納期は、3つで決まる
設備を入れ替えたいとき、業者の答える「何日後に交換できます」という納期は、3つのことの組み合わせで決まっています。どれか一つでも遅れると、全体が遅れます。どこが詰まっているかが分かれば、その詰まりに合った早める手も見えてきます。
図1 交換の納期を決める3つ。どれか一つが遅れると、全体が遅れます。
3つのそれぞれで、日数が延びる理由| 決めるもの | 延びる理由 | 早める手 |
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| 機器の在庫 | 業務用の機器は在庫が少なく、取り寄せになりやすい | 同じ働きをする別の機種も候補に入れる |
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| 工事の人手と日程 | 業者の予定が詰まっている。資格を持つ人が限られる | 複数の業者に聞く。工事の時間帯の幅を広げる |
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| 施設の決裁と手続き | 稟議に日数がかかる。相見積の決まりがある | 緊急のときの決裁の決まりを使う |
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3つは順番に進めるのではなく、同時に進めるのが早めるこつです。業者が機器の在庫を調べている間に、施設は決裁の準備を始め、工事の日程の候補も押さえておきます。機器が届く日が決まった時点で、工事と決裁が整っていれば、届いたその日に交換できることもあります。
施設の側で縮められるのは、主に3つめの決裁と手続きです。業者を急かすより、施設の中の手続きを早めるほうが、納期が縮むことも少なくありません。
機器の在庫が、いちばん読みにくい
3つのうち、いちばん先を読みにくいのが機器の在庫です。業務用の給湯器や空調、特殊浴槽は、家庭用の機器のように店に並んでいるものではありません。メーカーや問屋に在庫があればすぐに届きますが、受注してから作る機種や、在庫の少ない大きな能力の機種は、届くまで数週間かかることもあります。
早めるいちばんの手は、今と同じ機種にこだわらず、同じ働きをする別の機種も候補に入れることです。同じメーカーの後継の機種、別のメーカーの同じ能力の機種、といった候補の中から、いちばん早く届くものを選びます。ただし、能力、大きさ、配管や電気のつなぎ方が合うかを、業者に確かめてもらう必要があります。
図2 交換する機器の候補の出し方。
業務用給湯器の更新の頼み先と組み方は業務用給湯器の交換は、どこまで替えるかで頼み先が決まります、業務用エアコンの更新はR22のエアコンは、冷媒に関わる故障なら更新を考えますにまとめています。急ぎの交換のときでも、今の使い方に合う能力かを、この機会に見直しておくと、次の更新まで安心して使えます。1台に頼っていた組み方を2台に分けるといった見直しも、業者と相談してください。
待つ間を、仮設の機器でつなぐ
機器が届くまでの間は、仮設の機器や代わりの方法でつなぎます。仮設の機器は、レンタルの会社や設備の業者から借りられるものがあります。交換の業者に、待つ間のつなぎ方も一緒に相談してください。借りる期間と費用も、前もって聞いておきます。
止まった設備ごとの、つなぎ方| 設備 | つなぎ方 | 気をつけること |
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| 給湯器 | 仮設の給湯器を借りる。ほかの系統の給湯を使う | 置く場所、ガスや電気、排気の取り回し |
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| 空調 | スポットクーラー、暖房器具を置く。部屋を移る | 排熱の逃がし方、電気の容量(空調が止まった。業者より先に、室温を測ってください) |
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| 特殊浴槽 | ほかの浴槽での入浴、清拭に切り替える | 入浴の予定の組み直しと記録 |
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| 厨房の機器 | 電気の調理器具、献立の組み替え | 火の扱いと換気 |
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図3 待つ間のつなぎ方を決める順番。
仮設の機器を置くときは、電気の容量に気をつけます。スポットクーラーや電気の暖房器具を何台も同じ回路につなぐと、ブレーカーが落ちることがあります。どの部屋に何台置けるかは、業者に確かめてもらいます。給湯が止まったときの回し方は、給湯器が壊れて、お湯が出ない。最初に確かめる4つのことにまとめています。
空調が全館で止まったとき
中央方式の空調で、熱源の機器が止まると、建物全体の空調が止まることがあります。夏や冬にこれが起きると、入居者の方の体に大きな負担がかかります。全館が止まったときは、部屋ごとの手当てに加えて、建物全体で考える手当てが要ります。
- 室温を測って記録するまず、居室ごとの室温を測り、記録を始めます。
- 危ない部屋から手当てする室温が高い、または低い部屋の入居者の方から、体調を確かめ、仮設の機器を置くか、部屋を移ります。
- 集まれる部屋をつくる食堂など、仮設の機器で室温を保ちやすい部屋に、入居者の方が過ごせる場所をつくります。
- 仮設の機器をまとめて手配する何台要るか、電気の容量で何台置けるかを、業者と決めて手配します。
全館の空調が止まると、仮設の機器だけでは足りないことがあります。夏は、冷たい飲み物と水分を多めに用意し、体を冷やす保冷剤や濡れたタオルを使います。冬は、重ね着や毛布、湯たんぽなどで体を温めます。入居者の方の体温と様子を、いつもより短い間隔で確かめ、具合の悪い方は看護職員や協力医療機関に相談します。
全館の空調の熱源を入れ替える工事は、大がかりになり、機器が届くまでにも工事にも日数がかかります。入れ替えと合わせて、熱源を2つに分ける、居室ごとの空調に切り替える、といった組み方の見直しも考える機会になります。
緊急のときの、決裁と契約
至急の交換で、施設の側でいちばん時間がかかりやすいのが、決裁と契約の手続きです。法人の経理の規程で、一定の金額を超える工事は相見積や入札で業者を選ぶ、と決まっていることが多くあります。ただ、多くの規程には、緊急のときの例外も書かれています。
社会福祉法人の契約については、国の通知で、緊急の必要があって競争に付すことができないときは、随意契約ができることが示されています。自分の法人の経理の規程に、緊急のときの決め方がどう書かれているかを、設備が止まる前に読んでおくと、止まったときに慌てずに済みます。
緊急のときの決裁で、先に決めておくこと| 項目 | 決めておく中身 |
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| 誰が決めるか | 施設長がその場で決められる金額、本部に上げる金額 |
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| どう選ぶか | 緊急のときは1社の見積で決めてよいか、何社に聞くか |
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| あとで何を残すか | 緊急だった理由、見積、写真、決めた経緯の記録 |
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| 報告の先 | 理事会や本部への、あとからの報告の仕方 |
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緊急だからといって、決めた経緯を残さないと、あとで説明に困ります。止まった日時、直せなかった理由、急いだ理由、見積、写真を残し、あとから理事会や本部に報告します。稟議の書き方は、修繕の稟議書は、承認者の4つの問いに答えて書きますにまとめています。
業者に、何を伝えて頼むか
至急の交換を頼むときは、業者に伝える中身をそろえておくと、機器の候補と日程の返事が早く来ます。見積の比べ方も、伝えた中身がそろっていると、業者ごとの違いが分かりやすくなります。
業者に伝えること| 項目 | 伝える中身 |
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| 今の機器 | 銘板の写真(メーカー・型番・製造年)、台数、置き場所 |
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| 止まった様子 | いつから、どんな症状か、修理できない理由 |
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| 急ぎの度合い | いつまでに替えたいか、待つ間のつなぎ方があるか |
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| 工事の条件 | 工事できる時間帯、搬入の経路、駐車場所 |
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| ほしいもの | 同じ働きの別の機種も含めた候補、それぞれの納期と金額 |
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2社以上に同じ中身を伝えて聞くと、在庫のある機種や、早く工事に入れる日程が見つかりやすくなります。緊急のときの決まりで1社に決める場合でも、もう1社に納期だけでも聞いておくと、決めた理由を説明しやすくなります。どこに頼めばよいか分からないときは、銘板の写真と症状をLINEで窓口に送っていただければ、候補の業者をそろえて手配します。
補助金を使いたいときの注意
入れ替えに補助金を使いたいと考えることもあります。けれど、多くの補助金は、交付の決定を受ける前に工事を始めると、対象になりません。至急で交換すると、補助金は使えないことが多いと考えておきます。
ただ、補助金の中には、災害で壊れた設備の復旧を対象にするものや、交付の決定の前に工事を始めることを特別に認める手続きを持つものもあります。至急で替える前に、自治体の担当の窓口に、使える制度がないかを一度だけでも聞いておくとよいでしょう。
補助金を使える見込みがあるときは、仮設の機器でつなぐ期間を長めにとって、交付の決定を待つという選び方もあります。ただ、入居者の方の生活を長く仮設の機器で支えるのは、負担が大きくなります。急ぎの度合いと、補助金で戻る金額を比べて決めます。設備が止まる前に、計画的に入れ替えると、補助金も使いやすくなります。
交換の当日に、起きること
交換の当日は、古い機器の撤去、新しい機器の搬入と設置、配管や電気のつなぎ込み、試運転の順に進みます。介護施設では、入居者の方の入浴や食事の時間と重ならないように、時間の組み方を業者と前もって決めておきます。
- 撤去古い機器を止めて外します。空調の場合は、中の冷媒を回収してから外します。
- 搬入と設置新しい機器を運び込み、据え付けます。搬入の経路を前もって確かめておきます。
- つなぎ込み配管、電気、ガスをつなぎます。ガスの機器は、ガスの事業者の手続きが要ることもあります。
- 試運転と引き渡し動きを確かめ、使い方とエラーが出たときの連絡先を、職員に伝えてもらいます。
図4 交換の当日に、施設が用意すること。
業務用の空調を撤去するときは、中の冷媒(フロン類)を、資格のある業者が回収することが法律で決まっています。回収したことを示す書類を受け取り、保管しておきます。見積に冷媒の回収の費用が入っているかも確かめてください。
モデルケース:業務用給湯器を至急で入れ替えた施設
モデルケース:定員60名の介護老人保健施設
部品がなく、業務用給湯器を至急で入れ替えた
変わったこと(結果)
業務用給湯器の1台が止まり、業者が点検すると、部品の保有期間が終わっていて修理できないと分かりました。同じ機種の後継は取り寄せで3週間かかるため、業者が同じ能力の別の機種を探し、6日後に入れ替えました。その間は、仮設の給湯器を1台借り、残りの1台と合わせて入浴を回しました。
背景と、困っていたこと
施設の経理の規程では、一定の金額を超える工事は3社の相見積が要るとされていました。事務長は、規程の中に緊急のときは施設長の判断で1社に決められる決まりがあることを、このとき初めて知りました。
その後に決めたこと
施設は、止まると困る設備ごとに、緊急のときの決裁の流れと、仮設の機器を借りられる先を1枚にまとめました。残りのもう1台の給湯器も年数が近いため、翌年度の予算で計画的に入れ替えることにしました。