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最期までに何をすればいい?がんの準備を「急ぐ・急がない」で整理

このテーマの総論:末期がんはあとどれくらい?「末期」という言葉の意味と経過の幅

この記事では、最期が近いときの体の変化についてお伝えしています。いまは読みたくないときは、無理をせず、読める日まで閉じておいても大丈夫です。

この記事の結論

最期までの準備は、「急ぐこと」「落ち着いてからでいいこと」「急がなくていいこと」に分けると手が動きます。急ぐのは、夜間の電話先、家族と親しい人の連絡先、ご本人に聞いておきたいことの3つ。葬儀の中身や手続きは後からで間に合います。準備は見限ることではなく、そばにいる時間を守ることです。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:山本亮, 大谷弘行, 松尾直樹, 他. 看取りの時期が近づいた患者の家族への説明… ほか14件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

「準備」と聞くと、葬儀や手続きのことを思い浮かべる方が多いかもしれません。けれど、最期までに家族が先に済ませておきたいのは、もっと手前のことです。夜中に様子が変わったときの電話先、家族や親しい人の連絡先、そしてご本人が話せるうちに聞いておきたいこと。この3つを押さえておけば、残りの多くは落ち着いてからでも間に合います。

どこまでが急ぐことになるかは、ご本人の状態や、病院か自宅かといった過ごす場所によって変わり、誰にでも当てはまる決まった順番があるわけではありません。この記事では、準備を「急ぐこと」「落ち着いてからでいいこと」「急がなくていいこと」に分けたチェックリストと、葬儀のことを考えようとすると手が止まってしまう気持ちのほどき方、家族での分担のしかたをお伝えします。

「準備しておいたほうがいい」と言われて、手が止まっている方へ

  • 周りから「そろそろ準備を」と言われるけれど、何を、どの順番でやればいいのか分からない。
  • 葬儀のことを考えると、父を見限っているような気がして、そこで手が止まってしまう。
  • かといって何もしないまま、その日を迎えてしまうのも怖い。

父が末期がんです。最期までに家族がしておくべきことを、優先順位をつけて教えてください?

優先順位は大きく3段です。今週のうちに「夜間の電話先・家族と親しい人の連絡先・ご本人に聞いておきたいこと」を押さえ、葬儀の内容やお金の手続きは落ち着いてから、遺品やお墓、相続の細かいことは急がなくて構いません。

並べ方の基準は、「その時になってからでは間に合わないか、やり直しがきかないもの」を先に、「期限はあるが、あとからでも進められるもの」を次に、「期限がなく、時間をかけてよいもの」を最後に置くことです。ご本人の希望は、話せるうちにしか聞けません。夜間の電話先は、知らないまま夜を迎えると、いちばん慌てる場面でいちばん困ります。一方で、葬儀の形や役所の手続きは、亡くなったあとに、期限のあるものから順に進めれば間に合います。

この並べ方をすると、今週やることは驚くほど少なくなります。チェックリストが長く見えて手が止まっていたなら、まずは一番上の段だけを見てください。

  1. 1急ぐこと(今週のうちに)夜間・休日の電話先、家族と親しい人の連絡先、ご本人に聞いておきたいこと
  2. 2亡くなった夜に決めることお体をどこへお運びするか。電話先をひとつ決めておけば足りる
  3. 3落ち着いてからでいいこと葬儀の形や規模、役所や保険の手続き(期限のあるものから順に)
  4. 4急がなくていいこと遺品の整理、お墓や納骨、相続の分け方の細部
最期までの準備を、急ぐ順に重ねた図(上の段から手をつける)

準備をするのは、父を見限ることになりませんか?

なりません。準備は、もしものときに電話や手配に追われず、そばにいられるようにするためのものです。先に知って備えておいたことが支えになったと振り返る家族も、少なくありません。

看取りの時期が近い患者さんの家族に、冊子を使って体の変化などを前もって説明した研究があります(山本ほか、2012年。10施設で説明を受けた遺族に郵送で尋ね、260名が回答)。冊子を「とても役に立った」「役に立った」と答えたのは81%、「症状や変化がなぜ起きているのか分かる」と答えたのは76%でした。著者らは、冊子は渡すだけでなく、話し合いながら使うことを前提にしています。先を知ることは、怖さを増やすためではなく、その場面で落ち着いていられるためのものだといえます。

それでも手が止まるのは、お父さまを大切に思っているからです。「準備を始めたら、本当にそうなってしまいそう」と感じるのは、ごく自然なことです。下の図の左側のような思いが浮かんだら、右側を声に出して読んでみてください。

手を止めてしまう思い

  • 葬儀のことを考えるのは、亡くなるのを待っているようで嫌だ
  • 準備を始めたら、本当にそうなってしまいそうで怖い
  • 父に気づかれたら、傷つけてしまうかもしれない

準備が実際に守るもの

  • もしもの夜に、電話や手配ではなく父のそばにいられる時間
  • 父の希望を、父自身の言葉で聞いておける機会
  • あとで「決めてあげられなかった」と悔やまずにすむこと
準備の手を止めてしまう思いと、準備が実際に守るもの

今週のうちに済ませたい「急ぐこと」は何ですか?

夜間・休日に様子が変わったときの電話先を確かめること、家族と親しい人の連絡先を一か所にまとめること、ご本人が話せるうちに希望を聞いておくことの3つです。どれも、その時になってからでは間に合わないか、やり直しがきかないものです。

一つ目の電話先は、入院中なら病棟の夜間の番号、自宅なら在宅医や訪問看護の24時間の連絡先です。番号だけでなく、「どんな様子のときに電話すればいいか」も一緒に聞いておくと、夜中に迷う時間が短くなります。

二つ目の連絡先で見落としやすいのが、ご本人のスマホの中にしかない番号です。古くからの友人や、きょうだいの家族の連絡先は、ご本人が話せなくなると、家族には探しようがなくなることがあります。調子のよい日に、「知らせておきたい人の番号を、ノートに写しておいてもいい?」と頼み、一緒に書き写しておきます。

三つ目のご本人の希望は、次の見出しで聞き方を詳しく取り上げます。この3つに加えて、急な入院や受診に備え、マイナ保険証か資格確認書、診察券、お薬手帳をひとまとめにしておくと、慌てて家じゅうを探さずにすみます。

  • 夜中や休みの日に容体が変わったときにかける番号(病棟・在宅医・訪問看護のどれか)
  • その番号に、どんな様子のときにかければいいか
  • 家族の連絡先と、連絡を受け持つ人
  • ご本人のきょうだいや友人など、知らせたい人の電話番号(紙にも写す)
  • ご本人が会いたい人、過ごしたい場所
  • 受けたい医療やケア、受けたくない処置についての希望
  • マイナ保険証か資格確認書、診察券、お薬手帳の置き場所
  • 亡くなった夜に最初に電話する先(ひとつでよい)
今週のうちに確かめておく「急ぐこと」のチェックリスト

本人に聞いておきたいことは、どう切り出せばいいですか?

いきなり「最期はどうしたい?」と聞かず、「次の日曜は何をしたい?」「会っておきたい人はいる?」のような身近な問いから始めます。一度で全部を聞こうとせず、話せる日に少しずつで十分です。

もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合って共有する取り組みを、厚生労働省は「人生会議」(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)と呼んでいます。国の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年3月改訂)は、本人による意思決定を基本としています。書類を作ることが目的ではなく、話して、共有して、気持ちが変われば話し直す、という積み重ねのことです。

切り出す言葉は、たとえばこうです。「家にいる時間と病院にいる時間、どっちが落ち着く?」「昔の仕事仲間で、顔を見たい人はいる?」「痛いのと眠いのだったら、どっちがいやだ?」。答えが返ってこない日や、話をそらされる日もあるでしょう。それはご本人の「今は話したくない」という返事なので、深追いせずに、別の日にもう一度だけ試してみてください。家族からはどうしても切り出せないときは、主治医や看護師に「父にこれからの過ごし方を聞いてもらえませんか」と頼む方法もあります。国立がん研究センターの遺族調査(2025年公表。2021年に亡くなった方のがん遺族1,226名)では、医師と最期の療養場所について話し合ったと振り返った割合は53%で、前回の36%から増えていました。聞く順番や、どうしても聞けないときの方法は、本人に何をどの順番で聞くかで取り上げています。

葬儀のことは、いつ、どこまで考えておけばいいですか?

今の段階で決めておきたいのは、亡くなった夜に電話する先をひとつ、だけです。葬儀の形や規模、費用はその夜には決めなくてよく、落ち着いてから家族で考えて間に合います。

法律で急ぐものは、思っているより少なく、死亡届は亡くなったことを知った日から7日以内、火葬は亡くなってから24時間を経過した後でなければ行えない、と決められています。病院で亡くなった場合、その夜に聞かれるのは、主にお体をどこへお運びするかです。そのときに電話する先がひとつ決まっていれば、ほかのことは翌日以降に話し合えます。何も決まっていなくても、「今夜は運んでいただくところまでで、葬儀はこれから家族で決めます」と伝えれば足ります。

葬儀を前もって相談しておくのは、珍しいことではありません。がんと家族の相談室にも、2026年9月の実績(運営者集計)で、葬儀の事前相談が120件寄せられています。その夜の電話先を決めておく「もしもの夜の備え」は無料の登録で、所要時間は3分ほどです。登録しても、葬儀の形や依頼先をその場で決める必要はありません。なお、相談室が専門サービスを紹介した場合は、提携事業者から紹介手数料を受け取ることがあり、運営者情報で開示しています。医療機関や士業からは紹介料を受け取らず、事業者を1社だけ勧めることもありません。お断りいただいても費用はかかりません。

  1. Q1ご本人が、葬儀やお墓について希望を口にしたことがありますか

    はいその言葉を日付とともにメモに残し、家族で共有する。中身を決めるのは落ち着いてからでよい

    いいえ今は聞き出さなくてよい。亡くなった夜に電話する先をひとつ決めるだけにする

  2. Q2亡くなった夜に電話する先は、家族の誰もが分かるようになっていますか

    はいその番号を家族全員のスマホに同じ名前で登録しておく

    いいえ入院先の相談窓口などでその夜の流れを聞き、電話先をひとつだけ決めておく

葬儀のことを考え始めるか迷ったときの分かれ道

お金や手続きは、何を先に確かめておけばいいですか?

ご存命のうちに確かめておきたいのは、医療費の上限と生命保険の契約内容、自宅で過ごすなら介護保険の申請です。亡くなったあとの手続きは、期限のあるものから順に進めれば間に合うので、今は「期限がある」と知っておくだけで十分です。

医療費は、高額療養費制度で1か月(1日から月末まで)の自己負担に上限があります。2026年8月から上限額の見直しと年間上限の新設が行われたので、お父さまの上限額は、お父さまが加入している健康保険で確かめてください。マイナ保険証で受診していれば、多くの場合、窓口での支払いは月の上限額までになります。ただし、マイナ保険証に対応していない医療機関や、資格確認書で受診している場合などは、事前の申請が必要なことがあります。

生命保険には、リビング・ニーズ特約が付いていることがあります。原因にかかわらず医師から余命6か月以内と判断された場合に、将来の死亡保険金に代えて、所定の範囲内で保険金の一部または全部を生前に受け取れる特約です。上限や手続きは契約によって違うので、保険証券を出して保険会社に確かめます。自宅で過ごす可能性があるなら、介護保険の申請も早めに考えておきます。介護保険は、65歳以上の方なら病気の種類に関係なく、要介護か要支援の認定が出れば利用できます。40〜64歳の方も、がん(医師が回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)は対象となる特定疾病の一つで、同じように認定が必要です。申請は市区町村の窓口で、通知までは原則30日以内とされています。

項目確かめる時期確かめる先
医療費の上限(高額療養費)今のうちに加入している健康保険
生命保険の契約内容(特約を含む)今のうちに保険証券と保険会社
介護保険の申請(自宅で過ごすなら)必要になりそうなら早めに市区町村の窓口、地域包括支援センター
死亡届亡くなったことを知った日から7日以内市区町村
葬祭費・埋葬料などの申請申請の期限内(日数は加入先で確かめる)国保・後期高齢者医療は市区町村、会社員などの健康保険は加入先
相続放棄をするかどうか相続の開始を知った時から3か月以内家庭裁判所(期間を伸ばせる場合もある)
お金と手続きを「いつ確かめるか」で分けた表

表の下の3つは、亡くなったあとのことです。今の時点で準備することはなく、「申請が必要で、期限がある」と覚えておけば十分です。葬祭費や埋葬料は、申請しないと受け取れない給付なので、落ち着いてから加入先に問い合わせてください。

「急がなくていいこと」には、どんなものがありますか?

遺品の整理、お墓や納骨、相続の分け方の細部、ご本人の持ち物の片づけなどは、急がなくて構いません。今それを進めると、ご本人と過ごす時間が削られ、ご本人の目にも「もう終わりの支度」と映りかねません。

インターネットで「終活」「亡くなる前にやること」と調べると、何十もの項目が並んだリストが出てきます。その中には、ご本人が元気なうちに自分で進めることを想定したものも多く、看病の最中の家族が今週こなすためのものとは限りません。リストの長さに追い立てられる必要はありません。

ただし、ご本人が自分からしたいと言い出したことは別です。「このカメラは孫に」「あの手紙は燃やしておいて」といった言葉が出たら、それはご本人の希望なので、その場でメモしておきます。家族が先回りして片づけを始めるのではなく、ご本人の言葉が出たときに受け止める。それくらいの構え方で十分です。聞いておくこと、伝えること、会わせたい人については、亡くなる前に聞く・伝える・会うのリストで詳しく整理しています。

家族の中で、準備の分担はどう決めればいいですか?

チェックリストの項目ごとに「担当」と「いつまでに」を一行で書き、家族のグループで共有します。全部を一人が抱えると、そばにいる時間がその人から消えていくからです。

分担のこつは、住んでいる場所と得意なことで分けることです。近くに住む家族は、ご本人の話し相手や、医療者からの説明を聞く役。遠方の家族は、保険会社への問い合わせや制度の確認、親戚への連絡など、電話とパソコンでできる役。「遠くて何もできない」と申し訳なく思っているきょうだいに、具体的な仕事を渡すことにもなります。頼むときは「手伝って」ではなく、「父の保険の特約を、今週中に保険会社に確かめてもらえる?」と、項目と期限をそのまま伝えます。

どこに相談すればいいか分からない準備は、ひとりで調べ続けなくて構いません。全国のがん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターは、家族も、その病院に通っていない人も無料・匿名で利用でき、療養の場所やお金のことも相談できます。入院先に医療ソーシャルワーカーがいれば、退院や転院、使える制度の相談に応じてくれます。

準備に手をつけられずにいた娘は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
30代・娘の立場(父が末期がんで入院中。母と二人で病院に通い、兄は関西に住む)
相談のあとに変わったこと
準備を3つの段に分けたことで、その週にやることが3つに絞られた。父から会いたい人の名前を聞き、夜の電話先を家族全員で共有でき、葬儀のことは「電話先をひとつ決める」だけにとどめられた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談のあとの1週間で、彼女は3つのことを終えた。病棟で夜間の番号と「電話をかけてよい様子」を聞き、母と兄のスマホにも同じ名前で登録した。調子のよい午後に「会っておきたい人はいる?」と父に聞くと、高校時代の友人2人の名前が出たので、父のスマホから番号をノートに写した。そのうちの1人は、週末に見舞いに来てくれた。保険と医療費の確認は、関西にいる兄が電話で引き受けた。「準備って、父との時間を減らすことだと思っていた。逆だった」と彼女は話す。

2. 相談を考えた背景

きっかけは、病院のロビーで叔母に言われた「そろそろ準備しておいたほうがいいわよ」という一言だった。帰り道、何の準備なのかを聞き返せなかった自分に腹が立ち、同時に、何も分からない自分が怖くなった。

3. 相談する前に困っていたこと

その夜に検索して見つけたのは、葬儀社の選び方から始まる、30を超える項目のリストだった。父をもう亡くなった人として扱っているような気がして、彼女は途中で画面を閉じた。それから2週間ほど何も手につかず、何もしていないことに、また罪悪感が募った。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターは、患者本人が行く場所だと思い込んでいた。欲しかったのは長いリストではなく、「何から」という順番だった。名前はニックネームでよく、断っても費用がかからないと書かれていたので、翌日の夕方5時の折り返しを希望して、夜中にフォームを送った。すぐに受付確認のメールが届いた。

5. 相談で話したこと・その後

担当は、彼女の話をひととおり聞いてから、気になっていることを一つずつ書き出してもらい、「今週」「落ち着いてから」「急がない」の3つに振り分けた。父があとどれくらいかについては、「病棟の先生や看護師さんに確かめることなので、聞き方を一緒に考えましょう」と言い、予測はしなかった。葬儀については「電話先をひとつ決めるだけで十分」と伝えられ、彼女は「兄と話してから決めます」と答えた。急かされることはなかった。最初に父に希望を聞いたときは話をそらされたが、3日後、好物の話の流れでもう一度聞くと、父は友人の名前を口にした。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 夜間や休日に様子が変わったとき、どこに、どんな様子のときに電話すればいいですか。
  • 家族が今のうちにしておいたほうがいいことは、何でしょうか。
  • 父にこれからの過ごし方の希望を聞きたいのですが、先生からも話を向けていただけますか。
  • 家に帰れる可能性はありますか。そのとき、何を準備しておけばいいですか。
  • 医療費や使える制度のことは、どなたに相談すればいいですか。

とはいえ、準備に手が止まるあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──手が止まるのは、まだ一緒にいたいからです

準備のリストを前に手が止まるのは、怠けているからでも、覚悟が足りないからでもありません。お父さまとの時間がまだ続いてほしいと願っているからです。喪失が現実になる前から胸が締めつけられるような悲しみは、「予期悲嘆」と呼ばれています。日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査(J-HOPE4、2020年。2018年に215施設の遺族を調査し、9,071名が有効回答)では、患者さんが亡くなることへのこころの準備が「できていた」と答えた遺族は29%で、「ある程度できていた」を合わせると85%でした。回答者の大半は緩和ケア病棟で家族を亡くした方で、すべての家族を代表する数字ではありませんが、すっかり準備ができたと感じる人は多くないことがうかがえます。心の準備は「ある程度」で十分です。リストの一番上の段だけ済ませたら、あとはお父さまの顔を見に行ってください。

② 実務のこと──本人の言葉は、日付とそのままの言い回しで残す

準備の中で、あとからいちばん効いてくるのが、ご本人が口にした希望の記録です。「家がいいな」「延命はしなくていい」といった言葉を聞いたら、日付と、その場にいた人と、言葉そのものをメモに残します。家族の要約ではなく、そのままの言い回しで残すのがこつです。気持ちは日によって変わることがあり、人生会議も、繰り返し話し合って共有していくことが前提です。言葉が変わったら、新しい日付で書き足していきます。そうしておくと、いざ医療者から方針を尋ねられたとき、家族の意見が分かれたときに、「お父さんは、この日にこう言っていた」と同じ記録に立ち返ることができます。メモは一人のスマホにしまい込まず、家族のグループにも写しを送っておきます。

今日できること

今夜から明日にかけて、準備を3つに絞るための手順

  1. 紙を3つに区切る

    紙を3つに区切って「急ぐ」「落ち着いてから」「急がない」と書き、気になっていることを一つずつ振り分けます。

  2. 夜の電話先を確かめ合う

    病棟や在宅医に夜間の連絡先を聞き、家族それぞれが自分のスマホに登録できたかを、グループで一人ずつ返事してもらいます。

  3. 知らせたい人を一人聞く

    調子のよい時間に「顔を見たい人はいる?」と一人だけ聞き、名前と番号をノートに写しておきます。

よくある質問

準備をしていることを父に知られたら、傷つけてしまいませんか?

隠し通す必要はありませんが、ご本人の前で葬儀や片づけの話を進めるのは避けたほうが安心です。ご本人のほうが、家族より先にこれからのことを考えていることも多く、「会いたい人」や「過ごしたい場所」を聞かれて、話せてほっとする方もいます。反対に、話したくない様子なら、その気持ちを尊重して時期をずらします。知らないでいたい、聞かないでいたいという気持ちも、大切にされてよいものです。

親戚から「葬儀社は早く決めておいたほうがいい」と言われます。

今の段階で決めておけば足りるのは、亡くなった夜に電話する先をひとつ、です。葬儀の形や依頼先を比べて決めるのは、そのあとでも間に合います。死亡届は亡くなったことを知った日から7日以内、火葬は亡くなってから24時間を経過した後と決められているので、その夜のうちにすべてを決める必要はありません。親戚には「電話先だけは決めてあるので、大丈夫です」と伝えれば十分です。

遺言やエンディングノートは、今のうちに書いてもらうべきですか?

ご本人が書きたいと望むなら、手伝ってあげてください。ただ、家族から書くように勧める必要はありません。人生会議も、書面を作ることが必須ではなく、話し合って共有することが中心です。遺言は形式に決まりがあるので、ご本人が書きたいと言う場合は、専門家に相談してから進めると安心です。体力の落ちている時期なので、無理のない範囲で、短い時間に区切って進めてください。

家族の意見が合いません。最後は誰が決めるのですか?

最終的な決め方について、国の指針(人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン)は、ご本人が決めることを基本に据えています。まずはご本人の言葉を真ん中に置き、ご本人が話せないときは、家族と医療・ケアチームで「お父さんなら、どう考えるだろう」を話し合います。記録しておいたご本人の言葉が、そのときの手がかりになります。家族だけで話がまとまらないときは、主治医や看護師に同席してもらうのも一つの方法です。

準備のことを相談できる、公的な窓口はありますか?

がん相談支援センターは、がん診療連携拠点病院などにある無料・匿名の相談窓口で、家族も、その病院に通っていない人も利用できます。近くに窓口が見つからないときは、国立がん研究センターが運営するがん情報サービスサポートセンターに電話で尋ねる方法もあります。番号は0570-02-3410で、受付は平日の10時から15時、利用は無料ですが通話料は自己負担です。介護保険のことは、市区町村の窓口や地域包括支援センターへ。がんと家族の相談室では、準備の順番の整理や、ご希望とご同意のある分だけ専門サービスへの橋渡しをしています。

「急ぐこと」だけ、一緒に決めてしまいませんか

お父さまの今の様子と、いちばん気になっている準備をひとつだけお書きください。送ってすぐに受付確認のメールが届き、お選びいただいた時間帯に担当からお電話します。気になっていることを「急ぐ・落ち着いてから・急がない」に振り分けて、今週やることを一緒に絞ります。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

    3. お見積りの後にお断りいただいても構いません

    1ご相談の内容
    ご相談の種類任意

    今まさに設備が止まっている・水が漏れているときは、いちばん上を選んでください。すぐにできることを表示します。

    水が漏れている場合は、先に止水栓か元栓を閉めてください。電気設備に水がかかっている場合は、ブレーカーを落としてください。写真はLINEから送っていただくのが最短です(24時間受付)。

    対象の設備・箇所任意・複数可

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    これからの流れは、大きな分かれ道だけ先に話しておく

    これから先のことを、一度にすべて決める必要はありません。どこで過ごしたいか、急な変化のときに誰へ連絡するか。大きな分かれ道だけでも話しておくと、そのときの迷いが小さくなります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「これから起こりうる変化と、そのとき家族が連絡する先を教えてください。」

    1. 過ごしたい場所(自宅・病院・緩和ケア病棟など)の希望を、ご本人と少しずつ話す
    2. 在宅療養や介護保険のことは、病院の医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターに相談する
    3. 決めたことはメモにして、家族のあいだで共有しておく

    手元にあると話しやすいもの

    • ご本人の希望(過ごしたい場所など)のメモ
    • 介護保険の被保険者証(お持ちの場合)

    公的な相談先

    医療ソーシャルワーカー(病院の相談室など)
    医療費や制度、退院後の暮らし、在宅療養の準備を一緒に考える専門職です。
    地域包括支援センター・市区町村の介護保険の窓口
    介護保険の申請や、介護サービスの使い方を相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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