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せん妄とは?がんの最期に見られる言動と家族の接し方

このテーマの総論:がんで最期が近いと食べられない?無理をさせない理由と口のケア

この記事では、最期が近いときの体の変化についてお伝えしています。いまは読みたくないときは、無理をせず、読める日まで閉じておいても大丈夫です。

この記事の結論

せん妄は、病気の進行や薬、脱水、感染などが重なって、意識や考える力が一時的に乱れる状態で、亡くなる前の時期には起こりやすくなるとされています。言葉を否定せずに気持ちへ返事をし、点滴を抜こうとする、急に様子が変わる、といったときは、ひとりで抑えずに看護師さんを呼んでください。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター「がんを学ぼう 教えて!ドクター:心身のメンテナンスに取り組… ほか7件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

いない人の名前を呼ぶ、「家に帰る」と起き上がろうとする、点滴の管に手をのばす。最期が近い時期のこうした言動の多くは、せん妄と呼ばれる一時的な意識の乱れによるもので、お母さまの心や人柄が別のものに変わってしまったわけではありません。

せん妄の現れ方は人によって違い、一日のなかでも、穏やかに話せる時間と混乱する時間が入れ替わります。原因によっては和らぐこともあれば、最期のごく近い時期には落ち着きにくいこともあります。

この記事では、せん妄がどんな状態でなぜ起こるのか、場面ごとの否定しない声かけ、管や転落を防ぐための整え方、医療者に伝えたい変化、そして「お迎え」のような話を家族がどう受け止めればよいかを、具体的にお伝えします。

別人のような母のそばで、戸惑っている方へ

  • 穏やかだった母が、夜になると「帰る」と言って起き上がろうとする。点滴の管にも手をのばす。
  • 亡くなった祖母の名前を呼んで、誰もいない部屋の隅に話しかけている。母が母でなくなったようで怖い。
  • 「そんな人いないよ」と言うと怒り出すし、話を合わせていいのかも分からない。

母がいない人の名前を呼んだり、点滴を抜こうとしたりします。最期が近いときのせん妄とは何ですか?どう接すればいいですか?

せん妄は、体の変化が脳の働きに影響して、意識や考える力が一時的に乱れる状態です。亡くなる前の時期に入ると、起こりやすくなるとされています。言葉を否定せず、名前を呼んで気持ちに返事をし、危ない行動はひとりで止めずに看護師さんを呼んでください。

国立がん研究センターの解説によると、せん妄は一時的に現れる意識の障害や考える力の低下で、ゆっくり進んでいく認知症とは別のものです。病状が進んだ方や看取りの時期には起こりやすくなります。専門家向けには、日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会の編集による『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版(第3版)』も出ています。

せん妄のときの言葉は、ご本人の本心や性格がむき出しになったものではありません。脳がいつものように周りの情報をまとめられなくなり、夢と現実、昔と今が混ざり合ったような状態にある、と受け止めてみてください。そう考えると、「どうしてそんなことを言うの」という怒りや悲しみが、少しやわらぐことがあります。最期までの経過の全体は、親のがんの最期の経過にまとめています。

せん妄では、どんな言動が見られますか?

落ち着かずに体を動かす、帰ろうとする、管を触る、時間や場所が分からなくなる、そこにいない人や物が見えると話す、昼と夜が逆になる、といった様子が見られます。反対に、ぼんやりして反応が乏しくなる静かな形もあります。

目立つのは、大きな声を出したり起き上がろうとしたりする形ですが、静かな形は眠気や疲れと見分けにくく、気づかれにくいといわれます。ふたつが入れ替わる方もいます。夕方から夜にかけて混乱が強まり、朝には落ち着いている、という波を見せることもあります。

昼間に面会した家族は「今日は穏やかだった」と感じ、夜に付き添った家族は「ひどく混乱していた」と感じる。同じ一日でも、見た時間によって印象がまったく違うのは、せん妄によくあることです。家族の中で話が食い違ったら、どちらかが大げさなのではなく、時間帯の違いかもしれないと考えてみてください。

落ち着かなくなる形

  • 起き上がろうとする、「帰る」と言う
  • 点滴や尿の管を触る、引っぱる
  • 大きな声を出す、怒りっぽくなる
  • 見えないものに話しかける

静かになる形

  • ぼんやりして、反応がゆっくりになる
  • 話しかけても、話がかみ合わない
  • うとうとして、眠りとの区別がつきにくい
  • 周りへの関心が急に薄れる
せん妄に見られる2つの形(入れ替わることもあります)

なぜ、最期が近いとせん妄が起こりやすいのですか?

肝臓や腎臓の働きの低下、脱水、感染、血液中の成分の乱れ、薬の影響、痛みや便秘、尿がたまること、酸素の不足など、いくつもの原因が重なって起こることが多いと考えられています。手当てで和らぐ原因が含まれていることもあります。

原因がひとつに決まらないことが多く、医療者は、薬を見直す、便秘や尿のたまりを手当てする、熱の原因を探す、といった方法で、和らげられるところから手を打っていきます。痛み止めや睡眠の薬が影響していそうなときも、減らすか、変えるか、続けるかは医療者が判断します。家族が自分の判断で薬を止めると、痛みが強くなるなど、かえってつらさが増すことがあるので、気になる薬があれば「この薬は今の混乱に関係していますか」と尋ねてください。

一方で、最期のごく近い時期のせん妄は、手を尽くしても回復が難しいこともあります。看取りの時期の家族向けに作られたOPTIMの冊子『これからの過ごし方について』でも、回復の難しいせん妄は家族の心配に沿って説明される話題のひとつです。その場合は、治すことより、ご本人が少しでも穏やかに過ごせることへ、ケアの目標が移っていきます。

せん妄

  • 体の働きの低下肝臓や腎臓の働きが弱まり、体に不要なものがたまる
  • 水分と熱飲める量が減って脱水になる、感染で熱が出る
  • 薬痛み止めや睡眠の薬などが影響することがある
  • 体の不快痛み、便秘、膀胱に尿がたまる、息苦しさ
  • 環境慣れない部屋、夜の暗さ、騒がしさ、眼鏡や補聴器がない
最期が近い時期のせん妄に、重なりやすい原因

「そんな人はいないよ」と否定しないほうがいいのは、なぜですか?

ご本人には、本当に見えたり聞こえたりしているからです。否定や説得を重ねると、「分かってもらえない」という不安が強まり、かえって興奮することがあります。見えているものが本当かどうかより、そのときの気持ちに返事をするほうが、落ち着きにつながりやすくなります。

とはいえ、話を全部合わせなければいけないわけでもありません。「私には見えないけれど、お母さんには見えているんだね」のように、ご本人の体験を認めながら、自分の立場も保つ言い方があります。怖いものが見えて困っている様子なら、「怖かったね。ここには私がいるから大丈夫」と、今の安心を先に伝えます。

正しい時間や場所を何度も説明し直す必要もありません。「ここはどこ?」と聞かれたら、「病院だよ。夜だから、少し休もうね」と短く答えれば十分です。答えを繰り返し求められても、同じ短さで、同じ穏やかさで返します。言い返してしまったと気づいたら、「ごめんね、びっくりしたね」とひとこと添えれば、仕切り直せます。

場面ごとに、どんな言葉をかければいいですか?

「帰る」「誰かが来ている」「ここはどこ」など、よくある場面ごとに、気持ちを受け止める一言と、今の安心を伝える一言を組み合わせると、言葉に詰まりにくくなります。短く、ゆっくり、ひとりずつ話すのが基本です。

話しかけるときは、ご本人の視界に入る位置で、目の高さを合わせます。何人もが同時に話すと混乱しやすいので、声をかけるのはひとりずつにします。触れるときは、「手、触るね」と先に伝えてから。早口や大きな声は、責められているように響くことがあるので、ふだんより少しゆっくり、低めの声で話してみてください。

ご本人の言葉避けたい返し方言い換えの例
「家に帰る」「帰れないよ、病院なんだから」「帰りたいんだね。家の何が気になってる?」
「おばあちゃんが来てる」「そんな人いないでしょ」「来てくれたんだね。何か話してた?」
「ここはどこ? あなた誰?」「娘でしょ、忘れたの?」「娘の〇〇だよ。ここは病院で、今は夜だよ」
「虫がいる、取って」「何もいないってば」「気持ち悪かったね。明かりをつけて一緒に見ようか」
「仕事に行かないと」「もう仕事はしてないでしょ」「気になってるんだね。そのことは任せて」
よくある場面と、避けたい返し方・言い換えの例

点滴を抜こうとしたり、ベッドから降りようとしたりするときは、どうすればいいですか?

家族ひとりで押さえつけず、まずナースコールで看護師さんを呼んでください。管を見えにくくする、ベッドの高さや柵を整える、手に握れるタオルを渡すなど、病棟で工夫できることがあります。点滴がまだ必要かどうかを、医師に相談できることもあります。

管を引っぱるのは、ご本人にとって、腕に何か知らないものが付いている、かゆい、引きつれる、という不快さからのことが多いと考えられます。家族が手をつかんで止めると、力比べになって興奮が強まり、ご本人も家族もけがをするおそれがあります。

看護師さんは、管を袖の中に通して目に入りにくくする、固定の仕方を変える、ベッドを低くして周りにマットを敷く、といった工夫をすることがあります。体を動かないようにする方法を使うかどうかは、病棟が安全とご本人の負担を考えて判断することなので、気になるときは「どんな場合に、どんな方法を使いますか」と聞いてかまいません。夜間の点滴が負担になっていそうなら、「点滴の時間や量を変えることはできますか」と医師に尋ねるのもひとつです。自宅で看ている場合は、ベッドのそばに家具を置かない、床に滑りにくいマットを敷くなどして、訪問看護師さんに相談してください。

落ち着いて過ごせるよう、病室で整えられることはありますか?

昼は明るく、夜は真っ暗にしない明かりにする、時計やカレンダーを見える所に置く、眼鏡や補聴器を使えるようにする、見慣れた写真やひざ掛けを枕元に置く、テレビや話し声を控えめにする、といった工夫が助けになることがあります。

せん妄のときは、周りの情報をうまく取り込めないぶん、光や音、見慣れない物に振り回されやすくなります。真っ暗な部屋で目が覚めると、どこにいるのか分からず不安が強まることがあります。反対に、昼間にカーテンを閉め切ったままだと、昼と夜の区別がつきにくくなります。家から持ち込む物は、ひとつかふたつで十分です。たくさん並べると、かえって落ち着かないこともあります。

  • 昼はカーテンを開け、夜は足元に小さな明かりを残しているか
  • 時計とカレンダーが、ベッドから見える位置にあるか
  • 眼鏡や補聴器を、ふだんどおり使えているか
  • 見慣れたひざ掛けや家族写真が、枕元にあるか
  • テレビや話し声が、大きすぎないか
  • 話しかけるのは、ひとりずつになっているか
せん妄のある方の病室で、家族が確かめたいこと

亡くなった家族が「迎えに来た」と話すのは、せん妄なのですか?

はっきりとは分かっていません。日本では昔から「お迎え」と呼ばれてきた体験で、穏やかな表情で話す方もいます。病気と決めつけず、ご本人が安心しているなら、その話に耳を傾けてかまいません。怖がる、落ち着かないといった様子が一緒にあるときは、看護師さんに伝えてください。

それがせん妄なのか、別の何かなのかを、家族が見極める必要はありません。目安にしたいのは名前ではなく、ご本人の様子です。懐かしそうに、ほっとした顔で話しているなら、「何て言ってた?」「どんな格好だった?」と聞いてみると、昔の思い出話につながることがあります。反対に、「連れて行かれる」と怖がっている、眠れずに落ち着かない、という様子なら、「怖かったね、ここにいるよ」と安心を伝え、看護師さんにも知らせます。

家族の受け止め方も、人によって違います。「お母さんが迎えに来てくれたなら安心だ」と感じる人もいれば、「縁起でもない」と怖くなる人もいます。どちらの感じ方も自然なものです。ひとつ覚えておきたいのは、お迎えの話があったからといって、残りの時間が決まるわけではないということです。お子さんやお孫さんには、「おばあちゃんには、大好きだった人が見えているみたいだね」と、怖がらせない言葉で伝えることもできます。最期の時期のご本人の心の動きについては、本人が最期に感じていることで詳しく扱っています。

  1. Q1ご本人は、穏やかな表情で話していますか

    はい否定も訂正もせず、「何て言ってた?」と話を聞く

    いいえ「怖かったね、ここにいるよ」と伝え、看護師さんに知らせる

  2. Q2聞いている家族のほうが、怖くなっていますか

    はい少し席を外し、その気持ちも看護師さんや相談先に話す

    いいえそばに座り、ご本人のペースで話を聞き続ける

「迎えに来た」と話したときの分かれ道

どんな変化があったら、医療者に伝えたほうがいいですか?

言動が急に変わった、夜に眠れず興奮が続く、管を抜く・ベッドから落ちそうになるなど危ない行動がある、ひどく怖がっている、熱や痛み、便や尿の出方に変化がある、といったときは、早めに伝えてください。

伝えるときは、「何時ごろから」「どんな言動が」「何がきっかけで」「何をしたら少し落ち着いたか」の4つを添えると、医療者が原因を探す手がかりになります。たとえば、「夕方6時ごろから、祖母の名前を呼んで起き上がろうとしています。3日ほど便が出ていません。手を握って話しかけると、少し落ち着きます」。夜間に付き添った家族が、朝に日中の担当の看護師さんへ様子を伝えることも、昼と夜の様子をつなぐ大事な役目です。

落ち着かせるための薬を使うかどうか、どの薬をどのくらい使うかは、医療チームがご本人の状態と家族の思いを聞いて検討します。話せる時間がまだあるうちに伝えたいことがあれば、その希望も医療者に伝えてください。

母の言葉を正そうとしていたご家族は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
50代・娘の立場(80代の母が緩和ケア病棟に入院中。父は他界し、兄が隣の県に住む)
相談のあとに変わったこと
「おばあちゃんはもういないでしょ」と言い返していたのが、気持ちに返事をする一言に変わった。見慣れたカーディガンと家族写真を持ち込み、夜中に起き上がろうとする回数が減った。母が「迎えに来た」と話した日も、落ち着いて聞けた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談のあと、Eさんの返し方が変わりました。母が「帰らなきゃ」と言うと、「帰りたいんだね。家の何が気になる?」と聞き返し、「ここは病院で、今は夜。朝までいるよ」と短く伝えます。家から、母が好んで着ていたカーディガンと家族写真を1枚持ち込みました。看護師さんによると、夜中に起き上がろうとする回数は、一晩に5、6回から1、2回ほどに減ったそうです。ある夕方、母が「お母さんが迎えに来てくれた」と言ったときも、Eさんは「そう、よかったね。何て言ってた?」と聞けました。母は「待ってるって」と答えて、穏やかに目を閉じたといいます。「怖いと思っていた話が、母のうれしい話に聞こえた」とEさんは話します。

2. 相談を考えた背景

入院してからも穏やかで、冗談で看護師さんを笑わせていた母が、2週間ほど前から、夕方になると落ち着かなくなりました。亡くなった祖母の名前を呼び、夜中には点滴の管を引っぱって、看護師さんが駆けつけたこともありました。

3. 相談する前に困っていたこと

Eさんは、母の言葉を正そうとしました。「おばあちゃんは、もうずっと前に亡くなったでしょ」と言うと、母は「どうして意地悪を言うの」と泣き、さらに起き上がろうとしました。夜に「せん妄 最期 接し方」と検索すると「否定しない」とは書いてあるものの、何と言えばいいのかまでは分かりません。兄には「母さん、おかしくなったの?」と聞かれ、答えに詰まりました。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターも考えましたが、面会が夜に偏っていて、窓口の開いている時間に行けませんでした。夜にLINEで「母が別人のようで怖いです」と送ると、翌朝、まず看護師さんに今の様子を伝えてほしいこと、そのうえで話したければ電話で聞くことが書かれた返事が届きました。医療の判断は医療者に、という線引きがはっきりしていて、安心できたそうです。

5. 相談で話したこと・その後

電話で担当は、まず「別人のようで怖い」という気持ちを聞きました。母の状態を判断したり、これからの時間を予想したりはせず、せん妄について一般に言われていることを伝え、場面ごとの返し方を一緒に3つ考えました。「帰る」には「帰りたいんだね」、亡くなった人の話には「来てくれたんだね」、怖がるときには「ここにいるよ」。看護師さんに聞く質問も3つにまとめました。「今の様子は、せん妄と考えられますか」「原因として思い当たることはありますか」「家族が夜に付き添ったほうが落ち着きますか」。看護師さんは便秘が続いていたことにも気づき、医師に伝えてくれたそうです。兄への説明の言葉も、そのとき一緒に考えました。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 今の言動は、せん妄と考えられますか。原因として思い当たることはありますか。
  • 原因によって、和らぐ見込みはありますか。
  • 管を触ったり、ベッドから降りようとしたりするとき、家族はどうすればいいですか。
  • 夜に家族が付き添ったほうが、本人は落ち着きますか。
  • 落ち着かせる薬を使う場合、どんな目的で、どんな変化が考えられますか。

とはいえ、混乱するそばにいるあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──「母でなくなった」と感じるのは、母を深く知っているからです

別人のような言動に怖さを感じるのは、それだけいつもの姿を知っているからです。言い返してしまった、思わず声を荒らげてしまった、病室から逃げ出したくなった。そうした自分を責めなくてかまいません。せん妄の波のあいだに、ふと名前を呼んでくれたり、いつもの冗談が出たりする時間が来ることもあります。その人はいなくなったわけではなく、混乱の向こう側にいます。看病する家族は自分のつらさを後回しにしがちで、ご家族は「第二の患者」ともいわれます(国立がん研究センター がん情報サービス)。怖かったことは、看護師さんや、がん相談支援センターに話してください。

② 実務のこと──夜の付き添いを分け、声かけの言葉を家族でそろえる

せん妄は夜に強まることがあるため、付き添いが夜に集中して、ひとりの家族が消耗しやすくなります。夜に付き添う人を交代制にし、昼の面会の人と夜の人とで、様子を短く引き継ぐ仕組みを作っておくと、昼と夜の印象の食い違いも減ります。もうひとつ大事なのは、声かけの言葉をそろえることです。ある人は否定し、別の人は話を合わせる、というばらつきは、ご本人の混乱を強めることがあります。落ち着いた一言や、安心する物を家族のグループで共有し、看護師さんにも伝えておきます。自宅で看ている場合は、夜間に電話する先を決めておきます。在宅療養支援診療所には24時間連絡を受ける体制が求められていますが、来てもらえるまでの時間は医療機関によって違うので、早めに確かめておくと安心です。

今日できること

せん妄が見られた日に、家族ができる3つのこと

  1. 落ち着く一言を家族で1つ決める

    「ここにいるよ」「帰りたいんだね」など、誰が付き添っても同じ言葉を使えるよう、家族のグループに送っておきます。

  2. 見慣れた物を1つ持っていく

    家で使っていたひざ掛けや家族写真など、目に入ると安心しそうな物を1つ選び、持ち込んでよいか看護師さんに確かめます。

  3. 気づいたことを3行でメモする

    「何時ごろ」「どんな言動」「何をしたら落ち着いたか」を書き、次に看護師さんに会ったときに見せます。

よくある質問

せん妄は、認知症とは違うのですか?

違うものです。せん妄は、体の変化などをきっかけに一時的に起こる意識や考える力の乱れで、時間をかけて少しずつ進む認知症とは区別されています。比較的急に始まり、一日のなかで波があるのも特徴です。もともと認知症のある方にせん妄が重なることもあるので、「いつもと違う」と感じたら、そのまま医療者に伝えてください。

せん妄になったら、もう元には戻らないのですか?

原因によっては、手当てで和らいだり、落ち着いたりすることがあります。一方、最期のごく近い時期のせん妄は回復が難しいこともあります。戻るかどうかを家族が見極める必要はありません。「この先、落ち着く見込みはありますか」と医師に尋ね、そのうえで、今の時間をどう過ごすかを一緒に考えてもらってください。

母に「あなた誰?」と言われ、ショックでした。

大切な人に分かってもらえないのは、とてもつらいことです。せん妄のときは、目の前の人と記憶をうまく結びつけられなくなることがあり、家族を忘れてしまったわけではありません。「娘の〇〇だよ」と名乗って、責めずにそばにいてください。調子のよい時間には、名前を呼んでくれることもあります。

薬で落ち着かせる、眠らせると言われました。話せなくなりませんか?命が縮みませんか?

せん妄で使う薬には、混乱や興奮を和らげるためのものから、ほかの方法では取りきれない強い苦痛に対して眠りを深める「鎮静」まで、目的の違いがあります。どの方法を選ぶかは、医療チームがご本人の状態と家族の思いを聞いて検討します。鎮静について、日本緩和医療学会の手引き(2023年版)は、少なくとも平均的に命を縮めるような重い影響はないと想定される、としています。話せるうちに伝えたいことがあれば、その気持ちも医療者に伝えてください。

子どもや孫に、おばあちゃんの様子をどう伝えればいいですか?

「病気のせいで、夢と本当のことが混ざってしまうことがあるんだよ。おばあちゃんが変わってしまったわけじゃないよ」と、短く伝えておくと驚きが小さくなります。面会の前に、どんな様子かを先に話しておくのもひとつです。怖がる様子があれば無理に会わせず、手紙や絵を届ける形でもかまいません。

自宅で看ていて、夜中に混乱がひどくなりました。どこに連絡すればいいですか?

訪問看護や在宅医と決めてある夜間の連絡先へ電話してください。ベッドから落ちた、けがをした、呼吸の様子がおかしいなど、命に関わると感じて連絡先につながらないときは119番です。気持ちが追いつかない夜に誰かと話したいときは、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・無料。がん専門の窓口ではありません)もあります。

声かけに迷う夜のことを、一緒に整理しませんか

混乱しているときの様子と、電話を受けやすい時間帯をお書きください。お名前はニックネームでかまいません。受付確認のメールがすぐに届き、ご希望の時間に担当がお電話します。場面ごとの声かけを一緒に考え、看護師さんに確かめたいことを3つの質問にまとめてお送りします。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

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    次の一歩

    いま気になる変化を、そばにいる看護師に伝えてみる

    眠る時間が増える、食べる量が減る、呼吸のリズムが変わる。こうした変化をどう受け止めればよいかは、ご本人のそばにいる医療者に聞くのがいちばん確かです。「この変化は様子を見てよいですか」と尋ねるだけでも、今夜の過ごし方を決めやすくなります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「夜のあいだに家族へ連絡をいただくのは、どんな変化があったときですか。」

    1. 気になった変化を、時刻と一緒にメモしておく
    2. 苦しそうな様子や急な変化があれば、迷わず病棟・訪問看護・主治医に連絡する
    3. 泊まるか、家族を呼ぶかに迷う夜は、ひとりで決めずに誰かと話す

    手元にあると話しやすいもの

    • 気になった変化のメモ(時刻つき)
    • 病棟や訪問看護の、夜間の連絡先

    公的な相談先

    病棟の看護師・訪問看護
    ご本人の体調の変化を、いちばん近くで見ている相談先です。夜間の連絡先も確かめておくと安心です。
    緩和ケアチーム・緩和ケア外来
    痛みや息苦しさ、気持ちのつらさを和らげる専門のチームです。主治医や看護師を通じて相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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