最初に、地域の断水か施設の故障かを見分ける
水が出ないとき、最初に見分けるのは、地域の断水なのか、施設の給水設備の故障なのかです。地域の断水なら、水道局が復旧させるのを待ちながら、水を確保します。施設の故障なら、設備業者に直してもらう必要があります。見分け方は難しくありません。
- 範囲を確かめる施設の中のすべての蛇口で水が出ないのか、一部の階だけか、一部の場所だけかを確かめます。上の階だけ出ないときは、ポンプの故障や水圧の不足が考えられます。
- 地域の断水かを確かめる近所の建物や、近くの施設に聞くか、水道局のホームページや防災の情報で、断水や工事の情報が出ていないかを確かめます。
- 給水設備の表示を見る給水ポンプの制御盤に警報のランプや表示が出ていないか、受水槽の水位計の表示を見ます。停電していないかも確かめます。
- 水を確保する受水槽のある施設は、非常用の給水栓から水を取り出せることがあります。備蓄の水と合わせて、使い道ごとに割り振ります。
- 連絡するポンプの故障なら、保守の契約先か設備業者に。地域の断水なら、水道局の情報で復旧の見込みを確かめます。
図1 水が出ないときに、地域の断水か施設の故障かを見分ける考え方。
水道局は、水道管の工事で断水するときは、前もって知らせを出します。施設に届く知らせや、建物の掲示板、自治体の広報を見落としていないかも確かめてください。予定された断水なら、前日までに水をためておく、入浴の予定を組み替える、といった準備ができます。突然の断水は、地域の水道管の破損や、施設の設備の故障によることが多く、復旧の見込みは状況で変わります。
地域の断水でも、施設の故障でも、最初の30分にすることは同じです。入居者の方への影響が大きいところ、つまり飲む水、服薬の水、排泄の介助に使う水から先に確保します。そのうえで、原因と復旧の見込みを確かめていきます。
給水の方式で、初動が変わる
建物への水の届け方には、いくつかの方式があります。自分の施設がどの方式かで、止まったときに使える水と、連絡先が変わります。方式は、竣工図や設備の図面、受水槽やポンプがあるかどうかで分かります。
給水の方式と、止まったときの違い| 方式 | しくみ | 止まったときの特徴 |
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| 直結直圧方式 | 水道管の圧力だけで各階に届ける | 地域の断水のときは、施設の中に水が残らない |
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| 直結増圧方式 | 水道管に増圧ポンプをつないで上の階まで届ける | ポンプが止まると上の階から水が出にくくなる |
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| 受水槽方式 | いったん受水槽にためてから、ポンプで各階に送る | 断水しても受水槽に残った水を使えることがある |
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| 高置水槽方式 | 受水槽から屋上の水槽に上げ、重力で各階に届ける | 屋上の水槽に残った水がしばらく出ることがある |
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施設によっては、方式を組み合わせていることがあります。分からないときは、設備の保守の契約先に確かめてください。
図2 建物への水の届け方の4つの方式。
方式を調べるには、建物の地下や1階、屋上に受水槽や高置水槽があるか、ポンプの機械室があるかを見ます。受水槽もポンプもなければ、直結直圧方式の可能性が高く、水道のメーターの近くに増圧ポンプがあれば直結増圧方式です。分かったことは、施設の図面と一緒に保管し、夜勤の職員も見られる場所に置きます。
受水槽のある施設は、地域が断水しても、受水槽にたまっている分の水を使える可能性があります。一方で、ポンプが止まると、受水槽に水があっても各階には届きません。停電でポンプが止まったときも同じです。
受水槽の非常用給水栓から、水を取り出す
受水槽には、非常のときに、たまっている水を直接取り出せる給水栓(蛇口)が付いていることがあります。ポンプが止まっていても、ここから水をくめば、飲む水や調理の水に使えます。災害のときにも頼りになる設備ですが、場所や使い方を職員が知らないことがよくあります。
図3 受水槽の非常用給水栓から水を取り出す手順の例。
受水槽の水は、水道水と同じように衛生の管理がされているものです。有効容量の合計が10立方メートルを超える受水槽は、水道法の簡易専用水道として、1年以内ごとの清掃と検査が義務になっています。日ごろ清掃と検査をしていれば、非常のときも安心して使えます。くわしくは受水槽は有効容量10㎥を超えると、清掃と検査が1年以内ごとの義務ですにまとめています。
受水槽にどれくらいの水が残っているかは、水位計や点検口から確かめます。受水槽の容量が分かれば、何人の何日分の水になるかの見当がつきます。たとえば容量10立方メートルの受水槽に半分残っていれば、5,000リットルです。ただし、すべてを飲む水に使えるわけではなく、くみ出せる量にも限りがあります。
給水栓に鍵がかかっていたり、受水槽の置き場所に入るのに鍵が要ったりすることもあります。鍵の場所と、給水栓の使い方を、平時に職員と一緒に確かめておいてください。ポリタンクや清潔な容器も、受水槽の近くに置いておくと、すぐに使えます。
使い道ごとに、水を割り振る
限られた水を、すべての使い道に同じように使うことはできません。入居者の方の命と健康に直接関わるものから順に割り振ります。飲料水の備蓄の目安は、1人1日3リットルとされています。介護施設では、これに加えて、服薬、調理、排泄の介助、清拭に水が要ります。
水の使い道と、優先する順番| 順番 | 使い道 | 工夫 |
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| 1 | 飲む水・服薬の水 | ペットボトルの備蓄を先に使う |
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| 2 | 調理の水 | 使い捨ての食器、洗い物の少ない献立 |
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| 3 | 排泄の介助・手指の衛生 | おしりふき、手指の消毒を増やす |
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| 4 | トイレを流す水 | 簡易トイレや凝固剤、汲み置きの水で流す |
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| 5 | 清拭・入浴 | 入浴は止め、清拭を最小限の水で |
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図4 限られた水を割り振る順番。命と健康に直接関わるものから先にします。
断水が長引きそうなときは、水を外から運ぶ手段も考えます。地域の断水なら、自治体が給水所を設けたり、給水車を出したりします。介護施設や病院は、給水の優先について自治体に相談できることがあります。施設の故障で長引くときは、ペットボトルの水の配達や、給水の業者の手配を検討します。
トイレは、水を流せないと衛生の問題がすぐに出ます。簡易トイレや凝固剤を備えておくと、水を使わずに済みます。汲み置きの水で流すときは、排水管が詰まらないよう、トイレットペーパーを流さず別に捨てるなどの工夫をします。入浴は止め、清拭も、お湯を沸かして最小限の水で行います。止めた理由と方法は、記録に残してください。
どこに連絡するか。伝えること
施設の給水設備の故障なら、連絡先は、給水ポンプの保守の契約先か、設備業者です。水道の工事は、水道局の指定を受けた工事店(指定給水装置工事事業者)に頼みます。地域の断水なら、水道局のホームページや防災の情報で、復旧の見込みと、給水所の場所を確かめます。
連絡先と、伝えること| 状況 | 連絡先 | 伝えること |
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| ポンプが止まった・警報が出た | ポンプの保守の契約先、設備業者 | 制御盤の表示、受水槽の水位、止まった時刻 |
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| 水道管から漏れている | 水道局の指定工事店、設備業者 | 漏れている場所、止水したか |
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| 地域の断水 | 水道局(情報の確認) | 施設の種類と入居者の人数(給水の優先を相談する場合) |
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| 停電で止まった | 電力会社の情報、電気の保安の担当者 | 停電の範囲、非常用電源の有無 |
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多くの給水ポンプの設備は、2台のポンプを交互に動かす作りになっていて、1台が止まってももう1台で水を送り続けられることがあります。警報が出ても水が出ているときは、1台で動いている状態かもしれません。そのままにせず、保守の契約先に早めに知らせて、2台目が止まる前に直してもらいます。
伝えるときは、施設名と所在地、給水の方式、水が出ない範囲、制御盤の表示(ランプの色、表示の文字)、受水槽の水位、止まった時刻、施設でしたことを、メモにして読み上げると、一度で伝わります。同じ内容を写真と一緒にLINEで窓口に送っていただければ、並行して業者の手配を進めます。
業者が来るまでの間に、職員が制御盤を開けたり、ポンプの配線に触れたりするのはやめてください。電気の作業には資格が要ります。施設でしてよいのは、表示を記録すること、水を確保すること、止水が要るときに元栓を閉めることです。
水が戻ったあとに、確かめること
断水が終わり、水が戻ったあとも、すぐにいつもどおりに使う前に確かめることがあります。地域の断水のあとは、水道管の中の空気や、管の内側のさびが一緒に流れてきて、水が白く濁ったり、赤く濁ったりすることがあります。
水が戻ったあとに確かめること
- 蛇口からしばらく水を流し、濁りやにおいがないかを確かめる
- 飲む水や調理に使う前に、透明なコップで色を見る
- 給湯器や特殊浴槽は、濁りが消えてから使う(機器の中に砂やさびが入るのを防ぐ)
- 受水槽の水位と、ポンプが2台とも動いているかを確かめる
- くみ出した水の量、止まっていた時間、したことを記録にまとめる
白い濁りは空気が混じっているためで、コップに入れてしばらく置くと下から透明になります。赤や黒の濁りがしばらく流しても消えないときは、給水管の内側のさびがはがれている可能性があります。飲む水には使わず、設備業者に相談してください。
施設の給水ポンプの故障だった場合は、業者から修理の内容と交換した部品の記録をもらい、点検の記録と一緒に保管します。同じポンプで警報がくり返し出るときは、ポンプの更新の時期が近づいているサインです。更新の時期は、使った年数、部品の保有期間、修理の回数で考えます。
施設長・法人・ご家族への伝え方
断水は、入居者の方の生活の多くに影響するため、施設長や法人への報告と、ご家族への説明が欠かせません。報告は、事実、したこと、見込み、決めてほしいことの4つに分けると、短く伝わります。
報告に入れること| 項目 | 書くこと |
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| 事実 | いつから、どの範囲で水が出ないか。地域の断水か、施設の故障か |
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| したこと | 受水槽からくんだ水の量、備蓄の水の使い方、トイレと入浴の対応 |
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| 見込み | 水道局の復旧の見込み、または業者が来る時刻と修理の見込み |
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| 決めてほしいこと | 給水の業者や給水車を手配するか、費用の上限 |
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ご家族には、面会や電話の機会に、水が止まったこと、飲む水と衛生を優先して確保していること、入浴を清拭に替えていることと、復旧の見込みを伝えます。体調に変化があった方のご家族には、看護職員から個別に連絡します。
相談・見積は無料|同じ条件で最大3社
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モデルケース:給水ポンプが止まった施設
モデルケース:4階建て・定員90名の特別養護老人ホーム(受水槽方式)
上の階だけ水が出なくなった
変わったこと(結果)
昼食の準備中に、3階と4階で水が出なくなりました。施設は30分のうちに、受水槽の非常用給水栓から水をくみ、上の階の飲む水と服薬の水を確保しました。保守の契約先が夕方に来て、ポンプの部品を交換し、夜には水が出るようになりました。入居者の方の体調に影響はありませんでした。
背景と、困っていたこと
この施設のポンプは2台が交互に動く作りで、1週間ほど前から1台の警報が出ていました。水は出ていたため、誰も気に留めていませんでした。残りの1台が止まったところで、上の階の水が止まりました。
その後に決めたこと
施設は、制御盤の警報が出たら、水が出ていても保守の契約先に連絡することを決めました。あわせて、受水槽の給水栓の場所と鍵、ポリタンクの置き場所を、夜勤の職員も含めて確かめました。