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あとどれくらい生きられるか知りたい|がんの余命5つの質問に回答

この記事には、余命や生存率などの数字の話が出てきます。数字は多くの方をまとめた統計で、一人ひとりの予測ではありません。読むのがつらいときは、途中で閉じても大丈夫です。

この記事の結論

余命は、同じ状態の方の統計と今の体の様子から医療者が立てる「幅のある見通し」で、日にちを言い当てるものではありません。最期が近いサインも目安にとどまるため、「今はどの段階か」を医療者に言葉で聞くのが、いちばん確かな方法です。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「用語集:生存率」;国立がん研究センター「… ほか11件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

「あとどれくらい」に、日にちまで正確に答えられる人はいません。医師が口にする「何か月」も、似た状態にある大勢の方の経過から割り出した目安で、大切な方ひとりに残された時間を言い当てるものではないからです。個人差はとても大きく、同じ言葉で説明された方どうしでも、その後の経過はそれぞれ違います。

それでも、手がかりがないわけではありません。「今どの段階にいるのか」は、医師や看護師に聞けば、言葉で教えてもらえることが多いのです。この記事では、夜中に検索されることの多い5つの質問──あとどれくらいか、余命はどう分かるのか、最期が近いのか、どんなサインがあるのか、もう長くないのか──に、短い答え、その理由、個人差の注意、医療者への聞き方の順で答えます。

「あとどれくらい」と打っては消している方へ

  • 検索窓に「あとどれくらい」と打っては、消してしまう。
  • AIに聞けば答えが出る気がするけれど、出てきた数字を信じていいのか分からない。
  • 長い説明はいらない。短くていいから、確かなことだけ知りたい。

がんの余命はどうやって分かるのですか?最期が近いサインも知りたいのですが、教えてもらえますか?

余命は、統計と今の体の様子をもとに、医療者が「月の単位」「週の単位」といった幅で見立てるものです。最期が近い時期に見られやすい変化もありますが、どちらも日数を割り出すためのものではありません。

そのため、この記事では5つの質問のどれにも、日数では答えていません。そのかわり、それぞれの質問に「医療者に何と聞けば、今の段階に近づけるか」を添えました。下の表は、5つの答えを1枚にまとめたものです。急いでいる夜は、表だけ読んで、気になる質問の見出しに進んでください。

質問短い答え医療者への一言
あとどれくらい?日にちは誰にも言い当てられない。数字は集団の目安「今の状態を言葉で教えてください」
余命はどう分かる?統計と体の様子に、変化の速さを重ねて見立てる「何をもとに、そう見ていますか」
最期が近い?家族の感覚より、医療者の見立てのほうが確か「今の段階を、どう見ていますか」
どんなサインが?眠り・食事・反応などの変化。日数は示さない「この変化は、何を意味していますか」
もう長くない?段階と、連絡や呼ぶ目安をセットで聞く「会わせたい人を呼ぶ目安はありますか」
5つの質問への短い答えと、医療者にかける一言

がんで、あとどれくらい生きられるのですか?

日にちまで言い当てられる人はいません。医師が伝える「何か月」は、同じような状態の方々の統計を手がかりにした目安で、その方だけの未来を予測した数字ではないからです。

国立がん研究センターのがん情報サービスは、生存率を、診断から一定の期間がたったときに生存している人の割合だと説明しています。院内がん登録の生存率を公開している閲覧システムも、その数字は過去の期間にがんと診断された方のもので、治療の進歩などにより、これから治療を受ける方には当てはまらない可能性があると注意書きをしています。医師の「何か月」も、こうした集団の数字や、集団の半数がまだ生存している期間(生存期間中央値)を手がかりにしていることが多く、中央値であれば、半数の方はその期間より長く過ごしています。

同じ数字を告げられた方どうしでも、年齢、もともとの体力、がんの性質、治療がどのくらい効いているか、持病があるかどうかで、その後の経過は大きく変わります。なかでも、どのくらい自分で動けるか、食事がとれているかといった「今の体の様子」は、どの統計にも載っていない、その方だけの情報です。

医師や看護師には、「何か月という数より先に、今の様子をどう見ていらっしゃるか聞かせてください」と頼むことができます。数字まで聞くかどうかは、その答えを聞いてから決めても遅くありません。

余命の見通しは、何をもとに立てられるのですか?

主に、がんの種類と広がり(ステージ)から見た統計と、今の体の様子の2つです。医療者はそこに変化の速さを重ね、「月の単位」「週の単位」のような幅のある言葉で見通しを伝えます。

ステージは、がんの大きさや広がり(T)、リンパ節への転移(N)、離れた臓器への転移(M)の3つの要素で評価する分類で、治療方法を考えるときの指標のひとつです。多くのがんでは、離れた臓器に転移があるとⅣ期に分類されますが、基準はがんの種類によって異なり、急性骨髄性白血病のように解説にステージを使わない病気もあります。「ステージⅣ」と聞いて「もう末期なのだ」と受け止める方もいますが、ステージは広がりを表す言葉で、残りの時間を表す言葉ではありません。

体の様子として医療者が見ているのは、たとえば、どのくらい自分で動けるか、食事や水分がとれているか、眠っている時間、息苦しさやむくみ、意識のはっきりさなどです。そこに、変化が月ごとに分かるのか、週ごとに分かるのか、日ごとに分かるのかという「速さ」を重ねて考えます。見通しは一度決まったら終わりではなく、体の変化に合わせて更新されていきます。

  1. 1がんの種類と広がりを確かめるステージなどの分類で、どの集団の統計が参考になるかが決まる
  2. 2集団の統計を参照する何年も前に診断された大勢の方の経過で、個人の予測ではない
  3. 3今の体の様子を見る動ける範囲、食事や水分、眠り、息苦しさ、意識のはっきりさ
  4. 4変化の速さを重ねる月ごと・週ごと・日ごとのどれで変化が見えているか
  5. 5幅のある言葉で伝える「月の単位」「週の単位」など。変化に合わせて見立ては変わる
余命の見通しが「幅のある言葉」になるまでの流れ

統計を自分で確かめたいときは、国立がん研究センターの「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」や、全国がんセンター協議会の「全がん協生存率調査(KapWeb)」で、がんの種類や病期ごとの数字を調べられます。どちらも大勢の方の集団の数字なので、主治医の説明と並べて読むと、数字だけが一人歩きしにくくなります。数字の読み方は余命の数字の読み方で、医師がよく使う言い方は「月単位」「週単位」の意味で、くわしく整理しています。

聞くときは、「今の見通しは、何をもとに考えていらっしゃいますか」とたずねると、統計の話なのか、体の様子の話なのかが分かり、説明を受け止めやすくなります。

最期が近いかどうかは、家族にも分かりますか?

ご家族が「近いのかもしれない」と感じ取ることはあっても、確かめるには医療者に聞くのがいちばん確実です。医師や看護師は体の変化とその速さを日々見ていて、「今はどの段階か」を言葉で伝えられることが多いからです。

面会のたびに眠っている時間が長くなった、話しかけても返事がゆっくりになった。ご家族は、こうした変化にいちばん先に気づく存在です。ただ、その変化が病気の進み方によるものなのか、お薬や一時的な体調の波によるものなのかは、家族の目だけでは見分けにくいことがあります。たとえば、話のつじつまが合わなくなる「せん妄」は、病状が進んだ時期に起こりやすい一時的な意識の混乱で、原因によっては、早めに医療者に伝えて対応することで和らぐことがあるとされます。家族が「もう近いのかも」と感じた変化の中に、手当てで和らぐものが含まれていることもあるのです。見えた変化をそのまま医療者に伝えることには、それだけの意味があります。

変化の現れ方は人によって違います。ゆっくり進む方もいれば、ある日を境に変化が速くなる方もいて、家族のあいだでも「まだ大丈夫」「もう近い」と感じ方が分かれることがよくあります。

看護師や医師には、「今の段階を、どう見ていらっしゃいますか」「先週と比べて、変化の速さはどうですか」と聞いてみてください。本人の前で聞きにくいときは、「少しだけお時間をいただけますか」と、廊下やナースステーションで声をかけてかまいません。

  • 食べた量と飲んだ量(いつもと比べてどうか)
  • 眠っている時間と、起きているときの様子
  • 話しかけたときの返事や表情
  • 本人がつらそうにしていること(痛み・息苦しさ・落ち着かなさ)
  • 先週と比べて変わったこと
  • 家族がいちばん心配していること
看護師に伝える前に、メモしておくと伝わりやすいこと

最期が近いときには、どんなサインが現れますか?

眠っている時間が長くなる、食事や水分が減る、呼びかけへの反応がゆっくりになるといった変化が、多くの方に見られます。ただし、どのサインも「あと何日」を示すものではなく、現れ方や順番は人によって違います。

看取りの時期のご家族向けには、緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)が作った冊子『これからの過ごし方について』があります。からだに起きてくる変化、のどのゴロゴロ、回復が難しいせん妄、点滴(輸液)のことなどを、家族の心配に沿って説明するもので、医師や看護師が説明に使うことを想定しています。病棟や訪問看護で「家族向けの説明の資料はありますか」と尋ねてみると、こうした資料を使って話してもらえることがあります。

この冊子が家族の役に立ったかどうかは、ご遺族への調査で確かめられています。10施設で冊子を使って説明を受けたご遺族325名に郵送でたずね、260名が回答した調査(山本亮ほか、2012年)では、81%が「とても役に立った」「役に立った」と答え、「変化の目安になる」と答えた方は84%でした。協力した施設のご遺族の結果で、すべての家族に当てはまるわけではありませんが、前もって知っておくことが、そばにいる家族の支えになりうることがうかがえます。

医療者向けの研究もあります。米国とブラジルの緩和ケア病棟で、進行がんの患者さん357人を観察した研究(Hui Dほか、2014年)では、手首の脈が触れない、下顎呼吸(あごを動かすような呼吸)、尿の量の減少、呼吸のリズムの変化(チェーン・ストークス呼吸)、のどのゴロゴロ音(死前喘鳴)が、亡くなる3日以内を強く示す徴候とされました。意識の低下や、飲み物を飲み込みにくくなることは、それより早く現れるものの、時期を見分ける決め手としては弱いという結果です。翌年の報告(Hui Dほか、2015年)では、調べた52の徴候の中から、瞳孔の対光反射の消失など8つが挙げられています。

ただ、これは医療者がベッドサイドで観察するための研究で、ご家族が脈や呼吸をひとつずつ確かめて、日数を数えるためのものではありません。研究の対象は緩和ケア病棟の患者さんで、同じ変化が見えても、その後の経過は一人ひとり違います。気になる変化に気づいたら、自分で判断せずに、見たままを看護師や医師に伝えてください。そのときは「この変化は、何を意味していますか」「本人は苦しいのでしょうか」と聞くと、答えが具体的になります。最期が近い時期の体の変化は、最期が近いサインの記事でも一つずつ説明しています。

言えること

  • 多くの方に共通して見られやすい変化がある
  • 変化の速さは、医療者が段階を見立てる手がかりになる
  • 前もって知っておくと、そばにいる家族の目安になりうる

言えないこと

  • 「このサインが出たら、あと何日」とは言えない
  • 順番どおりに進むとは限らない
  • 同じ変化が見えても、その後の経過は一人ひとり違う
最期が近いサインについて、言えることと言えないこと

「もう長くないのでは」と感じたら、どう確かめればいいですか?

「今の段階を、どう見ていらっしゃいますか」と、看護師や主治医にそのまま聞いてください。あわせて、夜間に連絡をもらえる変化と、会わせたい人を呼ぶ目安を確かめておくと、次の一歩が決まります。

段階だけを聞いても、そのあと何をすればいいかは見えにくいものです。段階を聞くときは、「では、家族は何をしておけばいいですか」まで続けて聞くと、答えが行動に変わります。遠方のきょうだいに連絡する時期、今夜泊まるかどうか、仕事の休み方。どれも、医療者の見立てを聞いたうえで、家族が決めていくことです。

聞くのが怖いと感じるのも、自然なことです。大切な人を失う前から湧いてくる悲しみは「予期悲嘆」と呼ばれ、「喪失が現実となる以前に起こる悲嘆」と説明されています。また、国立がん研究センターのがん情報サービスは、ご家族は「本人はもっとつらいのだから」と気持ちを我慢しがちで、「第二の患者」ともいわれると紹介しています。聞く前に、まず誰かに「怖い」と言ってみることも、立派な準備のひとつです。

がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口で、ご家族も、その病院にかかっていない人も、無料・匿名で使えます。主治医への聞き方に迷うとき、家族のつらさを話したいときの相談先として覚えておいてください。

夜中に急に様子が変わったら、どこに連絡すればいいですか?

入院中なら病棟、在宅なら訪問看護や在宅医など、あらかじめ決めてある連絡先へ、見たままを伝えてください。呼吸が止まりそうなど命に関わる様子のときは119番です(在宅で連絡の手順を決めてあれば、その手順に沿います)。

夜中の変化は、昼間より大きく見えるものです。電話をかける前に、「いつから」「何が」「どう変わったか」を一行だけメモしてから話すと、短い時間でも伝わります。在宅で療養している場合は、「こういう様子になったら、ここに電話する」という取り決めを、訪問看護や在宅医と前もって作っておくと、夜中に迷わずにすみます。

救急車を呼ぶか、すぐ病院に行くか迷ったときには、医師・看護師・救急救命士に電話で相談できる「救急安心センター事業(#7119)」がある地域もあります。ただし、実施していない地域もあるため、お住まいの地域で使えるかを昼間のうちに確かめておくと安心です。

がんと家族の相談室は医療機関ではないため、体調の急な変化には、まず医療者へ連絡してください。そのうえで、「医師に言われた言葉の意味が分からない」「誰をいつ呼べばいいか決められない」といった、医療の判断ではない迷いは、相談室で一緒に整理できます。

  1. Q1呼吸が止まりそう、呼びかけにまったく反応しないなど、命に関わる様子ですか

    はい在宅療養中で連絡の手順を決めてあればそれに沿い、なければ119番へ

    いいえ入院中なら病棟へ、在宅なら訪問看護や在宅医の連絡先へ、見たままを伝える

  2. Q2救急車を呼ぶべきか、自分では判断がつきませんか

    はいお住まいの地域に#7119があれば、電話で相談できる

    いいえ「いつから・何が・どう変わったか」をメモしてから連絡する

夜中に様子が変わったとき、連絡先を選ぶ分かれ道

「あとどれくらい」を検索し続けていたご家族は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・息子の立場(父が緩和ケア病棟に入院中。妹は新幹線で3時間の距離に住む)
相談のあとに変わったこと
夜中に余命の数字を探すのをやめ、看護師に「今の段階」を言葉で聞けるようになった。遠方の妹を呼ぶ目安も、きょうだいで決められた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から1週間で、夜中にスマホで「あとどれくらい」と調べる回数は、ほぼ毎晩から週に1回ほどに減りました。面会の前には、メモアプリに質問を3つ書いておくのが習慣になっています。2回目の面会で看護師に「今の段階を、どう見ていらっしゃいますか」と聞くと、「眠っている時間が先週より長くなっていて、変化が週ごとに見えてきています」と、言葉で説明してもらえました。その日のうちに妹へ電話し、「呼吸の様子が変わったと病棟から連絡があったら来てほしい」と、呼ぶ目安を2人で決めています。

2. 相談を考えた背景

父は緩和ケア病棟に移ってから、食事の量が目に見えて減っていました。主治医からは「時間はそれほど長くないかもしれません」と言われたものの、具体的なことは聞けないまま帰宅。深夜1時、チャット型のAIに「末期がん あとどれくらい」と打つと、それらしい数字が返ってきました。「これを信じていいのか、確かめる相手がいなかった」と振り返ります。

3. 相談する前に困っていたこと

生存率のページもいくつも読みましたが、がんの種類や調査の年ごとに数字が違い、どれが父に近いのか分かりませんでした。面会のときは父が起きていることが多く、本人の前で「あとどれくらいですか」とは聞けません。妹からは毎晩のように「どうなの?」とメッセージが届き、答えられない自分を責めていたといいます。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターも考えましたが、面会と仕事の合間に自分から電話をかける余裕がなく、何を相談したいのかも整理できていませんでした。フォームなら夜中に書けて、名前はニックネームでよく、折り返しの時間帯も「平日の昼休み」と選べます。送信してすぐに受付確認のメールが届き、「ちゃんと届いた」と分かったことで、その夜は少し眠れたそうです。

5. 相談で話したこと・その後

昼休みにかかってきた電話で、担当はまず、ここまでの経緯を最後まで聞きました。「時間はそれほど長くない」という言葉の一般的な意味は説明しましたが、何日、何週間といった予測は一度も口にしていません。そのかわりに、「今の段階を、どう見ていらっしゃいますか」「夜間に連絡をもらえるのはどんな変化のときですか」「家族が今できることは何ですか」の3つを、質問メモにして送りました。翌週、彼は妹と一緒に病院のがん相談支援センターにも足を運び、家族の気持ちの整理についても話を聞いてもらっています。「数字を探すのをやめたら、父の顔を見ている時間が増えました」。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医師・看護師に聞く質問例

  • 数字より先に、今の様子をどう見ていらっしゃるか、言葉で聞かせていただけますか。
  • 変化は、月ごと・週ごと・日ごとのどのあたりで見えていると考えていますか。
  • これから起こりやすい変化と、そのとき家族ができることを教えてください。
  • 夜間に連絡をいただけるのは、どんな変化があったときですか。
  • 本人がつらそうなときに、和らげる方法はありますか。

とはいえ、数字を探している夜に伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──「知りたい」と「知りたくない」は、交互に来ていい

昼間は「ちゃんと知っておかなければ」と思い、夜になると「聞くのが怖い」と思う。その揺れは、矛盾ではありません。夜中に何度も検索してしまうのは、少しでも備えておきたい、あとで悔やみたくないという思いがあるからで、責めることではありません。そして、数字を聞かないと決めることも、ご家族の大切な選択です。「段階と連絡の目安だけは聞く。数字は聞かない」という線の引き方もあります。きょうだいの中で、知りたい人と知りたくない人がいるなら、知りたい人が代表で聞き、ほかの家族にどこまで伝えるかを先に決めておくと、受け止め方のずれによるぶつかり合いが減ります。

② 実務のこと──病院との窓口と、家族の連絡の流れを一本にしておく

見通しの話を聞くようになったら、家族の中で「病院との窓口になる人」をひとり決めておくと、説明の受け取り方が人によって食い違いにくくなります。窓口の人が聞いた内容を、家族のグループのメッセージなど決まった場所に書いて共有する形にしておけば、遠方のきょうだいも同じ情報をもとに動けます。仕事を休む日が増えそうなときは、勤務先の介護休暇や介護休業の扱いを、早めに人事に確かめておくのもこの時期の準備です。介護休暇は、家族が要介護状態であれば1年に5日(対象の家族が2人以上なら10日)まで、時間単位でも取れます。また、もしものときに電話する先をひとつ決めておく「もしもの夜の備え」の登録は、無料・3分で、その場で何かを決める必要はありません。

今日できること

数字を探す代わりに、今の段階へ近づくための3つ

  1. 見たことを3行で書き留める

    今日の食事の量、眠っていた時間、話しかけたときの反応を、スマホのメモに3行だけ書きます。次に看護師と話すとき、そのまま見せられます。

  2. 聞く質問を1つだけ選ぶ

    上の質問例から、いちばん知りたいものを1つだけ選びます。面会で聞きそびれても、メモがあれば病棟への電話でも聞けます。

  3. 質問づくりを人に手伝ってもらう

    ひとりで質問を絞れないときは、フォームから折り返しのお電話を申し込んでください。言われた言葉の意味を一緒に整理し、質問メモにしてお送りします。

よくある質問

AIや検索サイトに出てきた余命の数字は、信じていいですか?

出典が示されていても、その多くは同じ病気の大勢の方の統計か、一般的な目安で、大切な方ひとりの予測ではありません。院内がん登録の生存率の閲覧システムも、数字は過去に診断された方のもので、これから治療を受ける方には当てはまらない可能性があると注意しています。数字を見て不安になったときは、その数字を消さずにメモしておき、「この数字は、父(母)に当てはまりますか」と主治医にそのまま聞くのがいちばん確かです。

余命と言われた期間より、長く過ごす人もいますか?

います。医師の伝える数字が生存期間中央値を手がかりにしているなら、その値は集団の半数がまだ生存している期間を示すものなので、言われた期間を越えて過ごす方が半数いる計算になります。ただ、大切な方がその半数に入るかどうかを、この数字から読み取ることはできません。長いか短いかを気にするより、今週の体の様子がどう動いているかを医療者と一緒に見ていくほうが、過ごし方を決める助けになります。

医師がはっきり数字を言ってくれないのは、何かを隠しているからですか?

隠しているとは限りません。一人ひとりの経過を日にち単位で予測することは、医師にとっても難しいことだからです。体の変化を見ながら見立てを少しずつ修正していくため、言い切れる数字を持っていないことのほうが普通です。数字の代わりに「これから、どんなことが起こりやすいですか」と尋ねると、医師も答えやすくなり、家族にとって使える情報が返ってきます。

急に元気になって会話ができました。持ち直したのでしょうか?

最期が近い時期にも、急に話がはずんだり、食べたいものを口にしたりする日が訪れることがあるといわれます。それが持ち直しのしるしなのかどうかは、家族には見分けがつきません。医療者に「今日の様子を、どう見ていらっしゃいますか」と尋ねたうえで、言葉を交わせるその時間を、伝えたいことを伝える機会にしてください。

本人にも、見通しを伝えたほうがいいですか?

決まった正解はありません。どこまで知りたいかは、ご本人が決めることです。家族が先に聞いた場合は、本人に「先生からどんな話を聞きたい?」と、知りたい範囲をたずねるところから始めると、本人の気持ちを置き去りにせずにすみます。迷うときは、医療者に「本人にどう伝えるのがよいか、一緒に考えてもらえますか」と相談できます。

夜中に不安で眠れないとき、誰かに話せる場所はありますか?

がんと家族の相談室の電話(080-4178-5017)は、平日9時〜18時は担当が直接お受けし、それ以外の時間は自動音声で受け付けて、翌朝9時までに担当から折り返します。LINEなら匿名で、ひとことだけでも送れます。夜に届いたものは翌朝いちばんに読んで返事をします。今すぐ誰かと話したいときは、24時間・無料のよりそいホットライン(0120-279-338)もあります。どの窓口も、まとまった話でなくてかまいません。

「今どの段階か」を聞く準備を、一緒にしませんか

ご相談の欄には、看護師さんや先生に言われた言葉を書いていただければ十分で、お名前はニックネームでかまいません。送ってすぐに届く受付確認のメールのあと、ご希望の時間帯に担当がお電話し、言葉の一般的な意味をお伝えしたうえで、次の面会に持っていく質問を3つ、メモにしてお送りします。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

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    次の一歩

    数字より先に、「幅」と「今できること」を聞いてみる

    余命の数字は、多くの方の経過をまとめた統計で、あなた一人の予測ではありません。知りたいかどうかは、ご本人が決めてよいことです。知りたいときは、数字そのものより「どのくらいの幅で見ているか」を主治医に尋ねると、受け止めやすくなります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「今の状態を、月単位・週単位のような幅で見ると、どのあたりでしょうか。」

    1. 聞きたいこと・聞きたくないことを、先にご家族と話しておく
    2. 主治医に聞くのがつらいときは、看護師やがん相談支援センターに「どう聞けばよいか」から相談する
    3. 数字を調べ続けて眠れない夜は、結論を朝に回して、誰かに話す

    手元にあると話しやすいもの

    • 聞きたいこと・聞きたくないことを書いたメモ
    • 次の診察の日時

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    がん情報サービス(国立がん研究センター)
    出典のはっきりしたがんの情報と、お近くのがん相談支援センターの探し方がまとまっています。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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