まず、危ないかどうかを見る
ドアや手すりの不具合には、すぐに手を打つべきものと、ためておいて後でまとめて頼めるものがあります。最初に見るのは、入居者の方がけがをする危険があるかどうかです。
図1 ドアや手すりの不具合を、すぐに手を打つものとためるものに分ける考え方。
勢いよく閉まるドア、閉まりぎわに指を挟みそうな引き戸は、高齢の方や車椅子の方にとって大きな危険です。ぐらつく手すりは、体重をかけた瞬間に外れて、転倒やけがにつながります。居室やトイレの鍵が開かなくなると、中の方を助けられないこともあります。こうした不具合は、使用を控える表示をし、その日のうちに業者に連絡します。
危ない不具合を見つけた職員は、その場で扉や手すりに「使用中止」の表示を貼り、入居者の方が使わないよう周りの職員にも伝えます。夜間に見つけたときも、表示を貼って記録を残しておけば、朝に業者へ連絡するまでの間に事故が起きるのを防げます。
一方、引き戸が少し重い、開け閉めのときに音がする、取っ手の塗装がはげている、といった不具合は、急ぐ必要はありません。記録しておき、月に1回などまとめて頼むと、出張の費用を何度も払わずに済みます(小さな修繕は、月1回の巡回で1日7〜10件を直せます)。
6つの部品で、原因を見分ける
介護施設のドアや引き戸の不具合は、ほとんどが6つの部品のどれかで起きます。症状から部品が分かれば、頼む先と、修理で済むか交換が要るかの見当がつきます。
症状と、原因の部品| 症状 | 原因の部品 | 頼む先 |
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| 引き戸が重い・途中で引っかかる | 戸車(戸の下の車輪)、レールのごみや傷み | 建具の業者、工務店 |
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| ドアが勢いよく閉まる・閉まりきらない | ドアクローザー(ドアの上の閉まる速さを整える装置) | 建具の業者 |
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| ドアが傾く・床にこする | 丁番(ドアをつる金具)のゆるみや傷み | 建具の業者、工務店 |
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| 鍵が回らない・かからない | 錠や鍵(シリンダー) | 鍵の専門の業者 |
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| 取っ手や引手がぐらつく・外れた | 取っ手・引手の留め具 | 建具の業者、工務店 |
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| ドアと枠のすき間が合わない | 枠のゆがみ、建物の動き | 工務店 |
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図2 ドアや引き戸の不具合が起きる6つの部品。
介護施設の扉が家庭より早く傷むのは、使う回数が多いことに加えて、車椅子や歩行器、配膳車が扉や枠に当たること、入居者の方が扉に体重をかけて開け閉めすることがあるためです。扉の下の端や枠の角に傷やへこみが多いときは、当たりを和らげる保護材を付けると、傷みを遅らせられます。
部品の名前が分からなくても、症状と写真があれば、業者は見当をつけられます。写真は、ドア全体、不具合の部分の近く、ドアの上の装置や戸の下の車輪、の3枚があると十分です。動きの不具合は、短い動画もあると伝わりやすくなります。
引き戸とドアクローザー
介護施設の居室やトイレは、車椅子でも開け閉めしやすい引き戸が多く使われています。引き戸が重くなる原因でいちばん多いのは、戸の下の戸車の摩耗と、床のレールにたまったごみです。レールの溝のごみを取るだけで軽くなることもあります。戸車がすり減っているときは、交換すると元の軽さに戻ります。
ドアの上に付いているドアクローザーは、ドアがゆっくり閉まるように速さを整える装置です。傷みが進むと、ドアが勢いよく閉まったり、最後まで閉まりきらなかったりします。本体から油がにじんでいるときは、中の部品が傷んでいるサインで、調整では直らず交換が要ります。勢いよく閉まるドアは、使用を控えるか、開けたままにして業者を待ちます。
図3 引き戸と開き戸で、よくある不具合と原因。
ドアクローザーの速さは、本体の小さなねじで調整できる機種が多いものの、回しすぎると油が漏れて壊れることがあります。調整は、建具の業者に頼むのが安全です。季節で気温が変わると、閉まる速さが変わることもあります。夏と冬で速さが気になるときは、点検のときに一緒に見てもらいます。
引き戸は、戸を開けたときに戸が収まる側(戸袋)と、閉まりぎわに、指を挟む事故が起きやすい形です。閉まる手前でゆっくりになる装置(ソフトクローズ)を付けると、指はさみや、勢いよく閉まる音を減らせます。交換のときに相談してみてください。
鍵が回らない、開かないとき
鍵が回らない、差し込みにくい、かかったまま開かない、といった不具合は、鍵の専門の業者に頼みます。無理に回すと、鍵が折れて鍵穴の中に残り、修理に手間と費用がかかります。鍵穴に油を差すと、ほこりが固まってかえって悪くなることがあるため、職員は油を差さないでください。
居室やトイレの鍵は、中にいる方に何かあったとき、外から開けられることが大切です。多くの居室やトイレの錠には、外から硬貨や専用の道具で開けられる非常解錠の仕組みが付いています。どの扉をどう開けるかを職員で確かめ、道具を決まった場所に置いておきます。鍵が開かず、中の方の様子が分からないときは、ためらわずに業者や119番に連絡します。
鍵の不具合で、気をつけること| 症状 | すること | しないこと |
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| 回りにくい・差し込みにくい | 鍵の業者に連絡する | 油を差す、力を入れて回す |
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| 鍵が折れた | 折れた部分を残したまま業者に連絡 | 中の部分を自分で取り出そうとする |
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| 中から開かない | 非常解錠の仕組みで外から開ける | 扉を壊して開ける前に、非常解錠を試す |
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| 鍵をなくした | 鍵の交換を検討する | そのまま使い続ける(防犯) |
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手すりのぐらつきは、下地で決まる
手すりがぐらつくとき、原因は大きく2つです。手すりを留めているねじがゆるんでいるか、ねじが効く下地(壁の中の木や金属の部材)に留まっていないかです。ねじのゆるみなら、締め直すと直ることもあります。下地のない場所に留めてあったり、ねじが下地から抜けて穴が広がったりしているときは、締め直しても効きません。
- すぐに使用中止の表示をするぐらつく手すりには、すぐに「使用中止」の表示をし、近くの入居者の方と職員に伝えます。
- ぐらつき方を確かめるどの留め具の部分がぐらつくか、ねじがゆるんでいるか、壁から抜けかけているかを見ます。
- 業者に下地を確かめてもらう壁の中の下地に留まっているかを、建具の業者や工務店に確かめてもらいます。
- 直したら、体重をかけて確かめる直したあと、職員が実際に体重をかけて、ぐらつきがないことを確かめてから使用を再開します。
手すりの高さは、一般に床から75〜85センチほどに付けることが多いものの、使う方の体の状態で合う高さは変わります。直すついでに、高さが入居者の方に合っているか、端が服の袖に引っかからない形になっているかも、業者と一緒に確かめておくと安心です。
手すりは、入居者の方が体を支えるために使うものです。ぐらつく手すりを「少しなら大丈夫」と使い続けることは、転倒の大きな原因になります。職員がねじを締め直すときも、締めてもすぐにゆるむ、ねじが空回りする、といったときは、それ以上は手を加えず、業者に頼んでください。
図4 手すりがぐらつくときの手順。
防火戸は、勝手に止めない
廊下や階段の途中にある重い扉の中には、火災のときに煙や炎を止める防火戸があります。ふだんは開いていて、火災報知器と連動して自動で閉まるものや、いつも閉めておくものがあります。防火戸は、建物の定期の検査(防火設備の検査)の対象です。
防火戸のうち、ふだんは開いていて火災のときに閉まるものは、扉の近くの壁や天井に、煙を感じる装置や、扉を開けたまま留めておく装置が付いています。この装置のまわりに物を置くと、火災のときに扉が閉まりきらないことがあります。扉が閉まる範囲の床にも、物を置かないようにします。
重くて開け閉めが大変だからと、くさびや物を挟んで開けたままにしたり、閉まる装置を外したりすると、火災のときに閉まらず、煙が広がります。防火戸の不具合は、ふつうの扉と同じ業者ではなく、防火設備の検査や修理をしている業者に頼みます。どの扉が防火戸かは、扉の表示や、防火設備の検査の報告書で確かめられます(12条点検は4つに分かれ、防火設備の検査は別に受けます)。
どこに頼むか。費用の目安
ドアや引き戸、手すりの修理は、建具の業者、工務店、内装の業者が引き受けます。鍵は鍵の専門の業者、自動ドアは自動ドアの保守会社、防火戸は防火設備の業者と、部品によって頼む先が変わります。何か所も不具合があるときは、まとめて見てもらえる業者に頼むと、出張の費用が一度で済みます。
建具と手すりの修理の頼み先| 不具合 | 頼む先 |
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| 引き戸・開き戸・丁番・取っ手 | 建具の業者、工務店、内装の業者 |
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| ドアクローザー | 建具の業者 |
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| 錠・鍵 | 鍵の専門の業者 |
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| 手すり | 建具の業者、工務店、福祉の住環境に詳しい業者 |
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| 自動ドア | 自動ドアの保守会社(自動ドアが開かない・閉まらない。職員が確かめる順番があります) |
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| 防火戸 | 防火設備の検査・修理の業者 |
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建具の調整や小さな部品の交換は、5,000円から3万円ほどで済むことが多くあります。ドアクローザーや錠の交換、手すりの付け直しは、部品と下地の状態で金額が変わります。扉そのものや枠の交換になると、金額も日数も大きくなります。正確な金額は、現地を確かめたうえでの見積で確かめてください。
相談した施設の話:いつもの業者が忙しいときに
東京都内・介護施設/施設管理・営繕担当 相談した内容:居室のドアの修繕
いつもの業者さんが忙しいときも、居室のドアの修繕を相談できた
変わったこと
この営繕担当の方のお話で変わったのは、頼み先の選択肢です。いつもの業者さんが忙しくてすぐには来られないときも、居室のドアの修繕を窓口に相談できました。
背景と、迷ったこと
居室のドアは、入居者の方の暮らしに直接かかわるため、長く不具合を残しておけません。一方で、小さな修繕は、いつもの業者さんの予定が詰まっていると後回しになりがちです。こうしたサービスを使うのは初めてで、最初は正直どうかと迷ったといいます。
相談してみて
決め手になったのは、伝えることの少なさでした。修繕したい場所と状況を伝えるだけで相談でき、思っていたより簡単だったと振り返っています。
こういうサービスは初めてだったので正直どうかなと思っていたのですが、修繕したい場所と状況を伝えるだけで相談できたので、思っていたより簡単でした。
ご利用者の声 東京都内・介護施設/施設管理・営繕担当