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医師ががんの余命を教えてくれない理由|代わりに聞ける3つのこと

このテーマの総論:余命を医師に聞いていい?がんの見通しの聞き方と聞く前に決める3つ

この記事の結論

医師が余命をはっきり言わないのは、多くの場合、隠しているからではなく、一人の先を言い切れるだけの材料がないからです。医師によって言葉が違うのは、見ている時期や役割、答えている問いが違うためです。数字の代わりに「今の段階」「変化のサイン」「次に見通しを見直す時期」を聞くと、備えに使える答えが返ってきやすくなります。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「用語集:生存率」;国立がん研究センター「… ほか7件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

医師が余命をはっきり言わないのは、多くの場合、何かを隠しているからではありません。一人の人がこの先どう過ごしていくかを言い切れるほどの材料が、医師の手元にもそろっていないからです。「年単位は難しい」と言う先生と「分からない」と言う先生がいても、どちらかが間違っているとは限りません。見ている時期や受け持っている役割、答えようとしている問いが違えば、同じ人について話していても、言葉は変わります。

見通しには個人差が大きく、経験を重ねた医師でも、幅をもたせた言い方しかできない場面があります。それでも、数字の代わりに尋ねれば答えが返ってきやすい問いはあります。この記事では、説明する側の医師がどんな事情で言葉を選んでいるのか、医師によって言うことが違うのはなぜか、食い違って聞こえる二つの言葉の読み合わせ方、そして余命の代わりに聞ける3つのこと(今の段階・変化のサイン・次に見通しを見直す時期)をお伝えします。

先生の言葉に振り回されて、このページを開いた方へ

  • 外科の先生には「年単位は難しい」と言われ、今の先生には「分からない」と言われた。どちらが本当なのか分からない。
  • はっきり言ってくれないことに、正直、腹が立つ。何か隠されているのではと疑ってしまう。
  • 数字そのものがほしいわけじゃない。何に備えればいいのか、それだけでも知りたい。

医師が余命をはっきり教えてくれません。医師によって言うことも違います。なぜですか?

多くの場合、隠しているのではなく、一人の先を言い切れるほどの確かな材料がないからです。そのうえで医師は、ご本人がどこまで知りたいかにも気を配っています。言うことが違うのは、医師ごとに見ている時期や役割、答えている問いが違うためです。

医師は、がんの種類や広がり、治療への反応、食事の量や動ける範囲といった材料を重ね合わせて見通しを考えます。材料の中身と、それぞれをどう重く見るかは余命はどうやって決まる?にまとめています。ここで押さえておきたいのは、材料がそろっていても、それは今のご本人の姿を映すもので、数か月先の一日までは映さないという点です。

「分からない」は、投げやりな言葉に聞こえます。けれども、言い切れないことを言い切らないのは、医師にとって誠実さの一つの形でもあります。仮に「半年」と口にしたとして、それより早く変化が来ることも、ずっと長く穏やかに過ごすこともあります。どちらにずれても、その数字を頼りに予定を立てたご本人や家族が困ることを、医師は日々の診療の中で見てきています。

医師によって言葉が違うのも、どちらかがいい加減だからではありません。手術を担当した医師と、薬の治療を受け持つ医師、夜の当直の医師とでは、ご本人に会った時期も、担っている役目も違います。このあとの節で、説明する側の事情を一つずつほどいていきます。

「年単位は難しい」と「分からない」は、食い違っているのですか?

食い違っているとは限りません。「年単位は難しい」は見通しの長さの上の端についての見方で、「分からない」は日数や月数を一つに絞れないという意味で使われることが多い言葉です。二つは、同時に成り立ちます。

二つの言葉を並べてみます。「年単位は難しい」は、「年」という長さで考えるのは難しい、という見方を伝えています。ただし、それより短い側でどのくらいなのかまでは言っていません。「分からない」は、日数や月数を一つに決められない、という意味で口にされることがよくあります。言いかえると、一人目の医師は幅の上の端を話し、二人目の医師は幅の中の一点を選べないことを話していて、両方が同時に正しい場合があります。

もう一つ確かめたいのは、それぞれの言葉が、どんな問いへの答えだったかです。「治療を続ければ、何年も大丈夫ですか」と聞かれて「年単位は難しい」と答えたのか。「あとどれくらいですか」と聞かれて「分からない」と答えたのか。問いが違えば、答えの形も変わります。言われた場面を思い出せる範囲で書き出し、問いと答えを対にして眺めると、二つの言葉の距離が思ったより近いことに気づく方もいます。

それでもすっきりしないときは、今の主治医に、もう一人の医師の言葉をそのまま伝えて尋ねてかまいません。「以前、別の先生から『年単位は難しい』と伺いました。先生のお考えと同じでしょうか」。医師どうしを比べるためではなく、家族の中で話がずれないようにするための質問です。夜中に二つの言葉を何度も検索してしまうのは、少しでも確かなものをつかみたいからで、責めることではありません。

言葉伝えていることまだ伝えていないこと
「年単位は難しい」年という長さで考えるのは難しいという見方それより短い側で、どのくらいの幅なのか
「分からない」日数や月数を一つに絞れないこと何が分かれば、もう少し絞れるのか
「個人差が大きい」同じ病気でも経過の幅が広いことご本人がその幅のどのあたりにいそうか
「今は治療に集中しましょう」今は治療の効き方を見極めたい時期であること見通しの話を、いつするつもりか
医師がよく口にする見通しの言葉と、そこに含まれていること・まだ含まれていないこと

医師によって言うことが違うのは、なぜですか?

医師ごとに、ご本人を見ている時期と場面、受け持っている役割、言葉の選び方が違うからです。同じ人について話していても、どの角度から見ているかで、口にする言葉は変わります。

見ている時期が違う

手術のあとの外来で会った医師が見ていたのは、手術の結果と、その時点の回復の様子です。今の主治医が見ているのは、その後の薬の効き方と、ここ数週間の体の変化です。見通しは材料が変わるたびに描き直されるので、数か月前に聞いた言葉と今の言葉が違うのは、むしろ自然なことでもあります。

役割が違う

がんの治療には、手術を担当する医師、薬物療法を担当する医師、放射線治療の医師、体や心のつらさを和らげる緩和ケアの医師など、何人もの医師が関わることがあります。それぞれが重く見る材料も、ふだん患者さんと話す中身も違います。夜間や休日の当直医は、その日の体の状態に対応する役目なので、これまでの経過全体をふまえた見通しは主治医の説明に任せようとして、言葉を控えることがあります。

言葉の選び方が違う

見通しを「月単位」「週単位」のように単位で伝える医師もいれば、単位を口にすること自体を避ける医師もいます。単位ごとのおおよその幅は「月単位・週単位」が示す目安と幅で確かめられます。どちらの言い方が正しいということはなく、それぞれの医師が、どう言えば誤解が少ないかを経験から考えて選んでいます。

ご本人の見通し

  • 手術を担当した医師手術でがんをどこまで取りきれたか、その後の回復
  • 薬物療法の医師薬の効き方と副作用、検査の値の動き
  • 緩和ケアの医師痛みや息苦しさ、食事や眠り、動ける範囲の変化
  • 当直の医師その夜の体の状態と、今すぐ必要な手当て
  • 在宅医・訪問看護家での暮らしの中で見えてくる、日々の変わり方
同じご本人を、違う角度から見ている医療者たち(関わり方は病院や治療によって違います)

説明する側の医師は、何に迷って言葉を選んでいるのですか?

外れるかもしれない数字が、ご本人や家族の予定と気持ちを縛ってしまうこと。そして、ご本人がどこまで知りたいのかがまだ分からないこと。この二つのあいだで、医師は責任を持って言える範囲を探しています。

外来の診察室を、医師の側から見てみます。持ち時間は限られ、扉の外では次の方が待っています。目の前のご本人は「あとどれくらいですか」と尋ねながら、本当に数字を聞きたいのか、それとも「まだ大丈夫」と言ってほしいのか、表情だけでは読み切れません。隣の家族は、聞きたいという顔をしています。ここで口にした数字は、診察室を出たあと家族の会話で何度も繰り返され、遠くの親戚にまで伝わっていきます。医師が慎重になるのは、その行き先を知っているからです。

もう一つは、ご本人の気持ちを確かめる順番です。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)は、本人による意思決定を基本にしています。見通しを知るかどうかも、ご本人が選んでよいことです。家族から先に尋ねられた医師がはっきり答えないのは、その順番を守ろうとしている場合があります。

医師が責任を持って話せるのは、多くの場合、遠い先の一点より、今の状態と、近いうちに起こりうることです。答えにくい問いには短い言葉しか返ってこなくても、答えやすい問いに変えれば、医師は話しやすくなります。その問いが、次の節の3つです。

余命の代わりに、何を聞けば備えに使えますか?

「今の段階」「変化のサイン」「次に見通しを見直す時期」の3つです。どれも医師が今ある材料で答えやすい問いで、答えがそのまま、会いに行く予定や連絡の決め方、次の面談の約束に使えます。

① 今の段階──「今は、どんな時期にいますか」

今の段階を聞く問いは、ゴールまでの距離ではなく、今いる場所を尋ねるものです。「今の治療は、何を目標にしていますか」「今の状態を言葉にすると、どんな段階でしょうか」と聞けば、医師は検査の結果や体の様子から、今のことを話せます。答えが「薬で病気の進み方を抑えている時期です」なら、暮らしの予定は治療の日程を軸に組み立てられます。緩和ケアは、がんと診断されたときから受けられるもので、治療と並んで続きます。今の段階を聞くときに、体や気持ちのつらさをどこで和らげてもらえるかを一緒に尋ねておくと、答えが毎日の過ごし方につながります。

② 変化のサイン──「何が起きたら、見通しが変わったと考えればいいですか」

変化のサインは、見通しが変わる合図を先に教えてもらう問いです。食べられる量、横になっている時間、息苦しさ、意識の様子など、医師がご本人のどこを見ているのかが分かります。「そのときは、誰に連絡すればいいですか」と続ければ、夜間の電話の先まで決まります。このサインは、家族が自分たちで時期を言い当てるためのものではありません。気づいたことを、医療者に早めに伝えるための目印として使ってください。

③ 見直す時期──「次に見通しを話していただけるのは、いつですか」

見直す時期の問いは、見通しの話を一度で終わらせないための約束です。医師が「今は分からない」と言うとき、その言葉には「今の材料では」という意味が含まれていることが少なくありません。それなら、材料がそろう時期を尋ねればよいのです。「次の画像検査の結果が出たら、ご家族も一緒にもう一度お話ししましょう」と答えてもらえれば、それまでの日々を、幅のある数字ではなく、決まった約束を頼りに過ごせます。

  1. 1今の段階「今の治療の目標と、今の状態を言葉で教えてください」──暮らしの予定を組み立てる軸になる
  2. 2変化のサイン「何が起きたら、見通しが変わったと考えればいいですか」──医療者に連絡する目印になる
  3. 3見直す時期「次に見通しを伺えるのは、いつですか」──次の面談の約束になる
余命の代わりに聞ける3つの問いと、答えの使い道

はっきり言わない医師に腹が立つときは、どうすればいいですか?

腹が立つのは、備えたい気持ちが強いからで、おかしなことではありません。責める形ではなく「言いにくい理由も教えてください」と頼む形で伝えると、医師の側の事情が言葉になり、関係を保ったまま話を進められます。

「なぜ教えてくれないんですか」と口にしたくなる日もあると思います。その言葉の奥にあるのは、先が見えないまま毎日を過ごす苦しさです。ただ、責める形の問いを向けられると、医師も身構えて、短い答えしか返せなくなることがあります。

そこで、言い方を少し変えてみます。「数字で言いにくいことは分かりました。言いにくい理由があれば、それも教えていただけますか」。こう頼むと、検査の結果を待っている、治療の効き方を見極めている、といった医師の側の事情が言葉になって返ってきます。その理由そのものが、今の状態を知る手がかりになります。ご家族の方は「仕事の休み方を決めたいので、そのために必要なことだけでも」と、知りたい目的を添えるのも一つの方法です。

それでも話がかみ合わないときは、間に入ってもらえる人を探します。病棟や外来の看護師に「先生と、見通しの話をする時間をとってほしい」と頼めます。がん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターは、患者さんも家族も、その病院に通っていなくても無料・匿名で使え、話した内容が相談した人の同意なく担当医などに伝わることはありません。治療の選び方そのものに納得がいかないときは、担当医とは別の医師に意見を求めるセカンドオピニオンもあります。転院とは別のもので、今の担当医に紹介状(診療情報提供書)や検査データを用意してもらって受けます。費用は公的医療保険の対象外の自由診療で、病院ごとに違います。

  1. Q1言われた言葉の意味が、まだはっきりしませんか

    はい言葉をそのまま書き留め、次の診察で「この言葉は、どういう意味ですか」と聞き直す

    いいえ次の問いへ

  2. Q2先生と落ち着いて話す時間が足りていませんか

    はい看護師に、見通しの話をするための面談の時間を頼む

    いいえ次の問いへ

  3. Q3治療の選び方そのものに、納得がいかないですか

    はい主治医に紹介状を頼み、セカンドオピニオンを考える

    いいえがん相談支援センターで、気持ちと聞き方を整理する

医師との話がかみ合わないと感じたときの分かれ道

ご本人とご家族では、聞き方を変えたほうがいいですか?

変えたほうが話は進みやすくなります。ご本人は、知りたい範囲を自分で決めて医師に伝えられます。ご家族は、まずご本人がどこまで知りたいかを確かめ、その範囲の中で尋ねると、医師も答えやすくなります。

ご本人の方は、「数字は聞かずにいたい」「幅だけ知りたい」「全部知りたい」のどれに近いかを、診察の最初に伝えてみてください。医師にとって判断が難しいことの一つは、ご本人がどこまで聞きたいのか分からないまま話すことです。範囲が分かれば、医師はその中で言葉を選べます。家族の前で平気なふりをしている方は、ひとりで受ける診察の日を選んで伝えてもかまいません。

ご家族の方は、医師がはっきり言わない理由の一つに、ご本人の意向が分からないことがある、と知っておくと、聞き方が変わります。家族の立場から見た数字の意味と聞き方は、親のがん、余命の数字の意味と聞き方にまとめています。ここでは、ご本人の意向を確かめたあとで医師に向ける最初の一言の例だけを挙げます。「本人は、見通しのことは『大事なところは家族が聞いておいて』と言っています」。ご本人の言葉が添えてあると、医師は家族に話す範囲を決めやすくなります。

二人の医師の言葉に戸惑ったご家族は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・息子の立場(70代の父が治療中。母と同居し、妹は遠方に住む)
相談のあとに変わったこと
食い違って聞こえた二人の医師の言葉を並べて書き、主治医に「今の段階」「変化のサイン」「次に見通しを見直す時期」を尋ねられた。家族そろって話を聞く日が決まり、妹にも同じ一文で様子を伝えられるようになった。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から3週間後の外来で、息子さんはメモを見ながら主治医に3つの質問をしました。主治医は「今は薬の効き方を見ている段階です」と答え、「食事が普段の半分くらいの日が続いたら、診察を待たずに連絡をください」と目印を挙げ、「次の検査の結果が出る日に、ご家族も一緒に時間をとりましょう」と約束してくれました。それまでは妹から電話が来るたびに「で、どうなの」と聞かれて言葉に詰まっていましたが、今は「次の検査の日に、先生が家族と話してくれる」と、同じ一文で伝えています。「数字はもらえなかった。でも、待つ日が決まったら、腹が立たなくなった」と話しています。

2. 相談を考えた背景

お父さんは手術を受けたあと、薬の治療を続けていました。手術を担当した外科の医師は、退院のときに「年単位は難しいかもしれません」と言いました。半年ほどして、薬の治療を受け持つ主治医に同じことを尋ねると、「分からない、としか言えません」という答えでした。

3. 相談する前に困っていたこと

息子さんは、二人の医師の言葉が食い違っていると受け止めました。夜になると二つの言葉を検索窓に打ち込み、同じ病名の生存率の表を何枚も見ましたが、父がどこに当てはまるのかは分かりません。母は「先生を信じるしかない」と言い、息子さんは「何か隠されているのでは」という疑いを、誰にも話せずにいました。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターの案内は目にしていましたが、同じ病院の中で主治医への不満めいた話をするのは気が引けました。夜11時ごろ、がんと家族の相談室のLINEに、二人の医師の言葉をそのまま書いて送りました。名前を伏せたまま送れたことと、「先生の言葉の一般的な意味をお伝えする」と書かれていたことが、決め手になりました。

5. 相談で話したこと・その後

翌朝に返事が届き、昼休みに電話で話しました。担当は、二つの言葉が一般的にどんな意味で使われることが多いかを伝えましたが、お父さんの余命については何も予測していません。話すうちに、二つの言葉は別々の問いへの答えだったのかもしれない、と息子さん自身が気づきました。そのうえで、余命の代わりに聞く3つの問いを一緒に整え、メモにして送りました。はじめは「数字を聞かないのは逃げではないか」と迷っていましたが、診察で3つ目の問いを口にしたとき、主治医の表情がふっとゆるんだのが分かったといいます。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医師・看護師に聞く質問例

  • 今の治療の目標と、今の状態を、言葉で教えていただけますか。
  • 見通しが変わったと受け止めるのは、どんな変化が出たときですか。そのときの連絡先も教えてください。
  • 次に見通しのお話を伺えるのは、いつごろでしょうか。
  • 数字で言いにくい理由があれば、それも教えていただけますか。
  • 以前、別の先生から「年単位は難しい」と伺いました。先生のお考えと違うところはありますか。

とはいえ、言い切ってもらえない日々に伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──分からないまま待つ時間が、いちばん心をすり減らします

見通しがはっきりしない時間は、悪い知らせを聞いたときとは別の重さで、気持ちを少しずつ削っていきます。腹が立つのも、疑ってしまうのも、先のことに備えたいという気持ちが行き場を失っているからです。ご本人の方は、家族の前で平気な顔をしていても、ここでは泣いてかまいません。ご家族の方は「本人のほうがつらいのだから」と我慢しがちですが、がん情報サービスは家族について「『第二の患者』ともいわれます」と説明しています。眠れない日や食事が喉を通らない日が続くときは、主治医やがん相談支援センターにも、自分のつらさとして伝えてください。

② 実務のこと──見通しは主治医に、今夜のことは当直の医師に

医師によって言葉が違うという戸惑いを減らすには、何をどの医療者に聞くかを分けておくと助かります。見通しや治療の目標は主治医に。その夜の体調の変化は、当直の医師や病棟の看護師に。痛みや眠りなど、つらさの和らげ方は緩和ケアの医師や看護師に。手術を担当した医師には、手術の結果のことを。聞く相手を分けておくと、ある医師が答えを控えたときにも「これは主治医に聞く話だった」と落ち着いて受け止められます。主治医に会える日が限られているなら、見通しの話をする面談の日を、通院の予定とは別に看護師を通して押さえておくのも一つの方法です。

今日できること

先生の言葉に戸惑った今夜から、明日にかけてできる3つのこと

  1. 二つの言葉を並べて書く

    誰が、いつ、どんな問いに答えて言った言葉かを、覚えている範囲で一行ずつ書きます。問いと答えを対にすると、食い違いに見えた部分がほどけることがあります。

  2. 3つの問いから一つ選ぶ

    「今の段階」「変化のサイン」「見直す時期」のうち、いちばん知りたいものを一つ選び、診察券と一緒にしまっておきます。

  3. 言葉の意味を確かめる先を決める

    明日、看護師に聞くか、がん相談支援センターに電話するかを決めます。今夜のうちに言葉を手放したいときは、相談室のLINEに先生の言葉を書いて送ってください。

よくある質問

医師が「分からない」と言うのは、本当は分かっているのに隠しているからですか?

多くの場合、隠しているわけではありません。見通しは、検査や体の様子からおおまかな幅を考えることはできても、一人の先の時期までは言い当てられないものです。言い切れないことを言い切らないのは、医師なりの誠実さでもあります。「何が分かれば、もう少し見通しが立ちますか」と尋ねると、医師が待っている材料が見えてきます。

二人の医師の言うことが違うとき、どちらを信じればいいですか?

どちらか一方を選ぶより、今の主治医に、もう一人の医師の言葉をそのまま伝えて尋ねるほうが確かです。見通しは材料が増えるたびに描き直されるもので、時期の違う二つの言葉は、どちらもその時点では正しかった可能性があります。主治医の考えを聞いたあとは、家族のあいだで一つの言葉にそろえておくと混乱が減ります。

「余命を数字で教えてください」と頼んでもいいのですか?

頼んでかまいません。ただ、返ってくる数字は、同じ状態の方の統計などをもとにした目安です。生存率のような数字は集団の数字で、ご本人の残り時間を示すものではありません。数字を聞くときは「どのくらいの幅で考えればいいですか」「何をもとにした数字ですか」とあわせて尋ねると、受け止め方の手がかりになります。

夜間に当直の先生に聞いても、はっきり教えてくれませんでした。

当直の医師は、その夜の体の状態に対応する役目で、これまでの経過全体をふまえた見通しは主治医の説明に任せることがあります。その夜に確かめておきたいのは、「今夜、気をつけて見ておくこと」と「変化があったときの連絡の仕方」です。見通しの話は、主治医との時間をとってもらえるよう、翌日に看護師へ頼んでください。

医師が信じられなくなりました。病院を変えたほうがいいですか?

病院を変える前に、間に入ってもらえる人を探す方法があります。看護師に面談の時間を頼む、がん相談支援センターで気持ちと聞き方を整理する、といった方法です。治療の選び方に納得がいかないときは、セカンドオピニオンで別の医師の意見を聞けます。これは転院とは違い、今の担当医に紹介状を用意してもらって受けるものです。

夜中に見通しのことが頭から離れないときは、どこに話せますか?

よりそいホットライン(0120-279-338)は24時間・無料で、がん専門の窓口ではありませんが、眠れないほどのつらさを話せます。平日の日中なら、国立がん研究センターのがん情報サービスサポートセンター(0570-02-3410、平日10時〜15時、通話料は自己負担)もあります。がんと家族の相談室のLINEは匿名で一言から送れて、夜に届いたものは翌朝いちばんに読んでお返事します。

先生の言葉を、備えに使える問いに変えませんか

言われた言葉と、ご希望の連絡方法・時間帯を書いて送ってください。お名前はニックネームで構いません。送信後すぐに受付確認のメールが届き、ご希望の時間帯に担当からお電話して、言葉の一般的な意味をお伝えしながら、「今の段階」「変化のサイン」「見直す時期」を聞く質問を一緒に整えます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

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    次の一歩

    聞きたいことを3つに絞って、紙に書いて持っていく

    診察室では、緊張して聞きたいことが出てこないのが自然です。「病状」「治療」「これから」「生活」の4つに分けて、いちばん知りたいことを3つだけ紙に書いて渡すと、短い時間でも聞きやすくなります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「今日は、このメモの3つを教えていただけますか。」

    1. 質問メモを作り、診察の最初に先生に渡す
    2. 分からなかったときは「別の言葉で、もう一度教えてください」と頼む
    3. 聞けなかったことは、看護師やがん相談支援センターに相談する

    手元にあると話しやすいもの

    • 質問を3つに絞ったメモ
    • お薬手帳と、検査結果の控え

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    セカンドオピニオン外来
    別の病院の医師に、診断や治療について意見を聞く方法です。主治医に紹介状と検査結果を用意してもらいます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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