停電した直後に、することの順番
停電した瞬間、施設の中は暗くなり、機器が一斉に止まります。最初にするのは、ブレーカーを見に行くことではなく、入居者の安全を確かめることです。暗い中で歩いて転ぶ、医療機器が止まる、エレベーターの中に人が閉じ込められる、といったことが同時に起きているかもしれません。
- 入居者の安全を確かめる懐中電灯をつけ、歩いている方には座ってもらいます。医療機器を使っている方、エレベーターの中の方を先に確かめます。
- 停電の範囲を確かめる近所の建物や街灯も消えているか、施設全体か、一部の部屋や階だけかを確かめます。
- 分電盤を見るどのブレーカーが落ちているかを確かめます。漏電のブレーカーが落ちているときは、何度も上げ直しません。
- 止まると困る設備を確かめる医療機器、冷凍冷蔵庫、ナースコール、エレベーター、空調、給水ポンプの順に確かめます。
- 連絡する範囲に合わせて、電力会社の情報、電気の保安の担当者、電気工事の業者に連絡します。
図1 停電した直後の手順。ブレーカーを見るのは3番目です。
夜間の停電では、夜勤の職員が少ない人数で動くことになります。誰が見回りをし、誰が分電盤を見て、誰が連絡をするかを、平時に決めておくと迷いません。夜勤の職員がするのは、安全の確保、範囲の確認、記録と、保安の担当者や業者への最初の連絡までにしておき、それ以上の判断は、施設長や営繕の担当に電話で相談する形にしておきます。
非常用の照明や誘導灯は、停電すると内蔵の電池で点灯します。点灯する時間には限りがあるため、懐中電灯やランタンを各階に置いておくと、夜間の停電でも動けます。ろうそくなど火を使う明かりは、火災の危険があるため使いません。懐中電灯の置き場所は、職員全員が分かるようにしておきます。
停電は、4種類に分かれます
停電には、地域全体が止まる停電、施設全体が止まる停電、施設の中の一部の回路が止まる停電、一つの機器だけが止まる不具合の4種類があります。種類によって、原因も、連絡先も、復旧までの時間も違います。
停電の4つの種類| 種類 | 見分け方 | すること |
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| 地域の停電 | 近所の建物や街灯も消えている | 電力会社の停電情報で、範囲と復旧の見込みを確かめる |
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| 施設全体の停電 | 近所はついているのに、施設全体が消えた | 受変電設備がある施設は、電気の保安の担当者に連絡する |
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| 一部の回路の停電 | 一部の部屋や階だけが消えた。分電盤のブレーカーが落ちている | 落ちたブレーカーを確かめる。漏電のブレーカーは切り分ける |
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| 一つの機器の不具合 | その機器だけが動かない | 機器の電源プラグとスイッチ、機器の保守の契約先に連絡 |
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図2 停電の4つの種類。種類で、連絡先と復旧までの時間が変わります。
雷のときなどに、一瞬だけ電気が切れてすぐに戻る瞬時の停電もあります。照明はすぐにつきますが、パソコンや通信機器、空調や給湯器などは、止まったまま動き出さないことがあります。一瞬の停電のあとも、主な設備が動いているかを見回ってください。
地域の停電は、電力会社のホームページの停電情報で、停電している地域と、復旧の見込みを確かめられます。施設の中でできることは、復旧を待つ間の安全の確保と、止まると困る設備への手当てです。
上げてはいけないブレーカーと、漏電の切り分け
分電盤には、建物全体の電気を受ける主幹のブレーカー、漏電を感じて電気を止める漏電遮断器、部屋や回路ごとに分かれた子ブレーカーがあります。子ブレーカーが一つ落ちただけなら、使いすぎが原因のことが多く、使っている機器を減らしてから一度上げ直してみてかまいません。
気をつけたいのは、漏電遮断器が落ちたときです。漏電遮断器は、電気がどこかで漏れていることを感じて止まっています。原因を取り除かないまま上げ直すと、感電や火災、ほかの機器の故障につながることがあります。上げてもすぐに落ちるときは、それ以上は上げ直しません。
ブレーカーの種類と、落ちたときにすること| ブレーカー | 落ちる主な原因 | すること |
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| 子ブレーカー(回路ごと) | その回路での使いすぎ | 使う機器を減らしてから、一度上げ直す |
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| 漏電遮断器 | どこかでの漏電(水がかかった、配線の傷み) | 何度も上げ直さない。回路を切り分けるか、業者に連絡 |
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| 主幹ブレーカー | 施設全体での使いすぎ、大きな故障 | 使う機器を減らす。くり返すときは業者に連絡 |
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図3 漏電の回路を切り分ける一般的な手順。受変電設備がある施設は、保安の担当者の指示に従います。
漏電遮断器には、正しく働くかを確かめるテストボタンが付いています。押すと漏電遮断器が落ちれば、正しく働いています。定期の点検のときに、業者と一緒に確かめておくと安心です。テストのあとは、レバーを上げて元に戻します。
漏電の原因でいちばん多いのは、水です。雨漏りや水漏れの水がコンセントや配線にかかった、厨房や浴室の機器に水が入った、といったことがよくあります。漏電の回路が分かったら、その回路の機器のまわりに水がないかを見てください。ただし、濡れたコンセントや機器には手を触れません。
受変電設備(キュービクル)がある施設
一定の大きさ以上の施設は、電力会社から高い電圧で電気を受け、施設の中の受変電設備(キュービクル)で使える電圧に下げています。こうした施設は、自家用の電気設備として、電気主任技術者による保安の管理が法律で決められています。多くの施設は、電気保安協会や保安の会社に、この管理を委託しています。
受変電設備がある施設で、近所はついているのに施設全体が止まったときは、受変電設備の中で何かが起きている可能性があります。最初の連絡先は、電気の保安の担当者(委託している保安協会や会社)です。職員が受変電設備の扉を開けたり、中の機器に触れたりするのは、感電の危険が大きく、絶対にやめてください。
図4 施設全体が止まったときの連絡先の分け方。
受変電設備がある施設では、施設の中の電気工事の範囲もさらに限られます。職員が配線を直したり、コンセントを増やしたりすることはできません。職員がしてよいことと、資格が要る作業の線引きは、電気設備の修理を頼む先は、受電の形と作業の中身で決まりますにまとめています。
止まると困る設備から、確かめる
停電のあいだ、施設の中では多くの設備が止まります。すべてに同時に手を打つことはできないため、入居者の方の命と健康に直接関わるものから、順に確かめます。
図5 停電のときに先に確かめる設備の順番の例。
在宅酸素や吸引器など、電気で動く医療機器を使っている方がいるときは、機器の電池が何時間もつかを確かめ、看護職員と主治医に相談します。予備の電池や、手動の吸引器を備えている施設もあります。エレベーターの中に人が閉じ込められていないかも、すぐに確かめます(エレベーターが止まった。閉じ込めの連絡先と、2階以上の生活)。
冷凍冷蔵庫は、扉を開けなければ、しばらくは中の温度を保てます。停電した時刻と、復旧したときの庫内の温度を記録しておくと、食材を使えるかの判断に使えます(厨房の冷凍冷蔵庫が止まった。食材の判断は、温度の記録で決まります)。空調が止まったときの手当ては、空調が止まった。業者より先に、室温を測ってくださいにまとめています。
非常用の電源があるとき、ないとき
施設によっては、停電したときに自動で動く非常用の発電機を備えています。ただ、非常用の発電機がつながっているのは、多くの場合、非常用の照明、消防の設備、エレベーターの一部など、決められた回路だけです。施設のすべての電気をまかなえるわけではありません。
非常用の電源の種類と、使える範囲| 電源 | 使える範囲 | 気をつけること |
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| 非常用の発電機 | 非常用の照明、消防の設備など、つながっている回路 | 燃料の量で、動かせる時間が決まる |
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| 蓄電池 | つながっている回路。容量の分だけ | 容量で使える時間が決まる |
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| 持ち運べる電源 | 医療機器や通信機器など、小さな機器 | 電池の残りと、充電の方法 |
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| 太陽光(自立運転) | 晴れた日中に、決められたコンセント | 夜間は使えない。蓄電池と組み合わせる |
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自分の施設の非常用の電源が、どの回路につながっていて、何時間動くのかを、平時に確かめておいてください。業務継続計画(BCP)の自然災害編で、電気の確保として書く内容でもあります。停電への備えを手段の組み合わせで考える方法は、停電への備えは、何を何時間動かすかから決めますにまとめています。
電気が戻ったあとに、確かめること
電気が戻ったら、止まっていた設備が正しく動き出したかを確かめます。停電のあとは、自動では動き出さない機器や、設定が消えてしまう機器があります。
電気が戻ったあとに確かめること
- ナースコールが鳴るか(各居室で試す)
- 自動火災報知設備の受信機に、異常の表示が出ていないか
- エレベーターが通常の運転に戻ったか
- 空調・給湯器・給水ポンプが動き出したか
- 冷凍冷蔵庫の庫内の温度と、食材の扱い
- 時計、タイマー、パソコンやネットワーク機器の再起動
- 停電の時刻、範囲、したことを記録にまとめる
自動火災報知設備や防災の設備は、停電と復旧のときに異常の表示が出ることがあります。表示が消えないときは、消防設備の点検の業者に確かめてもらいます。漏電で止まった回路は、原因を直すまで使わずにおき、電気工事の業者か保安の担当者に見てもらってから戻します。
施設長・法人・ご家族への伝え方
停電は、入居者の方の生活と安全に広く関わるため、施設長と法人への報告が欠かせません。報告は、事実、したこと、見込み、決めてほしいことの4つに分けると、短く伝わります。
報告の例
- 事実:10時20分、浴室と脱衣所の回路で漏電遮断器が落ち、照明と換気が停止
- したこと:入浴を一時止め、回路を切り分けて、ほかの回路を戻した。入居者の体調に変化なし
- 業者:電気工事の業者に連絡し、13時に来る予定
- 見込み:換気扇の故障の可能性。交換になれば見積を取る
- 決めてほしいこと:交換になった場合の決裁
地域の停電が長引くときは、ご家族への連絡も考えます。面会の予定がある方には、停電していること、入居者の安全を確かめていること、復旧の見込みを伝えます。医療機器を使っている方のご家族には、看護職員から個別に状況を伝えます。
停電の記録は、あとで業務継続計画を見直すときの材料にもなります。何時に止まり、何が困り、何で助かったかを書き残しておくと、次の備えが具体的になります。
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モデルケース:浴室の回路だけ電気が止まった施設
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漏電遮断器が何度も落ちた
変わったこと(結果)
入浴の準備中に、浴室と脱衣所の電気が止まりました。職員は漏電遮断器を2回上げ直しましたが、すぐに落ちました。3回目は上げずに、子ブレーカーを切り分けたところ、脱衣所の換気扇と暖房の回路で落ちることが分かりました。その回路を切ったまま、ほかの回路を戻し、電気工事の業者に連絡しました。業者が来て、換気扇の内部に結露の水が入っていたことが分かり、その日のうちに交換されました。
背景と、困っていたこと
この施設では、漏電遮断器が落ちたときの手順を決めておらず、職員は「上げれば戻る」と考えていました。上げ直しをくり返すあいだ、浴室の照明も止まっていて、入浴の予定が遅れました。
その後に決めたこと
施設は、漏電遮断器は1回だけ上げてみて、すぐに落ちたら切り分けるか、業者に連絡する、という手順を分電盤の扉に貼りました。分電盤のどのブレーカーがどの部屋の回路かも、業者と一緒に書き込みました。