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見ているのがつらい|苦しむがんの家族のそばにいることの意味

このテーマの総論:がんの最期ってどんな感じ?|意識や聞こえ方、多くの方の経過

この記事では、最期が近いときの体の変化についてお伝えしています。いまは読みたくないときは、無理をせず、読める日まで閉じておいても大丈夫です。

この記事の結論

苦しむ家族の姿を見ているのがつらいのは、相手の苦しさを自分のことのように受け取ってしまう、そばにいる人に自然に起きる反応です。家族にできることは、苦しさを見届けてそばにいること、見たことと自分のつらさを医療者に伝えること、交代して離れて休むことの3つです。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」(WHO定義は日本緩和医療学会… ほか9件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

苦しむ家族の姿を見ているのがつらいのは、あなたが無力だからではありません。相手の苦しさを、自分の痛みのように受け取ってしまうほど近くにいるからです。代わってあげたいのに代われない。そのもどかしさを抱えて病室の椅子に座っているのは、あなただけではありません。

どのくらいつらく感じるかは、本人の症状の出方や、あなたが付き添う時間、これまでの関係によって変わり、同じ人でも日によって揺れます。それでも、家族にできることは「見ているだけ」ではありません。見ていることには意味があり、見たことは医療者に渡すことができ、離れて休むことも、そばに居続けるための大事な手段です。

この記事では、見ることがなぜこれほど消耗するのか、苦しむ姿を見ていることの意味、苦しそうな様子と家族自身のつらさを医療者に伝える言い方、離れて休むための段取りをまとめました。痛みや息苦しさを和らげる医療そのものの説明は、緩和ケアでできることの記事に任せています。

病室の扉の外で、涙をぬぐっている方へ

  • 痛みに顔をゆがめる父を、ただ見ていることしかできない。
  • 代わってあげたいのに、何ひとつしてあげられない自分が情けない。
  • 病室を出た瞬間に涙が出て、顔を整えてまた戻る。これがいつまで続くのか分からない。

がんの家族が苦しんでいるのを見ているのがつらいです。何もできない自分が無力です。どうすればいいですか?

つらいと感じていいのです。そのうえで、家族にできることは3つあります。苦しさを見届けてそばにいること、見たことと自分のつらさを医療者に伝えること、交代して離れて休むこと。苦しさを和らげる手立ては医療者が持っていて、家族はそこへ届ける役を担えます。

「何もできない」と感じるのは、苦しさを取り除くことを、自分の役目だと思っているからかもしれません。けれど、痛みや息苦しさを和らげる薬や方法を持っているのは、医師や看護師です。家族が担えるのは、その手前の役目です。いつもと違う様子に気づき、それを言葉にして医療者へ届けること。苦しさを取り除く役と、気づいて届ける役は、別のものです。

緩和ケアの考え方も、家族を外側に置いていません。世界保健機関(WHO)の2002年の定義(日本緩和医療学会の定訳)は、緩和ケアを、生命を脅かす病に関連する問題に直面している「患者とその家族」の生活の質を、苦痛を予防し和らげることを通して高めるアプローチとしています。苦しむ姿を見ている家族のつらさも、医療者に相談してよい苦痛の一つなのです。

苦しむ姿を見ているだけで、なぜこんなに消耗するのですか?

見ているあいだ、心と体がずっと身構えているからです。代われないもどかしさ、どれほど苦しいのか分からない不安、この先を想像する怖さ、次の変化への緊張が重なり、座っているだけでも走り続けているのと同じように力を使っています。

本人の苦しさは、外からは全部は見えません。見えているのは、ゆがんだ顔や、うめく声や、落ち着かない手の動きだけです。どのくらい痛いのか分からないぶん、見ている側の想像が空白を埋め、実際よりつらい場面を思い描いてしまうこともあります。そのうえ、次にいつ苦しくなるか分からないので、そばにいる間は肩に力が入ったまま、物音や呼吸の変化に耳をすませ続けることになります。

そばで支える家族の負担については、調査もあります。国立がん研究センターが2022年に公表した遺族調査の報告(2017年と2018年にがんで亡くなった方の遺族が対象、有効回答54,167名)では、介護の負担感が大きかったと答えた人が38.9%でした。見るつらさだけを尋ねた数字ではありませんが、そばで支える家族が大きな重さを抱えるのは、決して珍しいことではないと分かります。

  1. 1代われないもどかしさ苦しさを引き受けたいのに、引き受けられない
  2. 2分からない不安どのくらい苦しいのか、外からは測れない
  3. 3先を想像する怖さこの苦しさが続くのか、強くなるのかを考えてしまう
  4. 4休めない緊張次の変化に備えて、そばにいる間ずっと身構えている
  5. 5自分を責める気持ち何もできない、つらいと思う自分が情けないと感じる
見ているつらさに重なっているもの

苦しむ姿を見ていることに、意味はあるのですか?

あります。苦しさの最中に誰かが見ていてくれることは、本人にとって、その苦しさが「なかったこと」にされないという意味を持ちます。そして本人のふだんを知る家族の目は、いつもとの違いを医療者に届ける、ほかの人には代われない窓口になります。

苦しんでいる人は、言葉で説明する余裕をなくしていることがあります。そんなとき、そばにいる人が顔をしかめる瞬間を見て、「今、痛いね」と小さく声をかける。それだけで本人は、自分の苦しさが誰かに分かってもらえていると感じられます。苦しさそのものは消せなくても、苦しさをひとりきりで抱えさせないことは、そばにいる人にしかできません。

もう一つの意味は、家族が本人の「ふだん」を知っていることです。父は痛いときほど口数が減る、母はつらいと冗談を言わなくなる。こうした癖は、交代しながら関わる医療者には、なかなか見えません。毎日見ている家族だからこそ、「いつもと違う」に気づけます。その気づきは、医療者が苦しさを和らげる手立てを考えるときの大事な手がかりです。見ていることは、何もしていないことではなく、本人と医療者の間に立つ通訳の仕事でもあるのです。

家族の目に映っていること

  • 顔をしかめる、うなる、体を丸めている
  • ふだんの口ぐせや冗談が出なくなった
  • 夕方になると落ち着かず、何度も起き上がろうとする

医療者に渡すと手がかりになること

  • 「ふだんはこうなのに、今日はこう」という比べ方
  • その様子が出やすい時間帯や場面
  • 家族がそばにいると、少し落ち着くかどうか
家族の目に映っていることと、医療者に渡すと手がかりになること

見えている苦しさと、本人が感じている苦しさは同じですか?

同じとは限りません。家族に心配をかけまいと、つらさを小さく見せている人もいれば、見た目ほど本人はつらさを感じていないと考えられている変化もあります。見た目だけで決めず、本人と医療者の二つに確かめると、見ている側の想像に振り回されにくくなります。

苦しさの感じ方は、本人にしか分かりません。家族に心配をかけたくなくて、痛みを小さめに言う人がいます。反対に、病気が進んだ時期の呼吸の音や体の動きのように、見ている側にはひどく苦しそうに映っても、本人の感じ方は見た目とは違うと考えられているものもあります。どちらの場合も、見た目だけで「すごく苦しいはずだ」「大丈夫そうだ」と決めてしまうと、見ている側の想像に引きずられます。

だから、確かめる先を二つ持っておきます。一つは本人です。話せるときには、「今、どこがいちばんつらい?」と短く聞きます。答えが返ってこない日もありますが、聞かれたこと自体が、つらさを言っていいという合図になります。もう一つは医療者です。「見た目の様子と、本人が感じているつらさに違いはありそうですか」と尋ねると、医療者の見立てを聞くことができ、家族の不安な想像に、確かな手がかりが一つ加わります。最期が近い時期の呼吸の変化など、見ていてつらい様子の一般的な受け止め方は、冒頭で紹介した緩和ケアの記事で詳しく扱っています。

苦しそうな様子と、見ている自分のつらさは、医療者にどう伝えればいいですか?

二つは分けて伝えます。本人の様子は「ふだんと比べて何が違うか」を見たままの言葉で。自分のつらさは「見ているのがつらくて、どう関わればいいか分からない」と、そのまま言ってかまいません。家族自身のつらさも、医療者に相談してよいことです。

本人の様子を伝えるときは、評価の言葉より、見たままの比べ方が役に立ちます。

例:「父は痛いときほど黙る人なんですが、今日は朝からほとんど話さず、体を丸めています。一度見ていただけますか」

いつから、どんな場面で出る様子なのかを添えると、医療者は原因や対応を考えやすくなります。

自分のつらさを医療者に話すのは、ためらわれるかもしれません。けれど、国立がん研究センターのがん情報サービス「家族のがんが進行・再発したとき」には、家族が自分のつらさや困りごとを担当医や看護師に相談しても構わないこと、相談しにくいときは看護師やがん相談支援センターに相談できることが書かれています。

例:「見ているのがつらくて、そばで何をしていいか分からなくなっています。家族にできることがあれば、一つ教えていただけますか」

こう伝えると、今起きていることの説明や、家族にできる小さなケアを教えてもらえることがあります。口を湿らせる、体の向きを整える手伝いをするといったことも、本人の状態によって向き不向きがあるので、自己判断せずに看護師さんに確かめてから始めてください。

伝えたいこと伝わりにくい言い方伝わりやすい言い方(例)
本人の様子「なんだか苦しそうです」「朝から体を丸めて、ほとんど話しません。いつもは冗談を言う人です」
様子の変わり方「ずっと調子が悪いです」「夕方になると落ち着かなくなり、何度も起き上がろうとします」
家族のつらさ「大丈夫です、平気です」「見ているのがつらくて、どう関わればいいか分からなくなっています」
してほしいこと(何も言わずに帰る)「家族にできることがあれば、一つ教えていただけますか」
伝えたいことと、医療者に伝わりやすい言い方の例

伝えるのをためらってしまうのは、なぜですか?

忙しそうな看護師さんに悪い、大げさだと思われたくない、本人に「言わないで」と頼まれた、薬が増えるのが怖い。ためらう理由はどれも自然なものです。ただ、苦しさの情報は、和らげる手立てを考える医療者がいちばん必要としているものです。

忙しそうな相手に声をかけにくいときは、「今、少しだけいいですか」と前置きして、さきほどの例のように短く伝えれば十分です。大げさかどうかを決めるのは家族ではなく、見たことを受け取った医療者です。

本人に「言わないで」と頼まれたときは、その気持ちを大切にしながら、伝え方を本人と相談します。「楽になる方法がないか、看護師さんに聞くだけ聞いてもいい?」と尋ねると、本人も受け入れやすくなります。我慢強い人なら、「本人は我慢する性格なので、言わないかもしれません」と医療者に添えておくと、医療者から本人に尋ねるきっかけになります。

薬が増えることを怖いと感じる家族もいます。医療用麻薬(オピオイド)については、日本緩和医療学会の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』に、使うことで命が縮むという根拠はない、と示されています。気になることがあれば、「量を増やすと、どんな変化がありますか」と医師に尋ねてかまいません。

  1. Q1急に様子が変わり、命に関わると感じますか

    はい病棟ならすぐナースコール、自宅なら訪問看護や在宅医と決めてある連絡先へ。決めた連絡先がないときは119番

    いいえ次の問いへ。急ぎでなくても、伝えてよい内容です

  2. Q2本人から「言わないで」と頼まれていますか

    はい「楽になる方法がないか、聞くだけ聞いてもいい?」と本人に確かめる

    いいえ次の見回りや回診のときに、ふだんとの違いを短く伝える

「伝えたほうがいいのか」と迷ったときの分かれ道

病室を出たとたん涙が出るのは、弱いからですか?

弱いからではありません。病室の中で張りつめていた気持ちが、扉の外でようやくほどけるのです。泣いてから戻るのは、そばに居続けるために心が調子を整え直している動きで、廊下での数分は、見守りを続けるための休憩です。

本人の前では、苦しそうな顔を見ても取り乱さないよう、表情も声も抑えています。扉を閉めた瞬間に涙があふれるのは、抑えていた分が外に出てくるからです。泣いてからまた病室に戻るのは、逃げているのではなく、戻るための準備をしているのです。

廊下での数分を、少しだけ意識して使ってみてください。窓のある場所まで歩く、冷たい水で顔を洗う、ゆっくり息を吐く。そして戻る前に、本人に話す小さな話題を一つだけ決めます。「庭の花が咲いたよ」「孫が今日、逆上がりできたって」。戻る理由が一つあると、扉を開ける手が少し軽くなります。

出て、泣いて、戻る。その往復が一日に何度も重なるようになったら、見守りの形を見直す合図かもしれません。涙そのものとの付き合い方は、看病の涙を責めない考え方も参考にしてください。

そばを離れて休むのは、本人を見捨てることになりませんか?

見捨てることにはなりません。見るつらさを抱えたまま休まずにいると、家族のほうが先に倒れてしまいます。離れて休むのは、またそばに戻ってくるための準備です。交代する人と、離れている間の連絡の決まりを先に作っておくと、安心して休めます。

国立がん研究センターのがん情報サービスは、家族は「本人はもっとつらいのだから」と自分の気持ちをこらえ、そのうえ自分の暮らしも保たなければならないとして、「ご家族は、『第二の患者』ともいわれます」と紹介しています。苦しむ姿を見続けている家族は、まさにその状態にいます。休むことは看病をやめることではなく、看病を続けられる体を取り戻すことです。

離れることへの後ろめたさを小さくするには、気持ちより先に段取りを作ります。誰と交代するのか。離れている間に変化があったら、誰からどう連絡が来るのか。本人には何と言って出るのか。入院中なら、「夜の間に様子が変わったら、どんなときに電話をもらえますか」と看護師さんに一度聞いておくと、連絡の決まりが分かります。自宅で過ごしている場合は、訪問看護や在宅医の夜間の連絡先を確かめておきます。在宅療養支援診療所には24時間連絡を受ける体制が求められていますが、実際にどう対応してもらえるかは医療機関ごとに違うので、前もって聞いておくと安心です。

今夜泊まるか、いったん帰るか迷う夜もあるでしょう。本人の様子、医療者の見立て、あなたの体力の三つを並べて決めてかまいません。決めきれないときは、がんと家族の相談室で、その夜の判断を一緒に整理することもできます(お電話は平日9時〜18時なら担当が直接受け、それ以外の時間は翌朝9時までの折り返しになります)。

  • 夜の間に様子が変わったら、どんなときに連絡をもらえるか
  • 交代する家族の名前と、連絡のつく時間
  • 自宅療養なら、訪問看護や在宅医の夜間の連絡先
  • 本人に伝えるひとこと(「明日の朝、また来るね」など)
  • 帰ったら、温かいものを食べて横になること
離れて休む前に、確かめておくと安心なこと

苦しむ父を見続けていた娘さんは、どう変わった?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
50代・娘の立場(父が入院中で、痛みの強い日がある。毎日面会に通い、週に何度か病室に泊まっていた)
相談のあとに変わったこと
見ているつらさを看護師に打ち明け、家族にできることを一つ教わった。泊まりを弟と交代にし、自宅の布団で眠れる夜が週に3日ほどから5日ほどに増えた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から2週間ほどで、彼女の夜は変わっていました。週に4日ほど泊まっていた病室には、弟と交代で週に2日ずつ泊まるようになり、自宅の布団で眠れる夜が増えました。交代の前の晩には、その日の父の様子を「いつもは〜、今日は〜」の形で弟にメッセージで送る決まりにしています。病室では、看護師さんに教わったとおり、父の唇が乾いていたら、湿らせたガーゼでそっと押さえるようにしています。「見ているだけ、じゃなくなった。一つでも手を動かせることがあるのが、救いでした」。

2. 相談を考えた背景

父の痛みが強くなったのは、入院して1か月ほどたったころでした。顔をゆがめ、体を丸めてじっと耐える父を前に、彼女は手を握ることしかできませんでした。病室を出た瞬間に涙が出て、廊下の端で顔を整えてから戻る。それを一日に何度もくり返していました。

3. 相談する前に困っていたこと

看護師さんは忙しそうで、「父が苦しそうです」と伝えるたびに迷惑をかけている気がしていました。自分がつらいことは、誰にも言ってはいけないと思っていたといいます。夜中に「家族 苦しむ 見ていられない」と検索しても、見ている自分の気持ちをどうすればいいのかは、見つかりませんでした。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターのことは、入院のときにもらった案内で知っていました。ただ、父のことで手いっぱいの病院の人たちに、「見ているのがつらい」と言う気にはなれなかったそうです。病院の外で、まず話を聞いてもらえる場所を探し、相談室のフォームから、弟が病室にいる日の昼の時間帯を指定して申し込みました。

5. 相談で話したこと・その後

電話の担当は、最初の20分、評価も助言もせずに話を聞きました。父の痛みについて判断したり、この先を予測したりはしていません。話し終えたあと、彼女の希望で、今夜泊まるか帰るかの考え方と、看護師さんに自分のつらさを伝える一文を一緒に整理しました。翌日、勇気を出して「見ているのがつらくて、どう関わればいいか分からない」と看護師さんに話すと、父の様子の受け止め方や、家族にできるケアを教えてもらえたといいます。その後、主治医と看護師が痛み止めの使い方を見直し、父が眠れる時間も少し増えました。「つらいと言ってよかったんだと、やっと思えました」。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 見た目の様子と、本人が感じているつらさに違いはありそうですか。
  • 苦しそうに見えるとき、家族はどんなふうに声をかければいいですか。
  • 面会のときに、家族ができることを一つ教えていただけますか。
  • 夜の間に様子が変わったら、どんなときに連絡をいただけますか。
  • 家族が見ているのがつらいとき、話を聞いてもらえる専門の方はいますか。

とはいえ、見守り続けるあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──つらいと感じるのは、目をそらさずにいるから

見ているのがつらいのは、あなたが本人の苦しさから目をそらしていない証拠です。目をそらせる人なら、ここまでつらくはならないでしょう。つらさを感じながら、それでも病室に戻る。その往復そのものが、本人への深い関わりです。「何もできなかった」と思う日も、あなたは見て、気づいて、そこにいました。

② 実務のこと──「見る役」を、家族と医療者で分けておく

見る役を一人で背負うと、休む時間がなくなります。家族の中では、面会に行く日、泊まる日、医療者からの連絡を受ける役を分け、紙一枚に書いて共有しておくと、誰かが倒れる前に交代できます。医療者とも役割を分けます。入院中の夜は病棟の看護師に任せ、家族は朝に戻る、という形も立派な分担です。自宅で療養している場合は、「末期の悪性腫瘍」の方の訪問看護が、要介護認定を受けていても医療保険の扱いになり、医療保険の訪問看護にある原則週3日以内という日数の制限もかからないことを知っておくと、組み立ての幅が広がります(主治医の指示が前提です)。訪問の組み方を主治医や訪問看護ステーションに相談すると、家族が目を離せる時間を作りやすくなります。

今日できること

見ているつらさを抱えた今日から明日にできる3つのこと

  1. 「ふだんとの違い」を一行メモする

    今日見た本人の様子を「いつもは〜なのに、今日は〜」の形で一行だけスマホに書き、次の見回りで看護師さんに見せる。

  2. 自分のつらさを一文で伝える

    「見ているのがつらくて、どう関わればいいか分からなくなっています」と、看護師さんかがん相談支援センターに一度だけ言ってみる。

  3. 交代の人に一つ頼む

    明日か明後日のどこか一回だけ、面会か泊まりを家族の誰かに代わってもらうよう、今夜メッセージを送る。

よくある質問

苦しむ姿が、家に帰ってからも頭から離れません。

強い場面を見た日は、その光景が何度も浮かんでくることがあります。浮かんだら、見た場面と時刻を一行だけ書き、翌日に看護師さんへ伝える材料にしてください。頭の中にしかなかった光景が、医療者に渡す情報に変わります。眠れない、食べられないといった状態が続き、日常に差し支えるときは、かかりつけ医やがん相談支援センターに相談してください。

本人に「もう見ないで」「帰って」と言われました。

弱った姿を家族に見せたくない気持ちから、そう言う方もいます。言葉どおりに受け取って距離を置くこともできますし、「じゃあ廊下にいるね」「明日また来るね」と、少し離れた形でそばにいることを伝えることもできます。どう受け止めればいいか迷うときは、本人の気持ちについて看護師さんに相談してみてください。

「何もできない」という無力感が消えません。

無力感は、苦しさを取り除くことを自分の役目だと考えるほど強くなります。苦しさを和らげるのは医療者の役目で、家族は気づいて届ける役目を担っています。そのうえで、家族が気づかずにしている支えを一つずつ数える方法は、役に立てないと感じる家族の記事にまとめています。

痛み止めを増やしてほしいと頼むと、命を縮めてしまいませんか?

日本緩和医療学会の疼痛のガイドライン(2020年版)は、医療用麻薬の使用で命が縮むという根拠はないとしています。痛み止めは痛みの強さに合わせて量を調整していくものなので、「痛そうに見えます」と伝えることは、本人のつらさに合わせ直すきっかけになります。量や変化について気になることは、医師に直接尋ねてください。

見ているつらさで、自分も眠れなくなっています。

家族の心と体も、手当てを受けてよい状態です。かかりつけ医に「家族の看病で眠れない」と伝える、がん診療連携拠点病院などのがん相談支援センターで話す(家族も無料・匿名で、相談した人の同意なく担当医などに伝わることはありません)、といった方法があります。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は電話をかけた場所の公的な窓口につながり、時間は地域で異なり、通話料がかかります。夜中につらいときは、がん専門ではありませんが、よりそいホットライン(0120-279-338)が24時間・無料で受けています。

離れている間に何かあったらと思うと、休めません。

その心配があるからこそ、連絡の決まりを先に作っておくことが役に立ちます。夜間にどんな変化なら電話をもらえるかを看護師さんに確かめ、交代の人を決めておけば、休んでいる間も一人で見張らずに済みます。がんと家族の相談室には、もしもの夜に電話する先を一つ決めておく無料の登録(3分ほど)もあり、登録しても何かを決める必要はありません。

見ているつらさを、今日はあなたの話として聞かせてください

「父が苦しそうで、見ているのがつらい」と、ひとことだけフォームにお書きください。受付確認のメールが届いたあと、ご希望の時間帯に担当からお電話し、評価も助言もせずにお話を聞きます。ご希望があれば、今夜泊まるか帰るかの判断や、次の回診で聞く質問の整理もご一緒します。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    「本当に知りたいこと」を、ひとつだけ言葉にしてみる

    苦しくないか、あと何回会えるのか、残された時間をどう過ごせばよいのか。検索の言葉の奥には、口にしにくい本音があります。痛みや息苦しさなどのつらさには、緩和ケアで和らげる方法があります。本音をひとつ言葉にして、主治医や看護師、話せる相手に伝えてみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「つらさを和らげるために、どのような方法がありますか。」

    1. いちばん気がかりなことを、1行で書いてみる
    2. 痛みや息苦しさの心配は、主治医・看護師・緩和ケアチームに伝える
    3. 気持ちを話す場所がほしいときは、この相談室へ

    手元にあると話しやすいもの

    • いちばん気がかりなことの1行
    • 痛みや息苦しさの様子のメモ(いつ・どのくらい)

    公的な相談先

    緩和ケアチーム・緩和ケア外来
    痛みや息苦しさ、気持ちのつらさを和らげる専門のチームです。主治医や看護師を通じて相談できます。
    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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