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がんの余命を聞けない配偶者へ|夫婦で言えないことの扱い方

このテーマの総論:夫・妻のがん、あとどれくらい?|配偶者の見通しの聞き方

この記事の結論

夫婦がお互いを気づかって黙り込むのは、相手を守ろうとする気持ちの表れです。いきなり余命を尋ねるより、まず妻がどこまで知りたいかを確かめ、看護師や相談員に同席してもらって二人で話す場をつくると、一人で抱えてきた重さを少しずつ分け合えます。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:厚生労働省「『人生会議』してみませんか」/厚生労働省「ACP(アドバンス・ケア・… ほか8件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

妻の余命を本人の前で聞けず、一人で抱えているときに考えたいのは、「何を、誰と、どんな場で」話すかです。夫婦がお互いを気づかって黙り込むのは、どちらも相手を守ろうとしているからで、どちらかが悪いわけではありません。二人きりでは言葉にならないことも、看護師や相談員に間に入ってもらうと、話せることがあります。

どこまで話せるか、話したいかは、夫婦の歴史や病状、妻の気持ちによって違い、あえて話さないことを選ぶ夫婦もいます。この記事では、夫婦が言えずにいることの仕分け方、妻が知りたい範囲の確かめ方、第三者を交えて二人で話す場のつくり方を扱います。配偶者が先に見通しを聞く方法は配偶者の見通しの聞き方に、本人のいない場で医師に聞く頼み方は医師に別に聞く頼み方にまとめています。夫を看る妻の方も、「妻」を「夫」に置き換えて読んでください。

夫婦の間の沈黙を、一人で抱えている方へ

  • 妻の余命を知りたい。でも、妻の前ではとても聞けない。
  • 妻も、本当は何を思っているのか言ってくれない。お互いに気を遣って、いちばん大事な話だけを避けている。
  • この重さを誰にも言えないまま、時間だけが過ぎていく。

妻の余命を本人の前では聞けず、一人で抱えています。夫婦の間で言えないことは、どう扱えばいいですか?

無理に二人きりで言葉にしなくてかまいません。まず何が言えずにいるのかを仕分け、妻がどこまで知りたいかを確かめ、必要なら看護師や相談員に同席してもらって二人で話します。一人で抱えてきた重さは、家の外で分けられます。

言えずにいることは、たいてい一つではありません。妻の余命を知りたい。妻がこれからどこで過ごしたいのかを聞いておきたい。自分が怖くて眠れないことを分かってほしい。子どもにどう伝えるかも決めなければならない。それが全部ひとかたまりになっているから、どこから手をつけても重すぎて、口が開かなくなります。

ひとかたまりをほどくと、二人で向き合う話は思ったより少なくなります。妻にしか決められないことは二人で話す。夫自身の怖さは、家の外で話す。数字としての余命は、妻が知りたいかどうかを確かめてから扱う。順番を決めれば、「全部話すか、何も話さないか」の二択から抜け出せます。

夫婦は、なぜお互いにいちばん大事なことを話せなくなるのですか?

相手を守りたい気持ちが、お互いに働いているからです。夫は妻を怖がらせたくなくて聞かず、妻は夫を悲しませたくなくて言わない。どちらも相手のための沈黙なので、どちらかが悪いわけではありません。

長く連れ添った夫婦ほど、相手の表情から多くを読み取ります。先生の説明の帰り道、妻がいつもより口数が少なかった。夫が夜中に起きていることに、妻は気づいている。言葉にしなくても伝わってしまうからこそ、言葉にした瞬間に、二人とも崩れてしまいそうな怖さがあります。

話すと現実になってしまう気がすることも、口を重くします。「あとどれくらい」を口にすれば、それを認めたことになる。だから夕食の会話は天気とテレビの話だけになり、いちばん大事な話題のまわりを、二人でそっと避けて歩くようになります。

この沈黙は、夫婦の思いやりの形です。ただ、長引くほど、二人とも同じ家の中で一人ずつ重さを抱えることになります。夫は聞けない見通しを、妻は言えない希望を。沈黙を破るかどうかを考える前に、それぞれが何を言えずにいるのかを、並べて見てみてください。

夫が言えずにいること(例)

  • 先生に、これからの見通しを聞きたい
  • 夜、先のことを考えて眠れない
  • 仕事をどうするか、一人で迷っている

妻が言えずにいること(例)

  • これから、どこで過ごしたいか
  • 夫が一人になったあとの暮らしが心配
  • つらさを話すと、夫を悲しませてしまう
同じ家で、夫と妻がそれぞれ言えずにいることの例

言えずにいることは、全部二人で話さなければいけませんか?

全部を二人で話す必要はありません。言えずにいることを「二人で話しておきたいこと」「家の外で話せばいいこと」「今は言葉にしなくていいこと」に分けると、二人で向き合う話はぐっと少なくなります。

二人で話しておきたいのは、妻にしか決められないことです。これからどこで過ごしたいか、治療や説明をどこまで受けたいか、子どもや親にどう伝えるか。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」も、本人による意思決定を基本にしています。夫が代わりに決めるのではなく、妻の考えを聞く場を持つことが大事です。

家の外で話せばいいのは、夫自身の怖さや眠れなさ、先の見通しを知ったあとの重さです。これらは妻に聞いてもらわなくても、外で下ろせます。むしろ妻に向けると、妻が夫を気づかう荷物を一つ増やすことになりかねません。

今は言葉にしなくていいこともあります。妻が知りたくないと言っている数字。毎日くり返す必要のない「もしも」の話。長年の感謝のように、手を握る、隣に座るといった形でも伝わる気持ち。言葉にしないことは、逃げではなく、選び方の一つです。

言えずにいること扱い方の例話す相手
妻の余命や見通し先に、妻が知りたい範囲を確かめる妻、主治医(配偶者が先に聞く道もある)
妻が過ごしたい場所や治療の希望第三者を交えて、二人で話す妻、看護師、相談員
夫自身の怖さや眠れなさ家の外で話して、重さを下ろすがん相談支援センター、相談窓口
子どもや親への伝え方二人で方針をそろえる妻、看護師、相談員
お金や家のこと体調のよい日に、短く話す妻、医療ソーシャルワーカー
夫婦が言えずにいることと、扱い方・話す相手の例

妻がどこまで知りたいのかは、どう確かめればいいですか?

「余命を知りたい?」と正面から聞くより、説明をどのくらい詳しく聞きたいかを、ふだんの会話の中で尋ねます。先に自分の気持ちを話してから聞く、パンフレットや「人生会議の日」をきっかけにする、という方法もあります。

「知りたいか、知りたくないか」は、二択で聞かれると答えにくい問いです。そこで、程度で尋ねてみます。例:「先生の話、あなたは細かいところまで聞きたいほう?それとも、大事なところだけでいい?」。答えが「大事なところだけ」なら、それが妻の今の希望です。

自分の気持ちを先に話すと、相手も話しやすくなります。例:「おれは、先のことも少しは知っておきたいと思ってる。あなたはどう?」。夫が先に手の内を見せることで、妻は「聞かれている」のではなく「一緒に考えている」と感じやすくなります。

きっかけを借りる方法もあります。待合室に置かれたパンフレット、テレビのドラマ、親戚の話。厚生労働省は、もしものときの医療やケアを前もって話し合うことを「人生会議」と呼び、11月30日を「人生会議の日」としています。例:「人生会議の日っていうのがあるんだって。うちも、そのうち一度話しておく?」。

妻が「聞きたくない」と答えても、それは失敗ではありません。今の妻の、大事な答えです。気持ちは、体調や治療の節目で変わることもあります。日を置いて、また尋ねてかまいません。

  1. Q1妻は、先のことを知りたいと言いましたか

    はい次の診察で二人そろって聞けるよう、聞きたいことを3つに絞る

    いいえ聞かない希望を守り、その希望を医療者にも伝えておく

  2. Q2妻は、自分の希望(過ごす場所や治療)を話したがっていますか

    はい看護師や相談員に同席を頼み、二人で話す時間をつくる

    いいえ日を置き、体調のよい日にもう一度だけ尋ねる

  3. Q3見通しを知らないままでいることが、夫自身にとってつらいですか

    はい妻の希望を損なわない形で、医療者に相談する方法を探す

    いいえ今は数字ではなく、二人の今週の予定を大事にする

妻の答えを受けて、次の一歩を選ぶ分かれ道

二人きりでは話せないとき、誰に間に入ってもらえばいいですか?

外来や病棟の看護師、緩和ケアに関わるチーム、がん相談支援センターの相談員、医療ソーシャルワーカーなどです。主治医も交えて、これからの医療やケアを話し合う「人生会議」という形もあります。

第三者が入ると、夫婦どうしでは聞けない問いを、代わりに口にしてもらえます。例:「今いちばん気がかりなことは何ですか」「説明は、どこまで詳しく聞きたいですか」。妻は夫に向かってではなく、第三者に向かって答えればよいので、夫を悲しませる心配をしながら話さずにすみます。涙がこぼれても、話の続きを預かってくれる人がいるのは心強いものです。

緩和ケアは、体の痛みだけを扱うものではありません。国立がん研究センターのがん情報サービスが紹介しているWHOの定義では、患者さんとその家族を対象に、身体的な問題だけでなく、心理社会的な問題やスピリチュアルな問題にも早くから向き合い、生活の質を高めるケアだとされています。がんと診断されたときから受けられ、緩和ケアチームや緩和ケア外来などで相談できます。

がん相談支援センターでは、がんについて詳しい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどが、主に面談か電話で相談を受けています。夫婦二人で面談を受けられるかは、事前に尋ねてみてください。医療ソーシャルワーカーは、病院などで、患者さんや家族の経済的・心理的・社会的な問題の解決や調整を助ける専門職で、過ごす場所の変化についての相談にも応じています。看護師に小さく相談を切り出す言い方は、看護師から小さく聞く方法も参考になります。

厚生労働省が愛称をつけた「人生会議」は、もしものときに望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有していく取り組みです。書類を作ることが必須なわけではなく、一度で結論を出すものでもありません。

夫婦の話し合い

  • 外来・病棟の看護師日ごろの様子を知っていて、話し合いの場を頼みやすい
  • 主治医病状と治療のこれからを、二人そろって聞ける
  • 緩和ケアのチームや外来体だけでなく、心や暮らしのつらさも、本人と家族を対象に扱う
  • がん相談支援センターの相談員がんに詳しい看護師やソーシャルワーカーなど。家族だけの相談もできる
  • 医療ソーシャルワーカー過ごす場所の変化や、暮らし・お金の困りごとを一緒に整理する
二人の話し合いに、間に入ってもらえる人たち

第三者を交えた話し合いは、どう準備すればいいですか?

まず夫が一人で看護師や相談員に事情を伝え、同席をお願いします。そのうえで妻を誘い、当日は第三者に二人それぞれへ尋ねてもらいます。決めたこととまだ決めないことは、紙に書いて残します。

  1. 1夫が先に相談する看護師や相談員に、夫婦で話せずにいることを伝える
  2. 2同席をお願いする話し合いの時間と場所、誰が入るかを相談する
  3. 3妻を誘う「これからの話を、一度みんなでしておかない?」と短く誘う
  4. 4二人それぞれが話す第三者が順に尋ね、知りたくないことには「今はいい」と答えてよい
  5. 5決めたことを残す決まったこと、まだ決めないことを紙に書き、日を置いてまた話す
第三者を交えて、夫婦で話すまでの流れ

先に相談するときは、妻の希望と夫の願いを、分けて伝えます。例:「妻は、数字は聞きたくないと言っています。でも、過ごしたい場所の話は、二人でしておきたいんです」。こう伝えておくと、第三者は妻の「知らないでいたい」気持ちを守りながら、話を進める手立てを考えられます。

妻を誘う言葉は、短く、逃げ道を残します。例:「看護師さんが、これからのことを一緒に話す時間をとってくれるって。嫌なら断っていいよ」。「先生から大事な話がある」のような言い方は、悪い知らせを予感させて身構えさせてしまうので避けます。

当日、全部を決める必要はありません。妻が途中で疲れたら、「今日はここまで」で十分です。夫が泣いてしまっても、そのまま続けてかまいません。終わったら、決まったこととまだ決めないことを一枚の紙に書いておくと、次に話すときの入口になります。

妻が「聞きたくない」「話したくない」と言ったら、どうすればいいですか?

その答えを、妻の大事な選択として守ります。知らないでいることも、本人が選んでよいことです。そのうえで、夫自身が知りたいことや抱えきれない重さは、妻を通さずに、医療者や相談窓口で扱う道があります。

「今は話したくない」と言われると、拒まれたように感じるかもしれません。けれど、それは夫を遠ざける言葉ではなく、妻が自分のペースを守ろうとする言葉です。例:「分かった。話したくなったら、いつでも言ってね」。扉の場所だけを伝えて、開けるのは妻に任せます。

夫が見通しを知りたい気持ちまで、我慢し続ける必要はありません。配偶者だけが先に聞く方法や、本人のいない場で医師に尋ねる頼み方は、冒頭で紹介した記事にまとめています。ただ、余命として示される数字は、同じ状態の人たちをまとめた統計から出た目安で、妻一人の残り時間を言い当てるものではありません。知ったあと、その数字をどう扱うかも含めて、医療者と相談しながら進めます。

言葉にしないまま通じ合っている夫婦もいます。毎朝のお茶、通院の車の中で流す音楽、手をつないで歩く短い散歩。話し合いをしなくても、一緒に過ごす時間の中で、妻の望みが見えてくることもあります。沈黙のすべてを破らなければいけないわけではありません。

一人で抱えてきた重さは、どこに下ろせばいいですか?

妻に話せない重さは、家の外に下ろしてかまいません。がん相談支援センターは家族だけで無料・匿名で使え、夜中なら24時間のよりそいホットラインがあります。配偶者の気持ちも、相談してよいことです。

がん情報サービスは、家族を「第二の患者」ともいわれる存在として紹介しています。本人を気づかって気持ちを抑え、自分の暮らしも回さなければならないからです。同じページには、家族が自分のつらさを担当医や看護師に相談してかまわないこと、相談しにくいときは看護師やがん相談支援センターを頼れることも書かれています。

がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などにあり、その病院に通っていなくても家族だけで相談でき、相談した人の同意なしに、話した内容が担当医などに伝わることはありません。眠れない夜に人の声が恋しくなったら、よりそいホットライン(0120-279-338)に電話をかけられます。時間を問わず受け付けていて、通話も無料です。がん専門の窓口ではありませんが、今の気持ちをそのまま聞いてもらえます。

がんと家族の相談室では、評価も助言もしない20分の電話で、まず話を聞きます。先生から聞いた言葉の意味が分からないときは、一般的な意味をお伝えし、次の診察で聞く質問を3つにまとめてお送りすることもできます。診断や余命の予測はしません。

妻の余命を聞けずにいた夫は、どう二人で話せるようになった?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
60代・夫の立場(60代の妻が通院で治療中。主治医から治療の目的が変わってきたと説明を受けたが、妻の前では見通しを聞けなかった。子どもは二人とも独立している)
相談のあとに変わったこと
看護師に同席してもらい、二人で「これからの過ごし方」を話す時間を持てた。妻は数字は聞かないと決め、過ごしたい場所と会いたい人を話した。夫は自分の不安を話す場所を家の外に持った。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から3週間後、この方は外来の面談室で、看護師に同席してもらって妻と二人で話す時間を持ちました。30分ほどの話し合いで、妻は「数字は聞きたくない。でも、家で過ごせるうちは家にいたい。妹には会っておきたい」と話しました。この方も初めて「おれは怖いんだ」と口にしています。それからは週に一度、夕食のあとに10分だけ「これからの話」をする時間ができました。「黙っていたのは、お互いさまだったんですね」。

2. 相談を考えた背景

妻の治療が変わったのは2か月前。先生の言葉の端々から、状況が厳しくなっていることは察していました。妻の前ではとても見通しを聞けず、妻も何も言いません。夕食の会話は天気とテレビの話だけになり、夜は一人で起きている時間が増えていきました。

3. 相談する前に困っていたこと

夜中に「配偶者 癌 余命を聞けない」と検索し、家族だけで医師に聞く方法があることは知りました。けれど、妻に隠れて聞くのは裏切りのように思えて、動けませんでした。人生会議という言葉も目にしましたが、自分から切り出す言葉が見つからなかったといいます。

4. ここを選んだ理由・決め手

医療者に頼む前に、自分が何を言えずにいるのかを、外の誰かと整理したい。そう思って、深夜にLINEで「妻のことで、一人で抱えています」とだけ送りました。翌朝いちばんに返事が届き、妻が友人とお茶に出かける平日の午後を選んで、フォームで電話を申し込みました。名前を出さずに始められたことが決め手でした。

5. 相談で話したこと・その後

電話の担当は名前を名乗り、最初の20分は評価も助言もせずに話を聞きました。そのあと、言えずにいることを「二人で話すこと」「外で話すこと」「今は言わなくていいこと」に分け、看護師に頼む一言と、当日聞きたいことを3つの質問メモにまとめています。担当は、妻の病状や余命について何も判断していません。次の通院でこの方が看護師に事情を話すと、看護師はまず妻と二人で話し、妻が「話す時間なら持ちたい」と答えたことで、話し合いの日が決まりました。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 夫婦でこれからのことを話す時間に、看護師さんに同席していただくことはできますか。
  • 妻が病状の説明をどこまで聞きたいかを、先に確かめていただくことはできますか。
  • 本人と家族が話し合うとき、この病院で間に入ってくださる方はいますか。
  • 妻が「今は知りたくない」と言っている場合、その希望を医療チームで共有していただけますか。
  • 「人生会議」のような話し合いを、診察の中でお願いすることはできますか。

とはいえ、言えずにいるあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──黙っていた時間も、相手を思っていた時間です

言えずにいた日々を、夫婦の失敗だと考えなくていいのです。聞かなかったのは妻を怖がらせたくなかったから、言わなかったのは夫を悲しませたくなかったから。沈黙の中身は、お互いへの思いやりでした。話し合いが一度できても、また言葉が出なくなる日は来ます。それでかまいません。黙っている夜も、隣にいること自体が、妻にとって支えになっている場合があります。

② 実務のこと──話し合いは一度で終わらせず、決めたことを紙に残す

人生会議は、繰り返し話し合い、共有していく取り組みです。一度の話し合いで全部を決めようとせず、決めたこと、まだ決めないこと、次に話すきっかけを一枚の紙に書いておきます。妻の了解を得て、その紙を主治医や看護師にも見てもらえば、妻の希望が医療チームにも伝わり、夫が毎回一人で説明せずにすみます。病状や治療が変わったときは、紙を見直す日と決めておくと、話し合いを再開する理由が自然にできます。

今日できること

夫婦の沈黙を一人で抱えないために、今夜から明日にできる3つのこと

  1. 言えずにいることを書き出す

    紙に全部書き出し、「二人で話す」「外で話す」「今は言わなくていい」の3つに分けて印をつけます。

  2. 看護師への一言をメモする

    「夫婦でこれからの話をしたいので、同席をお願いできますか」と、次の診察で言えるように書いておきます。

  3. 重さを一つだけ外に出す

    「外で話す」に分けたものを一つ選び、信頼できる一人か、相談室のLINEに一行だけ送ります。

よくある質問

妻に内緒で、先生に余命を聞いてもいいのでしょうか?

家族として先生や看護師に相談すること自体は、できます。ただ、知る権利も知らないでいる権利も本人のものなので、聞いた内容を妻に伝えるか、伝えるならいつ、どんな言葉でかは、医療者と相談してから決めます。家族だけで聞く頼み方は、医師に別に聞く頼み方の記事にまとめています。

妻のほうが、何も話してくれません。どう受け止めればいいですか?

話さないことも、妻なりの守り方かもしれません。夫を悲しませたくない、自分でもまだ気持ちの整理がつかない、という場合もあります。問い詰めずに、「話したくなったら聞くよ」と一度だけ伝えて待ちます。妻が看護師や友人には話している場合もあり、それも妻の支えの一つだと考えてください。

話し合いの最中に、泣いてしまいそうで怖いです。

泣いてもかまいません。夫の涙を見て、妻が「やっぱり怖かったのは自分だけじゃなかった」と感じることもあります。第三者が同席していれば、話が途切れても続きを預かってもらえます。泣くのがつらければ、「少し休ませてください」と言って、席を外してもよいのです。

子どもたちにも、同席してもらったほうがいいですか?

決まりはありません。まず夫婦で話し、妻の希望が分かってから、子どもにどこまで伝えるかを二人で決める順番もあります。妻が子どもにも聞いてほしいと望むなら、一緒に話す場をつくります。誰が同席するかも、妻の希望を中心に決めてください。

「人生会議」とは、何をするものですか?

厚生労働省がACP(アドバンス・ケア・プランニング)につけた愛称で、もしものときに望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有していく取り組みです。毎年11月30日が「人生会議の日」とされています。書類を作ることは必須ではなく、話し合いの中身も、その時々で変わってかまいません。

夫婦で話す前に、夫だけで相談できるところはありますか?

あります。がん相談支援センターなら、相談するのが患者さん本人でなくても、その病院にかかっていなくてもかまわず、費用もかからず、名前を伏せたまま話せます。国立がん研究センターのがん情報サービスサポートセンターも、平日に匿名で相談を受けています。がんと家族の相談室のLINEは名前を出さずに送れ、フォームから申し込めば、ご希望の時間帯に担当からお電話します。

夫婦で言えずにいることを、まず外で整理しませんか

お名前はニックネームで大丈夫です。電話を受けやすい時間帯を書いて送ると、受付確認のメールがすぐに届き、ご希望の時間帯に担当が電話をかけます。言えずにいることの仕分けから、看護師に頼む一言の準備まで、一緒に進めます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

    3. お見積りの後にお断りいただいても構いません

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    いちばん近い人だからこそ、ひとりで抱え込まない

    パートナーの病気は、暮らし・お金・お子さんのこと・仕事が一度に重なりやすいものです。病状のことは主治医へ、お金や制度のことはがん相談支援センターや病院の医療ソーシャルワーカーへ。相談先を分けると、ひとつずつ進められます。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「これからの生活のことは、どなたに相談すればよいですか。」

    1. パートナー本人が何を知りたいか、どこまで話したいかを確かめる
    2. 医療費や仕事の制度(高額療養費制度・傷病手当金など)を、相談先で確かめる
    3. お子さんへの伝え方に迷うときも、ひとりで決めずに相談する

    手元にあると話しやすいもの

    • 健康保険の資格が分かるもの(マイナ保険証・資格確認書など)
    • 医療費の領収書

    公的な相談先

    医療ソーシャルワーカー(病院の相談室など)
    医療費や制度、退院後の暮らし、在宅療養の準備を一緒に考える専門職です。
    加入している健康保険の窓口
    高額療養費制度や傷病手当金などの手続きを確かめられます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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