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転移がんはあとどれくらい?|がんの種類で違う余命の読み方

このテーマの総論:ステージ1〜ステージ4で余命は違う?|がんの生存率の読み方

この記事には、余命や生存率などの数字の話が出てきます。数字は多くの方をまとめた統計で、一人ひとりの予測ではありません。読むのがつらいときは、途中で閉じても大丈夫です。

この記事の結論

転移したがんは、転移した先ではなく、最初にできた場所の「元のがん」として治療や見通しを考えます。検索で出る生存率は何年も前に診断された大勢の人の数字で、ご本人の余命を示すものではありません。見る数字を一つに絞り、主治医に「私たちの場合」を聞くところから備えが始まります。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「用語集:生存率」;国立がん研究センター「… ほか9件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

「肺に転移した大腸がん」と言われたときに調べるのは、肺がんではなく大腸がんの情報です。肺で見つかったがん細胞は、基本的に大腸がんの性質を引き継いでいるため、薬の選び方も、この先の見通しの考え方も、元の大腸がんが土台になります。肺がんの生存率をいくら読み込んでも、その方の目安にはなりません。

ただ、元のがんの数字にたどり着いても、それは過去に診断された大勢の方をまとめた統計です。転移の数や場所、体力、治療の効き方によって、同じ診断名でも経過には大きな幅があり、主治医でも言い切れないのが実際のところです。

この記事では、転移がん・多発がんと言われたときにどの数字を見ればいいか、がんの種類で経過や起きやすい症状が違う理由、5年生存率が示さないこと、そして主治医に「私たちの場合」の見通しを聞く言い方を、ご家族の目線で順に整理します。

こんな気持ちで、検索を続けている方へ

  • 父のがんは「肺に転移した大腸がん」。肺がんと大腸がん、どちらの余命を調べればいいのか分からない。
  • 検索するたびに違う数字が出てきて、どれを信じればいいのか分からなくなった。
  • 数字に振り回されるより、家族として何を準備すればいいのかを知りたい。

肺に転移した大腸がんは、肺がんと大腸がんのどちらで考えるのですか?

大腸がんとして考えます。肺にあるがんも、もとは大腸から広がった細胞なので「大腸がんの肺転移」と呼ばれ、治療の選び方や統計の見方は、元のがん(原発巣)が基準になります。

がんが最初にできた場所を「原発巣」、そこから血液やリンパの流れに乗って広がった先を「転移巣」と呼びます。肺に転移した大腸がんの細胞を顕微鏡で調べると、肺の細胞ではなく、大腸がんの細胞の特徴が見えます。そのため、肺から始まった「肺がん」とは別のものとして扱われ、薬も大腸がんの治療で使われる組み合わせから選ばれるのが一般的です。

一方で、体に出る症状は、転移した場所の影響を受けます。肺に転移があれば咳や息切れ、肝臓なら黄疸やおなかの張り、骨なら痛み、脳なら頭痛やふらつき、といった症状が出ることがあります。覚え方は「性質は元のがん、症状は転移した場所」。この2つを分けておくだけで、検索で迷ったときに、どのページを開けばいいかが見えてきます。

なお、転移は見つかったのに、検査をしても元のがんがどこか特定できない場合もあり、「原発不明がん」と呼ばれます。その場合の考え方は、最後のよくある質問で触れています。

元のがん(原発巣)で考えること

  • 薬や治療法の選び方
  • 生存率など、統計の数字を見るときの区分
  • がんの進み方の傾向

転移した場所で考えること

  • 出やすい症状(咳・息切れ、黄疸、骨の痛みなど)
  • その場所に向けた治療(放射線など)を検討するか
  • 暮らしの中で気をつけておきたい変化
「元のがん」で考えることと、「転移した場所」で考えることの分け方

「多発がん」「多発転移」と言われたら、何がいくつあるという意味ですか?

「多発」は、転移がいくつもある場合にも、独立したがんが複数ある場合にも使われる言葉です。どちらなのかで読むべき情報が変わるため、まず主治医に「どの意味の多発か」を確かめるのが近道です。

「多発肝転移」「多発肺転移」のように、一つのがんからの転移がいくつもある状態は「多発転移」と呼ばれます。がんの種類は一つなので、読むのは元のがんの情報です。大腸がんの多発肝転移なら、大腸がんの、肝臓に転移があるときの説明が参考になります。

これとは別に、同じ臓器にそれぞれ独立したがんがいくつかできている場合(多発がん)や、胃と大腸のように別々の臓器にそれぞれ元のがんがある場合(重複がん)もあります。両方をまとめて「多重がん」と呼ぶこともあります。この場合は性質の違うがんが複数あるため、どのがんが今の体調や見通しにいちばん関わっているかを医師が見極め、治療の順番を考えます。

病院では短く「多発ですね」とだけ言われることもあり、ご家族が意味を取り違えやすい言葉です。聞き返すのは失礼なことではありません。「多発というのは、転移がいくつもあるということですか。それとも、別々のがんがあるということですか」と、そのまま尋ねてかまいません。

言われた言葉一般的な意味確かめるひと言
転移元のがんが、血液やリンパの流れで別の場所に広がった状態「元のがんはどこですか」
再発治療でいったん見えなくなったがんが、再び現れた状態「最初の治療のときと、目標は変わりますか」
多発転移一つのがんからの転移が、複数の場所や同じ臓器に複数ある状態「転移はどこに、いくつありますか」
多発がん・重複がんそれぞれ独立した元のがんが、2つ以上ある状態「どのがんを優先して治療しますか」
病院でよく聞く言葉の一般的な意味と、確かめるときのひと言

がんの種類によって余命は違うのですか?転移がんや多発がんと言われたとき、数字をどう読めばいいですか?

種類によって経過の傾向は違いますが、種類どうしの数字を見比べても、ご本人の見通しは分かりません。数字は「元のがん」「診断時のステージ」「過去に診断された集団」という3つの条件つきで読むと、振り回されにくくなります。

がんの種類で経過が違う理由は、主に4つあります。1つ目は、がんができた臓器の働きです。肺なら呼吸、大腸なら便の通り道、肝臓なら栄養の処理や解毒と、臓器ごとに困りごとの出方が違います。2つ目は、進み方の傾向です。ゆっくり進むことが多い種類もあれば、比較的早く進みやすい種類もあります。3つ目は、使える治療です。ホルモン療法が使えるがん、遺伝子の変化に合わせた薬(分子標的薬)が使えることがあるがん、免疫の働きを利用する薬が使われるがんなど、選べる道が種類によって違います。4つ目は転移しやすい場所の違いで、これが起きやすい症状の違いにもつながります。

ただ、これはあくまで傾向です。同じ種類・同じステージでも、治療がよく効く方と効きにくい方では、その後の経過がまったく違うことがあります。がんの種類どうしで数字を並べて「父のがんは○○がんより厳しい」と考えるのは、根拠の弱い読み方です。

数字を読むときは、次の3つを確かめてください。①元のがんの数字か(転移した先の臓器のがんの数字ではないか)。②診断されたときのステージで分けた数字か。手術のあとに転移が見つかった(再発した)場合は、最初からⅣ期と診断された方たちとは条件が違います。③何年前に診断された方の数字か。この3つを満たしていても、それは「その条件の大勢の方の結果」であって、目の前のご家族の予測ではありません。

検索で出てくる5年生存率は、何を示している数字ですか?

5年生存率は、ある時期にがんと診断された大勢の方のうち、診断から5年後に生存していた方の割合です。何年も前に診断された集団の数字なので、ご本人の余命を示すものではなく、その後に広まった治療の結果も含まれていません。

国立がん研究センターのがん情報サービスは、生存率にいくつかの種類があると説明しています。すべての死因を含めて計算する「実測生存率」と、がん以外の病気や事故などで亡くなる影響を補正した「相対生存率」「純生存率」です。検索でよく目にする「5年相対生存率」は、がんそのものの影響を見るために、がん以外の死亡の影響を取り除いた数字です。

気をつけたいのは、数字の「時期」です。5年後の結果がそろうまでには、診断から5年以上かかります。国立がん研究センターの院内がん登録生存率集計結果閲覧システムも、示している生存率は「過去の期間にがんと診断された方の生存率」で、治療の進歩などにより「これから治療を受けられる患者さんには当てはまらない可能性」があると注意書きを添えています。

もう一つ、薬の説明などで「生存期間中央値」という言葉を聞くことがあります。これは、集団の半数がまだ生存している時点までの期間です。「中央値が○か月だから、余命も○か月」という意味ではなく、定義のうえでは、中央値より長く過ごす方が半数いることになります。

がんの種類やステージごとの生存率は、院内がん登録生存率集計結果閲覧システムや、全国がんセンター協議会の全がん協生存率調査(KapWeb)で調べられます。読み方はステージと生存率の記事でも詳しく整理しています。

  1. 1過去に診断された方を集めるがんの種類と、診断されたときのステージごとに記録される
  2. 25年間、経過を追う結果がそろうまでに、診断から5年以上かかる
  3. 3がん以外の死亡を補正する相対生存率・純生存率として計算される
  4. 4集団の割合として公開される院内がん登録や全がん協の調査で調べられる
  5. 5今、ご家族が目にするその間に変わった治療の結果は、まだ含まれていない
5年生存率の数字が、検索結果に出てくるまでの流れ

がんの種類ごとの記事は、どこから読めばいいですか?

元のがんの記事を開いたら、数字の章より先に「起きやすい症状と備え」「医師に聞く質問」を読んでください。数字は最後に、条件つきで眺める程度で十分です。

数字から読み始めると、その印象がほかの情報を上書きしてしまいがちです。反対に、起きやすい症状と和らげ方を先に知っておくと、数字を見たときにも「では、今のうちに何を整えておくか」と、考えを次に進めやすくなります。

がんの種類ごとに、ご家族が先に知っておきたいことは違います。肺がんなら息苦しさと痰、大腸がんなら腸閉塞や腹水、胃がんなら食べられないときの工夫、肝臓がんなら黄疸やだるさ、膵臓がんなら痛みの和らげ方、食道がんなら飲み込みにくさ、前立腺がんなら骨への転移、乳がんなら再発後の治療の続け方、卵巣がん・子宮がんなら腹水や腸閉塞、白血病など血液のがんなら感染と出血への注意、といった具合です。たとえば肺がんの見通しと息苦しさへの備えや、大腸がんの肝転移と余命の読み方のように、元のがんの記事から開いてください。

転移した場所の症状が気になるときは、その臓器の記事の「症状と備え」の部分だけを使う方法もあります。大腸がんの肺転移なら、大腸がんの記事で治療と見通しを、肺がんの記事で息苦しさへの備えを読む、という使い分けです。このとき、肺がんの記事にある生存率や治療薬の話は、大腸がんの肺転移には当てはまらない点だけ、心に留めておいてください。

  1. 1元のがんの名前を確かめる説明の紙や診断書にある「○○がん」を、そのまま書き写す
  2. 2起きやすい症状を知る転移した場所によって加わる症状も、あわせて見る
  3. 3和らげ方と相談先を知る緩和ケアは、診断されたときから受けられる
  4. 4主治医に聞く質問を選ぶ数字よりも、治療の目標と起きやすい変化を聞く
  5. 5数字は最後に、条件つきで元のがん・診断時のステージ・過去の集団の3つを確かめる
がんの種類ごとの記事を、迷わず読むための順番

「私たちの場合」の見通しは、主治医にどう聞けばいいですか?

「統計ではなく、今の父の状態から見て」と前置きし、治療の目標、この先起きやすい変化、家族が備えておくことの3つを聞くと、数字よりも役に立つ答えが返ってきやすくなります。

医師が余命の数字をはっきり言わないのは、隠しているからとは限りません。同じ診断でも経過の幅が大きく、言い切った数字ほど外れやすいことを、医師自身がよく知っているからです。「あと何か月ですか」と聞くより、医師が答えやすい形に置き換えるほうが、具体的な答えにつながります。

置き換えの例を挙げます。「今の治療の目標は、がんを小さくすることですか、進み方を抑えることですか、つらさを和らげることですか」。「治療が効いているかどうかは、いつ、何で判断しますか」。「この先の数か月で起きやすい変化と、家族が備えておくことを教えてください」。数字そのものを聞きたいときは、「正確でなくてかまいません。年単位か月単位か、幅で教えてください」と添えると、医師も答えやすくなります。

その前に、ご本人がどこまで知りたいかを確かめておいてください。知る権利と同じように、知らずにいる権利もあります。ご本人が「数字は聞きたくない」と言うなら、家族だけで「本人は数字を望んでいません。家族としては、起きやすい変化と備えだけ教えてください」と伝える方法があります。ご本人の気持ちを守りながら、準備に必要な情報を受け取る聞き方です。

  1. Q1ご本人は、見通しの数字を知りたいと言っていますか

    はいご本人と一緒に、幅で聞く時間を主治医にお願いする

    いいえ家族は数字ではなく、起きやすい変化と備えを聞く

  2. Q2今の治療の目標を、家族は言葉で説明できますか

    はい次は「効いているかを判断する時期」を聞く

    いいえまず「今の治療の目標」を聞くところから始める

見通しの聞き方に迷ったときの分かれ道

数字が分からないままでも、家族が今から備えられることはありますか?

あります。ご本人の希望を知ること、つらい症状を和らげる相談先を知ること、家族自身が休める段取りを作ることの3つです。どれも、経過が長くても短くても無駄になりません。

1つ目は、ご本人の希望です。どこで、誰と、どう過ごしたいか。治療で何を大事にしたいか。厚生労働省は、もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合って共有する取り組みを「人生会議」と名づけています。改まった場を設けなくても、通院の帰りの車で「最近、何がいちばん楽しみ?」と聞くことが入口になります。

2つ目は、つらさを和らげる相談先です。国立がん研究センターのがん情報サービスの解説にも「緩和ケアは、がんと診断されたときから始まります」とあり、治療をやめた人だけのものではありません。受けられる場は、緩和ケアチーム、緩和ケア外来、緩和ケア病棟、自宅で受ける在宅緩和ケアの4つです。最期が近づいたときの体の変化は、最期が近いサインの記事にまとめています。

3つ目は、家族自身の休み方です。家族は「本人はもっとつらいのだから」と気持ちを我慢しがちで、がん情報サービスでも、ご家族は「第二の患者」ともいわれると紹介されています。付き添いを交代制にする、仕事の調整を早めに相談する、眠る時間を確保する。どれも、ご本人を長く支えるための準備です。

見通しに迷ったときの相談先

  • 主治医・看護師病状と治療の目標、この先起きやすい変化
  • がん相談支援センター無料・匿名。その病院に通っていなくても相談できる
  • がん情報サービスサポートセンター0570-02-3410。平日10時〜15時、通話料はかかる
  • 緩和ケアチーム・緩和ケア外来診断されたときから、症状やつらさを和らげる
  • セカンドオピニオン担当医とは別の医師の意見を聞く。転院とは違う
  • がんと家族の相談室先生の言葉の一般的な意味と、次に聞く質問を整理する
見通しに迷ったとき、それぞれの窓口で相談できること

肺がんと大腸がんの数字の間で迷った家族は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・息子の立場(70代の父が大腸がん。手術から2年後に肺への転移が分かり、薬の治療中)
相談のあとに変わったこと
見る数字を大腸がんに絞り、次の外来で治療の目標を聞けた。きょうだい3人で今月やることを2つに決め、毎晩続いていた深夜の検索が止まった。

1. 相談のあとに変わったこと

相談の翌週の外来で、男性は父と一緒に「今の治療の目標は何ですか」と尋ねました。主治医の答えは「がんの進み方を抑えながら、今の生活をできるだけ続けること」。数字は出ませんでしたが、男性はその言葉をメモに残し、その夜きょうだいのグループLINEに送りました。それまでは毎晩1時過ぎまで検索していたのが、その週は一度も「余命」と打たずに眠れたといいます。「数字は分からないままなのに、落ち着いていた」。

2. 相談を考えた背景

父の大腸がんは、2年前の手術で取りきれたと聞いていました。定期検査で肺に影が見つかり、「大腸がんの肺転移です」と説明を受けたものの、父は親戚に「肺がんになった」と話していて、家族の中でも呼び方がばらばらでした。

3. 相談する前に困っていたこと

男性は肺がんと大腸がんの両方の生存率を調べ、数字の違いに混乱していました。妹は肺がんのページを読んで泣き、弟は「大腸がんのステージ4の数字を見ればいい」と言う。母は数字の話になると黙ってしまい、きょうだいのグループLINEには既読がつくだけの日が続きました。スマホのタブは20を超え、どれも自分たちの場合には届かない感覚があったそうです。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターのことは知っていましたが、平日の昼は仕事で電話をかけにくい。夜中にこのサイトのフォームを見つけ、名前はニックネームでよく、断ってもかまわないと書いてあったことが背中を押しました。「医療者でもない人に聞いて意味があるのか」と迷いながら、希望の時間帯を平日の昼休みにして送信したといいます。夜中の2時過ぎでしたが、受付確認のメールがすぐに届いたのを見て、ようやくスマホを置けたそうです。

5. 相談で話したこと・その後

電話で担当は、肺に転移した大腸がんは一般に大腸がんとして治療を考えること、検索で見た生存率は診断時のステージで集計された過去の集団の数字であることを説明しました。父の余命については、予測も診断もしていません。代わりに、次の外来で聞く質問を3つに絞りました。①今の治療の目標、②効いているかを判断する時期、③家族が今から備えておくこと。その後きょうだいで話し合い、父の希望を聞く時間を作ることと、通院の付き添いを交代制にすることの2つを、今月の「やること」に決めました。男性は「数字を探すのをやめたら、父と話す時間が増えた」と振り返っています。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 元のがんはどこで、今の治療は何のがんとしての治療ですか。
  • 「多発」や「転移」という言葉は、どこに、いくつあるという意味ですか。
  • 転移している場所によって、これから気をつけておく症状はありますか。
  • 検索で見た生存率は、父の状況にどのくらい当てはまるものですか。
  • 家族として、今のうちに準備しておくとよいことはありますか。

とはいえ、数字を探してしまう夜もあります

① 気持ちのこと──調べずにいられないのは、備えたいからです

夜中にスマホで数字を探してしまうのは、冷たいからでも、あきらめているからでもありません。先の見えない不安を少しでも形のあるものにしたい、家族としてできる準備をしておきたい、という気持ちの表れです。がんと家族の相談室に届いた電話相談・問い合わせ1,200件のうち、800件はご家族からでした(2026年9月の実績(運営者集計))。同じように眠れない夜を過ごしている人は、少なくありません。ただ、夜に見る数字は昼間よりずっと重く感じられます。開いたページは閉じて、「考えるのは明日の朝」と決めてから横になってください。

② 実務のこと──家族の中で「聞く役」と「見る情報」を決めておく

家族それぞれが別の数字を持ち寄ると、話がかみ合わなくなりがちです。主治医の説明を聞く窓口役を一人決め、聞いた内容はその人がまとめて家族に送る形にしておくと、伝言のずれや「誰が何を聞いたのか」という混乱が減ります。調べものも、見るのは元のがんの情報と主治医の説明だけ、と家族で約束しておけば、話し合いが数字の比べ合いになりません。言葉の意味で迷ったときに頼れる公的な窓口として、がん相談支援センター(無料・匿名、その病院に通っていなくても利用できます)と、国立がん研究センターのがん情報サービスサポートセンター(0570-02-3410、平日10時〜15時、通話料はかかります)があることも、家族の間で共有しておいてください。

今日できること

数字に振り回された日に、家族が今夜から明日にかけてできる3つのこと

  1. 診断名を正確に書き写す

    説明の紙や診断書を見て、「○○がん(△△に転移)」の形でスマホのメモに残す。家族の呼び方をそろえるだけで、調べる先が一つに絞れます。

  2. 聞く質問を3つ選ぶ

    上の質問例から3つを選び、次の外来の日付と一緒にメモする。ご本人が数字を知りたいかどうかも、そっと確かめておく。

  3. 一人で読み込まない

    意味の分からない言葉を一つだけ選び、がんと家族の相談室のLINEにそのまま送る。夜に届いたものは翌朝いちばんに読んで、お返事します。

よくある質問

転移があると、もう治らないということですか?

一概には言えません。多くのがんでは、遠隔転移があるとⅣ期に分類されますが、基準はがんの種類によって異なり、Ⅳ期という言葉がそのまま「末期」を意味するわけでもありません。がんの種類や転移の数・場所によっては、手術や放射線などで転移した部分の治療を検討する場合もあれば、薬で進み方を抑えながら生活を続けることを目標にする場合もあります。どれに当たるかは、主治医に「今の治療の目標は何ですか」と確かめてください。

「原発不明がん」と言われました。どのがんの数字を見ればいいですか?

原発不明がんは、転移は見つかったものの、検査をしても元のがんがどこか特定できない状態を指します。この場合は、がん細胞の性質や転移している場所などから、どのがんに近いかを考えて治療が選ばれます。決まった種類の統計を当てはめにくいため、数字を探すよりも、主治医に「どのがんに近いと考えて治療していますか」「治療の目標は何ですか」と聞くほうが、見通しを考える助けになります。

転移の数が多いほど、残された時間は短いのですか?

転移の数や場所は見通しに関わる要素の一つですが、それだけで決まるわけではありません。治療がどのくらい効くか、体力、ほかの病気の有無なども大きく関わります。数が多くても治療で落ち着いた状態が続く方もいれば、数が少なくても場所によって症状が出やすい場合もあります。数だけで判断せず、「この転移の場所と数で、気をつけておく変化は何ですか」と聞いてみてください。

主治医の説明と、ネットで見た数字が違います。どちらを信じればいいですか?

主治医の説明は、ご本人の検査結果や体力、治療への反応を見たうえでの見立てで、ネットの数字は過去の大勢の方の統計です。目的が違うので、ご本人について考えるときは主治医の説明を土台にしてください。治療の選び方そのものに迷いがあるときは、担当医とは別の医師に意見を求めるセカンドオピニオンという方法があります。転院とは違い、担当医に紹介状や検査データを用意してもらって受けるもので、公的医療保険が使えない自由診療のため、費用は全額自己負担です。

家族が先に聞いた数字を、本人に伝えるべきですか?

決まった正解はありません。知りたい方もいれば、知らずに過ごしたい方もいます。家族が先に聞いた場合も、それをどう扱うかは、ご本人が「どこまで知りたいか」に合わせて決めてかまいません。迷うときは数字には触れず、「これからのことで、気になっていることはある?」と、ご本人が話したいことから聞いてみる方法もあります。

夜中に不安で眠れません。今すぐ話せる場所はありますか?

24時間・無料で受け付けている窓口に、よりそいホットライン(0120-279-338)があります。がんを専門に扱う窓口ではないものの、眠れない夜のつらさをそのまま聞いてもらえます。がんの情報について聞きたいときは、平日の昼間にがん情報サービスサポートセンターやがん相談支援センターへ。がんと家族の相談室のLINEは無料・匿名で使え、夜に届いたものは翌朝いちばんに読んで返事をしています。ご本人の体調が急に変わったときは主治医や病棟、訪問看護へ、命に関わると感じたときは119番へ連絡してください。

診断名と先生の言葉を、わかる言葉に置き換えます

「肺に転移した大腸がんと言われた」など、診断名と気になっている言葉をひとことお書きください。送信の直後に受付確認のメールが届き、担当からのお電話は、書いていただいた時間帯におかけします。元のがんの名前を確かめるところから始めて、見る数字の絞り方と、次の外来で聞く質問3つを一緒に整理します。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    がんの種類ごとの数字は、主治医と一緒に読む

    がんの種類ごとの生存率などの数字は、多くの方をまとめた統計です。同じ種類でも、進み方や治療の効き方は一人ひとり違います。数字を見て不安になったら、その数字が今のご本人にどう当てはまるのかを、主治医に尋ねてみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「調べた数字が、本人の場合にどう当てはまるのか教えてください。」

    1. 読んだ数字の出どころ(いつの、どのような方々の統計か)を確かめる
    2. 気になった数字はメモして、診察のときに見せる
    3. 調べものには、出典のはっきりした公的な情報を使う

    手元にあると話しやすいもの

    • 読んだ数字の出典(サイト名と日付)
    • 質問メモ

    公的な相談先

    がん情報サービス(国立がん研究センター)
    出典のはっきりしたがんの情報と、お近くのがん相談支援センターの探し方がまとまっています。
    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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    「怖い」「眠れない」「先生の説明が分からなかった」。ひとことで構いません。評価も助言もせず、お返事します。

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