止まったら、最初にすること
換気扇や換気の設備は、照明や空調と違って、止まってもすぐには気づきにくい設備です。厨房の換気扇の音がしない、トイレのにおいがいつまでも抜けない、浴室の鏡が曇ったまま乾かない、といったことで気づくことが多くあります。気づいたら、最初に止まった場所と範囲を確かめます。場所によって、急ぎの度合いが大きく違うからです。
- 場所を確かめる止まったのが厨房か、トイレ・浴室か、居室・廊下か、一つの部屋か建物の広い範囲かを確かめます。
- 厨房ならガスを止める厨房の換気扇が止まったら、直るまでガスのコンロやフライヤーなどを使いません。
- 窓や扉で空気を入れ替える止まっている場所の窓や扉を開けて、湿気やにおいを逃がします。
- スイッチとフィルターを見るスイッチ、ブレーカー、フィルターの汚れ、建物の外の排気口を確かめます。
- 業者に連絡する直らなければ、換気扇の種類に合わせて、電気工事の業者や設備の業者に頼みます。
図1 換気扇が止まったときの手順。厨房の換気扇は、ガスの使用を止めるのが先です。
入居者の方が「なんだか息苦しい」「においがこもる」と話すことも、換気が止まっているサインのことがあります。こうした声を聞いたら、その部屋の換気扇が動いているかを確かめます。夜間は換気扇の音に気づきやすいため、夜勤の見回りで換気扇の音がしない部屋がないかを気にかけておくと、早く気づけます。
換気の設備が広い範囲で止まったときは、停電や、換気の設備をまとめて動かしている制御盤の不具合が考えられます。空調や照明も一緒に止まっていないかを確かめてください。停電のときの手順は、介護施設が停電。上げてはいけないブレーカーがありますにまとめています。
場所ごとの、急ぎの度合い
換気が止まったときに起きることは、場所によって違います。いちばん急ぐのは厨房です。次に、トイレ・浴室、居室・廊下の順に考えます。
場所ごとに起きることと、急ぎの度合い| 場所 | 止まると起きること | 急ぎの度合い |
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| 厨房 | 燃えた空気がこもり、一酸化炭素が出ることがある。熱と湿気、油煙 | 最も急ぐ。ガスの使用を止める |
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| トイレ・汚物処理室 | においがこもる。湿気でカビが出る | 早めに。窓や扉で逃がす |
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| 浴室・脱衣所 | 湿気がこもり、カビや結露。火災報知器の誤作動の原因にも | 早めに。入浴のあとは扉を開けて乾かす |
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| 居室・廊下・共用部 | 空気がよどむ。感染症が広がりやすくなる | 窓を開けて換気。寒さ暑さに注意 |
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図2 換気が止まったときに、急ぐ順番の目安。
浴室や脱衣所の湿気は、火災報知器の感知器に結露して、誤作動を起こすこともあります。換気が止まっている間に火災報知器が鳴ったら、湿気が原因かもしれませんが、必ず現場を確かめてから判断してください(火災報知器が鳴りやまない。受信機の表示から、止め方が決まります)。
厨房の換気扇が止まったら
厨房の換気扇は、調理の煙や湿気を外に出すだけでなく、ガスの機器が燃えるのに要る新しい空気を取り入れる役目も持っています。換気扇が止まった厨房でガスの機器を使い続けると、空気が足りなくなって不完全燃焼を起こし、色もにおいもない一酸化炭素が出ることがあります。調理員が頭痛やめまい、吐き気を訴えたら、すぐに外の空気を吸える場所に移します。
図3 厨房の換気扇が止まったときにすることと、その日の食事の回し方。
その日の食事は、電気の調理器具を使う、加熱の少ない献立に切り替える、といった形で回します。給食を委託している施設は、委託先と相談して決めます。厨房の機器が止まったときの全体の手順は厨房の冷凍冷蔵庫が止まった。食材の判断は、温度の記録で決まります、ガスのにおいや一酸化炭素への備えはガスのにおいがしたら、火も電気のスイッチも触らないにまとめています。
厨房の換気扇は、油を含んだ空気を吸い込むため、フィルターやダクトの中に油がたまりやすい設備です。油がたまると吸い込みが弱くなるだけでなく、火が入ると火災の原因にもなります。フィルターはこまめに洗い、ダクトの中は業者に定期的に清掃してもらいます。
職員が確かめられること
換気扇が止まった、吸い込みが弱い、といったときは、業者を呼ぶ前に、職員でも確かめられることがあります。ただし、天井の換気扇の本体を外したり、配線を触ったりする作業は、資格のある業者に任せてください。
職員が確かめられることと、業者に任せること| 確かめること | 中身 | 業者に任せること |
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| スイッチ | 壁のスイッチやタイマーが切れていないか | 配線やスイッチの交換 |
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| ブレーカー | 換気扇の回路のブレーカーが落ちていないか | 何度も落ちるときの原因の調べ |
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| フィルター | 吸い込み口のフィルターにほこりや油が詰まっていないか | 天井の中の本体の掃除 |
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| 外の排気口 | 建物の外の排気口に、鳥の巣や落ち葉が詰まっていないか(地上から見える範囲) | 高い所の排気口の掃除 |
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| 音と動き | 回っているか、異音がしないか | モーターや羽根の交換 |
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図4 換気扇の不具合を、止まっているか吸わないかで分ける考え方。
羽根は回っているのに吸わないときは、空気の通り道のどこかが詰まっていることが多くあります。吸い込み口にティッシュを1枚近づけて、吸い寄せられるかどうかで、吸い込みの強さのおおよその見当がつきます。フィルターを掃除しても弱いままなら、ダクトの中や外の排気口の詰まり、ダクトの外れを業者に調べてもらいます。
止まっている間の、場所ごとの手当て
換気扇が直るまでの間は、窓や扉を使って空気を入れ替えます。ただし、入居者の方の体には、寒さや暑さ、すきま風も負担になります。場所ごとに、手当てを考えます。
止まっている間の手当て| 場所 | 手当て |
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| トイレ・汚物処理室 | 扉を少し開けておく。窓があれば開ける。においの強い作業は換気のできる場所で |
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| 浴室・脱衣所 | 入浴のあとは扉と窓を開けて乾かす。床と壁の水気を拭き取る |
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| 居室 | 1時間に数回、数分ずつ窓を開ける。入居者の方の体温と室温に気をつける |
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| 食堂・共用部 | 窓を対角に2か所開けると、空気が通りやすい。扇風機やサーキュレーターで空気を外へ流す |
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感染症の方がいる居室は、ほかの部屋に空気が流れないよう、居室の扉を閉めたうえで、外に面した窓を開けます。廊下側の扉を開けて換気すると、廊下にウイルスを含んだ空気が流れることがあるためです。換気の向きは、施設の感染対策の担当と相談して決めます。
冬や夏に窓を開けるときは、入居者の方の室温と体調に気を配ります。窓を開ける時間を短くして回数を増やす、入居者の方がいない時間に開ける、上着やひざ掛けを用意する、といった工夫をします。暑い時期は、窓を開けると室温が上がることもあるため、空調と合わせて考えます(空調が止まった。業者より先に、室温を測ってください)。
換気の目安と、測り方
換気がどれくらい足りているかは、目で見ても分かりません。国は、感染症の広がりを防ぐための換気の目安として、一人あたり毎時30立方メートルの外の空気を取り入れることを示しています。建物の衛生の基準では、空気中の二酸化炭素の濃度を1000ppm以下に保つことが目安とされています。
図5 換気の目安。二酸化炭素の濃度を測ると、換気が足りているかの見当がつきます。
二酸化炭素の濃度を測る機器を置くと、換気が足りているかの見当がつきます。人が多く集まる食堂や機能訓練の部屋、窓の少ない部屋に置き、数値が上がってきたら窓を開ける、といった使い方ができます。換気が止まっている間は、この数値を見ながら窓を開ける回数を決めると、寒さや暑さとの釣り合いをとりやすくなります。
平成15年以降に建てられた建物の居室には、シックハウス対策として、24時間動かす換気の設備が付いています。この換気の設備を、寒い、音がうるさいといった理由で止めたままにしている施設もありますが、空気がよどみ、結露やカビの原因になります。感染症対策のための換気の改修は、感染症対策の改修は、動線・換気・個室・手洗いの順に考えますにまとめています。
どこに頼むか。換気扇の種類で変わる
換気扇の修理を頼む先は、換気扇の種類と、どこが悪いかで変わります。壁や天井の換気扇の本体の交換や配線は電気工事の業者、ダクトの詰まりや外れは設備の業者、熱を交換しながら換気する設備は空調の業者やメーカーの窓口が引き受けることが多くあります。
換気扇の種類と、頼む先| 換気扇の種類 | 主な不具合 | 頼む先 |
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| 壁や窓の換気扇 | モーターの故障、羽根の汚れ | 電気工事の業者 |
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| 天井に埋め込んだ換気扇 | モーターの故障、ダクトの詰まり | 電気工事の業者、設備の業者 |
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| 熱を交換する換気の設備 | フィルターの詰まり、本体の故障 | 空調の業者、メーカーの窓口 |
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| 厨房の排気のフード | ファンの故障、ダクトの油汚れ | 厨房の設備業者、ダクト清掃の業者 |
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換気扇の交換は、同じ大きさと能力の機種を選ぶのが基本です。能力の小さい機種に替えると、換気が足りなくなります。古い換気扇は製造が終わっていることも多いため、業者に今の型番を伝えて、合う機種を選んでもらいます。音の静かな機種や、湿気を感じて自動で動く機種に替えられることもあります。
連絡のときは、場所、換気扇の種類、症状(止まった、吸わない、音がする)、確かめたこと(スイッチ、ブレーカー、フィルター)、本体の型番の写真を伝えます。どこに頼めばよいか分からないときは、写真をLINEで窓口に送っていただければ、見立てと手配をします。
モデルケース:浴室の換気扇が止まり、脱衣所の火災報知器が鳴った施設
モデルケース:定員29名の地域密着型特別養護老人ホーム
浴室の換気扇が止まったまま、湿気がこもっていた
変わったこと(結果)
入浴の介助のあと、脱衣所の火災報知器が鳴りました。職員が現場を確かめ、火災でないことを確かめてから受信機の音響を止めると、浴室の換気扇が止まっていて、脱衣所まで湿気がこもっていることに気づきました。扉と窓を開けて乾かし、翌日、電気工事の業者に換気扇のモーターを交換してもらいました。
背景と、困っていたこと
浴室の換気扇は、数週間前から音が大きくなっていましたが、誰も報告していませんでした。フィルターも長く掃除されていませんでした。
その後に決めたこと
施設は、換気扇のフィルターを月に1回掃除する担当を決め、音が大きくなった、吸い込みが弱いといった気づきを書き込む紙を、浴室と厨房に置きました。