においに気づいたら、最初の5分
ガスのにおいは、ガスが漏れたときにすぐ気づけるよう、わざとにおいがつけられています。においがしたら、気のせいだと思わず、漏れている可能性があると考えて動きます。最初の5分にすることは、火と電気の火花を遠ざけること、空気を入れ替えること、ガスを止めること、そして連絡です。
- 火を消す厨房のコンロ、給湯器、暖房など、使っているガスの機器の火を消します。たばこやライター、マッチも使いません。
- 電気に触らない照明や換気扇のスイッチを入れたり切ったりせず、コンセントの抜き差しもしません。スイッチを操作したときの小さな火花で、漏れたガスに引火することがあります。
- 窓や扉を開ける窓や扉を大きく開けて、自然に空気を入れ替えます。
- ガス栓を閉める機器のガス栓を閉め、メーターのそばのガス栓も閉めます。
- ガス会社に連絡するにおいのしない場所に移ってから、都市ガスはガス会社、LPガスは販売店に連絡します。においが強いときは、入居者の方をその場所から離します。
図1 ガスのにおいがしたときの手順。電気のスイッチにも触りません。
ガスのにおいに最初に気づくのは、厨房の調理員や、早朝・夜間の職員であることが多いものです。においに気づいた人が一人で抱え込まず、大きな声でほかの職員に知らせ、手分けをして動くことが大切です。一人が火とガス栓、一人が窓と扉、一人が入居者の方と連絡、という分担を決めておくと早く動けます。
携帯電話やスマートフォンで連絡するときも、においのする場所から離れてからにします。においが強く、どこから漏れているか分からないときは、建物の外に出てから連絡します。
触ってはいけないもの、してはいけないこと
ガスのにおいがするとき、ふだんの感覚でしてしまいがちなことの中に、引火の原因になるものがあります。介護施設では、職員だけでなく、入居者の方がナースコールのボタンや照明のスイッチを押すこともあるため、においのする場所への出入りを止めることも大切です。
してはいけないことと、その理由| してはいけないこと | 理由 |
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| 照明や換気扇のスイッチを入れる・切る | スイッチの中で小さな火花が出ることがある |
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| コンセントの抜き差し | 抜き差しのときに火花が出ることがある |
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| 換気扇を回す | スイッチの火花のほか、モーターの火花のおそれ |
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| 火をつける・たばこを吸う | 漏れたガスに引火する |
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| インターホンや電気の呼び鈴を鳴らす | 電気の火花のおそれ |
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| においがするのに使い続ける | 漏れが続き、においの場所に人が集まる |
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図2 ガスのにおいがするときに、しないこととすること。
ナースコールや呼び出しのボタン、電動のベッドや車椅子も、電気で動く機器です。においのする場所の近くにいる入居者の方には、職員が声をかけてボタンを押さないようお願いし、移っていただくまで付き添います。認知症のある方には、短い言葉で落ち着いて伝え、手を添えて一緒に移動します。
換気扇は、ふだんなら空気を入れ替える道具ですが、ガスのにおいがするときは使いません。すでに回っている換気扇も、スイッチを切ると火花が出ることがあるため、そのままにしておきます。窓や扉を開けて、自然に空気を入れ替えるのが基本です。
都市ガスとLPガスで、たまる場所が違う
施設で使っているガスが、都市ガスかLPガス(プロパンガス)かで、漏れたガスのたまり方が違います。都市ガスは空気より軽く、天井の近くにたまりやすい性質があります。LPガスは空気より重く、床の近くや低い場所にたまりやすい性質があります。換気のときは、この違いを意識します。
都市ガスとLPガスの違い | 都市ガス | LPガス |
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| 空気との重さ | 空気より軽い | 空気より重い |
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| たまりやすい場所 | 天井の近く | 床の近く、低い場所 |
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| 換気の仕方 | 窓の上のほうを開ける | 窓や扉を開け、床の近くの空気を外へ |
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| ガス警報器の位置 | 天井の近く | 床の近く |
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| 連絡先 | ガス会社 | LPガスの販売店 |
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図3 都市ガスとLPガスの違い。
どちらのガスかは、ガスの検針票や請求書、メーターや容器(ボンベ)の有無で分かります。建物の外にボンベが並んでいれば、LPガスです。厨房や給湯器の近くに、ガス会社や販売店の連絡先が貼られていることも多くあります。平時に確かめ、事務所と夜勤の場所に連絡先を貼っておきます。厨房と浴室で別のガスを使っている施設もあるため、場所ごとに確かめます。
入居者の方を、どう守るか
においが少しだけで、すぐにガス栓を閉められたときは、換気をしながらガス会社の到着を待てることが多くあります。においが強いとき、どこから漏れているか分からないとき、においがしだいに強くなるときは、入居者の方をその場所から離します。
図4 ガスのにおいの強さと、入居者の方への対応の目安。
入居者の方を移すときは、エレベーターのボタンや電気のスイッチを押さずに済む経路を選びます。歩ける方には職員が付き添い、車椅子の方やベッドで過ごす方は、複数の職員で移します。移った先の部屋と人数を記録し、全員が移れたかを確かめます。移った先でも、寒さや暑さ、トイレの場所に気を配り、落ち着いて待てるようにします。ガス会社や消防から指示があれば、それに従います。
厨房の一酸化炭素にも気をつける
ガスの機器は、空気が足りない状態で使うと、不完全燃焼を起こし、一酸化炭素が出ることがあります。一酸化炭素には色もにおいもないため、気づかないうちに頭痛やめまい、吐き気が出て、ひどいときは命にかかわります。業務用の厨房は、大きな火を長い時間使うため、特に気をつけます。
不完全燃焼のサインと、すること| サイン | すること |
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| 炎が黄色い・赤い | 使うのをやめ、換気して、販売店かガス会社に連絡 |
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| すすが出る・においがする | 使うのをやめて点検を頼む |
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| 換気扇が止まっている | 換気扇が動くまでガスの機器を使わない |
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| 調理員が頭痛・めまいを訴える | すぐに外の空気を吸える場所へ移し、必要なら119番 |
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浴室の給湯器や暖房など、屋内に置かれたガスの機器も、給排気の筒が外れていたり詰まっていたりすると、不完全燃焼を起こすことがあります。機器のまわりに物を置かない、給排気の筒に傷みがないかを点検のときに見てもらう、といったことで防ぎます。
業務用の厨房では、換気扇の故障がそのまま一酸化炭素の危険につながります。換気扇が止まったら、ガスの機器を使うのをやめて修理を頼みます。一酸化炭素を知らせる警報器を備えておくと、においのない危険にも気づけます。厨房の機器が止まったときの頼み先は、厨房の冷凍冷蔵庫が止まった。食材の判断は、温度の記録で決まりますにまとめています。
メーターがガスを止めたとき
ガスのにおいはしないのに、急にガスが使えなくなったときは、メーターがガスを止めている可能性があります。最近のメーターは、大きな地震、ガスの使いすぎ、長い時間使い続けたとき、ガス漏れの疑いがあるときなどに、自動でガスを止める仕組みを持っています。
ガスのにおいがしなければ、メーターに書かれた手順で復帰できます。一般に、すべてのガスの機器を止めてから、メーターの復帰のボタンを押し、表示ランプの点滅が終わるまで数分待つ手順です。においがするとき、復帰してもまた止まるときは、復帰させずにガス会社に連絡してください。給湯器が止まったときの確かめ方は、給湯器が壊れて、お湯が出ない。最初に確かめる4つのことにまとめています。
図5 ガスが急に使えなくなったときの考え方。
ガス会社への連絡で、伝えること
都市ガスの施設は、契約しているガス会社のガス漏れの専用の窓口に、LPガスの施設は、契約している販売店の緊急の連絡先に連絡します。ガス漏れの連絡は、多くの事業者が昼夜を問わず受け付けています。
連絡のときに伝えること| 項目 | 伝える中身 |
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| 施設名と所在地 | 建物の名前、住所、入口の場所 |
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| におう場所 | 厨房、浴室、給湯器のまわりなど |
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| においの強さ | かすかか、はっきりか、強いか |
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| したこと | 火を消した、ガス栓を閉めた、窓を開けた、入居者を移した |
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| ガスの種類 | 都市ガスかLPガスか、契約番号(分かれば) |
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ガス漏れの窓口に電話がつながったら、相手の指示に従います。窓口によっては、電話のあいだに、ガス栓が閉まっているか、窓が開いているかを確かめるよう言われます。電話をかける人と、確かめに行く人を分けておくと、やり取りが早く進みます。においが強く、火災の危険を感じるときは、ためらわずに119番にも通報します。
ガス会社や販売店が来るまで、においのする場所への出入りを止めて待ちます。来た担当者が漏れの場所を調べ、ガス栓や配管、機器の修理が要るかを判断します。ガスの配管の工事は、資格を持つ人が行います。職員が配管や機器を分解したり、テープで巻いたりすることはやめてください。担当者が来たら、においに気づいた時刻と、施設でしたことを順に伝えます。
ガスを使い始める前に、確かめること
ガス会社や販売店が漏れの場所を直したあとも、ガスを使い始める前にいくつか確かめます。まず、担当者から、どこから漏れていたか、何を直したか、ほかに気になる場所はないかを聞き、記録に残します。担当者が使ってよいと言うまでは、ガスの機器に火をつけません。
使い始める前に確かめること
- 漏れていた場所と、直した内容を担当者から聞いて記録する
- 担当者が使ってよいと言ったことを確かめる
- 機器のガス栓を開け、火のつき方と炎の色を確かめる
- 換気扇が動いていることを確かめてから調理を始める
- 入居者の方を元の場所に戻し、職員に伝える
ゴム管の傷みや継ぎ目のゆるみが原因だったときは、ほかの機器のゴム管も同じ時期に傷んでいることがあります。担当者に、ほかの機器も見てもらえるかを相談します。古い機器は、安全の装置が付いた新しい機器への交換を計画に入れます。
施設長・法人・ご家族への伝え方
ガス漏れは、大きな事故につながりかねない出来事です。漏れが小さく、すぐに直ったときも、施設長と法人に報告し、記録に残します。報告は、事実、したこと、原因と直した内容、これからの手当ての4つに分けます。
報告に入れること| 項目 | 書くこと |
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| 事実 | いつ、どこで、どのくらいのにおいがしたか |
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| したこと | 火を消した、ガス栓を閉めた、換気した、入居者を移した、連絡した時刻 |
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| 原因と直した内容 | ガス会社や販売店から聞いた原因と、直した内容 |
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| これからの手当て | 機器の交換、手順の貼り出し、職員への周知 |
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入居者の方を移したときは、ご家族にも、何が起きたか、入居者の方は無事であること、原因を直したことを伝えます。一酸化炭素で体調を崩した方がいたときは、医療機関の受診とあわせて、看護職員から個別に連絡します。
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モデルケース:朝の厨房で、かすかなガスのにおいがした施設
モデルケース:定員50名の介護老人保健施設(都市ガス・給食は直営)
朝の仕込みの前に、厨房でかすかなにおいがした
変わったこと(結果)
朝6時、早番の調理員が厨房に入ると、かすかなガスのにおいがしました。照明のスイッチを入れる前に気づき、そのまま厨房の窓と勝手口を開け、コンロのガス栓とメーターのガス栓を閉めました。廊下に出てから事務長に電話し、事務長がガス会社に連絡しました。ガス会社が来て調べたところ、コンロにつながるゴム管の継ぎ目がゆるんでいました。継ぎ目を直し、朝食は1時間遅れで出せました。
背景と、困っていたこと
この施設では、ガスのにおいがしたときの手順を、厨房の職員が一度聞いたことがあるだけでした。この日の調理員は、たまたま前の職場で手順を教わっていました。「照明をつけていたら、と思うと怖かった」と振り返っています。
その後に決めたこと
施設は、ガスのにおいがしたときの手順を、厨房の入口と給湯器の近くに貼りました。ガス会社の連絡先も同じ紙に書き、夜勤の職員にも伝えました。