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自宅で最期を迎えるには?がんの在宅療養で起きることと備え

このテーマの総論:末期がんはあとどれくらい?「末期」という言葉の意味と経過の幅

この記事では、最期が近いときの体の変化についてお伝えしています。いまは読みたくないときは、無理をせず、読める日まで閉じておいても大丈夫です。

この記事の結論

自宅で最期まで過ごすには、在宅医と訪問看護、24時間の連絡先、夜を受け持つ家族の体制、そして「最初に電話する先」と「入院に戻るときの行き先」の取り決めが必要です。家族の負担は夜と最期の数日に重くなりますが、途中で入院に戻ることもでき、それは失敗ではありません。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会資料「(参考)在支診・在支病の施設基準」/同… ほか12件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

自宅で最期まで過ごすために欠かせないのは、家族の覚悟の強さよりも、仕組みの準備です。お母さまを診てくれる在宅医と訪問看護、夜中でもつながる連絡先、夜を受け持つ家族の顔ぶれ、そして「何かあったら最初にどこへ電話するか」と「家で看られなくなったらどこに入院するか」の取り決め。この二つの取り決めまでできていれば、「家に帰りたい」という願いは、ずっと現実的なものになります。

一方で、家族の負担は小さくありません。とくに重くなるのは、夜と、最期の数日です。どれくらい続くか、どんな変化が起きるかは人によって大きく違い、前もって言い当てることはできません。この記事では、自宅で最期まで過ごす場合に絞って、夜間の変化への備え、急変したときや呼吸が止まったときの流れ、在宅医がいることの意味、途中で入院に戻るという選択肢をお伝えします。

「家に帰りたい」と言われて、決めかねている方へ

  • 母は「家に帰りたい」と言う。叶えてあげたいけれど、夜中に何かあったらどうすればいいのか分からない。
  • 自分ひとりで看られるのか、仕事を続けながらできるのか、自信がない。
  • 「家では無理」と言ったら一生後悔しそうで、どちらとも決められずにいる。

母が『家に帰りたい』と言っています。自宅で最期を迎えるには何が必要で、家族の負担はどのくらいですか?

必要なのは、在宅医と訪問看護、24時間の連絡先、夜を受け持つ家族の体制、「最初に電話する先」と「入院に戻るときの行き先」の取り決めです。負担は夜と最期の数日に重くなり、介護の負担感が大きかったと振り返る遺族も少なくありません。だからこそ、戻れる道を用意したうえで始めます。

自宅で過ごすといっても、家族だけで看るわけではありません。在宅医が定期的に訪問して診察と薬の調整をし、訪問看護師が体の様子を見て、つらさへのケアや家族への助言をします。がんの末期の方は、要介護認定を受けていても訪問看護は医療保険からになり、医療保険の訪問看護で原則とされる「週3日以内」という制限もかかりません(主治医の指示が前提です)。ヘルパーの訪問などの介護保険のサービスを使うには、要介護認定の申請が必要です。65歳以上なら原因を問わず、40〜64歳の方もがん(医師が回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)であれば対象になり、申請は市区町村の窓口で、結果の通知までは原則30日以内とされています。介護保険のサービスの組み合わせ方や、家族が休むための入院など、在宅療養を始めるときに負担を分ける仕組みは、在宅療養で家族の負担を減らす仕組みで詳しく取り上げています。

この記事でお伝えしたいのは、その先、最期まで家で過ごすと決めたときに、夜と急変にどう備えるかです。下のチェックリストのうち、上の4つは退院前の話し合いで、下の3つは家族の中で決めておくことです。

  • 訪問診療をしてくれる在宅医
  • 訪問看護ステーション(24時間の電話相談や夜間の訪問ができるか)
  • 夜間・休日につながる連絡先と、そこに電話する目安
  • 家で看るのが難しくなったときに入院できる先
  • 夜を受け持つ家族の顔ぶれと、交代のしかた
  • 呼吸が止まったように見えたときに、最初に電話する先
  • 家族の誰が、親戚や職場への連絡を受け持つか
自宅で最期まで過ごすために、そろえておきたいこと

在宅医がいるのといないのとでは、何が違うのですか?

在宅医がいれば、お母さまの状態を知っている医師に、夜間や休日も含めて連絡できる体制ができます。つらさへの対応から、亡くなったときの確認まで、自宅で診てもらう流れをつくれることが、いちばんの違いです。

在宅医の多くは、在宅療養支援診療所などの医療機関の医師です。在宅療養支援診療所には、24時間連絡を受ける体制、24時間の往診体制、24時間の訪問看護体制、緊急時の入院体制の確保などが、施設の基準として求められています。往診については、ほかの医療機関と連携して体制を整えている場合もあります。ただし、これは体制の基準であって、「夜中でも必ずすぐに来てくれる」という意味ではありません。夜間に電話したときに誰が出て、どう動いてもらえるのかは医療機関ごとに違うので、退院前に具体的に確かめておきます。

在宅医がいることの意味は、夜の安心だけではありません。痛み止めの量をこまめに変える、息苦しさに合わせて薬を足す、といった調整を、通院せずに家で受けられます。そして、亡くなったときに誰が来て、どう確認するのか。その流れを前もって在宅医と話し合っておけるので、その夜に家族が一から考えずにすみます。

在宅医がまだ決まっていないときは、入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー(窓口の呼び名は「地域連携室」「医療相談室」など病院ごとに異なります)に、自宅にいるなら地域包括支援センターや市区町村の介護保険の窓口に相談すると、地域で訪問診療をしている医療機関を探す手がかりが得られます。がん相談支援センターでも、家族からの相談を無料・匿名で受けています。

担い手主に受け持つこと夜間・急変時について確かめること
在宅医訪問診療、薬の処方と調整、亡くなったときの確認夜間の連絡先と、往診の体制(連携先の医療機関を含む)
訪問看護師体の様子の観察、つらさへのケア、家族への助言24時間の電話相談や、夜間の訪問ができるか
家族そばにいる、様子を伝える、薬を決められたとおりに使う誰が夜を受け持ち、誰が電話をかけるか
在宅医・訪問看護・家族が受け持つことと、確かめておきたいこと

夜中に様子が変わったら、どうすればいいですか?

まず、お母さまのそばで声をかけ、決めておいた24時間の連絡先(訪問看護や在宅医)に、見たままを伝えます。夜中にすぐ電話する様子と、朝の訪問まで様子を見てよい様子を、日中のうちに訪問看護師と決めておくと、夜の迷いが小さくなります。

最期が近づくと、夜に変化が起きることが増えていきます。痛みや息苦しさが強まる、落ち着かずに何度も起き上がろうとする、つじつまの合わないことを言う。亡くなる前の時期には、一時的な意識の混乱である「せん妄」が起こりやすくなるとされています。どれも、家族が一人で見極めなくてよいものです。

夜を受け持つ人が疲れ切らないための工夫も、昼のうちに決めておきます。頓服の薬は使ってよい目安と一緒に置き場所を決める、電話は充電したまま枕元に置く、夜を受け持つ人は日中に必ず眠る時間をとる。泊まり込みのように見えて、自宅の夜は一晩で終わらず、何日も続きます。最後の数日に起きやすい体の変化については、最後の1週間・数日に起きる変化も参考にしてください。

  1. 1夕方の訪問訪問看護師と「今夜すぐ電話してほしい様子」を確かめる
  2. 2寝る前頓服の薬と使ってよい目安、電話を枕元にそろえる
  3. 3夜中変化に気づいたら、そばで声をかけてから、迷えば電話する
  4. 4明け方夜の様子を時刻と一緒に一行ずつ書き留める
  5. 5朝日中の家族と交代して、夜を受け持った人は眠る
  6. 6次の訪問書き留めたメモを見せて、夜の様子を伝える
自宅での一晩の流れの例(夜を受け持つ家族の動き方)

急に容体が変わったときや、呼吸が止まったときは、どこに電話すればいいですか?

自宅で最期まで過ごすと決めているなら、まず在宅医や訪問看護の24時間の連絡先に電話するのが基本です。どんな場面で119番をかけるのかも含めて、電話する順番を在宅医と前もって決め、家族全員で同じ紙を持っておきます。

119番は、救急車で病院に運び、命を救うための処置をする仕組みです。慌ててかけると、自宅で穏やかに見送りたいというお母さまと家族の方針と、合わない流れになることがあります。だからこそ、呼吸が止まったように見えたときは、まず在宅医か訪問看護に電話し、その指示に従うことを、前もって決めておくのです。一方で、在宅医や訪問看護に連絡がつかず、命に関わると感じるときには、ためらわずに119番に電話してください。

呼吸が止まったあと、在宅医が来るまでに時間がかかることもあります。その間に家族がしておくことも、前もって在宅医に確かめておけば、その場で迷わずにすみます。待っているあいだは、そばで手を握り、名前を呼び、いつもの声で話しかけてください。呼びかけに応えなくなっても、耳は聞こえている可能性があるといわれています。

  1. Q1呼吸が止まっている、または止まりそうに見えますか

    はい119番の前に、在宅医・訪問看護の24時間の連絡先へ。そばで手を握って待つ

    いいえ次の問いへ進む

  2. Q2強い痛みや苦しさ、転倒、出血など、今すぐ診てほしい変化ですか

    はい在宅医・訪問看護の24時間の連絡先へ。連絡がつかず命に関わると感じたら119番

    いいえ時刻と様子を書き留め、次の訪問で伝える。気になって眠れないなら電話してよい

急な変化に気づいたとき、どこに電話するかの分かれ道(自宅で最期まで過ごすと在宅医と決めている場合)

家で亡くなったときは、どんな流れになりますか?

呼吸が止まったら、決めておいた在宅医や訪問看護に電話し、在宅医が訪問して確認します。その夜に家族が急いで決めることはほとんどなく、ご家族だけで過ごす時間をとってから、葬儀などの連絡をしても構いません。

最期の呼吸は、静かに間隔が長くなって止まることもあれば、ため息のように終わることもあります。電話をかけたら、在宅医が来るまで、そばにいてください。在宅医が来て確認したあとは、お体を清め、着替えをする時間を、訪問看護師と一緒に持てることもあります。どんな流れになるかは在宅医ごとに違うので、「家で亡くなったとき、どなたが来て、どんな順番になりますか」と前もって聞いておくと、その夜の動きが見えてきます。

法律で急ぐことは限られていて、死亡届は亡くなったことを知った日から7日以内、火葬は亡くなってから24時間を経過した後でなければ行えません。葬儀の内容や費用は、翌日以降に家族で考えて間に合います。夜中に親戚へ連絡を回すのがつらければ、朝まで待っても構いません。

家族の負担は、実際にどのくらいですか?

いちばん重くなるのは、夜の見守りと、判断を一人で背負う場面です。介護の負担感が大きかったと振り返る遺族は4割近くいるという調査もあり、家族だけで抱えない形を最初から組んでおくことが、最期まで家で過ごすための条件になります。

国立がん研究センターが2022年3月に公表した遺族調査の報告(2017・2018年のがんによる死亡について、有効回答54,167名)では、介護の負担感が大きかったと答えた方が38.9%でした。がん情報サービスも、家族は自分の気持ちを我慢しがちで、自分の日常生活も維持しなければならないため、「第二の患者」ともいわれると説明しています。家で看る場合は、夜も含めて家族が受け持つ時間が長くなるぶん、この重さを一人で抱え込まない工夫が欠かせません。

最期が近づいた時期に家族が担いやすいことと、その頼み先を並べると、下のようになります。仕事をしている方は、介護休業(要介護状態の家族1人につき通算93日まで、3回まで分割)や、時間単位でも取れる介護休暇も組み合わせられるので、勤務先の人事に確かめてください。眠れない、食べられない日が続き、限界が近いと感じたら、看病で限界を感じたときの自分の守り方も読んでみてください。

担いやすいこと起きやすい困りごと頼み先・工夫
夜の見守り眠りが細切れになり、昼に倒れそうになる家族で夜を交代する。眠れない夜が続くことを訪問看護に伝える
体の向き・排泄の介助力が要り、腰を痛めやすい訪問看護師にやり方を教わる。介護サービスの回数を見直す
薬の管理頓服をいつ使うかで迷う使ってよい目安を紙に書いてもらう
判断電話するか、入院するかを一人で迷う迷ったら電話してよいと、先に約束しておく
来客と連絡見舞いや電話が続き、休む時間がない連絡の窓口役を、家族の別の人に任せる
最期が近づいた時期に家族が担いやすいことと、一人で抱えないための頼み先

途中で「家ではもう無理」と感じたら、入院に戻れますか?

戻れます。最期まで家でと決めても、途中で病院や緩和ケア病棟に移ることは、失敗でも裏切りでもありません。在宅療養支援診療所には緊急時の入院体制の確保も求められているので、どこに入院できるかを前もって在宅医と確かめておきます。

家で過ごし始めてから、入院を考えるきっかけはいくつかあります。家ではつらさを和らげきれない、家族が眠れずに体を壊しかけている、そしてお母さまご自身が「病院のほうが安心」と言い出すこともあります。どれも、家で過ごした時間が無駄だったという意味ではありません。その時点でいちばん穏やかに過ごせる場所に移る、という判断です。

いざというときに慌てないよう、退院前の話し合いで「家で看るのが難しくなったら、どこに入院できますか」「そのときは誰に連絡すればいいですか」を確かめておきます。病院で過ごす場合の一般病棟と緩和ケア病棟の違いは、病院で最期を迎える場合の病棟の違いで取り上げています。お母さまに入院を切り出すときは、「お母さんが家にいたいのは分かってる。でも今のままだと、私たちのほうが先に倒れてしまう。少しの間だけ、病院の力を借りさせて」のように、家族の事情として正直に伝えて構いません。

家で続ける支えになること

  • お母さまが家で穏やかに過ごせている
  • 夜を交代できる家族がいる
  • 在宅医・訪問看護と連絡がつきやすい

入院を相談するきっかけ

  • 家ではつらさを和らげきれない
  • 家族が眠れず、体を壊しかけている
  • お母さまが「病院のほうが安心」と言う
家で続けるときの支えと、入院を相談するきっかけ

「家に帰りたい」と言われた娘は、どう決めた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
50代・娘の立場(70代の母が緩和ケアを受けて入院中。娘は会社勤めで、母とは別に暮らす。兄は遠方に住む)
相談のあとに変わったこと
退院前の話し合いで、夜の電話の順番と、入院に戻るときの行き先まで確かめてから母を家に迎えられた。夜中に迷ったときは訪問看護に電話すると決めたことで、最初の夜を乗り切れた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談のあと、彼女は退院前の話し合いに、質問を3つ書いた紙を持って行った。夜中に電話したら誰が出て、来てもらえるのはどんなときか。家で看られなくなったら、どこに入院できるか。呼吸が止まったように見えたら、最初にどこへ電話するか。答えを書き込んだ紙は、母の寝室の電話の横に貼った。家に戻った最初の夜、午前2時に母が落ち着かなくなったとき、彼女は迷わず訪問看護の番号にかけた。電話口の看護師に言われたとおり頓服を使うと、母は1時間ほどで眠った。「電話していいと決めてあったから、震えずにかけられた」と彼女は話す。

2. 相談を考えた背景

病棟で母が「家に帰りたい」と言ったのは、緩和ケアに移って3週間ほどたったころだった。担当の医療ソーシャルワーカーからは、在宅医と訪問看護の候補を示され、退院前の話し合いの日程も決まった。

3. 相談する前に困っていたこと

それでも彼女は決められなかった。家で穏やかに見送った家族の話を読めば、叶えたいと思う。疲れ果てた家族の話を読めば、自分にはできないと思う。会社を休めるのか、兄に頼れるのか。「無理」と言えば一生後悔しそうで、その言葉が出なかった。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院の医療ソーシャルワーカーにも相談できたが、母の前で話すと本音が出せない気がした。病院の外の人に、自分の気持ちだけを先に聞いてほしかった。ニックネームで送れて、仕事の合間の時間帯を選んで折り返しを頼めるフォームを、夜に送った。

5. 相談で話したこと・その後

電話の担当は、彼女の迷いを最後まで聞いたあと、「訪問診療」「往診」「24時間の連絡体制」といった言葉の一般的な意味を説明した。家で看るかどうか、母があとどれくらいかについては、決めることも予測することもしなかった。代わりに、退院前の話し合いで確かめる質問を一緒に3つに絞り、入院に戻る道を先に確かめておけば、家で始めることは賭けではなくなる、という考え方を一緒に整理した。兄には、週末に帰ってきて夜を受け持ってもらうことになった。会社には、介護休暇を時間単位で使えるかを人事に確かめるところから始めた。電話を切る前に彼女は「家で看ると決めたわけじゃないけど、確かめることは決まった」と言った。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 夜間や休日に電話すると、どなたが出て、どのように対応していただけますか。
  • 夜中に訪問していただけるのは、どんなときですか。
  • すぐに電話してほしい様子と、朝の訪問まで様子を見てよい様子を教えてください。
  • 呼吸が止まったように見えたら、最初にどこへ電話すればいいですか。119番との使い分けも教えてください。
  • 家で看るのが難しくなったら、どこに入院できますか。
  • 家で亡くなったときは、どなたが来て、どんな流れになりますか。

とはいえ、家で看るかどうか迷うあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──「家に帰りたい」の中身を、聞いてみてください

「家に帰りたい」という言葉の中には、いろいろな願いが入っています。自分の布団で眠りたい、庭の木を見たい、猫をなでたい、家族の声が聞こえるところにいたい。もし家で最期まで過ごすことが難しくても、その中身のいくつかは、短い外泊や、病室に家の物を持ち込むことで叶えられるかもしれません。叶えてあげたいという気持ちと、自分が壊れたくないという気持ちは、どちらも本当で、どちらかを選んだ人が冷たいわけではありません。家族自身のつらさは、訪問看護師や医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターにも話してよいことです。夜中にひとりで抱えきれなくなったら、よりそいホットライン(0120-279-338)は24時間、無料でかけられます(がん専門の窓口ではありません)。

② 実務のこと──退院前の話し合いで、夜と急変の取り決めまで済ませる

入院中から自宅に移るときには、病院の医療者と、在宅医や訪問看護、ケアマネジャーなどが集まって話し合う場が設けられることがあります(呼び方は病院ごとに違います)。在宅で最期まで過ごすなら、この場がいちばん大事な準備の機会です。薬や介護用品の話で時間が終わってしまわないよう、夜間に電話したときの対応、呼吸が止まったときに最初に電話する先、家で看られなくなったときの入院先の3つは、紙に書いて持ち込みます。家族は、夜を受け持つ人と、平日の昼に電話を受けられる人の両方が出席できると理想的です。出られない家族には、決まったことをその日のうちに同じ文面で送ります。入院先に医療ソーシャルワーカーがいれば、この場の準備から相談に乗ってもらえます。

今日できること

「家に帰りたい」と言われた今週、家族ができる3つのこと

  1. 「家で何がしたい?」と聞く

    お母さまに、家に帰ったら何がしたいかを一つだけ聞きます。答えが、家で過ごす準備の優先順位になります。

  2. 夜の質問を3つ書く

    夜中に電話したときの対応、呼吸が止まったときの電話先、入院に戻るときの行き先を、退院前の話し合いで聞く質問として書き出します。

  3. 夜を受け持つ人を数える

    家族の中で、夜を交代できる人の名前を書き出します。一人しかいないなら、そのこと自体を在宅医や訪問看護に伝えます。

よくある質問

在宅医は、夜中でもすぐに来てくれますか?

在宅療養支援診療所には、24時間連絡を受ける体制や往診の体制などが求められていますが、夜中でも必ずすぐ来てもらえるという意味ではありません。まず電話で状況を聞き、指示を出したうえで、必要なときに訪問する形が多く、訪問までの時間も医療機関によって違います。退院前に「夜中に電話したら、どのように対応していただけますか」と具体的に聞いておいてください。訪問看護師が先に来てくれる場合もあります。

家で亡くなったら、警察が来ることがあると聞いて不安です。

在宅医が診ていて、病気によって亡くなった場合には、在宅医が訪問して確認し、死亡診断書を書くのが一般的な流れです。かかりつけの医師がいないまま亡くなった場合などは、確認の手続きが変わることがあります。不安なときは、在宅医に「家で亡くなったとき、どんな流れになりますか」と前もって聞き、家族で答えを共有しておいてください。そのためにも、自宅で最期まで過ごすなら、在宅医とのつながりを切らさないことが大切です。

家で看取ると決めていたのに、慌てて119番に電話してしまったら、どうなりますか?

救急隊が来ると、命を救うための処置や、病院への搬送が行われることがあります。そうなったとしても、ご家族が間違えたわけではありません。目の前で大切な人の様子が変わったとき、とっさに救急車を呼ぶのは自然なことです。気づいた時点で、在宅医や訪問看護にも連絡し、自宅で過ごしてきたことと、決めていた方針を救急隊に伝えてください。こうした場面を減らすためにも、呼吸が止まったときの電話の順番を書いた紙を、電話の横に貼っておきます。

一人暮らしの母でも、家で最期まで過ごせますか?

一概には言えません。訪問診療や訪問看護、介護サービスを組み合わせて、一人暮らしのまま過ごす方もいますが、夜間に誰もいない時間の見守りや、急な変化への備えは難しくなります。お母さまの希望と体の状態、使えるサービスや近くにいる家族の状況によって、現実的かどうかが変わります。入院中なら医療ソーシャルワーカーに、自宅にいるなら地域包括支援センターや市区町村の窓口、在宅医に相談しながら考えてください。

仕事を続けながら、家で看ることはできますか?

できる場合もありますが、夜と最期の数日は、仕事との両立がとくに難しくなります。介護休業は、要介護状態の家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れるので、最期が近いと言われた時期に合わせて使う考え方もあります。介護休暇のほうは、1年に5日まで(対象の家族が2人以上のときは10日まで)で、時間単位に分けて使うこともできます。日中は訪問看護や介護サービスに入ってもらい、夜は家族で交代するなど、家族の人数と仕事に合わせて組み立ててください。

母が途中で「病院に戻りたい」と言ったら、どうすればいいですか?

その言葉を、そのまま受け止めて構いません。家で過ごしてみて、夜の不安や家族への気がねから、病院のほうが安心だと感じる方もいます。在宅医や訪問看護に伝えれば、入院先との調整を一緒に考えてもらえます。家に帰ったことも、病院に戻ることも、その時々のお母さまの気持ちに沿った選択です。家族が「せっかく帰ってきたのに」と引き止める必要はありません。

家で看るかどうか、決める前に一緒に整理しませんか

お母さまの今の様子と、いちばん心配な場面をひとことお書きください。送っていただくとすぐに受付確認のメールが届き、ご希望の時間帯に担当からお電話します。夜と急変への備え、退院前の話し合いで聞くこと、入院に戻る道の確かめ方を一緒に整理します。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    これからの流れは、大きな分かれ道だけ先に話しておく

    これから先のことを、一度にすべて決める必要はありません。どこで過ごしたいか、急な変化のときに誰へ連絡するか。大きな分かれ道だけでも話しておくと、そのときの迷いが小さくなります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「これから起こりうる変化と、そのとき家族が連絡する先を教えてください。」

    1. 過ごしたい場所(自宅・病院・緩和ケア病棟など)の希望を、ご本人と少しずつ話す
    2. 在宅療養や介護保険のことは、病院の医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターに相談する
    3. 決めたことはメモにして、家族のあいだで共有しておく

    手元にあると話しやすいもの

    • ご本人の希望(過ごしたい場所など)のメモ
    • 介護保険の被保険者証(お持ちの場合)

    公的な相談先

    医療ソーシャルワーカー(病院の相談室など)
    医療費や制度、退院後の暮らし、在宅療養の準備を一緒に考える専門職です。
    地域包括支援センター・市区町村の介護保険の窓口
    介護保険の申請や、介護サービスの使い方を相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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