止まったと分かった、最初の1時間
厨房の冷凍冷蔵庫が止まっていることに気づくのは、多くの場合、朝の仕込みの時間です。最初の1時間にすることは、修理の電話より先に、食材を守ることと、記録を残すことです。扉を開けるたびに、庫内の冷気は逃げていきます。
- 扉を開けない中の食材を確かめたくなりますが、扉の開け閉めは最小限にします。冷凍庫は、扉を閉めておけばしばらくは温度が保たれます。
- 温度と時刻を記録する庫内の温度計や表示の温度と、止まったと分かった時刻を書き留めます。前回の温度の記録がいつだったかも確かめます。
- 電源とブレーカーを見る電源プラグが抜けていないか、専用のブレーカーが落ちていないか、ほかの厨房の機器も止まっていないかを見ます。
- 持ち主と契約を確かめるその機器が施設の物か、給食の委託先の物かを確かめます。頼む先と費用の負担がここで決まります。
- 食材の判断と連絡栄養士や委託先と、食材を使えるかを決めます。そのうえで、持ち主の頼み先に修理を連絡します。
図1 厨房の冷凍冷蔵庫が止まったときの最初の1時間の手順。
冷凍庫だけが止まり、冷蔵庫が動いているときは、冷凍の食材のうち早く使うものを冷蔵庫に移すかを相談します。保冷剤やクーラーボックスがあれば、一時的にしのげることもあります。移すときは、移した食材と時刻を記録し、調理員と栄養士が同じ情報を見られるようにしておきます。
ブレーカーが落ちていたら、一度だけ上げてみてかまいません。すぐにまた落ちるときは、それ以上は触らず、業者に伝えます。漏電が原因のこともあり、厨房は水を使う場所なので特に気をつけます(介護施設が停電。上げてはいけないブレーカーがあります)。
食材を使えるかは、温度の記録で決まります
止まっていた冷凍冷蔵庫の食材を使えるかどうかは、見た目やにおいだけでは決められません。決め手になるのは、庫内の温度が何度まで、どれくらいの時間上がっていたかという記録です。ふだんから決まった時刻に温度を記録している施設は、止まった時刻の見当をつけやすく、判断が早くなります。
大規模な調理施設向けの国のマニュアル(大量調理施設衛生管理マニュアル)では、原材料ごとに保存の温度の目安が示されており、冷凍の食品はマイナス15℃以下が目安です。施設の給食でも、このマニュアルを参考にして温度を管理していることが多くあります。目安の温度を超えていた食材をどう扱うかは、栄養士と給食の委託先、必要なら保健所に相談して決めます。
温度の記録の例| 時刻 | 機器 | 庫内の温度 | したこと |
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| 6:30 | 冷凍庫 | マイナス8℃ | 異常に気づく。扉を閉めたまま業者に連絡 |
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| 6:40 | 冷蔵庫 | 4℃ | 正常。冷凍庫の食材の一部を冷蔵庫に移すか相談 |
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| 7:00 | 冷凍庫 | マイナス6℃ | 栄養士と委託先が食材の扱いを判断 |
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| 9:30 | 冷凍庫 | マイナス18℃ | 修理のあと、温度が戻ったことを確かめる |
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温度の目安と食材の扱いは、施設の衛生管理の決まりと、栄養士・委託先の判断に従ってください。
図2 食材を使えるかを決めるときの材料と、相談する相手。
その日の食事を、どう回すか
冷凍冷蔵庫が止まり、使えない食材が出たときは、その日の献立を組み替えます。給食の委託先と栄養士が中心になって決めますが、施設の側も、入居者の方の食事の形(きざみ食、ミキサー食、とろみ)や、アレルギーのある方への配慮が守られているかを確かめます。
図3 冷凍冷蔵庫が止まった日の食事の回し方。
食材の追加の配送を頼めるかは、委託先や仕入れ先との取り決めで変わります。間に合わないときは、施設の非常食の備蓄を使うこともあります。使った非常食は、あとで補充することを忘れずに記録しておきます。入居者の方には、献立が変わった理由を一言伝えると、不安が小さくなります。楽しみにしていた献立は、日を改めて出すようにします。
機器の持ち主で、頼む先と費用の負担が変わる
介護施設の厨房では、機器が施設の物のこともあれば、給食の委託先が持ち込んだ物のこともあります。冷凍冷蔵庫は施設の物で、食器洗浄機は委託先の物、といった具合に混ざっていることもあります。修理を頼む先と、費用を誰が負担するかは、機器の持ち主と、委託の契約書で決まります。
機器の持ち主と、頼む先| 持ち主 | 頼む先 | 費用の負担 |
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| 施設 | 施設の保守の契約先、厨房機器の販売店・メーカー | 施設(契約に定めがあればそれに従う) |
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| 給食の委託先 | 委託先が契約している業者 | 委託先(契約に定めがあればそれに従う) |
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| リース | リース会社が指定する保守の窓口 | リースの契約による |
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| 分からない | 購入の記録、銘板、委託の契約書で確かめる | 確かめてから決める |
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機器の持ち主は、本体に貼られた管理番号のシールや、リース会社のシール、購入のときの請求書、委託の契約書の別紙(機器の一覧)で分かることがあります。どれにも手がかりがないときは、委託先に確かめます。分かったことは、その場で機器の一覧に書き込みます。
止まってから持ち主を調べ始めると、修理の連絡が遅れます。平時に、厨房の機器ごとに、持ち主、メーカー、型番、設置した年、保守の連絡先を1枚にまとめ、委託先とも共有しておくと、止まったときに迷いません。委託の契約を見直す時期には、機器の修理と更新の負担の分け方も確かめておきます(営繕も、清掃と同じ形の仕様書を作れば外に出せます)。
食器洗浄機が止まったら
食器洗浄機が止まると、食後の洗浄が回らなくなります。修理を待つ間も、今日の昼と夜の洗浄は止められません。高い温度で洗い流すことで衛生を保っている機器なので、代わりの洗い方にも気をつけます。
図4 食器洗浄機が止まったときの回し方の例。
手で洗うときは、洗剤で洗ってよくすすいだあと、熱湯や消毒剤で消毒し、よく乾かします。感染症が流行している時期は、使い捨ての食器に切り替えることも考えます。食器洗浄機の不具合は、給水・給湯・排水・電源・洗剤の供給のどこに原因があるかで、頼む先が変わることがあります。エラーの表示と型番を控えて、持ち主の頼み先に連絡します。
食器洗浄機のエラーには、給水が足りない、排水が詰まっている、洗剤がなくなった、扉がきちんと閉まっていない、といった、施設の側で直せるものもあります。取扱説明書のエラーの一覧を厨房に置いておき、委託先の調理員と一緒に、最初に確かめることを決めておくと、業者を呼ばずに済むことがあります。
給湯器が止まって食器洗浄機に十分なお湯が来ないこともあります。厨房のほかの蛇口のお湯が出るかを確かめ、給湯が原因なら、給湯器の連絡先に頼みます(給湯器が壊れて、お湯が出ない。最初に確かめる4つのこと)。
ガスの機器と、グリストラップ
ガスのコンロやフライヤー、炊飯器などのガスの機器は、点火しない、炎の色がおかしい、といったときは使うのをやめ、ガス会社か機器の販売店に連絡します。炎が黄色い、すすが出る、といったときは、不完全燃焼の可能性があり、一酸化炭素が出ることがあります。換気扇を回し、窓を開けて換気します。ガスのにおいがするときの手順は、別の記事にまとめています(ガスのにおいがしたら、火も電気のスイッチも触らない)。
厨房の排水には、油や食べかすが下水に流れないよう、グリストラップ(グリース阻集器)が付いています。掃除をしないと、油が固まって排水が詰まり、においや害虫の原因にもなります。メーカーや自治体は、かごのごみは毎日、浮いた油はこまめに、底の汚れは定期的に取ることを勧めています。
グリストラップの手入れの例| 場所 | 目安 | すること |
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| かご(バスケット) | 毎日 | 食べかすを取り除く |
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| 浮いた油 | こまめに(週に数回など) | すくい取って、決められた方法で捨てる |
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| 底にたまった汚れ | 定期的に(月に1回など) | 取り除く。業者に頼むこともできる |
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頻度は使い方と大きさで変わります。施設の決まりと、メーカー・自治体の案内に従ってください。
厨房の排水が逆流してきた、グリストラップから水や油があふれた、というときは、まず厨房で水を流すのを止めます。流し続けると、あふれる量が増え、床が油で滑りやすくなります。あふれた油と水は、吸着材や布で吸い取り、床の滑りに注意して立入を控えます。
- 水を流すのを止める厨房の流し、食器洗浄機、洗い場の水を止めます。上の階の水まわりの使用も控えてもらいます。
- かごと浮いた油を取る手の届く範囲で、かごのごみと浮いた油を取り除きます。
- 詰まりの場所を見るグリストラップの先の排水ますに水がたまっているかを見ます。
- 排水の業者に頼む高圧の洗浄で配管の詰まりを取れる排水管の清掃の業者か、設備業者に連絡します。
建物の外の排水ますまで水がたまっているときは、敷地の中の配管か、その先の下水の側かで頼む先が変わります。敷地の外の公共のますに原因があるときは、自治体の下水道の窓口に連絡します。トイレの詰まりの見分け方は、別の記事にまとめています(トイレが詰まった・水が止まらない。職員でできることは、ここまでです)。
浴室・脱衣所の修繕は、どこに頼むか
浴室と脱衣所は、水と湯気にさらされ、介護施設の中でも傷みやすい場所です。床のひび割れや滑り、タイルの浮き、換気扇や暖房の故障、手すりのぐらつき、水栓やシャワーの不具合など、修繕の内容で頼む先が分かれます。
浴室・脱衣所の修繕と、頼む先| 修繕の内容 | 頼む先 | 気をつけること |
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| 床の滑り・ひび割れ・防水 | 浴室の改修に慣れた内装・防水の業者、工務店 | 防水を切らないこと。工事の間の入浴の段取り |
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| 水栓・シャワー・配管 | 設備業者 | 給湯の系統と一緒に見る |
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| 換気扇・暖房 | 電気工事の業者、設備業者 | 寒さを防ぐ。冬の前に点検 |
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| 手すり | 工務店、福祉の住環境の業者 | 下地にしっかり留まっているか |
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| 特殊浴槽 | メーカーや販売店、保守の契約先 | 入浴の振替を先に決める |
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図5 浴室と脱衣所の修繕で、一緒に見直すこと。
脱衣所と浴室の温度の差が大きいと、入浴の前後に体に負担がかかります。暖房や換気の修理を頼むときは、冬の前に済ませるよう計画します。浴室全体の改修を考える時期なら、入居者の方の体の状態に合わせて、浴槽の形式から見直すことも検討します(浴室の形式は、入居者の方の体の状態の内訳で選びます)。特殊浴槽が止まったときの手順は、特殊浴槽が止まった。入浴は清拭に替えられますにまとめています。
直ったあとに、確かめること
直ったあとに確かめること
- 冷凍冷蔵庫の庫内の温度が、目安まで下がったか(数時間後にも確かめる)
- 修理の内容と、交換した部品、費用の負担
- 食材の扱いの判断と、その理由の記録
- 同じ不具合が出たときの連絡先と、保証の期間
- 温度の記録の時刻と方法を見直すか
修理のあとは、庫内の温度がすぐには下がりきらないことがあります。食材を戻すのは、温度が目安まで下がったことを確かめてからにします。数時間後と翌朝にも温度を記録し、また上がっていないかを見ます。
業務用の冷凍冷蔵庫は、冷媒にフロン類を使っているものが多く、エアコンと同じように、3か月に1回以上の簡易点検が法律で求められています。点検のときに、霜の付き方、異音、扉のパッキンの傷みを見ておくと、止まる前に気づけることがあります。
モデルケース:連休の朝、冷凍庫の温度が上がっていた施設
モデルケース:定員100名の特別養護老人ホーム(給食は委託)
連休明けの朝、冷凍庫がマイナス5℃だった
変わったこと(結果)
連休明けの朝、委託先の調理員が、冷凍庫の温度がマイナス5℃まで上がっているのに気づきました。前日の夕方の記録はマイナス18℃でした。扉を閉めたまま施設の事務長に連絡し、冷凍庫は施設の物だと確かめてから、施設の保守の契約先に修理を頼みました。食材の扱いは、栄養士と委託先が記録をもとに判断し、その日の献立を一部入れ替えました。昼には修理が終わり、夕方には温度が戻りました。
背景と、困っていたこと
この施設では、厨房の機器のうちどれが施設の物で、どれが委託先の物かが、誰にもはっきり分かっていませんでした。以前、食器洗浄機が止まったときは、持ち主を調べるのに半日かかったことがありました。
その後に決めたこと
施設は委託先と一緒に、厨房の機器ごとの持ち主・型番・保守の連絡先を1枚にまとめ、厨房と事務所に貼りました。温度の記録も、朝と夕方に加えて、休日の前の夜にも取ることにしました。