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胃がんの最期のサイン|吐く・お腹が張る時の経過と口のケア

このテーマの総論:ステージ1〜ステージ4で余命は違う?|がんの生存率の読み方

この記事には、余命や生存率などの数字の話が出てきます。数字は多くの方をまとめた統計で、一人ひとりの予測ではありません。読むのがつらいときは、途中で閉じても大丈夫です。

この記事の結論

胃がんの最期が近づくと、ひと口で吐く、おなかが張る、やせていく、眠る時間が長くなる、尿が減るといった変化が見られることがあります。吐き気や張りには和らげる手段があり、家族は「食べさせる」から「口を潤し、好きな味を少し楽しんでもらう」へ切り替えることで、そばで支えられます。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」 https:/… ほか8件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

胃がんの最期が近い時期には、ひと口食べただけで吐いてしまう、おなかが張って苦しそう、腕や脚がやせていく、眠っている時間が長くなる、尿の量が減る、といった変化が見られることがあります。胃は食べ物の通り道そのものなので、ほかのがんよりも「食べること」にかかわる変化が早くから目立ちやすいのが特徴です。

見ているご家族にとっては、どれも胸が締めつけられる変化です。けれど、吐き気止めや胃にたまったものを外に出す管、腹水を抜く処置など、つらさを和らげる手段はいくつもあります。どの変化が、どの順番で、いつ現れるかは人によって違い、日にちを言い当てることは医療者にもできません。

この記事では、ひと口で吐いてしまう理由と吐いたときの手当て、おなかが張るのに腕がやせる理由、「何か食べさせたい」気持ちを「好きな味を少し楽しんでもらう」形に変える方法、苦しんでいないかの確かめ方、看護師さんへの聞き方、遠くの家族への伝え方を、順にお伝えします。

一口食べては吐いてしまう父のそばで、迷っている方へ

  • 父はひと口食べては吐いてしまう。おなかは張っているのに、腕は驚くほど細くなった。
  • 何か食べさせたいと思うほど、父がつらそうで、どうしてあげればいいのか分からない。
  • 最期が近いのかを看護師さんに聞きたいのに、答えを聞くのが怖くて、言い出せずにいる。

父が胃がんの末期で、ほとんど食べられません。胃がんの最期にはどんなサインがあり、家族は何ができますか?

吐く、おなかが張る、やせていくといった胃がんならではの変化に加え、眠る時間が長くなる、反応がゆっくりになる、尿が減るといった変化が見られることがあります。家族は、つらさを医療者に伝えて和らげてもらうことと、口から楽しむケアで支えられます。

胃がんが進むと、がんで胃の出口や入口が狭くなったり、胃の壁が硬くなって広がりにくくなったりして、食べたものが先へ進まなくなります。おなかの内側を覆う膜(腹膜)にがんが広がると、腹水がたまったり、腸が狭くなったりもします。そのため終末期には、吐き気や嘔吐、おなかの張りといった、胃とおなかの症状が目立ちます。

そこに、多くの方に共通する変化が重なっていきます。食べる量と飲む量が減る、うとうとする時間が増える、声をかけてから返事が返るまでに間があく、尿の量が減る、呼吸のリズムが変わる、といったものです。

亡くなる前の数日に近いことを示す変化については、Hui Dらが米国とブラジルの緩和ケア病棟に入院していた進行がんの患者さん357人を調べた、2014年の研究があります。手首の脈が触れなくなる、あごを動かすような呼吸(下顎呼吸)、尿量の減少、のどのゴロゴロ音などが、残された時間が短いことを強く示す変化とされ、意識が下がる、飲み込みにくくなるといった変化は、より早く現れるものの決め手としては弱い、と報告されています。ただし、これは医療者が全体を見て判断するための研究で、家族が数えて日にちを読むためのものではありません。いま父がどのあたりにいるのかは、「今はどの段階と見ていますか」と看護師や医師に聞くのがいちばん確かです。最期が近い時期の変化の全体像は、最期が近いときのサインの記事にまとめています。

  1. 1胃のまわりひと口で吐く、胃が張る、すぐにおなかがいっぱいになる
  2. 2おなか全体腹水でふくらむ、腸が狭くなる、便やガスが出にくい
  3. 3体全体やせていく、だるさが強い、うとうとする時間が増える
  4. 4最期が近い時期尿が減る、反応がゆっくりになる、呼吸のリズムが変わる
胃がんの終末期の変化を、起きる場所ごとに重ねて見た図(現れる順番や時期は人によって違います)

ひと口食べただけで吐いてしまうのは、なぜですか?

がんで胃の出口が狭くなると、食べたものや胃液が先へ進めずにたまり、あふれるように戻ってくるためです。胃の壁が硬くなって広がりにくいときも、少しの量で胃がいっぱいになります。何も食べていなくても、たまった胃液で吐くことがあります。

胃は、食べたものをいったんためて、少しずつ腸へ送り出す袋のような臓器です。出口の近くにがんがあって通り道が狭くなると、送り出せない分が胃にたまり、あるところで一気に戻ってきます。胃の壁全体にがんが広がって硬くなると、袋がふくらまないので、ほんの少しの量で満杯になります。お父さまが「ひと口で吐く」のは、食べる気持ちが足りないからでも、作った料理が合わないからでもありません。

和らげ方には、いくつかの方法があります。吐き気止めや、胃や腸に出る液の量を減らす薬を使う。鼻から胃に細い管を入れて、たまったものを外に出す。状態によっては、おなかから胃に管を通して、胃の中を楽にしておく方法が検討されることもあります。どれが合うかは、狭さの程度や体力、ご本人の希望を見て医師が判断します。家族が確かめたいのは、「その方法で何が楽になりそうか」と「本人の負担は何か」の2つです。

吐いたときは、慌てなくて大丈夫です。手順を先に知っておくと、そばにいる家族の体も動きやすくなります。

  1. 1体を横向きにする顔を横に向け、吐いたものがのどに戻らないようにする
  2. 2受け皿とタオルで受ける手の届く場所に、いつも置いておく
  3. 3口をすすぐのを手伝う水で口をすすぎ、においや酸っぱさを流す
  4. 4着替えと換気をする汚れた寝間着を替え、窓を少し開けるか空調で空気を入れ替える
  5. 5看護師に伝える吐いた時刻、量、色(黒っぽい・血が混じるなど)をそのまま話す
吐いたときに、そばでできることの流れ

おなかは張っているのに、腕がやせ細っていくのはなぜですか?

おなかの張りは主に腹水や胃にたまったもの、腕や脚のやせは、がんが体の代謝を変えて筋肉や脂肪が減っていく「がん悪液質」によるものです。別々の仕組みが同時に起きているので、食べさせ方が足りなかったせいではありません。

腹膜にがんが広がると、おなかの中に水(腹水)がたまりやすくなり、おなかだけがふくらんで見えます。一方、がんが進むと、体はとった栄養をうまく使えなくなり、食べる量にかかわらず筋肉や脂肪が落ちていきます。この二つが重なると、「おなかは大きいのに腕は細い」という、見ていてつらい姿になります。

ここで知っておきたいのが、点滴の量との関係です。病気が進んだ時期には、入れた水分が血管の中にとどまりにくく、多すぎる点滴が腹水やむくみ、痰をかえって増やすことがあります。終末期の点滴の考え方は、日本緩和医療学会の『終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版』にまとめられています。点滴の量が調整されるのは、お父さまを見放すことではなく、体が受け止められる量に合わせるためです。

腹水で苦しそうなときは、針を刺して抜く処置や薬で和らげる方法があります。そばでは、おなかを締めつけない寝間着にする、上半身を少し起こすなど、楽な姿勢を看護師と一緒に探してください。やせて骨が出てくると、同じ場所に体重がかかって皮膚が傷みやすくなります。体の向きの変え方やクッションの当て方も、看護師に教えてもらえます。

「何か食べさせたい」気持ちは、どうすればいいですか?

その気持ちは消さなくていいのです。目的を「栄養をとってもらう」から「好きな味を少しだけ楽しんでもらう」に変えると、お父さまの負担を増やさずに、思いを届けられます。何をどのくらいなら口にしてよいかは、先に看護師に確かめてください。

食べることは、多くの家族にとって愛情の形そのものです。好きだった煮物を作って持っていく、ひと口でも食べてくれたらほっとする。その思いがあるからこそ、吐いてしまう姿を見るのはつらいのです。

ご家族の方は、「食べさせる」から「味わってもらう」へ、目的を一段だけ変えてみてください。ひと口分を飲み込まなくても、口の中で好きな味と香りを感じるだけで、表情がやわらぐことがあります。たとえば、小さな氷のかけらを口に含む、好きな果汁を凍らせて小さく割ったものを溶かしながら味わう、スポンジに含ませたお茶やコーヒーで口を湿らせる、といった方法です。飲み込む力が落ちているとむせやすく、吐き気の強い時間帯もあるので、どれが合うかは看護師と決めます。胃にたまったものを外に出す管が入っている場合でも、少量なら口から楽しめることがあるので、あきらめる前に聞いてみてください。口のケアの細かなやり方は、食べられないときの口のケアに詳しくまとめています。

ご本人の方は、家族が持ってきてくれたものを残すたびに、申し訳なさを感じているかもしれません。食べられないのは、気持ちの問題ではなく体の変化です。「今日はこれだけで十分おいしかった」「氷がいちばんうれしい」と、そのまま伝えてかまいません。家族にとっては、その一言が何よりの手がかりになります。

好きだった味を、ほんの少し

  • 氷のかけら口の中を冷やして、渇きを和らげる
  • 凍らせた果汁好きな果物の味を、溶かしながら感じる
  • スポンジに含ませた飲み物お茶やコーヒーの味と香りで、口を湿らせる
  • 味わって出す飲み込まずに、口の中で味だけを楽しむ
  • 湯気や香りだしや果物の香りを、そばで楽しんでもらう
好きだった味を「ほんの少し」楽しんでもらう方法の例(始める前に看護師に確かめる)

父は、苦しんでいないのでしょうか?

吐き気やおなかの張り、痛みには、薬や管、腹水を抜く処置など和らげる手段があり、苦しさを減らすことを目標に調整されます。見た目がつらそうでも、本人が同じだけ苦しいとは限らないので、気になる様子はそのまま医療者に伝えてください。

苦しさの多くは、伝えることで手当てが始まります。「さっきから何度も吐いています」「おなかを触ると顔をしかめます」「夜、眠れていないようです」。家族の言葉は、医療者にとって大事な情報です。医療用麻薬を増やすと命が縮むのでは、と心配するご家族は少なくありません。この点について『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』(日本緩和医療学会)は、根拠はないとしています。量が増えることを怖がりすぎなくて大丈夫です。

ほかの方法でどうしても和らげられない強い苦しさが続くときには、薬で意識を下げて苦痛を感じにくくする「鎮静」という方法を、ご本人や家族と話し合って検討することもあります。日本緩和医療学会がまとめた鎮静の手引き(『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版』)も、鎮静が平均して命を縮めるような重い影響はないと想定される、という考え方を示しています。

反対に、最期が近い時期に見られる変化の中には、見ているほうがつらくても、意識が下がった状態で起きていて、ご本人は苦しさを感じていないことが多いと考えられているものもあります。どちらなのか分からないときこそ、「これは本人にとって苦しいものですか」と聞いてください。急に落ち着かなくなる、つじつまの合わないことを言うといった様子は「せん妄」という一時的な意識の混乱のことがあり、亡くなる前の時期には起こりやすくなるとされています。否定せずに受け止め、看護師に伝えてください。

  • 吐いたものが黒っぽい、コーヒーのかすのよう、血が混じっている
  • 便が黒くねっとりしている
  • 吐き気やしゃっくりで、眠れていないようだ
  • おなかを触ると顔をしかめる、張りが急に強くなった
  • 落ち着かない、つじつまの合わないことを言う
  • 息が苦しそう、肩で息をしている
次のナースコールや面会で、看護師にすぐ伝えたい変化

看護師さんに、何をどう聞けばいいですか?

「今はどの段階と見ていますか」「夜間はどんな変化のときに連絡をもらえますか」「父が口にしてよいものは何ですか」の3つから始めると聞きやすくなります。忙しそうに見えても、家族からの質問は迷惑ではありません。

聞けずにいる理由は、答えが怖いからかもしれません。それなら、段階を聞く前に、「父の楽にしてあげられることを教えてください」から入ってもかまいません。具体的なケアの話をしているうちに、看護師のほうから今の見立てを話してくれることもあります。面会の終わりに廊下で呼び止めるより、「5分だけお時間をいただけますか」と先に頼んでおくと、落ち着いて話せます。

看取りの時期には、家族向けの説明の冊子を用意している病棟もあります。緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)の『これからの過ごし方について』は、からだの変化、苦痛が増えたときの対応、のどのゴロゴロ、点滴などについて、家族の心配に沿って説明した冊子で、医師や看護師が説明に使うことを想定しています。看取りのパンフレットを使った説明を受けた遺族に10施設で行われた調査(山本亮ほか、2012年)では、回答した260名のうち81%が「とても役に立った」または「役に立った」とし、「変化の目安になる」と答えた人は84%でした。著者らは、渡すだけでなく、話し合いながら使うことを前提にしています。「家族向けの資料はありますか」と、ひとこと聞いてみてください。

遠くに住む家族には、いつ、何と伝えればいいですか?

日にちの予測を待つより、「父が会いたがっている人に、会えているか」を基準に考えると決めやすくなります。伝えるときは、見たままの様子と、看護師から聞いた見立てを短く添えるだけで十分です。

「まだ大丈夫かもしれない」と「今呼ばないと間に合わないかもしれない」の間で揺れるのは、誰にとっても苦しいものです。けれど、その答えは医療者にも言い切れません。だからこそ、看護師に「会わせたい家族がいるなら、いつごろが目安ですか」と聞いたうえで、迷ったら早めに声をかけておく、という考え方があります。

伝える一文の例です。「父は、ひと口で吐いてしまうようになって、眠っている時間も長くなった。看護師さんからは『会わせたい人がいたら、早めに』と言われている。来られそうな日を教えて」。急かす言葉を足さなくても、事実が伝われば、相手は自分で動き方を決められます。

今夜決めておくことは、一つだけで十分です。夜中に病棟から電話があったとき、誰が最初に受けて、誰が病院へ向かうか。それ以外は、明日以降に家族で話せば間に合います。泊まり込むかどうかは、病院のきまりと、付き添う人の体調も含めて決めてかまいません。

今夜のうちに決めておくこと

  • 夜中に病棟から電話が来たとき、最初に受ける人
  • 病院へ向かう人と、その移動の手段

急がなくていいこと

  • 親戚全員への連絡の順番
  • 葬儀や手続きのこと
今夜決めておくことと、急がなくていいことの分け方

ひと口で吐く父に、手料理を運び続けた娘は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
50代・娘の立場(80代の父が胃がんの末期で入院中。弟は新幹線で3時間の距離に住む)
相談のあとに変わったこと
手料理を運ぶのをやめ、看護師と決めた「ひと口の楽しみ」を面会のたびに用意するようになった。夜中の電話を受ける役と付き添いの順番を、弟と決められた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談の2日後、女性は看護師に「父が口にしてよいものと、その形を教えてください」と頼みました。看護師はむせ方を確かめたうえで、凍らせたみかんの果汁を小さく砕いたものなら少しずつ試せる、と提案してくれたそうです。週4回の面会のたびに保冷バッグで持っていくと、父は1回に2、3かけらを口の中で溶かし、「うまいな」と目を細めました。弟とは電話で話し、夜中の連絡は女性が受けること、弟は月に2回の週末に来ることを決めました。「料理を持っていけない寂しさより、父が笑う時間が増えたことのほうが大きかった」。

2. 相談を考えた背景

父の胃がんが見つかったのは2年前。腹膜への広がりがあり、薬物療法を続けてきましたが、この1か月で、ひと口食べては吐くようになりました。医師からは「胃の出口がかなり狭くなっていて、食事として食べるのは難しい」と説明を受け、鼻から管が入りました。

3. 相談する前に困っていたこと

女性は面会のたびに、父の好きな筑前煮を作って持っていっていました。父はひと口食べては吐き、「ごめんな」と謝る。そのたびに、自分の料理が父を苦しめているような気がしたといいます。夜は「胃がん 末期 食べられない あと何日」と検索し、看護師に聞きたいことがあっても、忙しそうな背中に声をかけられませんでした。

4. ここを選んだ理由・決め手

女性が気にしていたのは、「食事のことで病棟に文句を言っている家族だと思われないか」でした。病院とは別の立場の窓口なら、その心配をせずに話せる。そう考えて、夜中にこのサイトのフォームを開き、ニックネームで「父に何を持っていけばいいか分からない」とだけ書きました。連絡の時間帯は翌日の昼休みを選び、電話番号は折り返しのお電話にだけ使うと書いてあったので、そのまま入力したそうです。

5. 相談で話したこと・その後

電話で担当は、胃の出口が狭くなるとなぜ吐きやすくなるのか、「食べさせる」から「味わってもらう」へ目的を変える考え方がある、という一般的な話をしました。お父さまが何を口にしてよいかや、残された時間についての判断はしていません。そのうえで、看護師に聞く質問を3つの形に整え、看取り前後にやることチェックリストとあわせてメールで送りました。女性は質問を書いた紙を面会のバッグに入れ、翌々日、自分から看護師に声をかけました。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

看護師・医師に聞く質問例

  • 父が口にしてよいものと、その形・量を教えてください(氷のかけら、凍らせた果汁など)。
  • 吐き気やおなかの張りを和らげるために、今できることは何ですか(薬、管、腹水を抜く処置など)。
  • 父の今の様子は、どの段階と見ていらっしゃいますか。夜間はどんな変化のときに連絡をいただけますか。
  • 吐いたものや便の色が変わったとき、すぐに知らせたほうがいいのはどんな場合ですか。
  • 家族が手伝える口のケアや、体の向きの変え方を教えてもらえますか。

とはいえ、食卓を囲めなくなっても、家族の時間は続きます

① 気持ちのこと──「何もしてあげられない」は、本当ではありません

作った料理を食べてもらえない日が続くと、自分にできることはもう何もない、と感じてしまうかもしれません。けれど、凍らせた果汁を一かけら運ぶこと、吐いたあとに口をすすぐのを手伝うこと、好きだった歌を小さく流すこと。どれも、そばにいる家族だからできることです。反応が少なくなってきても、耳は聞こえている可能性があるといわれています。ホスピスの患者さんの脳波を調べたカナダの研究(2020年)では、呼びかけに応えられなくなった方の一部で、脳が音に反応していました(その状態で記録できたのは5人で、言葉の意味まで届いているかは分かっていません)。いつもの声で、いつもの呼び方で話しかけてください。声のかけ方に迷うときは、反応がないときの声のかけ方も参考になります。

② 実務のこと──付き添いを一人に背負わせない形にしておく

看病する家族は、「本人はもっとつらいのだから」と自分の疲れを後回しにしがちです。がん情報サービスの家族向けの解説では、ご家族は「第二の患者」ともいわれると書かれています。付き添いは、毎日行ける人が一人で背負うより、行ける日と休む日を家族で分けたほうが長く続きます。働いている方は、介護休暇を1年に5日まで(対象家族が2人以上なら10日まで)、時間単位でも取れます。要介護状態の家族1人につき、通算93日まで、3回まで分けて取れる介護休業もあります。勤め先の就業規則とあわせて、総務や人事の担当に確かめてみてください。看病する人自身の気持ちのつらさは、全国のがん相談支援センターでも、家族として無料・匿名で相談できます。

今日できること

次の面会までに、ご家族ができる3つのこと

  1. 好きな味を3つ書き出す

    お父さまが好きだった飲み物や果物を3つメモし、次の面会で看護師に「どれなら、どんな形で口にしてよいか」を聞く。

  2. 吐いたとき用のセットをまとめる

    受け皿、タオル、口をすすぐ水、替えの寝間着を一つの袋にまとめ、病室のどこに置いてよいかを看護師に確かめる。

  3. 夜中の電話を受ける人を決める

    家族の中で1人を決め、その人の電話番号を病棟に伝えておく。決めたことを、ほかの家族にもひとことで共有する。

よくある質問

吐いたものが黒っぽく、コーヒーのかすのようでした。どうすればいいですか?

胃からの出血のことがあるので、すぐに看護師に伝えてください。自宅で過ごしている場合は、まず訪問看護や在宅医の連絡先へ電話します。たくさん吐いた、意識がもうろうとしているなど、命に関わると感じて連絡がつかないときは119番です。出血しやすいと言われている場合は、もしものときの備えや、色の濃いタオルを用意しておくかどうかなど、前もって看護師に相談しておくと慌てずにすみます。

しゃっくりが止まらず、つらそうです。

胃がんでは、胃が張って横隔膜が刺激されることなどで、しゃっくりが続くことがあります。長く続くと眠れず、体力も使います。胃にたまったものを外に出す、薬を使うなど、原因に合わせて和らげる方法があるので、「しゃっくりで眠れていないようです」と看護師に伝えてください。

父が「もう何もいらない」と言います。励まして食べてもらうべきですか?

無理に励まさなくてかまいません。食べたくないと感じるのは、体の変化として自然なことがあります。「そうか、いらないんだね」と受け止めたうえで、「氷なら口に入れてみる?」「好きな音楽をかけようか」と、食べ物以外の心地よさを差し出してみてください。言葉にしたことを受け止めてもらえるだけで、ご本人は少し安心できます。

口のにおいや、口の中の白いものが気になります。

吐くことが増えたり、口から食べる量が減ったりすると、口の中が乾いて汚れやすくなり、においも出やすくなります。湿らせたスポンジやガーゼでそっとぬぐい、唇には保湿剤を塗ってください。舌や頬の内側に白いこけのようなものがついているときは、カビの一種による炎症のこともあるので、看護師に見てもらってください。

「あと何日くらいですか」と看護師さんに聞いてもいいのですか?

聞いてかまいません。ただ、日にちを正確に言い当てることは医療者にもできないため、「日の単位」「週の単位」のような幅のある言い方や、「今はこういう段階です」という答え方になることが多いです。日にちそのものより、「会わせたい人を呼ぶなら、いつごろがいいですか」「夜は泊まったほうがいいですか」と、決めたいことに沿って聞くと、答えを動きにつなげやすくなります。

看病しているこちらが、眠れなくなっています。

家族の心と体も、ケアを受けてよい対象です。眠れない日が続くときは、付き添いを交代してもらう日を作り、自分のかかりつけ医にも相談してください。がん相談支援センターは家族も無料・匿名で使えますし、がんと家族の相談室では、評価も助言もしない20分の電話で、ただ話を聞くこともできます。LINEに夜送ったものは、翌朝いちばんに読んで返事をします。

ひと口の楽しみと夜の段取りを、一緒に整えます

お父さまの好きだった味や、いま困っていることを短く書いてください。ニックネームのままで送れます。すぐに届く受付確認のメールのあと、ご希望の時間帯に担当から電話をかけ、看護師さんに確かめる質問と、夜中の連絡の段取りを一緒に決めていきます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

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    送信すると、受付番号を記した受付完了メールが自動で届きます(ご入力の内容は記載しません)。受付とご連絡は、運営会社のスキマグループ合同会社が行います。ご相談・現地の確認・お見積りまで費用はかかりません。

    お急ぎのときは、お電話で:080-4178-5017(平日9:00〜18:00は担当が直接お受けします。それ以外は自動音声で受け付け、翌朝9時までに折り返します)/文字で相談したいときはLINEで

    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    がんの種類ごとの数字は、主治医と一緒に読む

    がんの種類ごとの生存率などの数字は、多くの方をまとめた統計です。同じ種類でも、進み方や治療の効き方は一人ひとり違います。数字を見て不安になったら、その数字が今のご本人にどう当てはまるのかを、主治医に尋ねてみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「調べた数字が、本人の場合にどう当てはまるのか教えてください。」

    1. 読んだ数字の出どころ(いつの、どのような方々の統計か)を確かめる
    2. 気になった数字はメモして、診察のときに見せる
    3. 調べものには、出典のはっきりした公的な情報を使う

    手元にあると話しやすいもの

    • 読んだ数字の出典(サイト名と日付)
    • 質問メモ

    公的な相談先

    がん情報サービス(国立がん研究センター)
    出典のはっきりしたがんの情報と、お近くのがん相談支援センターの探し方がまとまっています。
    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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