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一人になると怖い|がんと向き合うひとりの時間を楽にする3つの工夫

このテーマの総論:がんの不安で夜眠れない|朝まで自分を守る6つの方法

この記事の結論

一人になると急に怖くなるのは、気をまぎらすものと、すぐ声をかけられる人が同時にいなくなるからで、弱さではありません。音と明かりで部屋を整える、連絡先を目に見える所に置く、いつでも送れる先を一つ決める。この3つで、ひとりの時間は少しずつ怖さの小さいものに変えていけます。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「『がん相談支援センター』とは」/同「相談… ほか8件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

家族が出かけて玄関の鍵がかかった音のあと、あるいは病室の明かりが消えたあとに怖さが押し寄せてくるのは、がんの治療中の方によく起こることです。誰もいない部屋では気持ちの逃げ場がなくなり、体の小さな感覚まで大きく感じやすくなります。けれど、その時間の過ごしやすさは、前もっての準備でかなり変えられます。

怖さの強さは人によって違い、同じ人でも、平気でいられる日と、扉が閉まる音だけで胸がざわつく日があります。一人暮らしか家族と同居か、自宅か入院中かによっても、合う工夫は変わります。自分の場面に近いところから読んでみてください。

ひとりの時間に、こんな怖さを感じていませんか

  • 家族が出かけて家に一人になった途端、不安がどんどん膨らんでいく。
  • 病室で消灯したあと、自分の心臓の音まで怖く聞こえてしまう。
  • 誰かにいてほしい。でも「ずっと一緒にいて」とは言えない。

この記事で分かること

  • 一人になると怖さがふくらむ理由と、その流れのどこをゆるめればいいか
  • 自宅と病室で、音・明かり・手ざわりを整える具体的な工夫
  • 「体のこと」と「気持ちのこと」に分けた連絡先カードの作り方
  • いつでも送れる先の選び方と、最初に送る一行の例

がんの治療中、一人になると急に怖くなります。一人の時間をどう過ごせばいいですか?

「怖くならないように過ごす」より、「怖くなったときに手が届くものを、先に置いておく」と考えてみてください。音と明かり、目に見える連絡先、いつでも送れる先の3つがあれば、ひとりの時間はただ耐えるだけの時間ではなくなっていきます。

一人の時間を怖くないものにしようとして、「考えないようにしよう」と力を入れるほど、かえって考えてしまうことがあります。怖さがやって来ること自体は止めにくくても、来たときに手を伸ばす先は、前もって用意しておけます。

3つの工夫は、それぞれ別の怖さを受け止めます。音と明かりは、静けさの中で体の感覚ばかりが大きく聞こえる怖さを。連絡先カードは、「倒れても誰も気づかないのでは」という、もしもの心配を。いつでも送れる先は、家族には言えずに胸にたまっていく気持ちを。どれも特別な道具はいらず、今夜から始められます。

ひとりの部屋でこのページを開いたことも、どうか責めないでください。怖さを放っておかずに、手当てのしかたを探しにきた。それは自分を守るための、ちゃんとした一歩です。

なぜ、一人になると不安が大きくなるのですか?

会話や生活の音が消えて、注意が自分の体と頭の中に向きやすくなるからです。そこに「何かあっても、すぐには気づいてもらえない」という現実的な心配が重なり、怖さが一気にふくらみやすくなります。

誰かと一緒にいるあいだ、注意は相手の表情や話し声、台所の物音などに自然と分けられています。家族が出かけて部屋が静かになると、行き場をなくした注意は自分の内側へ戻ってきます。冷蔵庫のうなる音、時計の秒針、そして自分の脈。ふだんなら気にもとめない感覚を一つずつ拾い、「このどきどきは悪いしるしでは」と意味をつけはじめてしまうのです。

もう一つは、「もしも」の心配です。治療中は、日によってだるさやふらつきが出ることがあります。誰もいない時間には、「ここで倒れたら、夕方まで誰も気づかない」という想像が浮かびやすくなります。この心配は気の持ちようで消すものではなく、備えで小さくできる種類のものです。

三つ目は、家族の前で張っていた気持ちがゆるむことです。「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出し、扉が閉まった瞬間に涙が出てくる。それも弱さではなく、張りつめていた分がほどけた反応です。

  1. 1家族が出かける「行ってきます」のあと、話し声と物音が消える
  2. 2注意が内側へ向く時計の音や自分の脈が、急に大きく聞こえる
  3. 3意味づけが始まる「このどきどきは悪いしるし?」と考えはじめる
  4. 4もしもの心配が重なる「倒れても、夕方まで誰も気づかない」と想像する
  5. 5ひとりで抱え込む誰にも言えないまま、検索で怖さを足してしまう
一人になってから怖さがふくらんでいく流れ(よくある例)

この流れは、どこか一か所をゆるめるだけでも全体の勢いが弱まります。音と明かりは2つ目を、連絡先カードは4つ目を、送り先は5つ目を受け止める工夫です。夜の眠れなさも重なっている方は、不安で眠れない夜の過ごし方もあわせて読んでみてください。

部屋の音と明かりは、どう整えればいいですか?

静けさと暗さを、少しだけ埋めるのが目安です。小さな音を一つ、手もとか足もとに明かりを一つ。にぎやかにする必要はなく、「ここは安心していい場所だ」と体が感じられる程度で十分です。

音は、にぎやかにするためではなく、静けさのすき間を埋めるためのものです。人の話し声が穏やかに流れるラジオ番組、昔から聞いている音楽、雨音のような環境音。健康や病気の話題が多い番組は、ひとりの時間には避けたほうが落ち着けることがあります。家族に短い声のメッセージを録音しておいてもらい、聞き返すという方法もあります。

明かりは、部屋全体を照らすより、手もとや足もとに小さく一つ。暗さそのものより、「暗い中に一人でいる」という感じが怖さを強めるからです。入院中は、消灯後の手もとの明かりやイヤホンの使い方に病棟ごとの決まりがあるので、夕方のうちに看護師に聞いておくと安心です。

手ざわりと温かさも、思った以上に支えになります。両手で包める温かい飲み物、ひざ掛け、家族の上着。目に入る所には、家族が帰ってくる時間を書いたメモを置きます。「17時に帰るね」という一行があるだけで、ひとりの時間に終わりが見えてきます。

観点自宅で一人のとき病室で消灯したあと
音ラジオの話し声や聞き慣れた音楽を小さく流す病棟の決まりを確かめ、イヤホンで小さな音にする
明かり部屋の隅や足もとに小さな明かりを一つ手もとの明かりの使い方を看護師に聞いておく
手ざわり温かい飲み物やひざ掛けを手の届く所に家から持ってきたタオルや上着をそばに置く
目に入るもの家族が帰る時間を書いたメモを机に連絡先カードとナースコールを見える位置に
自宅と病室で、ひとりの時間の音・明かり・手ざわりを整える例

合う・合わないには個人差があります。試してみて落ち着かなければ、やめてかまいません。大事なのは、怖くなってから探しはじめるのではなく、一人になる前に一つずつ決めておくことです。

連絡先は、どこにどう置いておけばいいですか?

紙1枚に「体のこと」と「気持ちのこと」の2つの欄を作り、冷蔵庫やベッドの横など、目に入る所に貼っておく方法があります。スマホの中にしまうより、怖いときに探さずに見えるほうが、心配を小さくしやすくなります。

怖くなったとき、頭は思っている以上に働かなくなります。スマホの連絡先を開き、名前を探し、番号を確かめる。ふだんなら何でもない手順が、胸がどきどきしている最中には遠く感じられます。だから連絡先は、探さなくても目に入る場所が向いています。

体の欄には、治療を受けている病院や病棟、利用していれば訪問看護の番号を書き、その下に119番を書きます。救急車を呼ぶか迷うときに医師や看護師などへ電話で相談できる#7119は、実施していない地域もあるので、住んでいる地域で使えるか確かめてから書き加えます。病院から、体調が変わったときの連絡先を聞いていなければ、次の受診で「一人のときに具合が悪くなったら、どこに連絡すればいいですか」と尋ねてみてください。

気持ちの欄には、一言を送れる家族か友人を一人と、相談窓口を書きます。全国のがん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」は、患者さんも家族も無料・匿名で使え、その病院に通っていなくても相談できます。

体のことの欄

  • 治療中の病院・病棟の番号(具合が変わったとき)
  • 訪問看護の番号(利用している場合)
  • 119番(命に関わると感じたとき)
  • #7119(救急車を呼ぶか迷うとき。実施していない地域もある)

気持ちのことの欄

  • 一言を送れる家族か友人を1人
  • がん相談支援センター(無料・匿名。面談か電話)
  • よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)
  • がんと家族の相談室のLINE(夜の分は翌朝に返事)
連絡先カードを「体のこと」と「気持ちのこと」の2つの欄に分けた例

体の欄があると、「もしも」の想像が「そのときはここにかける」という手順に置き換わります。欄を分けておくのは、体の異変を気持ちのせいにして我慢したり、気持ちのつらさで救急に迷ったりしないためでもあります。がんと家族の相談室には、もしもの夜に電話する先を一つ決めておく登録もあります。費用はかからず3分ほどで済み、登録したからといって何かを決めなければならないわけではありません。

「いつでも送れる先」があると、何が変わりますか?

返事がすぐに来なくても、「送った」という一歩で、頭の中を回っていた怖さが外に出ます。そして、あとで誰かが読んでくれると分かっていることが、ひとりの時間を孤立から切り離してくれます。

怖さが頭の中だけにあるうちは、誰も知らない怖さです。一行でも誰かに送ると、それは「誰かが知っている怖さ」に変わります。返事を待つあいだも、送る前とは少し違う気持ちで過ごせることがあります。

送る言葉は、短くてかまいません。「いま家で一人。少し怖い」「消灯したら、心臓の音が気になって」。言葉にならなければ、スタンプ一つでも十分です。説明しなくていい、すぐに返事をもらわなくていい、と自分で決めておくと、送る手が止まりにくくなります。

送り先は、時間帯で使い分けると迷いません。家族のグループに送るなら、「既読がつくだけでいい」と先に伝えておくと、受け取る側も構えずにすみます。がんと家族の相談室のLINEは無料・匿名で使え、夜に届いたものは翌朝いちばんに読んで返事をします。国立がん研究センターのがん情報サービスサポートセンターは、2026年5月から平日12時〜15時のチャット相談も始めています。

ひとりの時間のあなた

  • 家族のグループ「既読だけでいい」と決めておけば、気軽に一行送れる
  • ナースコール(入院中)不安が強いときも押してよい。「眠れなくて」と一言
  • がん相談支援センター無料・匿名。受付時間はセンターごとに確かめる
  • がん情報サービスサポートセンター電話は平日10時〜15時、チャットは平日12時〜15時
  • よりそいホットライン0120-279-338。24時間・無料。がん専門ではない
  • がんと家族の相談室LINEは匿名で一言から。夜の分は翌朝いちばんに返事
ひとりの時間に、気持ちを送れる先の地図

入院中、消灯後に怖くなったら、看護師さんを呼んでもいいですか?

呼んでかまいません。「不安が強くて眠れない」「一人でいるのが怖い」も、看護師に伝えてよいことです。体の症状と同じように、心のつらさも、入院中に医療の中で相談してよいものです。

夜勤の看護師が忙しそうに見えて、「痛いわけでもないのに呼んではいけない」と我慢してしまう方もいます。けれど、不安で眠れないことは、伝えてよい困りごとです。伝えておけば、見回りのときに声をかけてもらえたり、眠りのことを医師に相談してもらえたりすることもあります。

呼ぶときの言葉は、「痛くはないのですが、一人でいると不安が強くなって。少しだけ話せますか」で十分です。すぐに来られないときもありますが、それはあなたの訴えが軽く扱われたからではなく、ほかの患者さんへの対応が重なっていることもあるからです。押すのをためらうなら、夕方の検温のときに「夜になると不安が強くなりやすいです」と先に伝えておく方法もあります。

翌日の回診や外来では、医師にも「夜、一人になると不安が強い」と伝えてください。緩和ケアについて、がん情報サービスは「がんと診断されたときから始まります」と書いています。体の痛みだけでなく、不安や落ち込みのような心のつらさも対象で、病院によっては、病棟を回る緩和ケアチームに話を聞いてもらえることもあります。

家族に「一人にしないで」と言えないときは、どう伝えればいいですか?

「ずっと一緒にいて」ではなく、「つながっている合図」を小さく頼んでみてください。帰る時間を教えてもらう、出先から一度だけスタンプを送ってもらう。それだけでも、ひとりの時間の長さの感じ方が変わることがあります。

「一人にしないで」と言えないのは、家族の暮らしを止めたくない、重荷になりたくないという思いやりがあるからです。ただ、言わずにいると、家族は「大丈夫」という言葉どおりに受け取って出かけていきます。

頼むのは、ずっとそばにいてもらうことではありません。「出かけるのはいいの。帰る時間だけ教えてくれる?」「お昼に一回だけ、スタンプを送ってくれると助かる」「怖くなったら一行送るから、返事は夜でいいよ」。どれも家族の予定をほとんど変えずにできることで、頼まれた側も、何をすればいいかがはっきりします。

家族の側も、出かけるたびに心配を抱えていることがあります。がん情報サービスの「家族ががんになったとき」には、家族は本人を気づかって自分の気持ちを我慢しがちで、「ご家族は、『第二の患者』ともいわれます」と書かれています。合図を決めておくことは、出かける家族の心配を軽くすることにもつながります。怖さを打ち明けたら励ましばかり返ってくる、という場合は、助言なしで聞いてもらう頼み方も参考になります。

怖さが強すぎるときや、体の変化があるときは、どうすればいいですか?

息苦しさや胸の痛み、強い痛み、発熱など体の変化があるときは、不安のせいと決めつけず、治療中の病院や訪問看護に連絡してください。命に関わると感じたら119番です。気持ちのつらさが続くときも、相談してよいサインです。

ひとりのときに起きる体の変化が、不安から来ているのか、病気や治療の影響なのかを、自分で見分けるのは難しいことです。不安のせいだと決めつけて我慢するのも、体の異変だと思い込んで眠れなくなるのも、どちらもつらいもの。迷ったら、カードの体の欄に頼ってかまいません。

気持ちのほうにも、相談を考えたいサインがあります。一人になる時間が近づくだけで胸が苦しくなる、眠れない日や食べられない日が続く、出かけようとする家族を毎回引き止めてしまう。そんなときは、主治医や看護師、がん相談支援センターに伝えてください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)にかけると、電話をかけた場所の都道府県などが行う公的な相談窓口につながります(受付の曜日や時間は地域で異なり、通話料がかかります)。「消えてしまいたい」と感じるときは、24時間対応のよりそいホットライン(0120-279-338)に電話するか、その日のうちに誰かへ伝えてください。

  1. Q1息苦しさ、胸の痛み、強い痛み、発熱など、体の変化がありますか

    はい治療中の病院・病棟か訪問看護へ。命に関わると感じたら119番

    いいえ次の問いへ進む

  2. Q2今すぐ誰かの声を聞かないと、耐えられそうにありませんか

    はい入院中はナースコール。自宅ならよりそいホットライン(24時間)

    いいえ次の問いへ進む

  3. Q3気持ちを一行にして誰かに渡せば、朝まで待てそうですか

    はい送れる先に一行送り、連絡先カードを見ながら過ごす

    いいえ家族か、カードの気持ちの欄の誰かに電話する

ひとりの時間に怖くなったとき、どこへ連絡するかの分かれ道

ひとりの昼が怖かったご本人は、どう過ごし方を変えた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
60代・本人の立場(外来で抗がん剤治療中。平日の昼は夫も娘も仕事で不在)
相談のあとに変わったこと
家族が出かけたあとの数時間を「明かりとラジオ、連絡先カード、昼の一行」で過ごせるようになった。仕事中の娘への電話は1日4〜5回から、昼休みのスタンプ1往復に落ち着いた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談からおよそ1か月後、この方の平日の昼には決まった流れができていました。家族が出かけたら、居間の小さな明かりをつけ、聞き慣れたラジオ番組を小さく流す。冷蔵庫に貼った連絡先カードを一度だけ見る。昼休みの時間に娘へスタンプを一つ送り、一つ返ってくる。以前は1日に4〜5回、仕事中の娘に電話をかけていましたが、それがなくなりました。「怖さが来なくなったわけじゃないの。来たときに、することが決まっているだけ」と話しています。

2. 相談を考えた背景

治療が入院から外来に切り替わり、平日の昼は家に一人になりました。点滴の翌日はだるくてソファで横になっていることが多く、冷蔵庫の音や時計の秒針がやけに大きく聞こえる。そのうち自分の脈まで気になりはじめ、「このまま具合が悪くなっても、夕方まで誰も気づかない」と考えると、息が浅くなっていったといいます。

3. 相談する前に困っていたこと

不安になると「一人 動悸 がん」などと検索し、読めば読むほど怖くなりました。朝は家族に「大丈夫だから行ってきて」と言って送り出しているので、昼に何度も電話するのは気が引ける。かといって、はっきりした症状があるわけでもないのに病院へ電話していいのかも、分からずにいました。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターのことは知っていましたが、「気持ちのことで電話するのは大げさでは」とためらっていました。LINEなら匿名で、一行でもスタンプでもいいと書かれていたこと、フォームで家族のいない時間帯を指定して電話をもらえることが決め手になりました。最初に送ったのは「昼、家に一人でいると怖いです」の一行です。

5. 相談で話したこと・その後

翌朝に返事が届き、翌週の火曜日、家族が出かけた直後の時間に電話を受けました。担当は動悸の原因について何も判断せず、「一人のときにどきどきすることを、次の受診で主治医に伝える」と質問メモに入れました。電話の後半は一緒に連絡先カードの中身を決め、体の欄と気持ちの欄を分けました。次の受診でそのことを伝えると、看護師から「そういうときは遠慮しないで病院に電話して」と言われ、カードのいちばん上に病棟の番号を書き足したそうです。娘とは「返事は夜でいい」という約束で、昼にスタンプを送り合うことにしました。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 家で一人のときに具合が悪くなったら、まずどこへ連絡すればよいですか。夜間や休日の番号も教えてください。
  • 一人になると胸がどきどきしたり、息が浅くなったりします。体の面で確かめておくことはありますか。
  • 不安が強いとき、気持ちのことを相談できる専門の人や緩和ケアチームはありますか。
  • 入院中、消灯後に不安で眠れないときは、ナースコールで呼んでもよいですか。
  • 次の治療までの間、一人で過ごすときに特に気をつけておく体の変化はありますか。

とはいえ、ひとりの時間について伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──扉が閉まったあとの涙は、張りつめていた分がほどけただけ

家族の前で平気なふりをしている方へ。「行ってらっしゃい」と笑って送り出したあと、扉が閉まった瞬間に涙が出てくるのは、それまで家族に心配をかけまいとしてきた分の重さです。ここでは泣いていいのです。一人の時間は怖さがやって来る時間であると同時に、誰にも気をつかわずに気持ちを外に出せる、数少ない時間でもあります。泣いたあとに、少し体がゆるむこともあります。怖さを感じないための工夫より、怖さを感じても大丈夫な場所をつくる工夫のほうが、長く続けやすいものです。

② 実務のこと──ひとりの時間が長い暮らしは、組み立てごと相談できる

一人暮らしの方や、家族が朝から夜まで家を空ける方にとって、ひとりの時間は小さな工夫では埋まらないほど長いことがあります。そのときは気持ちの問題として一人で抱えず、暮らしの組み立ての問題として相談してかまいません。通っている病院に医療ソーシャルワーカーがいれば、療養中の不安や、使える行政サービスについて相談できます(窓口の名前は病院によって違います)。高齢の方とその家族は地域包括支援センターに、40〜64歳の方は市区町村の介護保険の窓口か地域包括支援センターに、暮らしの困りごとを持ち込めます。「昼間はずっと一人で、不安です」という一言から始めて、誰がいつ様子を見に来られるか、どんな支えが使えるかを一緒に考えてもらう道があります。

今日できること

ひとりの時間に備えて、今夜から明日にできる3つのこと

  1. 連絡先カードを1枚作る

    紙の左半分に体のこと、右半分に気持ちのことの連絡先を書き、冷蔵庫かベッドの横の目に入る所に貼る。

  2. 明かりと音を一つずつ選ぶ

    手もとか足もとの小さな明かりと、小さな音で流せるラジオや音楽を、次の一人の時間の前に決めておく。

  3. 送り先をホーム画面に置く

    家族のグループか相談窓口のLINEを、スマホの最初の画面のいちばん押しやすい場所に移しておく。

よくある質問

一人暮らしで、一日のほとんどを一人で過ごしています。どうすればいいですか?

音と明かり、連絡先カード、送り先の3つはそのまま役に立ちますが、一人の時間が長いぶん、「声の予定」を外に作っておくと支えになります。曜日を決めて友人と短く電話する、がん相談支援センターに面談を申し込む、相談窓口に時間帯を指定して電話をもらう、などです。相談相手が身近にいないときの探し方は、相談相手が一人もいないときの記事でも扱っています。

夜中に何度もナースコールを押すのは、迷惑になりませんか?

不安が強いときに看護師を呼ぶのは、迷惑なことではありません。押すのをためらうなら、夕方のうちに「夜になると不安が強くなりやすいです」と伝えておくと、見回りのときに気にかけてもらいやすくなります。呼んだときは「痛くはないのですが、一人でいるのが怖くて」と一言添えるだけで十分です。

一人のときに胸がどきどきします。不安のせいでしょうか?

不安で脈が速くなることもありますが、病気や治療の影響のこともあり、ここで見分けることはできません。次の受診で「一人のときにどきどきする」と伝えて、確かめてもらってください。胸の痛みや息苦しさを伴うとき、いつもと様子が違うと感じるときは、受診を待たずに病院や訪問看護へ連絡し、命に関わると感じたら119番に電話してください。

一人になると、つい病気のことを検索してしまいます。

一人の時間の検索は、怖さを小さくするより大きくしがちです。検索したくなったら、調べたい言葉をメモに書き、家族がいる時間か次の受診まで預けておく方法があります。調べる先を、国立がん研究センターのがん情報サービスのような公的なサイト一つに決めておくと、怖い体験談ばかりを読み続けることを避けやすくなります。

家族が出かけるたびに不機嫌になってしまい、自己嫌悪です。

出かける家族に冷たくしてしまうのは、怖さが別の形で出ているだけかもしれません。あとで「怒っていたんじゃなくて、一人になるのが怖かった」と一言伝えると、家族も理由が分かって受け止めやすくなります。出かける前に、帰る時間を教えてもらう約束をしておくのも一つの方法です。

「一人が怖い」というだけで、相談窓口に連絡していいのですか?

かまいません。がん相談支援センターは患者さんや家族が無料・匿名で使える窓口で、相談した内容が相談した人の同意なく担当医に伝わることはありません。がんと家族の相談室でも、評価も助言もしない「ただ聞く」20分の電話をお受けしています。何を話すか決まっていなくても、「一人のときに怖くなる」の一言から始められます。

次にひとりになる時間に、電話の約束を入れておきませんか

次に一人で過ごす時間帯と、折り返しのお電話番号をお書きください(お名前はニックネームで大丈夫です)。送信するとすぐ受付確認のメールが届き、その時間帯に担当が名前を名乗ってお電話します。ただ聞く20分にするか、連絡先カードの気持ちの欄を一緒に埋めるかは、話しながら決めて構いません。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

    3. お見積りの後にお断りいただいても構いません

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    夜は結論を出さず、明日の朝に聞くことを書き残す

    夜は、不安がいちばん大きく感じられる時間です。検索を続けるほど、眠れなくなることもあります。今夜は結論を出さず、明日の朝に看護師や主治医に聞きたいことを1行だけ書いて、少しでも体を休めてください。

    夜に残すメモの例

    「明日の朝、看護師さんに聞くこと:夜中に呼吸のリズムが変わったように見えたのは、様子を見てよいものか。」

    1. 気になったことを1行だけメモして、画面を閉じる
    2. 誰かに伝えておきたいときは、LINEにひとこと残す(夜に届いたLINEは、翌朝にお返事します)
    3. 急な体調の変化は、夜でも病棟・訪問看護・主治医へ連絡する

    手元にあると話しやすいもの

    • 明日の朝に聞くことの1行メモ
    • 病棟や訪問看護の、夜間の連絡先

    公的な相談先

    よりそいホットライン
    24時間・通話料無料でつながる電話相談です。
    病棟の看護師・訪問看護
    ご本人の体調の変化を、いちばん近くで見ている相談先です。夜間の連絡先も確かめておくと安心です。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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