見つけてから、最初の10分
水漏れは、見つけた瞬間から被害が広がっていきます。床に広がった水は、床材の下にしみ込み、下の階の天井に回り、電気の配線にかかることもあります。修理の業者に電話をするのは、水を止めてからです。最初の10分で、次の5つを順に進めます。
- 水を止める漏れている器具の止水栓を閉めます。トイレや洗面台の下、給湯器のそばに、小さなハンドルやマイナスねじの止水栓があります。分からなければ、系統の元栓か、水道のメーターの横の元栓を閉めます。
- 入居者を離す濡れた床は滑りやすく、転倒につながります。入居者の方を離し、通路をふさいで、ほかの職員にも知らせます。
- 拭く前に記録する漏れている場所、濡れた範囲、濡れた家具や物を、拭く前に写真に撮ります。見つけた時刻と、止めた時刻を書き留めます。
- 階下と電気を確かめる下の階の天井や部屋に水が回っていないかを見ます。水がかかったコンセントや照明、機器には触れず、その回路のブレーカーを切ります。
- 修理を頼む症状に合わせて、水道の指定工事店か設備業者に連絡します。写真と記録を一緒に送ると、説明が短く済みます。
図1 水漏れを見つけてから最初の10分の手順。修理の依頼は5番目です。
元栓を閉めると、施設の広い範囲で水が止まります。閉める前に、ほかの階や厨房に「これから水を止めます」と一声かけてください。透析の機器や、水を使う医療の処置の途中の方がいないかも確かめます。厨房が調理の途中なら、火を止めてから水を止めてもらいます。
止水栓の場所を、知っていますか
水漏れのときにいちばん時間をとられるのが、止水栓を探すことです。止水栓には、器具ごとのもの、階や系統ごとのもの、建物全体のものがあります。小さな漏れなら器具の止水栓で止められ、ほかの場所の水を止めずに済みます。
止水栓の種類と場所| 止水栓 | よくある場所 | 閉めると止まる範囲 |
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| 器具の止水栓 | トイレのタンクの横、洗面台の下、給湯器のそば | その器具だけ |
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| 系統・階の元栓 | パイプシャフトの中、廊下の点検口の中 | その階や系統 |
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| 建物全体の元栓 | 水道のメーターの横(敷地の地面のふたの中など) | 建物全体 |
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| 受水槽の出口の弁 | 受水槽の近く、ポンプの機械室 | 受水槽から先の全体 |
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図2 止水栓は、なるべく狭い範囲のものから閉めます。
止水栓の場所は、施設の図面や、設備の保守の業者に聞けば分かります。分かったら、場所に目印のシールを貼り、閉める向きを書いておきます。夜勤の職員も含めて、年に一度は実際に場所を確かめておくと、いざというときに迷いません。マイナスねじの止水栓は、ドライバーかコインがあれば閉められます。固くて回らないときは、無理に回さず元栓を閉めます。
拭く前に、記録を残す理由
水漏れを見つけると、すぐにでも拭き取りたくなります。ただ、拭く前に写真を残しておかないと、あとで困ることがあります。保険の申請、修理の業者への説明、原因の特定、施設長や法人への報告のどれにも、濡れた範囲と、漏れていた場所の写真が要るからです。
撮っておく写真
- 漏れている場所のアップ(水が出ている所、にじんでいる所)
- 濡れた範囲が分かる引きの写真(床、壁、天井)
- 濡れた家具、寝具、機器、入居者の持ち物
- 下の階の天井や部屋のしみ
- 止水栓を閉めたあとの様子
写真は、スマートフォンで撮れば日時が残ります。濡れた物のうち、入居者の方の持ち物は、ご本人とご家族への説明のためにも、一つずつ撮っておきます。拭き取った水の量や、何時間漏れていたかの見込みも、分かる範囲で書き留めます。
原因を調べるのに、漏れた水の色やにおいも手がかりになります。きれいな水なら給水の配管、においのある水なら排水の配管、お湯なら給湯の配管、といった見当がつきます。記録の書き方は、トイレが詰まった・水が止まらない。職員でできることは、ここまでですでもくわしく説明しています。
階下と電気を、先に見る
水は、床の下や壁の中を伝って、思わぬ所に出てきます。2階で漏れた水が、1階の天井の照明から落ちてくることもあります。止水と記録が済んだら、必ず下の階を見に行ってください。下の階が居室なら、入居者の方を別の部屋に移します。
もう一つ気をつけたいのが、電気です。水がかかったコンセント、照明、分電盤、機器には、手を触れないでください。感電や漏電、火災につながることがあります。水がかかった回路は、分電盤でブレーカーを切ります。漏電のブレーカーが落ちたときは、何度も上げ直しません。受変電設備がある施設は、電気の保安の担当者にも知らせます(介護施設が停電。上げてはいけないブレーカーがあります)。
図3 水漏れのときに、電気に水がかかったかで連絡先が変わります。
下の階に水が回っていたときは、その部屋の入居者の方の持ち物や寝具、医療の機器が濡れていないかも確かめます。濡れた物は乾いた場所に移し、写真に残します。下の階の天井のしみは、時間がたってから広がることもあるため、翌日にもう一度見に行きます。
天井に水がたまってふくらんでいるときは、天井材が落ちてくることがあります。下にいる方を離し、バケツを置いて、天井には近づかないようにします。天井の照明から水が落ちているときは、その回路の電気を切ってから、照明の下を離れます。
症状ごとの、依頼先
水漏れの依頼先は、漏れている場所と、どの水かで変わります。給水の配管や水栓は、水道局の指定を受けた工事店(指定給水装置工事事業者)か設備業者、排水の詰まりやあふれは、排水の業者か設備業者、給湯器や特殊浴槽からの漏れは、その機器の保守の契約先です。天井からの漏れは、上の階の設備か、雨漏りかを見分けます。
症状ごとの依頼先| 症状 | 考えられること | 依頼先 |
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| 水栓の根元・下からのにじみ | パッキンや部品の傷み | 設備業者、水道の指定工事店 |
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| トイレのタンク・床からの漏れ | タンクの部品、便器と床の接続の傷み | 設備業者 |
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| 排水口からあふれる | 排水管の詰まり | 排水の業者、設備業者 |
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| 壁や床の中からの漏れ | 配管の穴(ピンホール)、継ぎ目の傷み | 設備業者(配管の調査) |
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| 天井からの漏れ(晴れの日) | 上の階の設備・配管 | 設備業者 |
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| 天井からの漏れ(雨の日) | 雨漏り | 防水・建物の業者(雨漏りの記事へ) |
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| 給湯器・特殊浴槽からの漏れ | 機器の内部の傷み | その機器の保守の契約先 |
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天井からの漏れは、晴れの日に漏れるか、雨の日だけ漏れるかで、原因の見当がつきます。雨の日だけなら雨漏りの可能性が高く、頼む先が変わります(雨漏りは、原因を見つけるまでが工事の半分です)。水道のトラブルを頼むときに、高額な請求を避けるための確かめ方は、水道は指定工事店、空調はフロンの登録で、頼む業者を選びますにまとめています。
図4 漏れている場所ごとの依頼先の見当。
保険で戻るもの、戻らないもの
施設が入っている火災保険に「水濡れ」の補償が付いていれば、給排水の設備の事故で漏れた水によって濡れた物の損害が、補償の対象になることがあります。ただし、一般的には、漏れた原因の設備そのもの(傷んだ配管や水栓)の修理の費用は、補償の対象になりません。また、経年の傷みによる雨漏りは、水濡れの補償の対象外とされることが多くあります。
水濡れの補償の考え方(一般的な例)| 費用 | 補償の対象になるか | 確かめること |
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| 濡れた床・壁・天井の張り替え | 対象になることが多い | 契約に水濡れの補償があるか |
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| 濡れた家具・機器 | 対象になることがある | 建物だけか、家財や設備も入っているか |
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| 漏れた配管・水栓の修理 | 対象にならないことが多い | 修繕費として施設で負担する |
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| 入居者の持ち物 | 施設の賠償責任の保険が関わることがある | 原因と責任の所在 |
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補償の範囲は、保険の契約の内容で変わります。申請の前に、保険会社か代理店に確かめてください。
保険の申請には、濡れた範囲と、原因の場所の写真、修理の見積書が要ることが一般的です。拭く前の写真を残しておく理由はここにあります。修理の業者には、保険の申請に使うことを伝え、原因の箇所の修理と、濡れた所の復旧を、見積の行を分けて書いてもらいます。
小さなにじみのうちに直すと、費用の桁が変わる
水漏れの費用は、漏れた時間と広がった範囲で大きく変わります。水栓のポタポタという漏れは、パッキンの交換なら5,000円ほどで直ることがあります。同じ漏れが床の下に回っていると、床の張り替えで45万円かかることもあります。小さなにじみのうちに直すことが、いちばん安く済む方法です。
図5 同じ水栓の漏れでも、気づく時期で費用の桁が変わる例。
水まわりの修理の費用の目安| 工事 | 費用の目安 | 工期 |
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| 水漏れ・詰まりの修理 | 1万5,000円〜8万円 | 即日〜2日 |
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建物の構造、配管の場所、地域により変わります。床や壁を開ける工事や、張り替えが要るときは、別に費用がかかります。
小さなにじみに最初に気づくのは、掃除や介助をしている職員です。「蛇口の根元が濡れている」「トイレの床がいつも湿っている」といった気づきを、営繕の担当や事務長に上げる流れをつくっておくと、大きな水漏れになる前に直せます。気づいた職員を責めない雰囲気も大切です。
直したあとの、乾燥とカビ
漏れが止まり、配管が直っても、それで終わりではありません。床材の下や壁の中、天井の裏にしみ込んだ水は、表面を拭いても残っています。そのままにすると、カビやにおい、床材の浮き、木の部分の腐れの原因になります。感染症への配慮が要る介護施設では、カビの広がりは見過ごせません。
直したあとに確かめること
- 床材の下、壁の中、天井の裏の湿り気を、業者に測ってもらう
- 換気と送風で、しばらく乾かしてから床や壁を戻す
- 数週間後に、しみ、におい、床の浮きがないかをもう一度見る
- 濡れた寝具やカーテンは、洗濯か交換をする
- 修理の内容と、原因の箇所の写真を記録に残す
床や壁の張り替えは、しっかり乾いてから行います。急いで張り替えると、中に残った湿気でカビが出て、もう一度張り替えることになります。乾くまでの日数は、濡れた範囲と季節で変わるため、業者に湿り気を測ってもらって決めます。
モデルケース:夜間に2階の居室で水漏れした施設
モデルケース:2階建て・定員40名のグループホーム(2ユニット)
トイレの給水管から漏れ、1階の天井に回った
変わったこと(結果)
夜中の2時、夜勤の職員が2階の居室のトイレの床が濡れているのに気づきました。トイレの横の止水栓を閉め、拭く前に写真を撮り、1階を見に行くと、真下の居室の天井にしみが出ていました。1階の入居者の方を共用の部屋に移し、天井の照明の回路のブレーカーを切りました。朝に設備業者が来て、給水管の継ぎ目を直しました。床と天井の張り替えは、火災保険の水濡れの補償で費用の多くがまかなえました。
背景と、困っていたこと
この施設では、半年ほど前から、そのトイレの床がときどき湿っていることに職員が気づいていました。ただ、誰に伝えればよいかが決まっておらず、掃除のたびに拭いて終わっていました。
その後に決めたこと
施設は、水まわりの小さな気づきを書き込む用紙を各ユニットに置き、週に一度、営繕の担当がまとめて確かめる形にしました。あわせて、止水栓の場所に目印を貼り、夜勤の職員と一緒に確かめました。