まとめて頼む形は、3つです
介護施設の設備の故障を、まとめて対応してもらう形は、大きく3つに分かれます。1つめは、ビルの総合管理の会社に、設備の管理と故障の対応をまとめて任せる形。2つめは、故障の受付と業者の手配をまとめて引き受ける、窓口型のサービスを使う形。3つめは、外に頼まず、施設の中で設備ごとの連絡先を1枚に束ねる形です。
図1 設備の故障をまとめて頼む3つの形。
どの形がよいかは、施設の規模や、設備の種類、営繕の担当者がいるかどうかで変わります。3つの形は、まとめられる範囲と、施設に残る仕事の量、かかる費用の形が違います。違いを知ったうえで選ぶと、まとめたあとに「思っていたのと違った」ということが減ります。3つを組み合わせる施設もあります。
まず、何をまとめたいのかを決めます
「まとめて頼みたい」と考えるとき、まとめたいことは施設によって違います。故障のたびに何社にも電話するのが大変なのか、どこに頼めばよいか分からないのが困るのか、請求書が何枚も来るのが面倒なのか、記録が散らばって後から追えないのか。まとめたいことを先に1つに絞って決めると、合う形が自然と見えてきます。
まとめたいことと、その中身| まとめたいこと | 中身 | 困っている様子 |
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| 受付 | 故障の連絡を1か所にする | 設備ごとに電話番号が違い、職員が迷う |
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| 切り分け | どの業者に頼めばよいかを判断する | 原因が分からず、違う業者を呼んでしまう |
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| 手配 | 業者を探し、日程を決める | 業者探しに時間がかかり、来るまでが遅い |
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| 支払い | 請求をまとめる | 請求書が何枚も届き、経理の手間が多い |
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| 記録 | 故障と修理の履歴を残す | 記録が散らばり、更新の判断に使えない |
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図2 まとめたいことから、3つの形を選ぶ分かれ目。
5つのうち、どれを一番まとめたいかで、選ぶ形が変わります。受付と切り分け、手配をまとめたいなら窓口型、設備の点検から故障の対応まで丸ごと任せたいなら総合管理、まずは費用をかけずに受付の迷いだけをなくしたいなら自前の一覧、というのが大まかな目安です。
① ビルの総合管理の会社に任せる
ビルの総合管理の会社は、設備の点検、清掃、警備などをまとめて引き受ける会社です。介護施設でも、設備の保守点検をすでに委託している施設は多く、その延長で故障の対応も任せる形があります。
総合管理の会社に任せる形| 項目 | 中身 |
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| 受付 | 管理会社の窓口に一本化できる |
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| 切り分け | 設備に詳しい担当者が判断することが多い |
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| 手配 | 管理会社の協力業者に手配する |
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| 費用 | 月々の委託費と、修理ごとの費用 |
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| 向く施設 | 規模が大きく、設備が多い施設。常駐の設備員を置く施設 |
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総合管理の会社に任せると、点検と故障の対応がつながり、点検で見つけた小さな不具合を、そのまま修理に回せます。一方で、月々の委託費がかかり、規模の小さい施設では費用が見合わないこともあります。委託の範囲に修理が含まれるかどうかは契約によって違うため、ビルメンテナンスの委託費と、修理の費用は分けて見ますにまとめた点検と修理の境目を、契約の前に確かめておきます。
② 窓口型のサービスを使う
窓口型のサービスは、故障の受付と業者の手配をまとめて引き受ける形です。施設は窓口に故障の様子を伝えるだけで、窓口が内容を聞き取り、どの業者に頼むかを切り分け、業者を手配します。施工は、それぞれの分野の業者が行います。
窓口型のサービスを使う形| 項目 | 中身 |
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| 受付 | 窓口に一本化できる。フォームや写真で送れることも |
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| 切り分け | 窓口が症状から頼む先を判断する |
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| 手配 | 窓口が分野ごとの業者を手配する |
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| 費用 | 修理ごとの費用。月々の費用がない形もある |
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| 向く施設 | 営繕の担当者がいない、または少ない施設。設備の分野が多い施設 |
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窓口型を使うときは、窓口がどこまで切り分けてくれるかを確かめておきます。症状を聞いて業者を手配するだけなのか、写真や型番から原因の見当をつけ、合う業者を選んでくれるのかで、直るまでの時間が変わります。修理か交換かの判断の材料を出してくれるかどうかも、聞いておくとよい点です。
窓口型は、月々の費用をかけずに受付と手配をまとめられる形が多く、中小規模の施設でも始めやすいのが特徴です。一方で、施工は分野ごとの業者が行うため、職人と直接やり取りする機会は減ります。施工を1社にまとめるのと、窓口を1つにまとめるのとの違いは、「一社にまとめる」には、二つの意味がありますにまとめています。まとめることで手放すものは、ワンストップで楽になる分、3つを手放します。一部は残せますにまとめています。
③ 自前で、連絡先を1枚に束ねる
外に頼まず、施設の中で設備ごとの連絡先を1枚にまとめる形です。設備ごとに、頼む先の会社名、電話番号、受付時間、保守契約の有無、機器の型番を書き、職員が見られる場所に置きます。
自前で連絡先を束ねる形| 項目 | 中身 |
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| 受付 | 1枚の紙で、職員が迷わず電話できる |
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| 切り分け | 施設の職員が判断する |
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| 手配 | 施設の職員が業者に電話する |
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| 費用 | 紙を作る手間だけ。修理ごとの費用は直接 |
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| 向く施設 | 営繕の担当者がいて、業者との付き合いがすでにある施設 |
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自前の一覧を作るときは、設備ごとに1社目と2社目を書き、保守契約がある設備は契約の番号と契約の期限も書いておきます。年に一度、電話番号や担当者が変わっていないかを確かめ、日付を書き入れておくと、古い一覧のまま使ってしまうことを防げます。
自前の一覧は、費用をかけずに始められ、業者との直接の関係も保てます。一方で、どの業者に頼めばよいかの判断と、業者への電話は、これまでどおり施設に残ります。担当者が替わったときや、一覧にない故障が起きたときに迷いやすいのも弱いところです。休日に来てくれる業者を一覧に加える方法は、土日祝に修理を頼める業者は、平日のうちに決めておきますにまとめています。
3つの形を、項目ごとに比べます
3つの形を、まとめたい5つのことと費用で並べると、次のようになります。どれが優れているということではなく、施設がまとめたいことと、残してよい仕事で選びます。
3つの形の比べ方| 項目 | ① 総合管理 | ② 窓口型 | ③ 自前の一覧 |
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| 受付 | まとまる | まとまる | 紙でまとまる |
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| 切り分け | 管理会社が判断 | 窓口が判断 | 施設が判断 |
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| 手配 | 管理会社が手配 | 窓口が手配 | 施設が手配 |
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| 支払い | まとまることが多い | 形による | 業者ごと |
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| 記録 | 報告書で残る | 窓口に残る | 施設が残す |
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| 月々の費用 | かかる | かからない形もある | かからない |
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図3 3つの形で、施設に残る仕事の量の違い。
費用だけで比べると、月々の費用がかからない自前の一覧がいちばん安く見えます。けれど、事務長や施設長が業者探しと電話にかけている時間も、施設にとっては費用です。故障1件あたりに何本電話をかけ、何時間使っているかを一度数えてみると、どの形が見合うかを判断しやすくなります。
どの形を選んでも、設備の不具合に「気づく」こと、窓口や業者に「伝える」ことは、施設に残ります。入居者の方のそばにいる職員の気づきが、設備の故障の対応のすべての始まりだからです。
故障の切り分けが、時間を決めます
設備の故障が直るまでの時間は、業者が来る速さより、最初にどの業者に頼むかで大きく変わります。たとえば、お湯が出ないとき、原因が給湯器なのか、配管なのか、電気なのかで、頼む先が変わります。最初に違う業者を呼ぶと、その業者が来て原因を調べ、別の業者を呼び直すことになり、1日、2日と時間が延びます。その間、出張費も二重にかかります。
図4 最初に頼む先を切り分けるかどうかで、直るまでの時間が変わる。
切り分けには、症状、エラー表示、止まった範囲、機器の銘板の写真が役に立ちます。どの形でまとめる場合も、職員がこれらを伝えられるようにしておくと、切り分けが速くなります。部品の在庫で直る日が決まることもあり、その考え方はその日のうちに直るかは、業者の速さより部品で決まりますにまとめています。
モデルケース:自前の一覧から、窓口型に移した施設
モデルケース:定員60名の介護付有料老人ホーム
故障のたびの電話が、1件あたり平均3本から1本になった
変わったこと(結果)
設備の故障の受付と手配を窓口型にまとめてから、事務長が故障1件あたりにかける電話は、平均3本ほどから1本に減りました。原因が分からず違う業者を呼び直すことも、1年で数回あったものがほとんどなくなりました。
背景と、困っていたこと
この施設では、事務長が設備ごとの連絡先を1枚の紙にまとめていました。けれど、紙にない故障や、原因が分からない故障が起きるたびに、事務長が業者を探し、何社にも電話をしていました。営繕の担当者はおらず、事務長が1人で抱えていました。
その後に決めたこと
施設は、まず水まわりと建具の故障だけを窓口に送って3か月試し、うまく回ったため、空調と電気にも広げました。給湯器とナースコールは、保守契約のある会社との関係を残し、これまでどおり直接頼むことにしました。