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医師からがんの余命を言われた夜に、まずしてほしい3つのこと

このテーマの総論:あとどれくらい生きられるか知りたい|がんの余命5つの質問に回答

この記事には、余命や生存率などの数字の話が出てきます。数字は多くの方をまとめた統計で、一人ひとりの予測ではありません。読むのがつらいときは、途中で閉じても大丈夫です。

この記事の結論

余命を告げられた夜は、何も決めなくてかまいません。今夜は決めない、明日ひとりにだけ話す、次の診察で聞きたいことを3つ書く。この3つで十分です。告げられた数字は統計をもとにした目安で、あなた一人の残り時間を言い当てるものではありません。眠れないときは、夜でも話せる窓口があります。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「用語集:生存率」;国立がん研究センター「… ほか7件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

告げられたその夜のうちに、決めなければならないことはありません。頭が真っ白なまま家に帰り、家族の前では平気な顔をして、夜中にひとりで天井を見ている。それは、心が知らせに追いつこうとしている途中の、ごく自然な姿です。医師が口にした数字は、同じような状態の方々の経過をもとにした目安で、あなた一人の残り時間を言い当てるものではなく、実際の経過には大きな個人差があります。

この記事では、余命を告げられた「その夜」に絞って、今夜は何も決めない、明日ひとりにだけ話す、次の診察で聞きたいことを3つ書く、という3つの順番と、眠れないまま朝を待つ夜に話せる先をまとめました。翌日からの1週間の過ごし方は、余命を告げられたあとの最初の1週間で取り上げています。

余命を告げられて、眠れずにいる方へ

  • 「1年くらいと考えておいてください」と言われた。家に帰っても、自分のことだという気がしない。
  • 家族の前では平気な顔をして夕食をとった。今は夜中に、ひとりで天井を見ている。
  • 仕事、家族、お金、治療。考えなければいけないことが多すぎて、何から手をつければいいのか分からない。

医師から余命を告げられました。その夜、何をどう考えればいいのでしょうか?

今夜は、何も決めなくてかまいません。してほしいのは3つだけです。今夜は決めないと決めること、明日ひとりにだけ話すこと、次の診察で聞きたいことを3つ書くこと。考えるのは、明日の昼からで間に合います。

余命を告げられた日の診察室では、数字のあとの説明が、ほとんど頭に入っていないことが多いものです。言葉は耳に残っていても、意味をつなぎ合わせる余裕がないまま帰ってきて、夜になってから、その数字だけが大きく響き始めます。聞き取れなかったところを埋めないまま、疲れた頭で大事なことを決めると、あとで「あの夜は考えられる状態ではなかった」と悔やむことになりかねません。

だから今夜は、解くための夜ではなく、持ちこたえるための夜にします。3つのことは、どれも何かを決めるための作業ではありません。頭の中で渦を巻いていることを、紙の上や、明日の誰かや、次の診察に預けて、今夜の自分の荷物を軽くするための作業です。

  1. 1今夜すること横になる、水を飲む、「決めない」と決める
  2. 2明日することひとりに話す。最初の一文だけ今夜のうちに用意しておく
  3. 3次の診察までに考えること聞きたいことを3つに絞る。仕事やお金の制度を確かめる
  4. 4今は考えなくていいこと葬儀、財産、身の回りの片づけ、全員への連絡
今夜の頭の中を、時間で4つの段に分ける(上の段から順に手をつける)

余命を告げられた夜に、現実感がないのはおかしいことですか?

おかしくありません。大きな知らせを受けた直後は、現実感がなくなる、何も感じない、急に涙が出る、無性に腹が立つ、といった反応が入れ替わりに起こることがあります。心が知らせに追いつこうとしている途中の、自然な反応です。

診察室では「分かりました」と落ち着いて答えられた。帰り道にスーパーに寄って、いつもどおり牛乳を買った。夕食の席では、子どもの話に笑ってうなずいた。それなのに、布団に入って電気を消したとたん、「1年」という言葉だけが何度も響き始める。そんな夜を過ごしている方は少なくありません。昼間の平気さは嘘ではなく、家族と自分を守るために、心が少しのあいだ知らせを遠ざけていたのかもしれません。

一方で、「なぜ自分が」という怒りが医師や自分に向いたり、保険の証書の場所や子どもの学費のことが急に気になり始めたりもします。先のことに備えようとする心の動きで、どれも自然です。夜中にスマホで余命や生存率を検索してしまうのも、少しでも先を知って構えておきたいからで、自分を責めることではありません。家族の前で平気な顔をしている方も、このページを読んでいるあいだは、泣いていいのです。

ただ、何も手につかない日や眠れない夜が続いて、毎日の暮らしがつらくなってきたときは、ひとりで抱え込まずに、主治医や外来の看護師、がん相談支援センターに伝えてください。気持ちのつらさも、和らげる手立てを一緒に考えてもらってよいことです。

起こりやすいこと

  • 現実感がない、何も感じない
  • 家族の前で、平気な顔をしてしまう
  • 急に仕事やお金、子どものことを考え始める
  • 夜中に、余命や生存率を検索してしまう

受け止め方

  • 心が知らせに追いつく途中の、よくある反応
  • 自分と家族を守ろうとする、心の働き
  • 先のことに備えようとする、自然な動き
  • 先を知って構えたい気持ち。責めなくていい
余命を告げられた夜に起こりやすいことと、その受け止め方

「1年くらい」という数字は、今夜どう受け止めればいいですか?

期限ではなく、準備のための目安として受け止めてください。余命として伝えられる期間は、多くの場合、同じような状態の方々の経過をまとめた統計をもとにしたもので、あなた一人の残り時間を言い当てるものではありません。実際には、それより長いことも短いこともあります。

余命の目安を考えるときに使われる数字の一つに、「生存期間中央値」があります。ある集団の半数の方が、まだ生存している期間のことです。裏返せば、その集団の半数の方は、それより長い時間を過ごしています。生存率も同じく集団の数字で、ご本人の余命を示すものではありません。国立がん研究センターの院内がん登録の閲覧システムも、表示している生存率は過去にがんと診断された方のもので、これから治療を受ける人には当てはまらない可能性がある、と注意を添えています。

医師が「〜と考えておいてください」と言うときには、その期間を目安に、やっておきたいことや会っておきたい人を考えておいてほしい、という気持ちが込められていることもあります。カレンダーに締め切りを書き込む数字ではなく、これからの時間の使い方を考えるきっかけとして、今夜はそっと横に置いておいてください。

今夜、数字を確かめようとして統計の表を何時間も読み比べても、自分に当てはまる答えは見つかりません。数字の意味は、次の診察で、あなたの体を見ている主治医に確かめるのがいちばんの近道です。数字との距離の取り方は、余命の数字に振り回されないための距離の取り方でも詳しく取り上げています。

① 今夜は、何を決めなくていいのですか?

仕事を辞めるかどうか、治療をどうするか、誰にどこまで知らせるか、身の回りをどう片づけるか。今夜浮かぶ「決めなければ」は、ほとんどが今夜決めなくていいことです。紙に書き出し、見出しに「保留」と書いて置いておきます。

夜中に浮かぶ「決めなければ」は、どれも本当に大事なことです。だからこそ、知らせを受けた夜の、眠れない頭で決めないでください。たとえば会社員の方が勢いで退職を決めてしまうと、病気で働けない間の給与を支える傷病手当金の扱いが変わることがあり、退職後も受け取り続けるには条件があります。仕事の相談は、働き方に関係なく、がん相談支援センターでもできます。急いで決めて得をすることは、今夜はほとんどありません。

決めない代わりに、「保留メモ」を作ります。紙を一枚出して、いちばん上に「保留」と書き、頭に浮かぶ「決めなきゃ」を一行ずつ書き出していきます。それぞれの横に、「いつ」「誰と」決めるかを一言だけ添えます。全部埋まらなくてかまいません。書き終えたら、紙を伏せて枕元から少し離れた場所に置きます。考えることをやめるのではなく、考える場所を明日以降に移す、という作業です。

今夜浮かぶこといつ・誰と決めるか
仕事を辞めるかどうか健康保険や会社の制度を確かめてから。がん相談支援センターにも相談できる
治療を続けるか、変えるか次の診察で、主治医と
家族や職場に、どこまで話すか明日話す一人と相談しながら、少しずつ
お金や身の回りの整理体調と気持ちが落ち着いてから。家族に頼んでもよい
最期をどこで過ごすか家族や医療者と何度も話し合って決めるもの。今夜は決めない
今夜浮かびやすい「決めなきゃ」と、決めるのにふさわしい時と相手(保留メモの例)

② 明日、誰に、どう話せばいいですか?

話す相手は一人で十分です。明日いちばん早く顔を合わせる家族でも、離れて暮らすきょうだいでも、相談窓口でもかまいません。今夜のうちに相手と最初の一文だけ決めておけば、明日は全部を話さなくても、その一文から始められます。

明日話す目的は、知らせを全員に伝えることではありません。この知らせを、ひとりだけで持っている時間を終わらせることです。だから相手は一人でよく、話す内容も、数字まで伝えるか、「大事な話があった」とだけ伝えるかを自分で選べます。

相手によって、最初の一文は変わります。一緒に暮らす家族なら「昨日の診察のこと、まだちゃんと話せていなかった。夜、少し時間をもらえる?」。診察に同席していた家族なら「昨日の先生の話、あなたにはどう聞こえた?」と、相手の受け止め方から聞いてみる方法もあります。同じ説明でも、聞いた人によって耳に残る言葉が違うことがあるからです。離れて暮らすきょうだいには「急ぎではないけれど、電話で話したいことがある。週末までに時間をもらえる?」。友人には「励ましはいらないから、少しだけ聞いていてほしい」。

家族にはまだ言えないと感じるなら、最初の一人を相談窓口にしてもかまいません。がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などにあり、その病院に通っていない人も、無料・匿名で利用できます。話したことが、あなたの同意なしに担当医へ伝わることもありません。窓口に話すときの最初の一文は、「昨日、余命を告げられました。何から考えればいいか分かりません」で十分です。

③ 次の診察で聞きたいことは、どう3つに絞ればいいですか?

夜中に浮かぶ問いを、「数字の意味」「これからのこと」「今の暮らし」の3つの箱に分け、それぞれ一つずつ、医師が答えやすい形に書き直します。「あと1年って本当なの」は、「1年くらいとおっしゃったのは、どんな幅を考えておけばいいという意味ですか」になります。

夜中に浮かぶ問いは、「本当なの」「どうなるの」「なぜ自分が」のように、誰にも答えられない形をしていることが多いものです。そのまま診察室に持っていっても、医師も答えに困り、自分も聞きたかったことを聞けないまま帰ることになります。そこで、問いを、医師が答えられる形に書き直します。

書き直すこつは、「何を」「どのくらい」「どうすれば」を入れることです。下の表の左の列に、今夜浮かんでいる問いが見つかったら、真ん中の列を自分の言葉に直して使ってください。5つの中から、3つの箱にそれぞれ一つずつ選べば、聞きたいことが3つに絞れます。余命の見通しをどこまで聞くか、聞く前に決めておきたいことは、余命を医師に聞くときの聞き方と、聞く前に決める3つにまとめています。

夜中に浮かぶ問い次の診察で聞く形聞くと分かること
あと1年って本当なの?「1年くらいとおっしゃったのは、どんな幅を考えておけばいいという意味ですか」数字の幅と、何をもとにした見立てか
これから、どうなっていくの?「この先、どんな変化が起きやすいですか。何を目印に連絡すればいいですか」体の変化の見通しと、連絡の目安
治療はもう終わりなの?「これからの治療の目標は何ですか。つらさを和らげる治療は受けられますか」治療と緩和ケアの見通し
仕事は続けられるの?「今の体で、仕事や外出はどこまで続けられますか」暮らしの中で続けられること
家族に何て言えばいいの?「家族にも一緒に説明していただける機会はありますか」家族と一緒に聞く場があるか
夜中に浮かぶ問いを、次の診察で聞ける形に書き直した例

眠れないまま朝を待つ夜、どこに話せますか?

今すぐ声で話したいなら、24時間・無料のよりそいホットライン(0120-279-338)があります。文字で置いておきたいなら、がんと家族の相談室のLINEへ。夜に届いたものは翌朝いちばんに読んで返事をします。明日の昼には、がん相談支援センターにも相談できます。

がんと家族の相談室の電話(080-4178-5017)は、平日9:00〜18:00なら担当が直接出ます。その時間の外にかけた電話は自動音声が受け付けて、翌朝9時までに担当が折り返しのお電話をします。夜のうちに受け付けを済ませておけば、朝いちばんに、名前を名乗った担当と話せます。評価も助言もせずに、ただ聞く20分を選ぶこともできます。よりそいホットラインは、がん専門の窓口ではありませんが、時間を問わず誰かの声が聞きたい夜に頼れます。

こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、かけた場所の都道府県や政令指定都市が行う、公的な心の相談につながる番号です。何曜日の何時に受け付けているかは地域ごとに異なり、通話料も必要です。翌日の平日には、国立がん研究センターのがん情報サービスサポートセンター(0570-02-3410、または03-6706-7797)も使えます。受付は平日10時〜15時で、利用は無料(通話料は自己負担)、匿名で、原則1日1回20分以内です。声に出すのがつらいときのために、2026年5月から平日12時〜15時のチャット相談も始まっています。

もしも「消えてしまいたい」という気持ちが浮かんでいるなら、朝を待たずに、24時間かけられるよりそいホットラインや、受け付けている時間ならこころの健康相談統一ダイヤルに、その気持ちのまま話してください。明日には、主治医やがん相談支援センターにも伝えてください。今まさに自分の身が危ないと感じるときは、ためらわずに119番に電話してください。夜を越すための一般的な工夫は、不安で眠れない夜に朝まで自分を守る方法にまとめています。

  1. 1今夜〜朝よりそいホットライン(0120-279-338)。24時間・無料、がん専門の窓口ではない
  2. 2今夜のうちに相談室のLINEに文字で送る。電話は自動音声で受け付ける
  3. 3翌朝9時まで相談室の電話で受け付けた分に、担当から折り返す
  4. 4朝から日中がん相談支援センター、通院先の外来の看護師
  5. 5平日10時〜15時国立がん研究センターの相談窓口「がん情報サービスサポートセンター」へ。0570-02-3410、チャットは12時〜15時
今夜から明日の昼までに、話せる先を時間の順に並べた図

告げられた夜に退職のメールを書きかけていた方は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・女性・ご本人(夫と中学生の息子と3人暮らし。一人で外来を受診し、「1年くらいと考えておいてください」と告げられた)
相談のあとに変わったこと
告げられた夜、上司に送る退職のメールを書きかけていたが、送らずに保留できた。翌日の夜、夫に最初の一文で切り出し、次の診察には3つの質問と夫を連れて行けた。

1. 相談のあとに変わったこと

2週間後の診察で、彼女は紙に書いた3つの質問を、夫の隣で読み上げた。主治医は、数字は幅のある目安であることと、これからの治療の効き方を見ながら見通しを話し合っていくことを、紙に図を描いて説明した。書きかけの退職メールは下書きのまま残し、翌週、人事の担当に傷病手当金の条件を尋ねた。夜中に目が覚めても、枕元から離して置いた「保留メモ」を思い出し、また横になれる夜が増えた。「決めなくていい、と言われたのがいちばん効いた」と彼女は話す。

2. 相談を考えた背景

一人で受けた外来で、主治医から「1年くらいと考えておいてください」と告げられた。彼女は「分かりました」と落ち着いて答え、帰りにスーパーで夕食の材料を買った。夕食の席では、息子の部活の話に笑ってうなずいた。夫には何も言えなかった。

3. 相談する前に困っていたこと

夜11時に布団に入ってから、午前1時すぎまで「余命1年 過ごし方」「生存率」と検索を続けた。読むほどに、今夜のうちに全部を決めなければいけない気がしてきて、上司に送る退職のメールを書き始めた。隣で眠る夫を起こす気にはなれず、こんな時間に誰に話せばいいのかも分からなかった。

4. ここを選んだ理由・決め手

検索の途中で、がんと家族の相談室のページを見つけた。夜は自動音声で受け付け、翌朝9時までに担当から折り返すと書かれていた。24時間の電話相談の番号も控えたが、話したいのは、余命の数字を聞いたあとのことだった。朝のうちに声で話せること、希望すれば評価も助言もしない20分にできることが決め手になり、午前2時に電話をかけて、自動音声で受け付けてもらった。

5. 相談で話したこと・その後

翌朝8時半、担当は名前を名乗ってから、まず彼女の話を聞いた。診察室のこと、スーパーのこと、書きかけのメールのこと。余命の数字や病状については「それは主治医の先生に確かめることです」と言い、判断も予測もしなかった。そのうえで3つのことを一緒に整理した。退職メールは「保留」の側へ。夫には、その日の夜に「昨日の診察のこと、まだちゃんと話せていなかった」と切り出す。次の診察で聞くことを3つ書く。その夜、夕食の席では切り出せず、息子が部屋に戻ってから、ようやく最初の一文を口にした。夫はしばらく黙り、「次は一緒に行く」と言った。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 「1年くらい」とおっしゃったのは、どんな幅を考えておけばいいという意味ですか。
  • その見立ては、どんなことをもとにしていますか。治療の効き方によって変わることはありますか。
  • この先、どんな変化が起きやすいですか。何を目印に連絡すればいいですか。
  • 今の体で、仕事や外出はどこまで続けられますか。
  • 家族と一緒に、あらためて説明を聞く機会をいただけますか。
  • 気持ちのつらさで眠れないとき、この病院では誰に相談できますか。

とはいえ、告げられた夜を過ごすあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──この夜をうまく過ごせなくても、かまわない

ここまで3つのことを書いてきましたが、今夜、そのどれもできなくてかまいません。紙を出す気力もなく、ただ朝を待つだけの夜になってもいいのです。泣き続けても、何も感じなくても、家族に言えないままでも、それは弱さではなく、それだけ重い知らせを受け取ったということです。数日たって、この夜のことを思い出したときに、「あの夜の自分はよく持ちこたえた」と言ってあげてください。何かができた夜より、持ちこたえた夜のほうが、ずっと多いはずです。

② 実務のこと──次の診察を「聞くための診察」にする段取り

3つの質問を書いても、いつもの短い診察時間の中では、聞ききれないことがあります。次の予約を確かめるときに、外来の看護師に「今後のことを相談したいので、少し時間をいただけますか」と伝えておくと、説明の時間を取ってもらえる場合があります。同席してくれる人には、答えを書き留める役を頼みます。説明を録音してよいかを先に尋ねてみる方法もあります(扱いは病院によって違います)。診察室に入ったら、最初に「今日は聞きたいことが3つあります」と伝えると、医師も時間の配分を考えやすくなります。次の診察まで日があり、それまでに聞きたいことが出てきたら、外来の看護師やがん相談支援センターに、先に相談しておくこともできます。

今日できること

告げられた今夜から明日にかけて、自分の荷物を軽くする3つのこと

  1. 「保留メモ」を作る

    今夜浮かんだ「決めなきゃ」を紙に書き出し、見出しに「保留」と書いて伏せます。横に「いつ・誰と」を一言ずつ添えれば十分です。

  2. 明日話す一人と、最初の一文を決める

    名前を一人だけ書き、「昨日の診察のこと、まだちゃんと話せていなかった」のような最初の一文を添えておきます。

  3. 聞きたいことを3つ書く

    「数字の意味」「これからのこと」「今の暮らし」から一つずつ選び、医師が答えやすい形に書き直して、次の診察に持っていくかばんに入れます。

よくある質問

余命を聞いてから、涙も出ず何も感じません。おかしいのでしょうか?

おかしくありません。大きな知らせを受けた直後は、気持ちが追いつかず、何も感じないように思えることがあります。数日たってから急に涙が出たり、怖さが押し寄せたりすることもあり、その順番も人それぞれです。何も感じないまま眠れない夜や、食べられない日が続くときは、そのことを主治医や看護師、がん相談支援センターに伝えてください。

「1年くらい」と言われました。1年たったら、ということですか?

そういう意味ではありません。余命として伝えられる期間は、同じような状態の方々の経過をまとめた統計をもとにした目安で、その集団の中でも、長く過ごす方と短い方がいます。生存率も集団の数字で、ご本人の余命を示すものではありません。どんな幅で考えればいいのかは、次の診察で主治医に尋ねてみてください。

今夜のうちに、家族に話したほうがいいですか?

どちらでもかまいません。家族が起きていて、今夜話したい気持ちがあるなら、話してかまいません。家族を起こしたくない、まだ言葉にならないという夜なら、明日ひとりに話すと決めて、今夜は最初の一文だけ用意しておけば十分です。急いで全員に伝える必要はありません。

勢いで、会社に辞めると伝えてしまいそうです。

今夜は送らずに、下書きのまま置いておいてください。会社員などの健康保険に入っている方には、病気で働けず給与が出ないときの傷病手当金があり、退職後も受け取り続けるには条件があります。辞めるかどうかは、加入している健康保険や会社の担当者に条件を確かめてからでも遅くありません。働き方の相談は、がん相談支援センターでもできます。

「消えてしまいたい」という気持ちが浮かびます。

その気持ちも、ひとりで抱えずに、そのまま言葉にしてください。24時間かけられるよりそいホットライン(0120-279-338)は、通話料もかかりません。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、かけた場所の地域の公的な心の相談につながります(受け付ける時間は地域によって違います)。明日には主治医やがん相談支援センターにも伝えてください。今まさに身の危険を感じるときは、119番に電話してください。

本当は、数字までは聞きたくありませんでした。

これからどこまで聞くかは、選び直せます。次の診察で「これからは数字ではなく、起こりやすい変化を教えてください」と伝えることもできます。医療やケアの方針を決めるときの国の指針は、ご本人による意思決定を基本にしていて、何をどこまで知るかも、ご本人が決めてよいことです。

告げられた夜の気持ちを、まず聞かせてください

いま胸にある気持ちをひとことと、折り返し先の電話番号を書いてください。お名前はニックネームでかまいません。送信が終わるとすぐ受付確認のメールが届き、そのあと、選んでいただいた時間帯に担当がお電話します。まずはお話をうかがい、ご希望があれば、次の診察で聞く3つの質問を一緒にまとめてお送りします。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

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    次の一歩

    数字より先に、「幅」と「今できること」を聞いてみる

    余命の数字は、多くの方の経過をまとめた統計で、あなた一人の予測ではありません。知りたいかどうかは、ご本人が決めてよいことです。知りたいときは、数字そのものより「どのくらいの幅で見ているか」を主治医に尋ねると、受け止めやすくなります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「今の状態を、月単位・週単位のような幅で見ると、どのあたりでしょうか。」

    1. 聞きたいこと・聞きたくないことを、先にご家族と話しておく
    2. 主治医に聞くのがつらいときは、看護師やがん相談支援センターに「どう聞けばよいか」から相談する
    3. 数字を調べ続けて眠れない夜は、結論を朝に回して、誰かに話す

    手元にあると話しやすいもの

    • 聞きたいこと・聞きたくないことを書いたメモ
    • 次の診察の日時

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    がん情報サービス(国立がん研究センター)
    出典のはっきりしたがんの情報と、お近くのがん相談支援センターの探し方がまとまっています。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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