窓の不具合に気づいたら、最初にすること
窓が閉まらない、鍵がかからない、と聞くと、まず修理のことを考えがちです。けれど介護施設では、その窓が入居者の方の安全とどう関わっているかを先に考えます。2階以上の窓なら転落、1階の窓なら認知症の方がひとりで外へ出てしまうこと、どの階でも寒さ暑さと防犯が気になります。修理の連絡は、この手当てのあとで十分に間に合います。
- 入居者の安全を確かめるその部屋の入居者の方に、窓から身を乗り出す、窓から外へ出ようとする、といった心配がないかを確かめます。
- 窓の前を片付ける窓の前にベッドや家具、椅子、踏み台になりそうな物を置かないようにします。
- 応急で止める補助の鍵や、窓の開く幅を止める器具を付けて、開かないようにします。
- 部屋や見守りを考える心配がある方は、直るまで別の部屋に移っていただく、見守りの回数を増やす、といった手当てをします。
- 業者に連絡するサッシの動きや鍵は建具やサッシの業者、ガラスはガラスの業者に頼みます。
図1 窓が閉まらないときの手順。修理より先に、転落と外へ出る心配の手当てをします。
夜間に気づいたときは、その部屋の入居者の方が眠っている間に、窓の前の物を片付けておきます。入居者の方が目を覚ましたときに、窓のまわりがいつもと違うと落ち着かなくなることもあるため、片付けは最小限にとどめ、見回りで様子を確かめます。朝になったら、施設長と業者に連絡します。
補助の鍵や、窓の開く幅を止める器具は、ホームセンターなどで手に入り、工具を使わずに付けられるものもあります。ただし、サッシに穴をあける器具は、サッシを傷めたり、防火の性能に関わったりすることがあるため、付ける前に業者に相談します。
転落と、外へ出ることを防ぐ
高齢の方が窓から転落する事故は、毎年のように報告されています。認知症のある方が、窓を出口と思って外へ出ようとしたり、夜間に混乱して窓から出ようとしたりすることもあります。窓の不具合を直すときは、窓が開く幅を制限できるかも、あわせて考える機会です。
窓まわりの事故を防ぐ備え| 備え | 中身 | 気をつけること |
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| 窓の開く幅を止める器具 | 窓が一定の幅以上に開かないようにする | 換気の幅は残す。火災のときの逃げ道を考える |
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| 補助の鍵 | 主の鍵とは別に、上や下にもう一つ付ける | 職員がすぐに開けられる位置に |
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| 窓の前に物を置かない | ベッドや家具、椅子を踏み台にさせない | 模様替えのときも確かめる |
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| 見守りの機器 | 窓の開閉を知らせるセンサー | 知らせが来たときに誰が行くかを決める |
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図2 窓の開く幅を止めるときに、両立させること。
窓を完全に開かないようにすると、換気ができなくなり、火災のときの逃げ道や、消防隊が外から入る経路をふさぐことがあります。どの窓を、どの幅まで開くようにするかは、施設の消防計画と合わせて、業者と所轄の消防署に相談して決めます。認知症のある方への配慮は、認知症のある方への配慮は、工事の段取りで変化を小さくすることですにまとめています。
ガラスが割れたら
ガラスにひびが入った、割れた、というときは、まず入居者の方と職員がけがをしないようにします。割れたガラスの細かい破片は、思った以上に遠くまで飛んでいることがあります。
- 人を離すその場所から入居者の方を離し、裸足やスリッパの方が近づかないようにします。
- 破片を片付ける厚手の手袋をはめ、大きな破片を拾ってから、小さな破片を掃除機や粘着テープで取ります。拾った破片は厚紙や新聞紙で包み、「割れ物」と書いて、自治体の決まりに沿って捨てます。
- 割れた所を覆う割れた所やひびの入った所を、養生のテープや段ボール、ビニールで覆って、雨風と、さらに割れるのを防ぎます。
- 写真を撮る割れた所と、割れた原因が分かるもの(ぶつかった物、外からの物)の写真を撮ります。
- ガラスの業者に連絡するガラスの種類と大きさが分かれば伝えます。分からなければ写真を送ります。
ひびが入っただけのガラスも、温度の差や振動で急に割れることがあります。ひびの上から養生のテープを貼り、窓の開け閉めは控えます。網の入ったガラスは、日差しで温まった部分と冷たい部分の差で割れることがあり、網がさびて割れることもあります。原因が分からないときは、業者に見てもらいます。同じ面の窓で割れがくり返すときは、ガラスの種類や日差しの当たり方を含めて、替え方を相談します。
人や物がぶつかって割れたとき、外から物が飛んできて割れたときは、保険で補償されることがあります。写真と、割れた日時、原因を記録しておき、保険の代理店に相談してください。
サッシが重い・閉まらない・鍵がかからない
窓のサッシの不具合は、引き戸のドアと同じように、いくつかの部品のどれかで起きています。症状から部品の見当をつけると、頼む先と、修理で済むかの見当がつきます。
サッシの症状と、原因の部品| 症状 | 原因の部品 | 職員でできること |
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| 重い・引っかかる | サッシの下の戸車の摩耗、レールのごみや傷 | レールの溝のごみを取る |
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| 閉めてもすき間がある | 戸車の高さのずれ、サッシのゆがみ | すき間の場所を記録する |
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| 鍵(クレセント)がかからない | 鍵の受け金具の位置のずれ、鍵の傷み | 無理に回さない |
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| すきま風が入る | ゴムのパッキンの傷み、サッシのずれ | すき間の場所を記録する |
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| 網戸が外れる・閉まらない | 網戸の戸車、外れ止めの部品 | 外れたら無理にはめ込まない |
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図3 サッシの不具合が起きる部品。
レールの溝にたまったごみや小石は、サッシが重くなるよくある原因です。掃除機や古い歯ブラシで溝のごみを取るだけで、軽くなることもあります。戸車がすり減っているときは、サッシを外して戸車を交換するため、業者に頼みます。サッシは重く、外すときに倒れると危ないため、職員が外すのはやめてください。
サッシの鍵がかからないのは、戸車がすり減ってサッシが下がり、鍵と受け金具の位置がずれているためのことが多くあります。戸車の高さを調整したり交換したりすると、鍵がかかるようになります。鍵を無理に回すと、鍵が折れたり受け金具が外れたりするため、無理に回さずに業者に頼みます。
すきま風と結露、寒さ暑さ
窓は、建物の中で熱がいちばん出入りしやすい場所です。すきま風が入る、窓のまわりがひどく結露する、といった不具合は、居室の寒さ暑さに直結します。高齢の方は、室温の変化を感じにくく、体の負担が大きくなります。
すきま風は、パッキンの傷みやサッシのずれで起きます。パッキンの交換や戸車の調整で直ることが多くあります。結露がひどいときは、窓の外の空気と部屋の温度の差が大きいことが主な原因です。結露の水を放っておくと、窓のまわりの壁紙やカーテンにカビが出るため、こまめに拭き取ります。
図4 窓の寒さ暑さへの手当て。
冬に居室の窓のそばにベッドを置くと、窓から伝わる冷気で、眠っている方の体が冷えることがあります。窓とベッドの間を少し空ける、厚手のカーテンを床まで下ろす、といった工夫で冷えを和らげられます。夏は、日差しの入る窓に、すだれや日よけのフィルムを使うと、室温の上がり方を抑えられます。
窓の内側にもう一つ窓を付ける内窓や、ガラスを二重の複層ガラスに替える改修は、寒さ暑さと結露を大きく減らせます。省エネの補助を使えることもあります。窓の断熱の改修は、断熱の改修は、熱の出入りがいちばん多い窓から始めますにまとめています。
防火の窓と、網入りのガラス
建物の場所によっては、窓が防火の設備として決められていることがあります。隣の建物との距離が近い外壁の窓などは、火が燃え移るのを防ぐために、網入りのガラスや、防火の性能を持つサッシが使われています。
こうした窓のガラスやサッシを替えるときは、同じ防火の性能を持つものに替える必要があります。ふつうのガラスに替えてしまうと、建物の決まりに合わなくなることがあります。ガラスの業者に頼むときは、今のガラスが網入りか、防火の窓かを伝え、同じ性能のものを選んでもらいます。分からないときは、建物の図面や、防火設備の検査の報告書で確かめられることがあります。網入りのガラスは、ガラスの中に細い金網が見えるので、見た目でも分かります。
ガラスの種類と、替えるときの注意| ガラスの種類 | 特徴 | 替えるときの注意 |
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| 網入りのガラス | 割れても破片が落ちにくい。防火の窓に使われる | 防火の窓なら同じ性能のものに |
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| ふつうの1枚のガラス | 割れると破片が飛び散る | 安全のためのガラスに替えることも考える |
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| 複層のガラス | 2枚のガラスの間に空気の層。断熱に優れる | サッシが対応しているかを確かめる |
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| 割れにくい安全のガラス | 割れても破片が細かい、または飛び散りにくい | 転倒しやすい場所の低い窓に |
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どこに頼むか。伝えること
窓の不具合の頼み先は、サッシの動きや鍵なら建具やサッシの業者、ガラスならガラスの業者、窓まわりの雨漏りなら防水やシーリングの業者、と頼む先が分かれます。工務店がまとめて引き受けることもあります。何か所も不具合があるときは、まとめて見てもらうと出張の費用が一度で済みます。
連絡のときに伝えること| 項目 | 伝える中身 |
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| 場所 | 何階のどの部屋の、どの窓か |
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| 症状 | 閉まらない、重い、鍵がかからない、すきま風、割れた |
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| 窓の大きさと種類 | 引き違い、開き窓など。おおよその大きさ |
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| ガラスの種類 | 網入りか、ふつうのガラスか(分かれば) |
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| 急ぎの度合い | 転落や外へ出る心配、雨風が入るか |
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| サッシのメーカー | サッシの枠の刻印やシールの写真 |
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窓のまわりから雨が漏れてくるときは、サッシとまわりの壁の継ぎ目のシーリングが傷んでいることがあります。雨漏りの調べ方は、雨漏りは、原因を見つけるまでが工事の半分ですにまとめています。どこに頼めばよいか分からないときは、窓と枠の写真をLINEで窓口に送っていただければ、見立てと手配をします。
モデルケース:2階の居室の窓の鍵がかからなくなった施設
モデルケース:定員27名の認知症の方のグループホーム(2階建て)
2階の居室の窓の鍵が、閉めてもかからなくなった
変わったこと(結果)
2階の居室の窓の鍵がかからなくなったと、夜勤の職員が気づきました。その居室の入居者の方は、夜間に窓のそばに立つことがあったため、その夜は窓の前のいすを片付け、見回りの回数を増やし、窓の上に補助の鍵を付けました。翌日、建具の業者がサッシの戸車を調整すると、鍵はかかるようになりました。
背景と、困っていたこと
この施設では、窓の鍵がかからないことに以前から気づいていた職員がいましたが、「少し力を入れれば閉まる」と、報告されていませんでした。窓の開く幅を止める器具も、付いていない部屋がありました。
その後に決めたこと
施設は、2階のすべての居室の窓に、開く幅を止める器具を付けることにし、どの幅まで開くようにするかを業者と相談して決めました。窓の鍵や開け閉めの不具合に気づいたら、すぐに書き込む決まりにしました。