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「ありがとう」が照れくさいとき|がんの家族に伝える5つの方法

このテーマの総論:がんの家族と後悔しないために|今できる5つのことと時期別の表

この記事の結論

面と向かって改まって言う形にこだわらなくて大丈夫です。日常の中で、具体的な出来事を添えて、手紙で、誰かを通して、行動で。自分の照れくささの正体に合う方法を1つ選べば、今日のうちに試せます。涙が出たら、ひとことに縮めるか、続きを手紙に回せば十分です。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:Blundon EG, et al. Electrophysiological… ほか5件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

「ありがとう」が照れくさくて言えないなら、面と向かって、改まって、目を見て言う、という形をいったん手放してみてください。日常の小さなことに添える、思い出話の結びに置く、手紙に預ける、誰かを通して届ける、行動で返す。言葉の届け方は一つではなく、照れくささの強い人ほど、遠回りの道のほうがかえってまっすぐ届くことがあります。

どの方法が合うかは、家族の歴史や、照れくささがどこから来ているかによって一人ひとり違います。この記事では、照れくささの正体の見分け方と、それに合う5つの伝え方、言いながら涙が出てしまったときの続け方、そして本人が照れたり話をそらしたりしたときの受け止め方を紹介します。感謝のほかに伝えたい言葉全体の整理は最期に伝える5つの言葉に、親子それぞれの立場から選ぶ言葉の例は親に・子どもに伝える言葉にまとめています。

「ありがとう」の一言が、喉の手前で止まってしまう方へ

  • 「ありがとう」の一言が、こんなに言いにくいとは思わなかった。
  • 言おうとすると涙が出そうになって、結局いつもの会話で帰ってきてしまう。
  • 言えないまま終わってしまうのだけは、どうしても嫌だ。

がんの家族に『ありがとう』を伝えたいのですが、照れくさくて言えません。どう伝えればいいですか?

面と向かって改まって言う形にこだわらなくて大丈夫です。日常の中で、具体的な出来事を添えて、手紙で、誰かを通して、行動で。5つの中から、自分の照れくささの正体に合う方法を1つ選べば、今日のうちに試せます。

照れくさいのは、気持ちが小さいからではありません。むしろ、言いたいことが大きすぎて、一言の器に入りきらないからです。「ありがとう」には、何十年分の送り迎えや、叱られた日や、黙って見守ってもらった時間が詰まっています。それを一度で、しかも目を見て渡そうとすれば、照れて当然です。

だから、一度で全部を渡そうとしなくてかまいません。5つの伝え方は、どれか一つを選んでも、いくつかを組み合わせてもいいものです。今日は日常の中で小さく、来週は手紙で少し大きく。何回かに分けて渡したありがとうは、合わせれば、言いたかった大きさに近づいていきます。

照れくさい「ありがとう」

  • 日常の中で今日の小さなことに「ありがとう」を添えて、口をならしていく
  • 具体的な出来事を添えて「覚えてる?」から始めて、思い出話の結びに置く
  • 手紙で目の前で読まれない渡し方を選び、短く書く
  • 誰かを通して本人に聞こえるところで、ほかの人に感謝を話す
  • 行動でしてもらってきたことを、今度はこちらがしてみる
照れくさい「ありがとう」を届ける5つの道

なぜ「ありがとう」は、家族にほど言いにくいのですか?

家族の間には、ありがとうを言わずに済ませてきた長い習慣があるうえ、今言うと別れの言葉に聞こえそうで、泣いてしまいそうだからです。照れくささの正体は人によって違うので、どれが自分に近いかが分かると、合う伝え方を選べます。

他人には自然に言えるありがとうが、家族には言えない。それは、家族の間では「言わなくても分かっている」で回ってきた時間が長いからです。食事を作ってもらうのも、送り迎えも、当たり前のこととして過ぎてきた。今さら言葉にすると、その当たり前を急にひっくり返すようで、落ち着かなくなります。

そこに、病気が重なります。「今ありがとうと言ったら、もう長くないと思っているように聞こえないか」「言いかけたら泣いてしまわないか」。照れくささの中には、こうした不安も混ざっています。どの気持ちがいちばん強いかによって、向いている伝え方が変わります。

照れくささの正体起きやすいこと合いやすい伝え方
目を合わせるのが恥ずかしい言葉が出る前に、顔をそらしてしまう行動で、または手を動かしながら言う
改まった空気が苦手切り出すきっかけがつかめない日常の小さなことに添える
泣いてしまいそう言いかけて、のどが詰まる手紙に預ける、短いひとことに縮める
家族で言い慣れていない口にすると、自分でも違和感がある具体的な出来事を添える、誰かを通して
別れの言葉に聞こえそう本人の反応が怖くて、言えずに帰る日常の中で何度も、小さく言う
照れくささの正体と、合いやすい伝え方

① 日常の中で伝えるには、どうすればいいですか?

大きな感謝の前に、今日の小さなことに「ありがとう」と言う練習から始めます。お茶を飲んでくれた、待っていてくれた、話を聞いてくれた。小さなありがとうが口になじんでくると、言いたかった大きなありがとうも、その流れに乗せやすくなります。

言い慣れない言葉は、いきなり大きな場面で使おうとすると、のどの手前で止まります。そこで、まずは毎日の小さな場面で言葉を使って、口をならしていきます。湯のみを受け取ってくれたら「ありがとう」。面会に行って、本人が起きて待っていてくれたら「待っててくれて、ありがとね」。薬を飲み終えたら「ありがとう、助かる」。看病される側の本人に向けて言うのは不思議に感じるかもしれませんが、こうした小さなありがとうは、本人にとっても「まだ家族の役に立っている」という手ごたえになります。

数日続けると、ありがとうという言葉が、自分の口にとって特別なものでなくなっていきます。そのころに、ふと昔の話が出たら、「あのときも、ありがとね」と一言足してみる。日常のありがとうの延長に置かれた言葉は、別れの言葉には聞こえにくくなります。

② 具体的な出来事を添えるとき、どう言えばいいですか?

「覚えてる?」と思い出の質問から入り、そのとき自分がどう助かったか、うれしかったかを話します。感謝を宣言するより、思い出話の結びに「あれ、うれしかったんだよ」と置くほうが、照れずに言えます。

「育ててくれてありがとう」は、言うほうも聞くほうも身構える言葉です。そこで、言葉の主語を本人から自分に移します。「あなたはこうしてくれた」と評価するのではなく、「あのとき、自分はこう感じた」と話す。思い出を質問の形で差し出すと、本人も答える側に回れるので、一方的な告白になりません。

  • 「覚えてる? 高校の雨の朝、毎日駅まで車で送ってくれたの。あれ、本当に助かってたんだ」
  • 「小さいころ熱を出すと、りんごをすってくれたよね。今でも、りんごを見ると思い出すよ」
  • 「就職が決まらなかった年、何も言わずに見ててくれたでしょ。あれがありがたかった」

ありがとうという言葉が入っていなくても、「助かってた」「ありがたかった」「思い出すよ」で、気持ちはそのまま届きます。本人が「そんなこともあったな」と話を続けてくれたら、そのまま思い出話を楽しんでください。

③ 手紙で伝えるとき、照れずに渡すこつはありますか?

目の前で読まれない渡し方を選ぶことです。帰りぎわに「あとで読んで」と置いていく、本や着替えの袋にはさむ、郵便で届ける。はがきや一筆箋くらいの短さで十分で、書き出しの一行を決めておくと、手が止まりません。

手紙のいちばんの照れくささは、書くときより、相手が読んでいる場面に立ち会うことにあります。目の前で封を開けられると、どんな顔をしていればいいのか分からなくなる。だから、渡し方で照れくささを減らします。面会の帰りに、着替えの袋に一筆箋を一枚入れておく。本人がよく読んでいる本の間にはさんでおく。家から郵便で送れば、病室や家に「はがきが届く」という小さな楽しみも一緒に届けられます。

書くことが見つからないときは、書き出しを決めてしまいます。「この前、〇〇を見て思い出したんだけど」。そのあとに、②のような思い出を一つ書き、「ありがとう」で終える。長さは数行で足ります。字の上手下手は関係ありません。本人にとっては、家族の字で書かれていること自体が、ありがたいものです。返事は求めないでください。読んだかどうかも聞かなくてかまいません。

④ 誰かを通して伝えるとは、どういうことですか?

本人に聞こえるところで、看護師や親戚など、ほかの人に感謝を話す方法です。家族の寄せ書きに一行加える、きょうだいに言付けを頼むこともできます。直接向き合わずに済むぶん照れくささが小さくなり、本人も照れながら受け取れます。

人は、自分に向けて言われた言葉より、自分のことを誰かに話しているのを耳にしたときのほうが、素直に受け取れることがあります。看護師が体を拭いてくれているときに、「この人、昔から我慢強くて。私たち、ずいぶん助けられたんです」と話す。見舞いに来た親戚に、「お父さんのおかげで、うちはなんとかやってこられたんだよね」と言う。本人は聞こえないふりをしながら、ちゃんと聞いていることもあります。

家族で寄せ書きのカードを作るのも、照れくさい人に向いた方法です。一人で一枚の手紙を書くのは重くても、家族の何行かの中の一行なら書けます。きょうだいに「ありがとうって言ってたって、伝えといて」と頼むのも、立派な伝え方です。言付けを受けたきょうだいが、自分のありがとうも足してくれるかもしれません。

⑤ 行動で伝えるには、何をすればいいですか?

これまで本人にしてもらってきたことを、今度はこちらがしてみることです。作ってもらった料理を作る、髪をとかす、ひげをそる。言葉が出なくても、お返しの行動は「覚えているよ」「ありがとう」を運びます。言えそうなら、ひとことだけ添えて。

親が子にしてきたこと、夫婦が互いにしてきたことには、それぞれの家族の形があります。毎朝のお弁当、散髪、靴磨き、夜道の迎え。その中の一つを、今度はこちらから返してみる。子どものころに作ってもらった卵焼きを、同じ味つけで作って持っていく。本人が昔してくれたように、ていねいに髪をとかす。お返しの行動には、「あのときのこと、覚えているよ」という気持ちが自然に込もります。

手を動かしている間は、目を合わせなくていいので、言葉も出やすくなります。ひげをそりながら、髪をとかしながら、ぽつりと「昔、よくこうしてもらったよね。ありがとね」。言えなければ、それでもかまいません。体に触れるお世話は、やり方や気をつけることを看護師に教わってからにしてください。

本人にしてもらってきたこと

  • 毎朝のお弁当、季節ごとの好物
  • 熱を出した夜の看病
  • 進路や仕事で迷った日の、黙って見守る時間

今、こちらから返せること

  • 同じ味つけの卵焼きを作って持っていく
  • 面会のたびに、手をそっと温める
  • 本人が話したいときに、黙って最後まで聞く
してもらってきたことと、今こちらから返せること

言おうとして涙が出てしまったら、どう続ければいいですか?

涙を止めてから言い直さなくて大丈夫です。「泣けてきちゃった」と今の状態をそのまま口にし、言葉を「ありがとう」のひとことに縮めるか、続きを手紙に回せば足ります。涙も、言葉と同じ気持ちを運んでいます。

言いかけて涙があふれると、「泣いてしまった、失敗した」と感じるかもしれません。けれど、本人の側から見れば、家族が自分のことで泣いているのは、言葉以上にはっきりした気持ちの表れです。泣くのをこらえようとして黙り込むより、泣いていることを言葉にしてしまうほうが、その場の空気はずっと楽になります。

まだ一緒にいるのに、もう失ったあとのような悲しみが先に来ることがあります。この悲しみは「予期悲嘆」と呼ばれる、喪失が現実となる以前に起こる悲嘆です。ありがとうを言おうとして涙が出るのは、そうした悲しみがあふれてくるからでもあり、おかしなことではありません。本人もつられて泣いたら、一緒に泣いてかまいません。

  1. 1今の状態を言う「ごめん、泣けてきちゃった」と、そのまま口にする
  2. 2ひと呼吸おく手を握る、窓の外を見るなどして、少し間をとる
  3. 3ひとことに縮める用意していた言葉は手放し、「ありがとう」だけを言う
  4. 4続きを預ける言えなかった分は「続きは手紙に書くね」と先に約束する
  5. 5いつもの話に戻る天気や家族の話に戻り、いつもの帰り方で帰る
言いかけて涙が出たときの続け方

本人が照れたり、話をそらしたりしたら、どう受け止めればいいですか?

照れ笑い、「何を急に」、話題を変える。こうした反応は、拒まれたしるしとは限らず、本人も照れているのかもしれません。返事を求めず、そのまま流してかまいません。言えた時点で、ありがとうはもう渡っています。

ありがとうを言われた本人も、家族と同じように、言われ慣れていないことがあります。照れて「よせよ」と笑う、「急にどうした」と茶化す、聞こえなかったふりをしてテレビの音量を上げる。言った側は「届かなかった」と落ち込みがちですが、届いたからこそ照れている、ということもあります。

本人の反応が気になったときは、次の分かれ道を手がかりにしてください。大事なのは、本人に「受け取った」という返事を求めないことです。数日たってから、本人のほうから「この前のあれな」と話を戻してくることもあります。

  1. Q1本人は笑ったり、冗談で返したりしましたか

    はい一緒に笑って、いつもの話に戻る。それで十分に届いている

    いいえ次の問いへ

  2. Q2「縁起でもない」など、嫌がる言葉が返ってきましたか

    はい「そうだね、ふと思っただけ」と引き、しばらくは日常の小さなありがとうだけにする

    いいえ次の問いへ

  3. Q3本人が黙ってしまいましたか

    はい言葉を足さず、手に触れるなどして隣に座っている

    いいえ返事を急がず、次に会う日を楽しみに待つ

本人の反応に戸惑ったときの分かれ道

言葉の少ない父に、娘はどうやって「ありがとう」を渡した?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・娘の立場(70代の父が緩和ケア病棟に入院中。職人として働いてきた父は口数が少なく、家族でありがとうを言い合う習慣はなかった)
相談のあとに変わったこと
面と向かっては言えなかった「ありがとう」を、看護師への話、郵便のはがき、ひげそりの時間の3つに分けて届けられた。3週目、ひげをそりながら一度だけ、直接「ありがとね」と言えた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から3週間で、娘は「ありがとう」を3つの形で届けました。1つめは、看護師が父の体を拭いているときに「父は毎朝、私の自転車のチェーンを直してくれたんです」と話したこと。2つめは、家から郵便で出した2枚のはがき。3つめが、看護師に教わって始めた、週2回の電気かみそりでのひげそりです。3週目のある日、ひげをそりながら「昔、髪を切ってもらったよね。ありがとね」と言うと、父は目を閉じたまま、小さくうなずいたそうです。はがきは2枚とも、父の枕元の棚に立てて置いてあります。「言えたのは、顔を見なくてよかったから」と話しています。

2. 相談を考えた背景

父が緩和ケア病棟に移ったころ、母から「お父さんに、ちゃんとお礼を言っておきなさいよ」と言われました。父には、高校まで毎朝自転車を直してもらい、髪も中学まで父に切ってもらっていました。言うべきことは山ほどあるのに、家族で「ありがとう」を言い合った記憶が、ほとんどなかったといいます。

3. 相談する前に困っていたこと

面会のたびに言おうと決めて病室に入り、天気と食事の話をして帰ってくる日が、2週間続きました。夜に「親 ありがとう 言えない」と検索すると、感動的な手紙の例ばかりが出てきて、自分にはとても書けないと感じたそうです。一度だけ言いかけたときは、のどが詰まって、「また来るね」でごまかしました。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院の相談窓口に話すほどのことではない気がしていたものの、誰かに聞いてほしい気持ちはありました。夜中に相談室のLINEへ「父にありがとうが言えません」とだけ送ると、翌朝いちばんに返事が届きました。名前はニックネームでいいと知り、そのままフォームから、仕事の昼休みに電話をもらう約束をしました。

5. 相談で話したこと・その後

電話では、担当がまず20分ほど、何も助言せずに父の話を聞きました。自転車のチェーンの話、散髪の話。話しているうちに、娘自身が「顔を見ると言えない」と気づいたといいます。担当はそこで、目を合わせずに済む伝え方をいくつか一緒に挙げました。父の病状の見通しについて、担当は何も判断していません。最初に試した看護師への話のあと、父が「余計なこと言うな」とつぶやき、娘は落ち込んでLINEを送りました。翌朝の返事を読んで、その言葉が照れ隠しだったのかもしれないと思い直し、2枚目のはがきを書いたそうです。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • ひげそりや髪をとかすなど、家族ができる身の回りのお世話はありますか。やり方を教えていただけますか。
  • 本人の調子がよく、話を聞いてもらいやすいのは、一日のうちでいつごろですか。
  • 手紙やはがきを、枕元に置いておいてもかまいませんか。
  • 話しかけても反応が少ない日も、声をかけたり手に触れたりしてかまいませんか。

とはいえ、言えずにいるご家族に伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──言えない日にも、ありがとうはもう届き始めています

面会に通うこと、好物を持っていくこと、黙って隣に座っていること。言葉にできない日も、あなたがしていることの中には、すでにありがとうが含まれています。言葉は、それに名前をつけて渡す最後のひと手間にすぎません。ひと手間が今日できなくても、明日でも、手紙でも、行動でもかまいません。支える側の家族は、本人を気づかうあまり自分の気持ちを後回しにしがちで、国立がん研究センターのがん情報サービスでは、ご家族は「第二の患者」ともいわれると紹介されています。言えない苦しさも、家族のつらさの一つとして、誰かに話していいのです。

② 実務のこと──家族のありがとうは、一度に集めず、ばらばらに渡す

家族の何人もが同じ週に急に改まってありがとうを言い始めると、本人は「何かあったのか」と不安になることがあります。家族の中で、誰がいつ言うかを決める必要はありませんが、一度にそろって改まらないことだけは、ゆるく共有しておくと安心です。それぞれが、自分の照れくささに合う方法で、ばらばらに、小さく渡す。そのほうが、本人の毎日の中に、ありがとうが自然に散らばります。遠方に住む家族は、はがきや電話が向いています。言えない気持ちを誰かに話したいときは、がん相談支援センターで、家族だけでも、その病院に通っていなくても、無料・匿名で相談できます。

今日できること

今夜から明日にかけて、最初のありがとうを試す3つ

  1. 小さなありがとうを1つ言う

    次に会ったとき、待っていてくれた、お茶を飲んでくれたなど、目の前の小さなことに「ありがとう」を言う。

  2. 「覚えてる?」を1つメモする

    本人にしてもらってうれしかった出来事を1つ選び、「覚えてる?」から始まる一文をスマホに書いておく。

  3. 自分に合う方法を1つ選ぶ

    照れくささの正体の表を見て、5つの伝え方のうち、次の面会で試すものを1つだけ決める。

よくある質問

急に「ありがとう」と言い出したら、病状が悪いのかと本人が不安になりませんか?

その心配があるなら、大きなありがとうから始めず、日常の小さなことに添えるありがとうを何日か続けてみてください。毎日の言葉になっていれば、特別な意味を探されにくくなります。昔の話のついでに言うときは、「ふと思い出したから」と添えるだけでも、別れの言葉ではなく思い出話として受け取られやすくなります。

照れくさくて、手紙を書こうとしても一行も書けません。

手紙は、名前と「ありがとう」の一言だけでも十分です。それも難しければ、手紙は後回しにして、行動で返す方法を選んでもかまいません。好物を持っていく、髪をとかす、本人が昔してくれたことを一つ返す。言葉にならない気持ちは、行動のほうが運びやすい人もいます。

夫や妻に言うのが、親に言うより照れくさく感じます。

毎日顔を合わせてきた相手ほど、改まった言葉は照れくさいものです。夫婦なら、二人だけが知っている呼び方や、出かけた先の思い出を使うと、ありがとうを照れずに言いやすくなります。「あの旅行、楽しかったな」「一緒になってよかったよ」。ありがとうという言葉が入っていなくても、気持ちは伝わります。夫や妻に伝えたい言葉とそばでできることは、夫・妻のがんの最期に伝えたい言葉でも紹介しています。

本人が眠っている時間が長く、言うタイミングがありません。

目を覚ましたときに、短く言えば十分です。眠っているときに、手に触れながら小さな声で言うこともできます。カナダの大学の研究(2020年)では、ホスピスの患者さんの脳波を調べ、呼びかけに反応がない状態でも一部の人の脳が音に反応していたと報告されています(反応がない状態で記録できたのは5人で、内容を理解しているかまでは分かりません)。耳は聞こえている可能性があるといわれているので、いつもの声で話しかけてかまいません。

言えないまま、その日が来てしまったらと思うと怖いです。

そう思えるのは、それだけ伝えたい気持ちが大きいからです。言葉にできなかったとしても、通い続けたことや、そばにいた時間は、本人との間に確かに残ります。もし言えないまま別れの時が来ても、そばで声にしたり、手紙を書いて添えたりすることはできます。あとで苦しさが続くときに頼れる場所として、がんで大切な人を亡くした家族のための外来(国立がん研究センター中央病院の遺族ケア外来など)もあります。

夜中に、言えなかったことばかり考えて眠れません。

夜は、言えなかったことが大きく見えやすい時間です。言いたかった言葉を、相談室のLINEに書いて送ってみてください。名前を出さずに送れて、夜に届いたものは翌朝いちばんに読んで返事をします。文字にしてみると、本人の前で使える短い言葉が見つかることもあります。声を聞きながら話したい夜には、24時間・無料で受け付けているよりそいホットライン(0120-279-338。がん専門の窓口ではありません)もあります。沈んだ気持ちが晴れない日が重なるときは、電話をかけた場所の都道府県などの公的な相談窓口につながる、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556。受付時間は地域で異なり、通話料がかかります)も使えます。

言えずにいる「ありがとう」を、言える形にしませんか

本人に伝えたい出来事をひとことと、電話に出やすい時間帯をお書きください。お送りいただくと受付確認のメールがその場で届き、ご希望の時間帯に担当からお電話します。照れくささの正体をうかがいながら、5つのうちどの伝え方が合いそうかを一緒に選び、最初のひとことまで決めます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    全部をしようとせず、今週の3つに絞る

    ご家族の役割は「そばにいる」「情報を一緒に整理する」「生活を支える」「自分を守る」の4つに分けると、見通しがよくなります。全部を完璧にする必要はありません。今週できることを3つだけ選んでみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「家族として、今いちばん手伝えることは何でしょうか。」

    1. きょうだいや親族で役割を分けて、ひとりに負担を集めない
    2. 診察には、聞きたいことを3つ書いたメモを持っていく
    3. 仕事やお金の手続きは、がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーに相談する

    手元にあると話しやすいもの

    • 家族の役割分担のメモ
    • 次の診察の日時と、付き添える人

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    医療ソーシャルワーカー(病院の相談室など)
    医療費や制度、退院後の暮らし、在宅療養の準備を一緒に考える専門職です。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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