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肝臓がんの最期のサイン|意識の変化や黄疸を家族が見守るには

このテーマの総論:ステージ1〜ステージ4で余命は違う?|がんの生存率の読み方

この記事には、余命や生存率などの数字の話が出てきます。数字は多くの方をまとめた統計で、一人ひとりの予測ではありません。読むのがつらいときは、途中で閉じても大丈夫です。

この記事の結論

肝臓がんの最期が近づくと、黄疸が濃くなる、腹水や足のむくみが増える、うとうとして話がかみ合わなくなる、あざや出血が起きやすくなる、といった変化が見られることがあります。意識の変化には肝性脳症などいくつかの原因があり、見きわめは医療者が行います。家族は見たままを伝え、かゆみやむくみのケアと声かけで支えられます。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」 https:/… ほか6件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

肝臓がんの最期が近い時期には、肌や白目の黄色さが濃くなる、おなかの張りや足のむくみが強くなる、昼間もうとうとして話がかみ合わなくなる、といった変化が見られることがあります。肝臓の働きが大きく落ちると、体の中にたまった物質が脳にも影響し、意識や言動が変わることがあるためです。

その変化が肝臓によるものなのか、最期が近いことによるものなのか、両方なのかは、ご家族には見分けがつきにくいものです。見きわめは医療者が行います。ご家族にできるのは、気づいたことをそのまま伝えること、そして、かゆみやむくみを和らげるケアと、いつもの声での語りかけで、そばにいることです。かゆみにも、むくみにも、落ち着かなさにも、和らげる手段はあります。

この記事では、肝臓がんの終末期に見られやすい変化、話がかみ合わなくなる理由、意識がぼんやりしているときの接し方、苦しんでいないかの見方、黄疸のかゆみとむくみへの関わり方、看護師さんへの聞き方を、順にお伝えします。

黄色くなっていく母のそばで、迷っている方へ

  • 母の肌が黄色くなり、足のむくみも日に日にひどくなっている。
  • 昼間もうとうとしていて、話がかみ合わないことが増えた。
  • これが肝臓のせいなのか、最期が近いのか、看護師さんに聞きたいのに聞けずにいる。

母が肝臓がんの末期で、意識がぼんやりしてきました。肝臓がんの最期にはどんなサインがありますか?

黄疸が濃くなる、腹水や足のむくみが増える、眠る時間が長くなり話がかみ合わなくなる、あざや出血が起きやすくなる、といった変化が見られることがあります。今どの段階なのかは、看護師や医師に「今はどの段階と見ていますか」と聞くのがいちばん確かです。

肝臓は、体に必要なたんぱく質を作り、不要な物質を分解し、血を固める物質を作る臓器です。その働きが大きく落ちると、黄色い色素が処理しきれずに黄疸が濃くなり、血液中のたんぱく質が減って腹水やむくみが増え、血が止まりにくくなってあざや歯ぐきからの出血が起きやすくなります。分解しきれない物質が脳に届くと、うとうとする、昼と夜が逆になる、話がかみ合わない、といった意識や言動の変化も出てきます。

こうした肝臓ならではの変化に、食べる量や尿の量が減る、呼吸のリズムが変わるといった、最期が近い時期に多くの方に共通する変化が重なっていきます。共通する変化の全体像と、それぞれの時期の過ごし方は、最期が近いサインの記事にまとめているので、あわせて読んでみてください。

どの変化が、どの順番で現れるかは人によって違います。変化に気づいたら、それを「何日」に置き換えようとするより、看護師に伝えて、意味を一緒に確かめてもらうほうが確かです。

お母さまの今の様子

  • 肌や白目の色黄色さの濃さ、かゆがっているか
  • 足とおなかむくみの広がり、おなかの張り
  • 眠りと会話昼夜が逆になる、話がかみ合わない
  • 肌や口の中あざ、歯ぐきや鼻からの出血
  • 便と尿便が出ているか、尿の量や色
肝臓がんの終末期に、家族が気づいて伝えられる変化の地図

話がかみ合わないのは、肝臓のせいですか?それとも最期が近いからですか?

どちらのこともあり、両方が重なっていることもあります。肝臓で分解しきれない物質が脳に影響する「肝性脳症」、一時的な意識の混乱である「せん妄」、薬の影響、病状の進行など原因はいくつかあり、見きわめは医療者が行います。

肝性脳症は、肝臓で処理されるはずのアンモニアなどが血液にたまり、脳の働きに影響する状態です。日中に眠く夜に目がさえる、日付や場所が分からなくなる、つじつまの合わないことを言う、といった変化が出ます。両腕を前に伸ばしたときに、手首がぱたぱたと羽ばたくように動くことがあり、医療者はこれも手がかりにします。便秘、脱水、感染、消化管からの出血、一部の薬がきっかけになりやすく、便通を整える薬や腸の中の細菌を減らす薬などで、意識がはっきりする時間が戻ることもあります。

せん妄は、「一時的」に現れる意識障害や認知機能の低下で、少しずつ進む認知症とは違うものです。亡くなる前の時期には、せん妄が起こりやすくなるとされています。肝性脳症も、せん妄のような状態を引き起こす原因の一つになり得るため、どちらなのか、両方なのかを家族が見分ける必要はありません。せん妄については、日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会が『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版』をまとめています。

家族が伝えたいのは、いつから変わったか、一日の中で波があるか、便がいつ出たか、熱はないか、便の色が黒くないか、といった「見たまま」です。原因によっては和らげられる変化なので、「様子が変わったけれど、最期が近いからしかたない」と決めつけずに、まず伝えてください。最期の時期のせん妄全般への接し方は、せん妄と家族の接し方に詳しくまとめています。

意識がぼんやりしている母に、どう接すればいいですか?

間違いを正したり問い詰めたりせず、短い言葉でゆっくり話しかけ、名前を呼んで手に触れてください。反応が少なくても、耳は聞こえている可能性があるといわれているので、いつもの呼び方で、今日のことを話してかまいません。

お母さまが「早く帰ってご飯を作らなきゃ」と言ったとき、「ここは病院だよ」と正すと、かえって不安が強まることがあります。「家のことが気になるんだね。今日はゆっくりしていいよ」と、言葉の奥にある気持ちに返すほうが、落ち着きやすくなります。一度にたくさん話さず、一つずつ、ゆっくり伝えてください。

肝性脳症では昼と夜が逆になりやすいので、昼間はカーテンを開けて光を入れ、夜は照明を落として静かにすると、リズムを保つ助けになります。見慣れた写真やひざ掛けを置く、時計やカレンダーを見えるところに置く、といった工夫もあります。

2020年にカナダの大学がホスピスの患者さんの脳波を調べた研究では、呼びかけへの反応がなくなった状態でも、一部の方の脳が音に反応していました。その状態で記録できたのは5人で、内容まで理解しているかは分かっていません。それでも、聞こえているかもしれないと考えて、いつもの声で話しかけることは、家族にできる大切な関わりです。点滴を触る、ベッドから降りようとするなど危ないときは、押さえつけようとせず、ナースコールで看護師を呼んでください。

様子家族ができること看護師への伝え方の例
昼夜が逆になる昼は光を入れ、夜は照明を落とす「夜に目がさえて、昼はずっと眠っています」
話がかみ合わない正さずに、気持ちに返事をする「昨日から、話のつじつまが合いません」
手がぱたぱたふるえる無理に止めず、様子を見ておく「腕を伸ばすと、手がふるえるように動きます」
落ち着かず動こうとする押さえずに、看護師を呼ぶ「点滴を触ろうとします。来てもらえますか」
呼びかけに反応しにくい名前を呼び、手に触れて話しかける「呼んでも目を開けにくくなりました」
意識や言動が変わったときに、家族ができることと伝え方(原因の見きわめは医療者が行います)

母は、苦しんでいないのでしょうか?

かゆみ、おなかの張り、痛み、落ち着かなさには、それぞれ和らげる手段があります。言葉で伝えにくくなっても、表情やしぐさにつらさのサインが出ることがあるので、気づいたことを看護師に伝えると、手当てが始まります。

意識がぼんやりしてくると、ご本人が「かゆい」「痛い」と言葉で伝えることは難しくなります。そのぶん、眉間のしわ、うめき声、同じ場所をかき続ける、体をよじる、といったしぐさが手がかりになります。反対に、表情がゆるんでいる、呼吸が落ち着いているときは、楽に過ごせているサインのことが多いと考えられています。

痛みに使われる医療用麻薬は、肝臓の働きが落ちていると分解に時間がかかるため、種類や量を肝臓の状態に合わせて調整しながら使われます。医療用麻薬の使用そのものについては、『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』(日本緩和医療学会)が、オピオイドを使うと命が縮むという根拠はない、と述べています。ほかの方法では和らげられない強い苦しさが続くときには、薬で意識を下げて苦痛を感じにくくする「鎮静」を、家族も交えて話し合うこともあります。この方法について日本緩和医療学会がまとめた『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版』では、鎮静によって平均的に命が縮むといった重い影響はないと想定されています。

楽に過ごせているときに見られやすい様子

  • 表情がゆるんでいる
  • 呼吸が落ち着いている
  • 体の力が抜けている

つらさのサインかもしれない様子

  • 眉間にしわを寄せる、顔をしかめる
  • うめき声が出る
  • 同じ場所をかき続ける、体をよじる
  • 落ち着かず、手足を動かし続ける
楽に過ごせているときと、つらさのサインかもしれないときの様子

黄疸のかゆみに、家族ができることはありますか?

肌を清潔に保ち、乾燥させないことが基本です。ぬるめのお湯で絞ったタオルで拭き、すぐに保湿剤を塗る、綿の寝間着にする、爪を短く切る、といったことは家族にもできます。眠れないほどのかゆみには薬もあるので、看護師に伝えてください。

黄疸があると、胆汁の成分が肌にたまり、乾燥も重なって強いかゆみが出ることがあります。夜になるとかゆみが強まり、眠りが浅くなる方もいます。熱いお湯やアルコールを含むふき取り用品は、肌を乾かしてかゆみを強めることがあるので避けてください。

かゆいところを、冷やしたタオルでそっと押さえると和らぐことがあります。かき傷から出血しやすくなっているので、爪は短く整え、眠っている間にかいてしまうときは、やわらかい手袋を使ってよいか看護師に相談してください。保湿剤は、病院で使っているものがあることも多いので、家族が持ち込む前に確かめておくと安心です。

肌の色が変わっていく姿を見るのは、家族にとってもつらいことです。けれど、肌に触れてケアする時間は、お母さまにとっては、家族の手の温かさを感じる時間でもあります。

  • ぬるめのお湯で絞ったタオルで、そっと拭く
  • 拭いたあとは、すぐに保湿剤を塗る
  • 寝間着とシーツは、肌ざわりのやわらかい綿にする
  • 爪を短く整え、かき傷を防ぐ
  • かゆい場所を、冷やしたタオルで押さえる
  • 熱いお湯やアルコールのふき取り用品は使わない
かゆみを和らげるために、そばでできること

足のむくみやおなかの張りには、どう関わればいいですか?

むくんだ皮膚は薄く傷つきやすいので、強くもまずに、そっと触れることが基本です。クッションで足の位置を整える、締めつけない服にする、体の向きを変えるときは看護師と一緒に行う、といった関わり方があります。

肝臓の働きが落ちると、血液中のたんぱく質が減って水分が血管の外へしみ出し、足のむくみや腹水になります。終末期には、入れた水分が体に残りやすく、点滴の量がむくみや腹水に影響することもあります。日本緩和医療学会は、終末期の点滴について『終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版』を出しており、医療者はむくみや腹水の様子を見ながら量を決めています。点滴が減っても、それは見放すことではありません。

むくみが強いと、皮膚がはりつめて、小さな傷から水がしみ出してくることがあります。そうした変化や、皮膚の色の変わり方に気づいたら、看護師に伝えてください。おなかの張りが強く、息がしにくそうなときは、腹水を抜く処置や姿勢の工夫で楽になることもあるので、「張りが苦しそうです」と伝えて相談します。黄疸や腹水が出てきたころの治療や手当ての考え方は、肝臓がんの黄疸・腹水・だるさへの備えにまとめています。

  1. 1看護師に確かめる足を上げてよいか、どこまで触れてよいかを聞く
  2. 2手を温める冷たい手で驚かせないよう、先に手を温めておく
  3. 3声をかけてから触れる「足をさするね」と、触れる前にひとこと伝える
  4. 4包むようになでるもまずに、手のひらで包むようにゆっくりなでる
  5. 5保湿して様子を伝える乾燥を防ぎ、傷や水のしみ出しがあれば看護師へ
むくんだ足に、そっと触れるときの流れ

今どの段階なのか、看護師さんにどう聞けばいいですか?

「母の様子は肝臓の働きによるものですか、最期が近づいている変化ですか」「今はどの段階と見ていますか」と、知りたいことをそのまま言葉にしてかまいません。日にちの断言はできなくても、今の見立てや、夜間に連絡をもらう目安は教えてもらえます。

肝臓がんの場合、一つめの問いには特に意味があります。肝性脳症のように、きっかけを取り除いたり薬を調整したりすると和らぐ変化なのか、病状が進んだことによる自然な変化なのかで、これからの過ごし方が変わるからです。和らぐ可能性があるなら、意識のはっきりする時間に話したいことを準備できます。

聞くときは、記憶だけに頼らず、面会ノートのような記録を見せながら話すと伝わりやすくなります。「月曜から、昼間に眠って夜に起きています」「水曜は私の名前を間違えました」。日付と様子が具体的だと、看護師も医師に伝えやすくなります。答えを一人で聞くのが怖いときは、きょうだいや家族と一緒に聞ける時間を作ってもらえないか、頼んでみてください。

遠くに住む家族を呼ぶか迷うときは、「会わせたい人がいるなら、いつごろがよいですか」と看護師に尋ねてみてください。意識がはっきりしやすい時間帯があるなら、その時間に合わせて会えるよう相談するのも一つの方法です。付き添って泊まるかどうかは、病棟のきまりを確かめたうえで、看病する人が倒れない範囲で決めてください。

話がかみ合わなくなった母のそばで、黙り込んでいた息子は?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・息子の立場(70代の母が肝臓がんの末期で入院中。父は他界し、妹が遠方に住む)
相談のあとに変わったこと
母の言葉がかみ合わない理由を看護師に聞き、肝性脳症の可能性と薬の調整について説明を受けた。否定せずに返事ができるようになり、面会のたびにかゆみのケアを担うようになった。

1. 相談のあとに変わったこと

相談の翌日、男性は看護師に「母の話がかみ合わないのは、肝臓のせいですか」と尋ねました。看護師は、肝性脳症の可能性があること、医師が便通の薬を調整していること、午前中は比較的はっきりしている日があることを話してくれたそうです。男性は看護師と相談して面会を仕事前の朝9時台に移し、保湿剤の塗り方を教わって、毎回10分ほど母の腕と足に塗るようになりました。3日目の朝、母は男性の顔を見て「あんた、来てくれたの」と言いました。その週の日曜、妹が新幹線で駆けつけ、母と3人で写真を撮りました。「母がいなくなったわけじゃなかった」。

2. 相談を考えた背景

母は長くC型肝炎で通院し、肝硬変から肝臓がんになりました。この1か月で黄疸が濃くなり、足のむくみもひどくなって入院。昼間もうとうとすることが増え、会話がかみ合わない日が続いていました。主治医からは「肝臓の働きがかなり落ちています」と説明を受けていました。

3. 相談する前に困っていたこと

母は男性を、亡くなった父の名前で呼びました。「早く帰ってご飯を作らなきゃ」と起き上がろうとするたびに、男性は「ここは病院だよ」と正し、母はかえって落ち着かなくなる。夜は「肝臓がん 末期 意識 何日」と検索しました。看護師に聞けば「もう長くない」と言われる気がして、面会では黙って座っているだけだったといいます。帰りの車の中で、しばらくエンジンをかけられない日もありました。

4. ここを選んだ理由・決め手

看護師に向き合う前に、まず言葉の意味を知りたかった。母の入院先のがん相談支援センターも考えましたが、仕事が終わるのは夜で、窓口の時間には間に合いません。平日の夜7時にこの相談室へ電話をかけると自動音声で受け付けられ、翌朝9時前に担当から折り返しがありました。

5. 相談で話したこと・その後

担当は、肝性脳症とせん妄という言葉が一般にどんな状態を指すかを説明し、どちらなのかの見きわめは医療者が行うことを伝えました。お母さまの状態や残された時間についての判断はしていません。次の面会で看護師に聞く質問を3つに整えて送り、「付き添う人も、つらさを相談していい」と伝えました。男性はその質問を、スマホのメモから読み上げたそうです。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

看護師・医師に聞く質問例

  • 母の意識や言動の変化は、肝性脳症、せん妄、薬の影響、病状の進行のどれが関係していると考えられますか。
  • 意識がはっきりする時間が戻る可能性はありますか。そのためにできる治療や工夫はありますか。
  • かゆみやむくみを和らげるために、家族が手伝えることを教えてください。使ってよい保湿剤はありますか。
  • 母の今の状態を、どの段階と見ていますか。夜中に連絡をもらえるのは、どんな変化があったときですか。
  • あざや出血、便の色など、すぐに知らせたほうがいい変化はどんなものですか。

とはいえ、言葉が通じにくくなっても、つながりは残ります

① 気持ちのこと──「母が母でなくなった」と感じる寂しさに

名前を間違えられる、昔の話を今のことのように話す。そんなとき、お母さまが遠くへ行ってしまったように感じて、寂しさがこみ上げるかもしれません。けれど「ご飯を作らなきゃ」という言葉の奥には、家族を思う気持ちがそのまま残っています。言葉の中身ではなく、そこにある気持ちを受け取ってください。看病する家族は、自分のつらさを後回しにしがちです。がん情報サービスも、気持ちを我慢しながら日常を保たなければならない家族について、「ご家族は、『第二の患者』ともいわれます」と記しています。全国のがん相談支援センターは、家族も無料・匿名で利用でき、相談した内容が、相談した人の同意なく担当医などに伝わることはありません。

② 実務のこと──お母さまの意思を、家族で推し量る準備をしておく

意識がはっきりしない時間が増えると、治療やケアをどうするか、医療者から家族が相談される場面が出てきます。もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアチームと話し合っておく取り組みは「人生会議」と呼ばれ、国の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)も、本人による意思決定を基本としています。お母さまが以前に話していたこと、大事にしていた暮らし方を、きょうだいで書き出しておくと、「母ならどう言うだろう」を軸に話し合いやすくなります。意識がはっきりする時間があれば、そのときに一つだけ、気持ちを聞いておくのもよい方法です。

今日できること

次の面会までに、ご家族ができる3つのこと

  1. 面会ノートを作る

    お母さまの眠っていた時間、会話の様子、かゆみ、便の有無を、家族で書き足すノートを1冊用意する。看護師に伝えるときの材料になります。

  2. 保湿剤を確かめる

    使ってよい保湿剤と塗るタイミングを次の面会で看護師に聞き、面会のバッグに入れておく。

  3. 聞く質問を1枚に書く

    上の質問例から3つ選んで紙に書き、ナースステーションで「あとで相談したい」と渡せるようにしておく。

よくある質問

母が、亡くなった父がそこにいると言います。肝臓のせいでしょうか?

肝性脳症やせん妄、最期が近い時期の変化として、いないはずの人が見えると話す方はめずらしくありません。原因の見きわめは医療者に任せ、家族は「お父さんが来てくれたんだね」と否定せずに受け止めてかまいません。お母さまが怖がったり、落ち着かなくなったりしているときは、看護師に伝えてください。

便を出す薬が増えて、下痢のようになっています。止めたほうがいいですか?

肝性脳症を防いだり和らげたりするために、便通を整える薬を使って、便がしっかり出る状態を保つことがあります。自己判断で止めず、便の回数や、おしりの皮膚の赤みなど、気づいたことを看護師に伝えてください。量の調整や、皮膚を守るケアを考えてもらえます。

鼻血や歯ぐきの出血が止まりにくいです。

肝臓の働きが落ちると、血を固める物質が作られにくくなり、出血が止まりにくくなります。鼻血はやわらかいガーゼで小鼻を押さえ、口のケアはやわらかいスポンジでそっと行ってください。血を吐いた、黒い便が出たときは、すぐに看護師へ。自宅で過ごしている場合は訪問看護や在宅医へ連絡し、命に関わると感じて連絡がつかないときは119番です。

息に、甘いような独特のにおいがあります。

肝臓の働きが大きく落ちると、息に独特のにおいが出ることがあり、肝性口臭と呼ばれます。口のケアで少し和らぐこともありますが、においの原因は体の中にあるため、完全には消えないことがあります。気になるときは看護師に伝え、ケアの方法を相談してください。お母さまのそばにいることを、においのせいでためらう必要はありません。

黄疸の色が、日ごとに濃くなっていきます。止める方法はありますか?

胆汁の通り道がふさがれているための黄疸なら、処置で軽くなることもありますが、終末期に肝臓の働きそのものが落ちて起きる黄疸は、元に戻すのが難しいことが多いです。その場合は、色を薄くすることより、かゆみや肌の乾燥を和らげて、心地よく過ごせることを目標にします。色の濃さが、そのまま本人の苦しさを表すわけではありません。気になる変化は、日付とあわせて看護師に伝えてください。

付き添っている自分が、もう限界です。

限界だと感じるのは、それだけ力を尽くしてきたからです。付き添いを交代してもらう日を作り、病棟にも「今日は帰って休みます」と伝えてかまいません。がん相談支援センターでは家族自身のつらさも相談でき、がんと家族の相談室では、評価も助言もしない20分の電話で、ただ話を聞くこともできます。

お母さまの変化の意味と、聞き方を一緒に整理します

面会で気づいたお母さまの変化を、箇条書きのままでもいいので送ってください。お名前はニックネームで十分です。送った直後に受付確認のメールが届き、ご希望の時間帯に担当からお電話します。気づいた変化を一緒に言葉にし直し、看護師さんに伝える順番と、聞く質問を整えます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

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    次の一歩

    がんの種類ごとの数字は、主治医と一緒に読む

    がんの種類ごとの生存率などの数字は、多くの方をまとめた統計です。同じ種類でも、進み方や治療の効き方は一人ひとり違います。数字を見て不安になったら、その数字が今のご本人にどう当てはまるのかを、主治医に尋ねてみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「調べた数字が、本人の場合にどう当てはまるのか教えてください。」

    1. 読んだ数字の出どころ(いつの、どのような方々の統計か)を確かめる
    2. 気になった数字はメモして、診察のときに見せる
    3. 調べものには、出典のはっきりした公的な情報を使う

    手元にあると話しやすいもの

    • 読んだ数字の出典(サイト名と日付)
    • 質問メモ

    公的な相談先

    がん情報サービス(国立がん研究センター)
    出典のはっきりしたがんの情報と、お近くのがん相談支援センターの探し方がまとまっています。
    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

    このテーマの記事をもっと読む(がんの種類ごとの本音)

    参考・出典

    • 国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」 https://ganjoho.jp/public/support/family/fam/index.html
    • 日本緩和医療学会 編『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版』『終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版』『進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン 2023年版』(金原出版) https://www.jspm.ne.jp/publication/guidelines/index.html
    • 日本サイコオンコロジー学会・日本がんサポーティブケア学会 編『遺族ケアガイドライン 2022年版』金原出版;同 編『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版』金原出版 https://jpos-society.org/guideline/family-care/
    • 国立がん研究センター「がんを学ぼう 教えて!ドクター:心身のメンテナンスに取り組む『精神腫瘍科』」(2022年1月時点) https://www.ncc.go.jp/jp/information/column/manabou_doctor/035/index.html
    • Blundon EG, et al. Electrophysiological evidence of preserved hearing at the end of life. Scientific Reports. 2020. doi:10.1038/s41598-020-67234-9 https://psych.ubc.ca/?p=25979
    • 国立がん研究センター がん情報サービス「『がん相談支援センター』とは」/同「相談支援センターを探す」 https://ganjoho.jp/public/institution/consultation/cisc/cisc.html
    • 厚生労働省「『人生会議』してみませんか」/厚生労働省「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を『人生会議』に決定しました」/厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html
    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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