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夜中にがんの余命を考えてしまう|考えに飲み込まれない方法

このテーマの総論:がんの不安で夜眠れない|朝まで自分を守る6つの方法

この記事の結論

夜中に余命や最期のことを考えてしまうときは、「考えない」と力むより、昼のうちに考える時間と場所を決め、夜に浮かんだ考えは見出しだけ紙に書いてその時間へ預けるほうが、考えに飲み込まれにくくなります。預けた考えは、昼に一人で、または誰かと一緒に開きます。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「『がん相談支援センター』とは」/同「相談… ほか6件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

夜中に「あと何年だろう」「最期はどんなふうだろう」と考えが止まらないときは、考えを追い払おうとするより、考えてよい時間と場所を昼のうちに決めて、夜の考えをそこへ預けるほうが、飲み込まれずにすみます。考えること自体は、やめなくていいのです。

この方法がどのくらい合うか、慣れるまでにどれくらいかかるかは、人によって、また体調や治療の時期によって違います。一晩で効く方法ではありませんが、うまくいかない夜の手当てまで含めて手順で覚えておくと、迷わずに使えます。夜中にこのページを探し当てた自分を、どうか責めないでください。考えずにいられないのは、それだけ大事なものを抱えているからです。

布団に入ると、考えが始まってしまう方へ

  • 布団に入ると「あと何年だろう」「最期はどんなふうだろう」が始まって、止め方が分からない。
  • 考えないようにしようとするほど、かえって頭から離れなくなる。
  • こんなことを考えるのは縁起でもない、弱いと言われそうで、誰にも打ち明けられない。

この記事で分かること

  • 余命や最期の考えを「心配の時間」へ預ける方法の全体像
  • 心配の時間の決め方(時刻・場所・長さ・始まりと終わりの合図)
  • 夜中に浮かんだ考えの預け方と、心配の時間での開き方
  • うまく預けられない夜の手当てと、昼間に誰かと話すという選択肢

夜中になると自分の余命や最期のことを考えてしまい、止まりません。どうすればいいですか?

考えるのをやめようとせず、考えてよい「時間」と「場所」を昼のうちに決めてください。夜に浮かんだ考えは、見出しだけを紙に書いてその時間へ預け、続きは昼に開きます。考えを消すのではなく、置き場所を移す方法です。

「考えないようにしよう」と決めた夜ほど、目が冴えてしまうことがあります。考えないようにするには、自分が今それを考えていないかどうかを、ずっと見張っていなければなりません。見張るたびに、見張っている中身を思い出すので、考えは何度でも戻ってきます。静かな部屋で時計の音を気にしないようにすると、かえって秒針ばかりが耳に入ってくるのと似ています。

しかも、余命や最期についての考えは、ちょっとした心配ごととは重さが違います。自分の人生と、大切な人と過ごす時間に関わる考えです。追い払われるたびに、心は「まだ取り合ってもらっていない」と感じて、夜ごとに戸をたたきます。それなら、追い払う代わりに「この時間に、ちゃんと聞く」と約束する。それが、この記事で紹介する「心配の時間」の考え方です。

最期のことを考えてしまうのがおかしくない理由は夜に最期を考えてしまうときの記事で、余命の数字そのものとの距離の取り方は数字に振り回されないための記事で扱っています。ここでは、考えを預けて、昼に開くまでの手順に絞ってお伝えします。

「心配の時間」とは、どんな方法ですか?

一日のうち決まった時刻と場所で、余命や最期のことを考えてよい時間をとり、それ以外のときに浮かんだ考えは、その時間まで預けておく方法です。不安と付き合うための一般的な工夫として知られるもので、治療法ではありません。

心配ごとに決まった「出番」を用意するやり方は、考え方や行動の癖に働きかける心理的なアプローチ(認知行動的な工夫)の中で、よく紹介されてきました。病気を治すものでも、不安をゼロにするものでもありません。合うかどうかには個人差があり、試してみて合わなければ、やめてかまいません。

流れは「決める」「預ける」「開く」「閉じる」の4つで、下の図の順に進みます。たとえるなら、劇場やホテルのクローク(手荷物の預かり所)に近いかもしれません。重いコートを抱えたまま客席に座ると、膝の上がずっと気になります。クロークに預けて番号札をもらえば、コートは消えていないのに、両手は空きます。夜の考えも同じで、預け先と受け取る時刻がはっきりしていれば、夜の自分は手を放しやすくなります。

  1. 1決める昼のうちに、考えてよい時刻と場所を一つずつ決める
  2. 2預ける夜中に浮かんだ考えを、見出しだけ小さな紙に書いて封筒に入れる
  3. 3開く心配の時間に封筒を開け、一枚ずつ考えたり、行き先を決めたりする
  4. 4閉じるタイマーが鳴ったら封筒をしまい、終わりの合図をして暮らしに戻る
余命や最期の考えを「心配の時間」へ預ける4つの段階

心配の時間は、いつ・どこに決めればいいですか?

眠る直前は避け、体力が少し残っている昼から夕方に、毎日おおむね同じ時刻で決めます。場所は寝室の外の、終わったら立ち上がって離れられる椅子やテーブルが向いています。長さは短めにし、タイマーで終わりを知らせます。

時刻──眠る前ではなく、少し余力のある時間に

寝る直前に心配の時間を置くと、考えた余韻をそのまま布団に持ち込みやすくなります。昼食のあと、買い物から戻ったあと、夕食の支度にかかる前など、体と頭に少し余力が残っている時間を選んでください。毎日おおむね同じ時刻にしておくと、夜中の自分に「あの時間が来る」と言い聞かせやすくなります。治療の日や具合の悪い日は無理に守らず、ずらしたり休んだりしてかまいません。

場所──寝室の外の、決まった一か所

ベッドや布団の上は、眠るための場所として残しておきます。台所の端の椅子、窓ぎわの小さなテーブル、ベランダの前に置いたクッション。決まった一か所を「考えてよい場所」にすると、そこから立ち上がること自体が、考えを置いていく合図になります。家族と食事をとる席は、できれば避けてください。考えの重さを、家族との食卓に持ち込まないためです。

長さと、始まり・終わりの合図

長さは、お茶を一杯飲み終えるくらいの短い時間で十分です。キッチンタイマーかスマホのタイマーをかけ、鳴ったら途中でも閉じます。始まりと終わりには、小さな合図を決めておきます。始まりは封筒の表に日付を書くこと、終わりは封筒を引き出しにしまって手を洗うこと、というように。合図があると、考える時間と暮らしの時間の境目がはっきりします。

観点向いている決め方避けたい決め方
時刻昼から夕方の、毎日ほぼ同じ時刻寝る直前や夜中、その日の気分しだい
場所寝室の外の、決まった椅子やテーブル布団の上、家族と食事をとる席
長さタイマーで区切った短い時間終わりを決めず、気が済むまで
終わり方封筒をしまう、手を洗うなどの合図考えたまま、次の用事に移る
心配の時間に向いている決め方と、避けたい決め方

夜中に考えが浮かんだら、どうやって預ければいいですか?

枕元の小さな紙に、考えの「見出し」だけを書き、その横に明日の心配の時間の時刻を添えて、封筒か缶に入れます。場面の細かいところは書きません。書くのは、あとで開くための目印だけです。

用意するものは、名刺くらいの大きさの紙を数枚と、ペン、空き封筒か小さな缶です。ここでは、その紙を「預かり札」と呼びます。

札に書くのは、見出しになる数語だけです。「あと何年」「最期の場所」「娘の結婚式」「入院したら猫は」。その横に「→明日 16時」と、受け取る時刻を書きます。見出しだけにするのは、夜中に場面を細かく書くと、書いているそばから想像がふくらみ、かえって目が冴えてしまうからです。見出しは、昼の自分がその考えを見つけ出すための荷札で、それ以上の役目はありません。

書いたら札を封筒に入れ、心の中で「預けた。続きは明日の4時」と言います。声に出さなくてかまいません。そのあとは、あらかじめ決めておいた「戻り先」に注意を移します。聞き慣れた朗読や音楽を小さく流す、何度も読んだ本を開く、といった、頭を使わずにすむものが向いています。眠れない夜そのものの過ごし方は、朝まで自分を守る6つの方法にまとめています。

同じ考えが戻ってきたら、札を増やさずに線を足す

預けたはずの考えが、しばらくしてまた浮かんでくることがあります。そのときは新しい札を書かず、同じ札の端に線を一本足すだけにします。中身を書き直すと、考えの中へもう一度入り込んでしまうからです。線の数は、あとで役に立ちます。何本も線がついた札は、その考えがあなたにとって大きいことを示す目印になり、昼に誰かと話す一枚を選ぶ手がかりになります。

預けずに、すぐ連絡してほしい考えもある

痛みや息苦しさ、熱などの体の変化から考えが始まったときは、札に書いて朝を待たないでください。通院先から聞いている夜間の連絡先に電話します。救急車を呼ぶか迷うときに医師・看護師・救急救命士へ電話で相談できる#7119は、実施していない地域もあります。命に関わると感じたら119番です。「消えてしまいたい」という思いが混じるときも預けずに、24時間・無料で受け付けているよりそいホットライン(0120-279-338)へ電話してください。差し迫っていると感じたら、119番です。

札に書くこと

  • 考えの見出しを数語で(「あと何年」「最期の場所」)
  • 受け取る時刻(「→明日 16時」)
  • 同じ考えが戻ってきたら、線を一本

夜中は書かないこと

  • 最期の場面の細かい描写
  • 年数や日数の計算
  • 「こうするしかない」という結論
夜中に、預かり札に書くことと書かないこと

心配の時間になったら、何をすればいいですか?

封筒から札を出し、一枚ずつ「今日はここで考える」「医療者に聞く」「誰かと話す」「今日は開けない」のどれにするかを決めます。考える札は時間いっぱい考えてよく、涙が出てもかまいません。タイマーが鳴ったら、途中でも閉じます。

いざ心配の時間になると、夜中にはあれほど大きかった札が、昼の光の中では少し違って見えることがあります。「もう考えなくていい」と思える札は、その場で破って捨ててかまいません。それは逃げではなく、夜の自分が預けたものを、昼の自分が確かめて手放したということです。

考えると決めた札は、時間いっぱい考えてかまいません。ノートに書き広げてもいいし、窓の外を眺めながら頭の中で転がすだけでもいい。泣けてきたら泣いてください。この時間は、そのためにとってあります。

「医療者に聞く」に分けた札は、質問の形に書き直して、次の診察のメモに移します。たとえば「あと何年」の札なら、「この先、どんな変化に備えておけばいいですか」と言い換えられます。数字そのものを知りたいのか、備え方を知りたいのかを分けておくと、診察室で聞きやすくなります。

「今日は開けない」と決めた札は、そのまま封筒に戻します。最期のことを今は考えたくない、知りたくないという気持ちも、あなたが選んでよいものです。開けない札が残っていても、失敗と数えなくて大丈夫です。

  1. Q1この札について、今日ここで考えたいですか

    はいタイマーが鳴るまで考える。泣いてもよい

    いいえ「今日は開けない」として封筒に戻す

  2. Q2主治医や看護師に聞けば分かることが含まれていますか

    はい質問の形に書き直し、次の診察のメモへ移す

    いいえ次の問いへ

  3. Q3線が何本もついていて、一人で開け続けるのが重い札ですか

    はい一緒に開ける相手と、話す日を決める

    いいえ考え終えたら破って捨てるか、封筒に戻す

心配の時間に、札の行き先を決める分かれ道

最期のことを、昼間に誰かと話すという選択肢はありますか?

あります。線が何本もついた札ほど、一人で開け続けるより、誰かと一緒に開けたほうが軽くなることがあります。家族、主治医や看護師、がん相談支援センター、家族以外の相談窓口の中から、札の中身に合う相手を選べます。

誰かと話すといっても、改まって「最期の話がある」と切り出す必要はありません。札を一枚だけ見せて、「夜中にこれを考えてしまうの」と言う。それだけで、話の入り口になります。答えを求めないなら、「答えはいらないから、聞いてくれる?」と添えておくと、相手も身構えずにすみます。

これからの治療やケア、過ごし方の希望が札に含まれているなら、主治医や看護師が話し相手になります。厚生労働省は、もしものときに望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合って共有する取り組みを「人生会議」と呼んでいます。書類を作ることが目的ではなく、気持ちが変われば、何度でも話し直せるものです。お金や療養中の暮らしの札なら、病院によっては医療ソーシャルワーカーが、使える行政サービスなども含めて相談に応じています(窓口の名前は病院ごとに違います)。

病院の外で話したいときは、全国のがん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターがあります。ご本人も家族も無料・匿名で使え、その病院に通っていなくても相談でき、話した内容が相談した人の同意なく担当医に伝わることはありません。

心配の時間そのものを、誰かとの時間にする方法もあります。家族に「この時間だけ、隣に座っていて」と頼む。がんと家族の相談室なら、フォームで心配の時間に合わせた時間帯を指定していただくと、担当がその時間にお電話し、評価も助言もしない20分で札の中身をそのまま聞きます。ご希望があれば、話した内容の記録も残しません。先生の言葉で引っかかっているところがあれば、一般的な意味をわかる言葉にして、次の診察で聞く質問を3つにまとめてお送りします。担当が病状を判断したり、見通しを予測したりすることはありません。

札の中身一緒に開ける相手最初の一言の例
治療や過ごし方の希望主治医・看護師「今後のことで、希望を少し話しておきたいです」
家族に伝えておきたいこと家族「夜中に考えた札が一枚あるの。読んでくれる?」
お金や療養中の暮らし医療ソーシャルワーカー・がん相談支援センター「療養中の暮らしのことで相談したいです」
ただ怖い、悲しい評価や助言をしない聞き手「答えはいらないので、聞いてほしいです」
札の中身ごとの、一緒に開ける相手と最初の一言

うまく預けられない夜は、どうすればいいですか?

始めたばかりのころは、預けた考えが何度も戻ってくるのが普通です。線を足すだけにして、それでも飲み込まれそうなら、寝室を出て臨時の短い心配の時間をとるか、誰かに言葉を渡してください。眠れたかどうかで、うまくいったかを決めなくてかまいません。

書いたとたんに、場面が止まらなくなる夜

札に見出しを書いたとたん、最期の場面が次々に浮かんでしまう夜もあります。そんなときは布団の中で戦い続けず、いったん起きて、決めておいた心配の場所へ移ってください。タイマーをかけて短い臨時の時間をとり、浮かんだことを書き出し、鳴ったら封筒を閉じて布団に戻ります。「夜中は考えない」ではなく、「考えるなら、決めた場所で、決めた長さだけ」というのが、この方法の約束です。体がつらくて起き上がれない夜は、横になったまま札に線を足すだけで十分です。

心配の時間がつらくて、封筒を開けられない日

封筒を開けるのが怖い日は、開けなくてかまいません。開ける札を一枚だけにする、誰かに隣にいてもらう、相談の電話の時間に合わせて開ける、と形を変えることもできます。開けた札で涙が止まらなくなったときの落ち着き方は、夜中に涙が止まらないときの10分の手順にまとめています。

札がたまっていく、昼も頭から離れない

封筒の札が日ごとに増えていく、心配の時間以外も一日じゅう考えが離れない、眠れない・食べられない日が続いている。こうしたときは工夫だけで抱えようとせず、主治医や看護師に「夜になると、この先のことを考えて止まらない」と伝えてください。がん情報サービス(国立がん研究センター)の緩和ケアの説明にも、「がんと診断されたときから始まります」とあります。体の痛みだけでなく気持ちのつらさも相談してよい対象で、病院によっては、がんの患者さんの心を専門にみる精神腫瘍科や心療内科、心理の専門職につないでもらえます。病院の外では、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)にかけると、かけた地域の都道府県・政令指定都市の公的な相談窓口につながります(曜日・時間は地域で異なり、通話料がかかります)。

  1. 1線を足す戻ってきた考えは、同じ札に線を一本。中身は書き直さない
  2. 2臨時の時間をとる寝室を出て決めた場所で短く考え、タイマーで閉じる
  3. 3誰かに渡す一言をLINEや紙に残し、昼に一緒に開く相手を決める
  4. 4医療者に伝える札がたまる、昼も離れない、眠れない日が続くときは主治医や看護師へ
  5. 5今すぐ連絡する体の急な変化は病院の夜間連絡先か119番、「消えてしまいたい」はよりそいホットラインへ
うまく預けられない夜の、手当ての順番

夜中に「あと何年」と数えていたご本人は、どう変わった?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
50代・ご本人(女性。通院で治療を続けながらパートで働く。夫と二人暮らしで、息子は県外にいる)
相談のあとに変わったこと
心配の時間を夕方4時の台所の椅子に決め、夜中の考えを見出しだけ札に書いて預けるようになった。最初の週に11枚あった札は、3週目には4枚に減った。線が5本ついた札を持って、主治医に過ごし方の希望を切り出せた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から1か月ほどたったころ、この方の台所の引き出しには、輪ゴムでとめた札の束が入っていました。最初の週に書いた札は11枚、3週目は4枚。夜中に目が覚めても、枕元の札に「あと何年」と書いて封筒に入れ、「続きは4時」とつぶやいて、ラジオの朗読を小さく流すようになりました。いちばん線が多かったのは「最期の場所」の札で、5本ついていました。その札を持って、次の診察で「これからの過ごし方の希望を、少し話しておきたいです」と主治医に切り出せました。「考えるのをやめたわけじゃないんです。考える場所ができただけ」と話しています。

2. 相談を考えた背景

治療が長くなるにつれて、布団に入ると「あと何年だろう」と数え始める夜が増えていきました。昼は夫と普段どおりに話し、パートにも出ている。けれど夫の寝息が聞こえ始めると、最期はどこで迎えるのか、息子に何を残せるのかと考えが走り出し、気づくと窓の外が白んでいる。そんな夜が続いたことが、相談を考えたきっかけです。

3. 相談する前に困っていたこと

「考えないようにしよう」と決めるほど、かえって考えは強くなりました。夜中に余命について検索し、数字や体験談を読み比べて、さらに眠れなくなる。夫に話せば心配させる、主治医に治療以外のことを聞いてはいけない気がする。考えてしまう自分を「弱い」と責める気持ちも重なっていました。

4. ここを選んだ理由・決め手

がん相談支援センターのことは知っていましたが、平日の昼は仕事と通院で埋まっていました。24時間対応の電話も、夫の隣で声を出すことを思うと選べなかったといいます。決め手は、フォームで電話の時間帯を指定でき、最初は評価も助言もせずに聞いてもらえると書かれていたことでした。夜中の2時すぎ、「余命のことを考えてしまって止まりません」と一行書いて送りました。

5. 相談で話したこと・その後

指定した夕方の時間に担当から電話があり、最初の20分は、担当が口をはさまずに話を聞きました。そのあと、心配の時間という工夫があることを伝え、時刻と場所を一緒に決めました。担当は病状の見通しについて、何も言っていません。最初の数日は札に場面を細かく書きすぎて、かえって怖くなったそうです。見出しだけにしてから、手が止まりやすくなりました。一度だけ、眠れずに台所の椅子へ移り、タイマーを使って臨時の時間をとった夜もありました。次の診察で聞く質問は3つにまとめて送られ、その一つが「これからの過ごし方の希望を、どなたに話しておけばいいですか」でした。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 夜になると、この先のことや最期のことを考えて止まらない日があります。気持ちのことを相談できる人はいますか。
  • これからの過ごし方について希望を話しておきたいのですが、いつ、どなたに話せばよいですか。
  • 余命の数字よりも、この先どんな変化に備えておけばよいかを教えていただけますか。
  • 不安で眠れない日が続くとき、緩和ケアのチームや心の専門の方に相談できますか。
  • 夜に体の具合が変わったときは、どこに連絡すればよいですか。

とはいえ、夜に考えてしまうあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──考えてしまう夜があっても、あなたは崩れていない

余命や最期のことを考えてしまうのは、それだけ大事なものを抱えて暮らしているからです。札がうまく書けなかった夜も、何度も線を足した夜も、あなたが自分の心と付き合おうとした夜です。家族の前で平気なふりをしている方も、心配の時間の中では、泣いてかまいません。ここでは泣いていいのです。そして、考えたくない日は考えなくていい。知らないでいることも、聞かずにおくことも、あなたが選べます。

② 実務のこと──心配の時間を、予定表の中の一つの予定にする

心配の時間は、気が向いたときにとるものではなく、通院や買い物と同じ「予定」として扱うと続けやすくなります。カレンダーに書き込み、通院の日や具合の悪い日は、前の日のうちに時刻をずらしておく。同居の家族がいるなら、「この時間は台所で一人になりたい」のか、「この時間だけ隣にいてほしい」のかを伝えておきます。診察の前の日には封筒の札を見直し、線の多い札を一枚選んで、診察室か誰かとの電話に持っていく。夜の考えが、昼の暮らしの中に決まった通り道を持つと、夜中にだけ居座ることが減っていきます。

今日できること

今夜から明日の夕方までに用意する3つのこと

  1. 明日の心配の時間を決める

    時刻と場所を一つずつ決め、カレンダーかスマホの予定に「心配の時間」と書き込みます。寝る直前と寝室は避けます。

  2. 預かり札と封筒を枕元に置く

    名刺くらいの紙を数枚、ペン、空き封筒を一つ。封筒の表に「見出しと時刻だけ」と書いておくと、夜中に書きすぎずにすみます。

  3. 最初の一回の過ごし方を選ぶ

    一人で開けるか、家族に隣にいてもらうか、相談室の電話の時間にするかを決めます。電話にするなら、フォームに希望の時間帯を書いて送ります。

よくある質問

心配の時間をつくると、かえって余命のことばかり考える一日になりませんか?

決まった時間に考えると約束しておくと、それ以外の時間に考えが割り込んできたとき、「あとで」と言える先ができます。考える量が増えるというより、一日じゅうに散らばっていたものが一か所に集まるイメージです。ただ、心配の時間を延長し続けたり、一日に何度もとったりすると、考えに浸る時間が長くなります。長さはタイマーで守り、鳴ったら閉じてください。

心配の時間に、余命の数字を調べてもいいですか?

調べること自体を禁じる必要はありませんが、心配の時間を検索の時間にしないほうが続けやすくなります。数字や体験談を読むと、新しい札が次々に生まれてしまうからです。数字の意味が気になる札は「医療者に聞く」に分け、主治医に「私の場合、この数字はどう考えればいいですか」と聞く形に変えてみてください。

家族に封筒を見られたらと思うと、書けません。

札には見出ししか書かないので、家族が目にしても中身までは分かりにくい形にできます。それでも気になるなら、自分にだけ分かる言葉(「あの件」「春のこと」)で書く、鍵のかかる引き出しや手帳のポケットにしまう、といった方法があります。いつか家族に見せたい札が出てきたら、そのとき一枚だけ選べば十分です。

毎日続けないと、意味がありませんか?

毎日でなくてもかまいません。具合の悪い日や、治療で慌ただしい日は休んで大丈夫です。ただ、夜中の自分に「あの時間に考える」と約束するには、時刻がある程度決まっていたほうが信じやすくなります。休んだ日の札は、次の心配の時間にまとめて開いてください。

心配の時間に、泣いてしまいます。

泣いてかまいません。心配の時間は、夜中に抱えていたものを、安全な場所で外に出すための時間です。タイマーが鳴っても涙が止まらないときは、終わりの合図だけは済ませて、温かいものを飲みながら落ち着くのを待ってください。泣く日が続き、昼の暮らしにも響くようなら、主治医や看護師にも伝えてください。

夜中に、預けずに今すぐ誰かと話したくなったら?

声を出せるなら、よりそいホットライン(0120-279-338)が24時間・無料で受け付けています。がんを専門にした窓口ではないものの、夜中に抱えきれなくなった気持ちを、そのまま声にできます。声を出しにくい夜は、がんと家族の相談室のLINEに一言だけ残してください。夜に届いたものは、翌朝いちばんに読んで返事をします。夜のうちに相談室の電話(080-4178-5017)へかけた場合は自動音声が受け付け、翌朝9時までに担当から折り返しのお電話をします(平日9時〜18時は担当が直接出ます)。

夜に預けた考えを、昼の電話で一緒に開きませんか

ご希望の時間帯と連絡方法をお書きください(お名前はニックネームで構いません)。送信の直後に受付確認のメールが届き、あとは指定の時間帯に担当からの電話を待つだけです。まずは札の中身を評価も助言もせずにお聞きし、ご希望なら、心配の時間の決め方や、次の診察で聞く質問3つも一緒に整えます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

    3. お見積りの後にお断りいただいても構いません

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    夜は結論を出さず、明日の朝に聞くことを書き残す

    夜は、不安がいちばん大きく感じられる時間です。検索を続けるほど、眠れなくなることもあります。今夜は結論を出さず、明日の朝に看護師や主治医に聞きたいことを1行だけ書いて、少しでも体を休めてください。

    夜に残すメモの例

    「明日の朝、看護師さんに聞くこと:夜中に呼吸のリズムが変わったように見えたのは、様子を見てよいものか。」

    1. 気になったことを1行だけメモして、画面を閉じる
    2. 誰かに伝えておきたいときは、LINEにひとこと残す(夜に届いたLINEは、翌朝にお返事します)
    3. 急な体調の変化は、夜でも病棟・訪問看護・主治医へ連絡する

    手元にあると話しやすいもの

    • 明日の朝に聞くことの1行メモ
    • 病棟や訪問看護の、夜間の連絡先

    公的な相談先

    よりそいホットライン
    24時間・通話料無料でつながる電話相談です。
    病棟の看護師・訪問看護
    ご本人の体調の変化を、いちばん近くで見ている相談先です。夜間の連絡先も確かめておくと安心です。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

    今の気持ちを、LINEでひとこと

    「怖い」「眠れない」「先生の説明が分からなかった」。ひとことで構いません。評価も助言もせず、お返事します。

    夜に書いたLINEは、翌朝いちばんに読みます。匿名で、スタンプひとつでも。

    話してみる相談料0円
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