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今、会いに行くべき?がんの最期に迷ったときの判断材料と聞き方

このテーマの総論:がんで最期が近いと食べられない?無理をさせない理由と口のケア

この記事では、最期が近いときの体の変化についてお伝えしています。いまは読みたくないときは、無理をせず、読める日まで閉じておいても大丈夫です。

この記事の結論

会いに行くべきかに一つの正解はありません。医療者の見立て(週の単位か日の単位か)、ご本人と話せる時間が残っているか、自分の移動と仕事の都合、の3つを重ねて決めます。迷うときは「話せるうちの1回目」と「呼ばれたときの2回目」に分けて考えると、今動くことが次の妨げになりにくくなります。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:厚生労働省「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」/厚生労働省… ほか4件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

遠くに住み、仕事も抱えながら「今、会いに行くべきか」を決めるときは、行くか行かないかの二択で考えるより、医療者の見立て、ご本人と話せる時間、自分の移動と仕事の都合の3つを並べたほうが、答えの形が見えてきます。迷う場合は、会いに行くことを「話せるうちの1回目」と「呼ばれたときの2回目」に分けて計画しておくと、今動くことが、いざというときの足かせになりにくくなります。

ただ、医療者の見立ては目安で、経過には大きな個人差があります。数日と言われた状態が続くこともあれば、思ったより早く変化が進むこともあり、正確な時期は誰にも分かりません。この記事では、「会いに来られるなら早めに」という言葉の受け止め方、遠くから病棟に電話で尋ねる方法、2回に分けて考える理由、仕事の休み方と上司への伝え方、間に合わないかもしれないときの考え方を順にまとめます。

会いに行くか、決められずにいる方へ

  • 「会いに来られるなら、早めに」と言われた。でも往復4時間かかるうえ、仕事の引き継ぎもある。
  • 今行って「まだ大丈夫」だったら、本当に必要なときに休めなくなりそうで怖い。
  • 間に合わなかったら一生後悔する気がする。それでも、生活も仕事も投げ出せない。

父の最期が近いと聞きました。仕事を休んで今すぐ会いに行くべきでしょうか?そばにいるべきですか?

一つの正解はありません。医療者の見立て、お父さんと話せる時間が残っているか、自分の移動と仕事の都合、の3つを重ねて決めます。「話せるうちの1回目」と「呼ばれたときの2回目」に分けて考えると、今行くかどうかを決めやすくなります。

正解がないのは、病気の進み方が一人ひとり違ううえに、家族の事情も一軒ずつ違うからです。同じ「最期が近い」という言葉でも、数週間をかけて少しずつ変わっていく方もいれば、数日のうちに変化が重なる方もいます。会いに行く側にも、移動にかかる時間、任されている仕事、小さな子どもの世話、自分自身の体力があります。どれかひとつだけで決めようとすると、ほかの事情が後から重くのしかかってきます。

3つの材料のうち、いちばん見落とされやすいのが「話せる時間」です。最期が近い時期には、眠る時間が増え、やがて呼びかけに応える力も弱まっていきます。声は耳に届いている可能性があるといわれますが、言葉を交わせる時間には限りがあります。お父さんが目を開けて話せる日がまだあるなら、その時間に会うことには、ほかでは代えられない意味があります。

「そばにいるべきか」という問いにも、ずっと付き添うことだけが答えではありません。会いに行ったあとに離れていても、毎晩決まった時間に電話で声を届ける、近くの家族の代わりに手続きを調べる、といった形で、そばにいることは続けられます。ほかの親族を呼ぶかどうかは家族を呼ぶ目安と医療者への聞き方で、病院に泊まるかどうかは泊まるか帰るかの考え方で扱っています。ここでは、遠くにいる自分が会いに行くかどうかに絞ってお伝えします。

  1. Q1医療者から「日の単位」「今夜から明朝」といった言葉が出ていますか

    はい行けるなら移動を優先し、職場には最低限の連絡だけ入れて出発する

    いいえ次の問いへ

  2. Q2お父さんが目を開けて話せる時間が、今もありますか

    はい話せるうちの「1回目」を、今週か次の休みに入れる

    いいえ見立てを聞き直し、近くの家族と相談して行く日を決める

  3. Q3見立てが変わったときに、すぐ知らせてもらえる約束がありますか

    はい2回目に備えて、移動手段と休みの残りを確かめておく

    いいえ病棟に電話して、連絡の約束を先に結ぶ

今週のうちに会いに行くか迷ったときの分かれ道

「会いに来られるなら早めに」と言われたのは、どういう意味ですか?

多くの場合、「残された時間ははっきりしないけれど、会える・話せるうちに会っておいてほしい」という意味で使われる言葉です。何日という予測ではありません。意味を一人で推し量らず、「週の単位ということですか」と聞き返してかまいません。

遠くに住む家族は、この言葉を、病院の近くにいる親やきょうだいからの伝言で受け取ることがあります。伝言は、人を通るたびに温度が変わります。看護師さんが穏やかに言った「早めに」が、電話口では「すぐ来て」に聞こえることもあれば、反対に、本当は急いだほうがよい言葉が、気をつかって軽く伝えられることもあります。

まずは、伝えてくれた家族に、誰が、いつ、どんな言葉で言ったのかを確かめてください。「看護師さんが言ったの?先生?」「『早めに』のほかに、何か言ってた?」。そのうえで、言葉の意味が分からなければ、自分で病棟に確かめるのがいちばん確かです。医療者が日数を口にしないのは、何かを伏せているからではなく、同じように見える状態からでも、その先の経過に大きな幅があるためです。

遠くに住んでいても、病棟に電話で見立てを聞けますか?

病棟に電話して尋ねることはできますが、電話でどこまで話してもらえるかは、病院の決まりやご本人の意向によって違います。続柄と、窓口になっている家族の名前を伝え、「会いに行く日を決めたいので」と目的を添えると、答えてもらいやすくなります。

電話をかけるなら、病棟が落ち着いている時間帯を選びます。食事や処置の時間を避け、「今、少しお時間よろしいですか」と前置きしてから話し始めてください。聞くことは、今の見立て、お父さんが話せる時間帯、見立てが変わったときの連絡の約束、の3つに絞ります。自分の移動時間を具体的に伝えると、医療者もその時間を頭に入れて答えやすくなります。「新幹線と在来線で、病室に着くまで2時間半かかります」。

電話では詳しいことを話せない、家族の代表の方に伝えます、と言われることもあります。そのときは、近くにいる家族が病院で説明を聞く日に、スピーカーにした電話で同席させてもらえないか相談する方法があります。主治医から直接話を聞きたいときは、「遠方に住む家族も一緒に説明を聞ける日を設けていただけますか」とお願いしてみてください。

  1. 1名乗る患者の名前と続柄、窓口になっている家族の名前を伝える
  2. 2目的を伝える「遠方に住んでいて、会いに行く日を決めたい」と添える
  3. 3見立てを聞く「今は週の単位か、日の単位か、どう見ていらっしゃいますか」
  4. 4話せる時間を聞く「父が目を開けて話せるのは、どの時間帯が多いですか」
  5. 5連絡の約束をする「見立てが変わったら、窓口の家族か私の番号に連絡をいただけますか」
遠くから病棟に電話して、見立てを聞くまでの流れ

今行って「まだ大丈夫」だったら、本当に必要なときに行けなくなりませんか?

その心配は、会いに行くことを1回で考えているところから生まれます。「話せるうちの1回目」と「そばにいるための2回目」に分け、休みの使い方を前もって割り振っておけば、今行っても次の分が消えるわけではありません。

1回目の目的は、お父さんと言葉を交わすこと、医療者の説明を聞くこと、近くの家族と段取りを決めることです。この3つは、変化が進んでからでは難しくなるものばかりです。たとえ行った日に「まだ落ち着いています」と言われても、その面会は無駄ではありません。話せたこと、顔を見せたこと、連絡の約束を結んだこと自体が、2回目に向けた準備になっています。

2回目は、見立てが変わった知らせを受けて向かう面会です。こちらは、いつ来るか分からないぶん、休みと移動手段を前もって確かめておくことが支えになります。最終の電車や便の時刻、夜中に知らせが来たときの移動手段、何日分の休みが残っているか。準備が整っていれば、知らせを受けてから迷う時間が短くなります。見立てより長く落ち着いた時期が続き、結果として3回目が来ることもあります。

観点今週のうちに行く見立てを聞いてから行く呼ばれたら行く
向いている状況本人と話せる時間がまだある見立てが週の単位で、連絡の約束がある移動が短く、知らせを受けてすぐ動ける
得られること言葉を交わせる、説明を一緒に聞ける仕事の段取りを整えてから動ける休みを最後のために残せる
気をつけたいこと2回目の休みと移動手段を確かめておく見立ては変わるので、こまめに聞き直す間に合わないこともあると知っておく
「今週行く」「見立てを聞いてから行く」「呼ばれたら行く」の違い

仕事はどう休めばいいですか?介護休暇や介護休業は使えますか?

勤め先の制度を確かめたうえで、年次有給休暇、時間単位でも取れる介護休暇、条件に合えば分けて取れる介護休業、会社が定める忌引きなどを組み合わせます。ご本人の状態が対象になるかどうかは、人事や上司に確かめてください。

家族の介護のための休みとして育児・介護休業法が定めているのは、介護休暇と介護休業の2つです。介護休暇は、1年に5日(対象の家族が2人以上なら10日)まで、時間単位でも取れる休みです。金曜の午後だけ休んで週末につなげる、といった1回目の面会に向いています。介護休業は、要介護状態(2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)の家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れる休みで、雇用保険の介護休業給付金は原則「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。そばにいる期間が長くなりそうなときの選択肢になります。

2025年4月からは、勤続6か月未満の人を労使協定で介護休暇の対象から外す仕組みがなくなり、介護に直面したことを申し出た社員に、会社が制度を個別に知らせて意向を確かめることも義務になりました。「家族が最期の時期に入りました。使える休みを教えてください」と人事に伝えれば、それが入り口になります。亡くなったあとの忌引き(慶弔休暇)は、法律で定められた休みではなく、会社ごとに任意で設けられている休暇です。何日取れるか、誰が対象になるかは、就業規則で確かめておきます。休み方の組み立てや会社への伝え方は、家族のがんと仕事の両立で詳しく紹介しています。

休み方向いている使い方確かめること
年次有給休暇1回目の面会など、日にちを決めて動くとき残りの日数と、急な申請の扱い
介護休暇半日や数時間だけ抜け、週末につなげる1年に5日(対象家族2人以上は10日)、時間単位で取れるか
介護休業そばにいる期間が長くなりそうなとき対象になる状態か、通算93日・3回までの残り、給付金の手続き
忌引き(慶弔休暇)亡くなったあと会社が任意に設ける休暇なので、日数と対象を就業規則で
休み方ごとの向いている使い方と、確かめること

急に休むことになっても困らないよう、上司には何と伝えておけばいいですか?

事実を短く、先に伝えておきます。「父の容体が悪く、早めに会いに来るよう言われています。急に休む日が出るかもしれません」。そのうえで引き継ぎを1枚にまとめておけば、夜中に知らせが来ても、職場への連絡は一言ですみます。

上司に家族の病状を詳しく話す必要はありません。伝えるのは、急に休む可能性があること、その場合の連絡方法、仕事をどう回すかの3点で十分です。1回目の面会の休みを申し出るときは、「今週金曜の午後から休みをいただけないでしょうか。急ぎの件は〇〇さんに引き継いでおきます」と、具体的な日と代わりの人を添えると、受け取る側も動きやすくなります。

2回目の知らせが来たときのための一報も、下書きしておくと安心です。「父の容体が変わったため、今から実家に向かいます。引き継ぎはメモのとおりです。〇日までに改めて連絡します」。引き継ぎのメモには、進めている仕事と期限、相手先の連絡先、自分がいないときに判断してよい人を書いておき、同僚と共有しておきます。こうした準備は、迷っている今だからこそ落ち着いてできることです。

間に合わなかったら、一生後悔しませんか?

間に合うかどうかは、どれだけ早く動いても、誰にも約束できません。最期の瞬間に居合わせることだけが看取りではなく、話せるうちに会ったこと、離れていても声を届けたこと、残る家族を支えたことも、見送りの一部です。

最期の時は、病室に家族がそろっていても、飲み物を買いに出たわずかな間に訪れることがあります。そばに住む家族でさえ、その瞬間を選ぶことはできません。遠くに住むあなたが間に合わなかったとしても、それは判断を誤ったからではなく、誰にも決められない形でその時が来たということです。

離れていても、届けられるものはあります。近くの家族に頼んで、スピーカーにした電話をお父さんの耳元に置いてもらう。声のメッセージを録って送り、枕元で流してもらう。短い手紙を書いて、読み上げてもらう。ホスピスの患者さんの脳波を調べたカナダの大学の研究(Scientific Reports、2020年)では、呼びかけに応えなくなったあとも、一部の方の脳が音に反応していました。反応のない状態で記録できたのは5人だけで、言葉の意味まで届いているかは分かっていませんが、聞き慣れた声を届ける方法として、病棟の決まりを確かめたうえで試してみてください。

会いに行ったら、限られた時間をどう使えばいいですか?

お父さんと話す時間、医療者の説明を聞く時間、近くの家族と段取りを決める時間、の3つに分けて使います。帰る前には、次に連絡をもらう約束と、自分が次に来る日の目安を、病棟と家族の両方に伝えておきます。

限られた滞在では、気づくと病院の手続きや親戚への連絡に追われて、肝心のお父さんと過ごす時間が短くなりがちです。到着したら、まず病室に入って顔を見せ、手を握る。話せるなら、昔の話や家族の近況をひとつ。疲れさせないよう、長く話し込むより、何度か顔を出すほうが合っていることもあります。

医療者の説明は、行く日が決まった時点で病棟に「その日に、家族として説明を聞く時間をいただけますか」と頼んでおくと、短い滞在でも聞き逃しにくくなります。近くの家族とは、窓口を誰にするか、見立てが変わったら誰がどの順で知らせるかを決めておきます。ふだん付き添っている家族が疲れているなら、滞在中の一晩を代わることも、遠くの家族にできる大事な役目です。

  • お父さんと話す時間をつくり、手を握る
  • 主治医か看護師から、今の見立てを直接聞く
  • 見立てが変わったときの連絡の約束を結ぶ
  • 近くの家族と、窓口と知らせる順番を決める
  • 2回目に来るときの移動手段と、休みの残りを確かめる
  • 帰る前に、次に来る日の目安をお父さんに伝える
1回目の面会でしておくこと

往復4時間の距離で迷っていた息子さんは、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・息子の立場(70代の父が地元の病院に入院中。自分は新幹線で片道2時間ほどの都市で会社勤め。母と姉が病院の近くに住む)
相談のあとに変わったこと
「行くか、行かないか」で止まっていた迷いが、「話せるうちの1回目」と「呼ばれたときの2回目」の計画に変わった。金曜の午後に介護休暇を使って帰省し、父と2日間で合わせて3時間ほど話せた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談の4日後、Hさんは金曜の午後に介護休暇を取り、そのまま新幹線で地元に向かいました。父は目を開けている時間が短くなっていましたが、土曜と日曜の2日間で、合わせて3時間ほど話ができました。父が長く勤めた工場の話をしたとき、「あのころはよく残業したな」と笑ったそうです。帰る前には、病棟から姉とHさんの両方に連絡をもらう約束を結び、2回目に向かうときの最終の新幹線の時刻と、引き継ぎのメモを職場の同僚と共有しました。「二択だと思って止まっていたけど、2回に分けたら動けた」とHさんは話します。

2. 相談を考えた背景

姉から「看護師さんに、会いに来られるなら早めにって言われた」とメッセージが来たのは、平日の夜でした。Hさんは期限の迫った仕事を抱え、病院までは往復4時間かかります。父とは、正月に会ったきりでした。

3. 相談する前に困っていたこと

夜に「最期 会いに行くべき」と検索すると、「後悔しないよう今すぐ」と書くページもあれば、「まだ大丈夫なこともある」と書くページもありました。今休みを使えば、本当に必要なときに休めなくなる気がして、上司に切り出せません。介護休暇という制度は聞いたことがありましたが、同居して介護している人のためのものだと思い込んでいました。

4. ここを選んだ理由・決め手

姉にもう一度看護師さんに聞いてもらうことも考えましたが、毎日付き添う姉は疲れ切っていて、頼めませんでした。夜中に申し込めるフォームならニックネームでよく、翌日の昼休みに電話をもらえる。そう知って、その夜のうちに送りました。送信してすぐに受付確認のメールが届き、少しだけ眠れたそうです。

5. 相談で話したこと・その後

翌日の電話で、担当はまず、仕事と父のあいだで動けずにいる気持ちを聞きました。そのうえで、病棟に電話で聞く3つの質問、会いに行くことを2回に分ける考え方、上司への一報の文面を、一緒に組み立てました。担当は、父の残りの時間を予測することはせず、行くかどうかを決めるのはHさん自身だという姿勢を崩しませんでした。つまずきもありました。最初に病棟へ電話したとき、「詳しいことはご家族の代表の方に」と言われたのです。Hさんは姉に頼み、姉が説明を聞く日に電話で同席させてもらいました。人事に確かめると、父の状態なら介護休暇の対象になるという答えでした。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 今の父の状態を、週の単位で考えればよいのか、日の単位に近いのか、教えていただけますか。
  • 私は病室に着くまで2時間ほどかかります。会いに行くなら、いつごろがよいとお考えですか。
  • 父が目を開けて話せるのは、一日のうちでどの時間帯が多いですか。
  • 見立てが変わったときは、どの家族の番号に連絡をいただけますか。夜間でもかまいません。
  • 遠方に住む家族も、電話で一緒に説明を聞かせていただくことはできますか。

とはいえ、迷っているあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──「今は行かない」と決めた自分を、責めなくていい

迷った末に「今週は行かない」と決める日もあるでしょう。それは、お父さんを大事に思っていないからではなく、自分の暮らしや家族、仕事への責任も抱えたうえで選んだ答えです。遠くにいる家族は、そばで付き添う家族に申し訳なさを感じ、自分のつらさを口に出しにくくなりがちです。家族は「本人はもっとつらいのだから」と気持ちを我慢しがちで、「第二の患者」ともいわれます(国立がん研究センター がん情報サービス)。お父さんの病院から遠く離れていても、自分の住まいの近くにあるがん相談支援センターを使えます。その病院に通っていない家族も、無料・匿名で相談でき、面談のほか電話でも話せます。

② 実務のこと──近くの家族と遠くの家族で、持ち場を分けておく

近くに住む家族は、面会と病棟とのやりとりで手いっぱいになりがちです。遠くに住む家族は、距離があってもできることを持ち場にすると、互いの負担が釣り合いやすくなります。たとえば、親戚への連絡、制度や手続きの調べもの、お金の見通しの整理、週末に付き添いを代わる日の予定づくり。交通費や滞在の費用をきょうだいでどう分けるかも、話しにくいことほど早めに決めておくと、あとでわだかまりが残りにくくなります。離れた場所からの関わり方は、遠距離でもできる家族の支え方でも紹介しています。

今日できること

会いに行くか迷っている今夜から明日にできる3つのこと

  1. 病棟に聞く一文を書く

    「遠方に住む息子です。会いに行く日を決めたいので、今の見立てを教えてください」と、電話で言う一文をメモしておきます。

  2. 上司への一報を下書きする

    「父の容体が悪く、早めに会いに来るよう言われています。急に休む日が出るかもしれません」と、送る前の文面を用意しておきます。

  3. 帰る手段を2つ調べる

    最終の電車や便の時刻と、夜中に知らせが来たときに使える移動手段を2つ調べて、スマホに保存しておきます。

よくある質問

父が「来なくていい、仕事を優先しろ」と言っています。行かないほうがいいですか?

その言葉には、子どもに無理をさせたくない気持ちが込められていることが多いものです。本心かどうかは、そばにいる家族に「お父さん、本当はどう思っていそう?」と聞いてみると見えてくることがあります。行くと決めたなら、「顔を見に来ただけだから」と短く伝えて、長居をしない面会にする方法もあります。行かないと決めた場合も、電話で声を届けることはできます。

小さな子どもがいて、すぐには家を空けられません。

子どもを連れて行けるかどうかは、病棟の決まりと子どもの年齢によって違うので、先に看護師さんに確かめてください。連れて行けない場合は、パートナーや親族に、いざというときに預けられるかを今のうちに相談しておくと、2回目の知らせが来たときに慌てずにすみます。すぐに動けない期間は、ビデオ通話や声のメッセージで顔と声を届ける方法もあります。

交通費や滞在の費用が気になって、何度も行けそうにありません。

回数が限られるなら、1回目を「話せるうちに会う」ことに集中させ、2回目は知らせを受けてから動く、と割り切る考え方があります。費用をきょうだいで分ける、近くの家族の家に泊めてもらうなど、家族の中で相談できることもあります。お金の見通しを含めて今夜の判断を整理したいときは、がんと家族の相談室でもお話を伺います。

着いたときに、もう話ができなかったらと思うと怖いです。

その可能性は、誰にも打ち消せません。それでも、着いたら名前を名乗って手を握り、「来たよ」と伝えてください。返事がなくても、耳は聞こえている可能性があるといわれています。話せなかったとしても、会いに来たこと、手を握ったことは、あなたとお父さんのあいだに残ります。

夜中に「すぐ来て」と連絡が来たら、自分で運転して向かってもいいですか?

疲れや動揺を抱えたまま夜中に長い距離を運転するのは、危険が大きいものです。タクシーや始発を使う、運転を代われる人に頼む、といった方法を、知らせが来る前に決めておいてください。向かっている途中で、病棟に「今向かっています」と伝え、電話をお父さんの耳元に近づけてもらえないか相談する方法もあります。

夜、ひとりで迷って眠れないときは、誰かに話せますか?

誰かの声を聞きたい夜は、よりそいホットライン(0120-279-338)に24時間・無料でかけられます。がんを専門に扱う窓口ではない点は、知っておいてください。がんと家族の相談室のLINEは無料・匿名で送れ、夜に届いたものは翌朝いちばんに読んで返事をします。行くか迷っている事情を書いておいていただければ、翌日の電話で一緒に整理することもできます。

会いに行くかどうかを、ひとりで決めなくて大丈夫です

お父さん(お母さん)の今の様子、病院までの移動時間、電話に出やすい時間帯をフォームに書いてください。送信の直後に受付確認のメールが届き、ご希望の時間に担当がお電話します。病棟に聞く一言、上司への伝え方、2回に分けた行き方を一緒に整理します。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

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    次の一歩

    いま気になる変化を、そばにいる看護師に伝えてみる

    眠る時間が増える、食べる量が減る、呼吸のリズムが変わる。こうした変化をどう受け止めればよいかは、ご本人のそばにいる医療者に聞くのがいちばん確かです。「この変化は様子を見てよいですか」と尋ねるだけでも、今夜の過ごし方を決めやすくなります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「夜のあいだに家族へ連絡をいただくのは、どんな変化があったときですか。」

    1. 気になった変化を、時刻と一緒にメモしておく
    2. 苦しそうな様子や急な変化があれば、迷わず病棟・訪問看護・主治医に連絡する
    3. 泊まるか、家族を呼ぶかに迷う夜は、ひとりで決めずに誰かと話す

    手元にあると話しやすいもの

    • 気になった変化のメモ(時刻つき)
    • 病棟や訪問看護の、夜間の連絡先

    公的な相談先

    病棟の看護師・訪問看護
    ご本人の体調の変化を、いちばん近くで見ている相談先です。夜間の連絡先も確かめておくと安心です。
    緩和ケアチーム・緩和ケア外来
    痛みや息苦しさ、気持ちのつらさを和らげる専門のチームです。主治医や看護師を通じて相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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