鳴らないと気づいたら、最初にすること
ナースコールは、入居者の方が職員を呼ぶための設備です。特別養護老人ホームなどの基準では、居室や便所に「ブザー又はこれに代わる設備」を設けることが定められています。鳴らない状態は、呼んでも職員が来ない状態です。修理の手配と同じくらい、使えない間に入居者の方の呼びかけを拾う手当てが大切です。
- 止まった範囲を確かめる何か所かの子機を押して、全体が鳴らないのか、一部の階だけか、一部の部屋だけかを確かめます。
- 見回りを決める使えない部屋を一覧にし、見回りの間隔と担当を決めます。夜間は特に、間隔を短くします。
- 代わりの呼び出しを置く手元の呼び鈴や、簡易な無線の呼び出し機、部屋の扉を開けておくなど、呼びかけが届く工夫をします。
- 表示と型番を控える親機(ナースステーションの受信機)の表示、メーカー名、型番、止まった時刻を写真に撮ります。
- 連絡する全体なら代理店に、一部の部屋なら代理店か電気工事の業者に連絡します。
図1 ナースコールが鳴らないときの最初の手順。見回りと代わりの呼び出しを、修理の連絡より先に決めます。
鳴らないことに気づくのは、入居者の方が「押したのに来ない」と言ったとき、あるいは職員が定期の確認で押してみたときです。気づいた職員は、すぐにほかの職員とリーダーに知らせ、一人で確かめようとしないことが大切です。範囲を確かめる職員と、入居者の方のそばにいる職員を分けると、確かめている間も見守りが途切れません。
止まった範囲で、原因の見当がつく
ナースコールは、ナースステーションなどにある本体(親機)、各部屋の子機、それをつなぐ配線、電源でできています。どこで止まっているかは、止まった範囲で見当がつきます。早さを決めるのは、この切り分けです。
図2 止まった範囲で、疑う場所と依頼先の見当が変わります。
症状と、考えられること| 症状 | 考えられること | 先に確かめること |
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| 全体が鳴らない・親機の表示が消えた | 本体の故障、電源の停止 | 親機の電源、ブレーカー、停電していないか |
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| 一部の階・系統だけ鳴らない | その系統の配線や中継の機器 | どの部屋までが鳴らないか |
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| 一部の部屋だけ鳴らない | 子機、押しボタンのコード、壁の差し込み口 | コードが抜けていないか、ほかの子機に替えると鳴るか |
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| 鳴りっぱなしで止まらない | 子機のボタンの故障、配線のショート | どの部屋の表示か。その子機を外せるか |
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| 音は鳴るが表示が出ない | 親機の表示の部品 | 表示の記録を写真に撮る |
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廊下の表示灯や、職員が持ち歩く受信機につながっている施設では、そちらだけが止まっていることもあります。親機には表示が出ているのに職員の受信機に届かない、といった症状なら、受信機の電池や、無線の中継の機器を確かめます。
一部の部屋だけ鳴らないときは、押しボタンのコードが壁の差し込み口から抜けかけていた、ベッドの移動でコードが傷んだ、といった原因がよくあります。コードの差し込みを確かめるのは職員でもできます。ただし、壁の中の配線や子機の分解は、資格を持つ人の作業です。職員は確かめるところまでにします。
使えない間の、見回りと代わりの呼び出し
修理を待つ間、入居者の方の呼びかけを拾う手当ては、施設が自分で決めて動く部分です。見回りの間隔は、入居者の方の状態で変えます。転倒のおそれがある方、体調の変化が心配な方、夜間にトイレに起きる方の部屋は、間隔を短くします。
図3 ナースコールが使えない間の手当ての例。
見回りの決め方の例| 入居者の方の状態 | 見回りの間隔の例 | 気をつけること |
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| 転倒のおそれがある方 | 短い間隔で | 離床のセンサーがあれば併せて使う |
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| 体調の変化が心配な方 | 短い間隔で | 看護職員と相談して決める |
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| 夜間にトイレに起きる方 | 起きる時間帯の前後に | トイレの誘導の時間を決めておく |
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| 自分で呼べる方 | ふだんより短く | 呼び鈴の使い方を伝える |
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間隔は、職員の人数と入居者の方の状態で、施設が決めます。決めた間隔と、見回った時刻を記録に残してください。
入居者の方には、ナースコールが使えないことと、代わりの呼び方を伝えます。呼び鈴の鳴らし方を一緒に試しておくと、いざというときに迷わずに使えます。認知症などで新しい呼び方を覚えるのが難しい方には、見回りの間隔を短くして対応します。
手元の呼び鈴や、電池で動く簡易な無線の呼び出し機を備えておくと、止まったときにすぐ配れます。呼び出し機は、受信機を職員が身につけて持ち歩けるものもあります。止まったのが夜間なら、夜勤の人数で見回れるかを見直し、必要なら応援を呼びます。応援を呼ぶ基準も、平時に決めておきます。
本体は代理店、配線と電源はほかでも直せる
ナースコールの本体(親機)や子機は、メーカーごとの専用の部品でできています。部品の手配や設定の変更ができるのは、多くの場合、メーカーか、その代理店です。本体の故障なら、代理店に頼むのが基本です。
一方で、子機につながる配線や、電源の不具合は、電気工事の業者でも直せることがあります。壁の中の配線が傷んでいた、電源の回路のブレーカーが落ちていた、といった場合です。代理店がすぐに来られないときは、範囲を切り分けたうえで、電気工事の業者にも相談できます。
不具合の場所と、依頼先| 不具合の場所 | 依頼先 | 気をつけること |
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| 本体(親機) | メーカー・代理店 | 専用の部品と設定が要る |
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| 子機 | メーカー・代理店(同じ機種の在庫があれば交換が早い) | 予備の子機があれば職員でも差し替えられることがある |
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| 配線(壁の中・天井の中) | 電気工事の業者 | 電気工事の資格が要る。保守の契約を先に確かめる |
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| 電源・ブレーカー | 電気工事の業者、電気の保安の担当者 | 受変電設備がある施設は保安の担当者にも知らせる |
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図4 ナースコールの不具合の場所ごとの依頼先。
ほかの会社に頼む前に、保守の契約書を確かめてください。契約によっては、代理店以外が手を入れると、保証や保守の対象から外れることがあります。代理店に、来られる日と、ほかの会社が配線を直した場合の扱いを確かめてから決めます。
連絡のときに、伝えること
代理店や電気工事の業者に連絡するときは、止まった範囲と、親機の表示が最初に聞かれます。同じことを何社に説明する場合も、メモを1枚にまとめておくと、説明が短く済みます。
連絡のときに読み上げるメモの例
- 施設名と所在地、担当者の名前
- メーカー名、型番、設置した年(親機の銘板の写真)
- 止まった範囲(全体・階・部屋)と、鳴らない部屋の一覧
- 親機の表示(エラーの表示、ランプの色)
- 止まった時刻と、施設で確かめたこと(電源・コード・ブレーカー)
- 使えない間の見回りの状況と、来てほしい時刻の希望
同じメモと写真をLINEで窓口に送っていただければ、代理店の予約はそのままで、並行して業者の手配を進めます。
メーカー名や型番は、親機の側面や扉の内側の銘板に書かれています。設置した年が分かると、部品の保有期間の見当がつき、修理で済むか、更新を考えるべきかの話も早く進みます。機器台帳にまとめておくと、止まったときにすぐ伝えられます(機器台帳は、竣工図と現地と保守の会社の3つで作ります)。
ナースコールは止められない設備なので、代理店にも急ぎであることを伝え、来られる時刻をはっきり確かめます。「近日中に」と言われたときは、見回りの手当てがいつまで続くかを決めるためにも、具体的な日時を聞いてください。
直ったあとに、確かめること
ナースコールが直ったら、すべての部屋の子機を押して、親機に正しく表示されるか、音が鳴るかを確かめます。トイレや浴室の呼び出し、廊下の表示灯も一緒に確かめます。確かめた結果は、部屋ごとに記録します。
直ったあとに確かめること
- 全室の子機を押して、親機の表示と音を確かめる
- トイレ・浴室の呼び出しと、廊下の表示灯を確かめる
- 職員が持ち歩く受信機(つながっている場合)に届くか
- 修理の内容、交換した部品、同じ不具合のときの連絡先
- 使えない間の見回りの記録を、まとめて保管する
停電のあとや、電気の工事のあとにも、ナースコールが正しく動くかを確かめる習慣をつけておくと、気づかないうちに鳴らない部屋が出るのを防げます。月に一度など、全室の呼び出しを試す日を決めておく施設もあります。試した日と結果を記録しておくと、点検の業者に渡す材料にもなります。
保守の契約と、更新の時期
ナースコールの保守の契約は、定期の点検と、故障したときの対応を含むものが多くあります。契約で確かめたいのは、点検の回数、故障したときに来るまでの目安の時間、夜間や休日の対応、部品の費用が含まれるか、の4つです。
ナースコールの更新を考えるきっかけは、部品の保有期間が切れること、故障が続くこと、居室の数や使い方が変わったことです。更新の工事では、今の配線をそのまま使えるかどうかで、費用と工期が大きく変わります。止められない設備なので、新しいものに切り替える日の段取りにも計画が要ります(ナースコールの更新費用は、配線を使えるかで大きく変わります)。
図5 ナースコールの更新の工事で、費用と工期が変わる分かれ目。
空調の更新と同じ時期にナースコールを更新すると、天井を開ける機会をまとめられることがあります(Wi-Fiの工事は機器と一緒に申請し、天井を開ける時期に合わせます)。設備ごとの更新の年数の見方は、設備の年数は、3種類を並べてから更新の時期を決めますにまとめています。
施設長・法人・ご家族への伝え方
ナースコールが使えない時間は、入居者の方の安全に直接関わります。施設長と法人には、事実、したこと、見込み、決めてほしいことの4つに分けて、早めに報告します。見回りの記録は、使えなかった間の対応を説明する材料になります。
報告に入れること| 項目 | 書くこと |
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| 事実 | いつから、どの範囲が鳴らないか。親機の表示 |
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| したこと | 見回りの間隔と担当、代わりの呼び出しを配ったか |
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| 見込み | 代理店や業者が来る時刻、修理の見込み |
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| 決めてほしいこと | 夜勤の応援、修理の費用が契約の外になる場合の決裁 |
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使えない間に、入居者の方に転倒や体調の変化があった場合は、事故として扱うかを施設の決まりに沿って判断し、ご家族に説明します。説明のときは、ナースコールが使えなかったことと、その間にどう見回っていたかを、記録をもとに伝えます。事実を落ち着いて伝えることが、信頼につながります。
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モデルケース:夜間に一部の部屋が鳴らなくなった施設
モデルケース:定員80名の特別養護老人ホーム(ユニット型)
2階の東側の6室だけ、ナースコールが鳴らなくなった
変わったこと(結果)
夜の11時、入居者の方の「押しても来ない」という声で、2階の東側の6室が鳴らないことが分かりました。夜勤の職員は、6室の見回りを30分ごとにし、無線の呼び出し機を配りました。翌朝、代理店は「来られるのは2日後」とのことでしたが、範囲が6室に限られていたため、並行して電気工事の業者に配線を調べてもらいました。天井の中の中継の機器につながる配線の傷みが見つかり、その日のうちに直りました。
背景と、困っていたこと
この施設は、ナースコールが止まったときの手順を決めておらず、最初の1時間は、どの部屋が鳴らないのかを確かめるのに時間がかかりました。無線の呼び出し機は備えていましたが、置き場所を知っている職員が少なかったのです。
その後に決めたこと
施設は、ナースコールが止まったときの手順と、呼び出し機の置き場所を1枚にまとめ、ナースステーションに貼りました。代理店には、配線の不具合のときにほかの業者が手を入れてよいかを確かめ、契約書に書き加えてもらいました。