 | 交換の内容を記録に残す |
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| 部品の取り寄せ | 1〜数週間のことがある | 止まっている間の生活の段取りを組む |
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| 地震のあとの点検待ち | 地域の状況で変わる | 業務継続計画に段取りを書いておく |
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日数は目安です。機種、部品の在庫、保守会社の体制で変わります。
復旧の見込みは、保守会社の技術者が原因を調べてから分かります。調べの結果を聞くときは、原因、交換する部品、部品が届く日、作業にかかる時間、費用が契約に含まれるかを、まとめて確かめます。見込みが分かれば、2階以上の生活の段取りを何日分組めばよいかが決まります。
止まる原因として多いのが、扉の溝にたまったごみや、扉への車椅子やストレッチャーの接触です。介護施設のエレベーターは、扉の開け閉めの回数が多く、扉まわりが傷みやすい使い方をしています。毎日の清掃のときに、扉の溝のごみを取るだけでも、止まる回数を減らせます。扉に物が当たったときは、その日のうちに記録しておきます。
2階以上の生活を、どう回すか
エレベーターが止まると、2階以上で暮らす方の生活が大きく変わります。食事、入浴、受診、避難の4つについて、止まった日のうちに段取りを決めます。復旧の見込みが数日以上なら、なおさらです。
図4 エレベーターが止まっている間の、2階以上の生活の回し方。
2階以上の生活の段取り| 場面 | 段取り | 気をつけること |
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| 食事 | 厨房から階段で運ぶ、階上の食堂や居室で配膳する | 温かいものは保温の容器で運ぶ。運ぶ職員の負担に気をつける |
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| 入浴 | 浴室が1階にあるなら、清拭に替える | 理由と方法を記録に残す |
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| 受診・外出 | 往診に切り替える、受診の日程を調整する | 急な受診は、救急隊に階段で運んでもらうこともある |
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| 避難 | 階段での避難の方法と、避難具(担架など)を確かめる | 止まっている間は、夜間の人数も見直す |
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食事を階段で運ぶときは、配膳の担当を決め、一度に運ぶ量を減らして、往復の回数で調整します。汁物はふたのできる容器に移すと、こぼれにくくなります。給食の委託先にも、エレベーターが止まっていることを伝え、配膳の時間を少し早めてもらうなどの調整をします。
職員が入居者の方を抱えて階段を上り下りするのは、入居者と職員の両方にとって危険です。急いで下の階に移す必要があるときは、担架や避難用の器具を使い、複数の職員で行います。止まっている期間が長くなりそうなら、1階の空いている部屋に一時的に移ってもらうことも検討します。
修理の連絡と、保守契約の種類
閉じ込めがないときも、連絡先は保守会社です。止まった号機、止まった時刻、どの階にいるか、エラーの表示、止まる前の様子(異音、揺れ、扉の動き)を伝えます。乗り場やかごの中の表示を写真に撮っておくと、説明が短く済みます。
エレベーターの保守契約の主な種類| 種類 | 中身 | 気をつけること |
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| フルメンテナンス契約 | 点検と、部品の交換や修理の多くを含む | 月々の費用は高めだが、修理の費用が読みやすい |
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| POG契約 | 点検と、消耗品(油や小さな部品)の交換を含む | 大きな部品の交換や修理は別の費用になる |
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契約の名前と中身は、保守会社によって違います。契約書で、どこまでが含まれるかを確かめてください。
保守会社の連絡先や契約の中身は、担当の職員が代わると分からなくなりがちです。号機ごとに、保守会社の名前、緊急の連絡先、契約の種類、設置年、法定の検査の時期を1枚にまとめ、事務所と夜勤の場所に置いておくと、止まったときにすぐに動けます。
どちらの契約かで、修理のときの費用の負担が変わります。修理の見積が出たら、契約に含まれる内容かを確かめてから決めます。メーカー系の保守会社と、独立系の保守会社があり、部品の手配の早さや費用が違います。
法定の検査と、更新の時期
エレベーターは、建築基準法で、定期の検査と報告が義務になっています。多くの地域で、年に1回、資格を持つ人による検査を受け、結果を特定行政庁に報告します。保守会社の点検とは別のもので、受け忘れると指導の対象になります。くわしくは12条点検は4つに分かれ、防火設備の検査は別に受けますにまとめています。
エレベーターの更新は、使った年数、部品の保有期間、止まる回数で考えます。更新の工事は、数週間エレベーターが使えなくなることがあり、その間の生活の段取りが大きな課題になります。大規模修繕や、1階に移れる部屋がとれる時期に合わせて計画すると、入居者の方への影響を小さくできます(設備の年数は、3種類を並べてから更新の時期を決めます、居ながら工事の工程表は、工事と暮らしの予定を重ねて作ります)。
直ったあとに、確かめること
エレベーターが直ったら、保守会社の技術者と一緒に、動きを確かめてから使い始めます。止まった原因と、交換した部品、同じことが起きたときの連絡先を、記録に残しておきます。
直ったあとに確かめること
- 各階で正しく止まり、床とかごの段差がないか
- 扉がなめらかに開け閉めし、車椅子が通るときに挟まれないか
- かごの中の非常用のインターホンがつながるか
- 止まった原因、交換した部品、修理の費用と、契約に含まれるか
- 使用中止の表示を外し、職員と入居者に伝えたか
止まった回数と原因を記録しておくと、更新の時期を考えるときの材料になります。同じ原因で何度も止まるときは、部品の傷みが進んでいるサインです。保守会社の点検の報告書と一緒に保管してください。
施設長・法人・ご家族への伝え方
エレベーターが止まると、入居者の方の生活の多くに影響が出ます。施設長と法人には、事実、したこと、見込み、決めてほしいことの4つに分けて報告します。閉じ込めがあった場合は、救助までの時間と、中にいた方の体調も伝えます。
報告に入れること| 項目 | 書くこと |
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| 事実 | いつ、どの号機が、何階付近で止まったか。閉じ込めの有無 |
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| したこと | 保守会社や119番への連絡、2階以上の生活の段取り |
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| 見込み | 保守会社の調べと、復旧までの日数の見込み |
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| 決めてほしいこと | 修理の費用が契約の外になる場合の決裁、更新の検討 |
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ご家族には、面会の予定がある方を中心に、エレベーターが止まっていること、階上の生活をどう回しているか、復旧の見込みを伝えます。閉じ込めにあった方のご家族には、救助の経過と体調を、看護職員から個別に伝えます。
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モデルケース:エレベーターが2日止まった施設
モデルケース:3階建て・定員60名の介護付有料老人ホーム(エレベーター1基)
部品の取り寄せで、2日間エレベーターが止まった
変わったこと(結果)
朝の配膳の時間に、エレベーターが1階で止まりました。閉じ込めはありませんでした。保守会社の調べで、扉の制御の部品の交換が要り、取り寄せに2日かかると分かりました。施設は、2階と3階の食事を階上の食堂で配膳し、入浴を清拭に替え、受診の予定を1件ずらしました。2日後に部品が交換され、通常の生活に戻りました。
背景と、困っていたこと
エレベーターは1基だけで、止まったときの段取りは決めていませんでした。最初の半日は、誰が何を運ぶのかで混乱し、朝食の配膳が1時間遅れました。職員が階段で食事を運ぶ負担も大きくなりました。
その後に決めたこと
施設は、エレベーターが止まったときの段取り(配膳、入浴、受診、避難)を1枚にまとめ、各階に置きました。あわせて、保守の契約の内容を見直し、扉まわりの点検を増やしました。