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最期に伝えること|感謝・許し・愛情など、がんの家族への5つの言葉

このテーマの総論:がんの最期ってどんな感じ?|意識や聞こえ方、多くの方の経過

この記事の結論

伝えたい言葉は、思ったその日に、いつもの会話の中で短く伝えるのがいちばん重くなりません。感謝・謝罪・許し・愛情・さようならの5つに分けると言葉が見つけやすく、面と向かって言えないときは手紙や録音でも届けられます。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:Blundon EG, et al. Electrophysiological… ほか5件 参考・出典を見る

最期に伝えたい言葉は、「最後の日」のために取っておくより、思い立った今日、いつもの会話の中で短く伝えるほうが、相手にも自分にも重くなりません。言葉が見つからないときは、感謝・謝罪・許し・愛情・さようならの5つの引き出しから、今の気持ちに近いものを1つ選ぶところから始められます。

残された時間がどのくらいかは、医師の見立てでも目安にとどまり、一人ひとり大きく違います。だからこそ、「いつか言おう」を「今日ひとこと」に変えておくと、どの日が来ても、言えなかった悔いが小さくなります。

この記事では、5つの引き出しごとの言葉の例、「もう最期だと思っている」と受け取られにくい言い方、謝りたいこと・許したいことの切り出し方、反応が薄れてからの伝え方、手紙や録音で渡す方法を順に紹介します。

伝えたい言葉があるのに、こんな思いで止まっている方へ

  • 「ありがとう」と言ったら、もう最期だと思っているように聞こえそうで言えない。
  • でも、言わないまま終わってしまうのは、もっと怖い。
  • いつ、どんな言葉で伝えればいいのか、まったく分からない。

がんの家族に最後に伝えたい言葉があります。どう伝えればいいですか?いつ言えばいいですか?

いつ言うかの答えは「言いたいと思った日」です。改まった場をつくるより、いつもの会話の中で、短く、何度でも伝えるほうが重くなりません。早すぎる、ということはありません。

「最後に」と思うと、言葉はどんどん大きくなります。立派なことを言わなければ、泣かずに言わなければ、と構えるほど、口が重くなっていく。けれど、本人に届くのは言葉の立派さではなく、「あなたが大事だ」という気持ちのほうです。

早めをすすめる理由もあります。国立がん研究センターの解説によると、病状が進んだ時期や看取りの時期には、せん妄(一時的な意識の混乱)が起こりやすくなるとされています。会話がかみ合いにくくなる日が来る前に、言葉のやりとりができる今のうちに、ひとことでも渡しておく。一度言えたことは、何度言い直してもかまいません。

  1. 1きっかけを日常に置く食事、写真、季節の話など、いつもの場面に乗せる
  2. 2短く言うひとことか、ふたことで終える
  3. 3具体的な場面を添える「あの雪の日の送り迎え」のように、思い出をひとつ
  4. 4返事を求めない照れ笑いや沈黙も、ひとつの受け取り方
  5. 5日を変えてまた言う同じ言葉を、何度くり返してもいい
重くならずに気持ちを渡すための流れ

伝えたいことは、どんな言葉に整理できますか?

「感謝」「謝罪」「許し」「愛情」「さようなら」の5つの引き出しに分けて考えると、言葉が見つけやすくなります。全部を言う必要はなく、今の自分に近い引き出しを1つ選べば十分です。

胸の中にある言葉を、このどれに近いかで仕分けてみると、言いたいことの輪郭が見えてきます。5つを順番に言う決まりはありません。ひとつの引き出しだけで終わってもいいし、日によって開ける引き出しが変わってもかまいません。

引き出し短い言い方の例添えると伝わりやすいこと
感謝「あのとき、ありがとう」送り迎えや看病など、具体的な場面
謝罪「あのときは、ごめん」言い訳を足さず、ひとことで終える
許し「もう気にしていないよ」無理に許さなくていい。言える分だけ
愛情「一緒にいられてよかった」照れるなら、手を握りながら
さようなら「またね」「いつかまた会おうね」言えなければ、言わなくていい
5つの引き出しと、短い言い方の例

いちばん開けやすいのは、たいてい「感謝」です。「育ててくれてありがとう」のような大きな言葉より、「受験の朝、駅まで送ってくれてありがとう」のような小さな場面のほうが、照れずに言えて、本人の記憶にも結びつきます。

「愛情」は、言い慣れていない家族ほど難しい引き出しです。「大好き」が言えなければ、「あなたが家族でよかった」「一緒にいられてよかった」でも同じものが渡せます。言葉の代わりに、手を握る、背中をさする、という渡し方もあります。

「さようなら」は、言わない選択もあります。別れの言葉を口にすると崩れてしまいそうなら、「おやすみ」「また明日ね」を毎日続けることも、ひとつのお別れの形です。ご本人の方がこの記事を読んでいるなら、家族に渡したい言葉も、同じ5つで整理できます。

「もう最期だと思っている」と伝わらない言い方はありますか?

「最後だから」と前置きせず、日常のきっかけに乗せて、具体的な思い出と一緒に短く言うことです。「今日ふと思い出して」と添えると、別れの言葉ではなく、今日の言葉として届きます。

重く聞こえるのは、言葉そのものより、改まった空気や前置きのほうです。病室に入るなり姿勢を正して「話があるんだけど」と切り出すと、本人も身構えます。手を動かしながら、何かのついでに言う言葉のほうが、軽く、まっすぐ届きます。

  • 食事の配膳を手伝いながら:「この味、昔から好きだったな。ありがとう」
  • 古い写真を一緒に見ながら:「この旅行、連れて行ってくれてありがとうね」
  • 帰りぎわ、上着を着ながら:「今日も会えてよかった。また明日ね」
  • テレビの話のついでに:「お父さんのそういうところ、ずっと好きだったよ」

本人に「なんだか遺言みたいだね」と言われたら、「違うよ、言いたくなっただけ」と笑って返せば十分です。照れくささの越え方は、「ありがとう」が照れくさいときの伝え方でも紹介しています。

一日のうちでは、どんなときが伝えやすいですか?

本人の体調が落ち着いている時間、見舞いの人が帰って二人になったとき、面会の帰りぎわが伝えやすい場面です。楽に過ごせる時間帯は人によって違うので、看護師に聞いておくと選びやすくなります。

同じ言葉でも、渡す時間によって受け取られ方が変わります。検査や処置のすぐあと、痛みが強い時間帯は、本人に言葉を受け取る余裕がないかもしれません。反対に、食後に少し落ち着いたころや、にぎやかな見舞い客が帰ったあとの静かな時間には、短い言葉がすっと入りやすくなります。

いちばん自然なのは、本人が自分から昔の話を始めたときです。「あのころは大変だったな」と言われたら、「でも、あのとき頑張ってくれたから今があるよ。ありがとう」と、そのまま乗せられます。誕生日や結婚記念日、季節の行事も、言葉を置きやすい日です。

帰りぎわは、面会のたびに訪れる小さな区切りです。上着を着ながら、ドアの前で振り返って、ひとこと。決まった場面に決まった言葉を置いておくと、言うほうも身構えずに続けられます。

謝りたいこと、許したいことがあるときは、どう切り出せばいいですか?

謝るときは、理由の説明を足さず「あのときはごめん」とひとことで。許すことは義務ではありません。言える分だけ言えば十分で、言えない気持ちが残ることも自然です。

謝罪は、長くなるほど言い訳に聞こえやすくなります。「進学のことで、ひどいことを言ってごめん」。それだけで、本人には何のことか伝わります。返事がなくても、言えたことに意味があります。

許しは、もっと難しい言葉です。長く続いたすれ違いや、傷ついた記憶がある家族に、「最期なんだから許してあげて」と周りが求めるのは酷なことです。許せないままそばにいることも、ひとつの向き合い方です。「会いに来たよ」とだけ伝える。それも、その人なりの精一杯の言葉です。

本人のほうから謝られたときは、無理に許しの言葉で返さなくてもかまいません。「聞いたよ」「わかった」と受け取るだけで、本人の荷物はひとつ下ります。渡し方に迷ったら、次の分かれ道を使ってください。

  1. Q1本人と落ち着いて話せる時間がありますか

    はい次の面会で、短く直接伝える

    いいえ手紙やメモにして、枕元に置く

  2. Q2言ったあとの本人の反応を受け止める余裕がありますか

    はい返事を急がず、そのまま一緒に過ごす

    いいえ返事のいらない形(手紙・録音)を選ぶ

  3. Q3その言葉は、聞いた本人の気持ちを軽くしますか

    はい伝える価値があります。短く伝える

    いいえまず信頼できる人に話して、自分の中で整理する

謝りたいこと・許したいことの渡し方を選ぶ分かれ道

意識が薄れてからでも、言葉は届きますか?

届いている可能性があります。返事ができなくなったあとも、耳は聞こえている可能性があるといわれています。名前を名乗ってから、いつもの声で話しかけてください。

2020年にカナダの大学(ブリティッシュコロンビア大学)の研究チームが学術誌『Scientific Reports』に発表した研究では、ホスピスの患者さんの脳波を調べ、反応がなくなった状態でも一部の人の脳が音に反応していたと報告されています。反応がない状態で記録できたのは5人で、言葉の内容まで理解しているかどうかは分からない、とされています。確かなことは言えませんが、声をかけ続けることをためらう理由はありません。

話しかけるときは、「お母さん、〇〇だよ」と名前を名乗ってから。手や肩にそっと触れながら、短く。「今日は晴れてるよ」「みんな来てるよ」。枕元で、本人がいないかのように病状の話をするのは避け、込み入った話は部屋の外でします。詳しくは反応がなくても聞こえているのかでまとめています。

話せるうちに

  • 思い出を、質問の形で一緒にたどる
  • 感謝を、具体的な場面と一緒に
  • 本人からの言葉を、さえぎらずに受け取る

反応が薄れてから

  • 名前を名乗ってから、短く話しかける
  • 手や肩に触れながら、いつもの声で
  • 枕元では、いない人のように話さない
話せるうちに渡す言葉と、反応が薄れてから渡す言葉

面と向かって言えないときは、どんな方法がありますか?

手紙やメモ、声のメッセージ、ほかの家族に読み上げてもらう方法があります。面と向かって言えないのは気持ちが弱いからではなく、それだけ大事な言葉だからです。

手紙は、長くなくてかまいません。便箋1枚に3〜5行。最初の一文に具体的な思い出を書くと、続きが書きやすくなります。眠っている時間が長くなってきたら、枕元で自分で読み上げても、ほかの家族に読んでもらってもいい。遠方に住むきょうだいには、スマートフォンで声のメッセージを録ってもらい、病室で流す方法もあります(音を出してよいかは、病棟に確かめてから)。

  • 便箋1枚、3〜5行で終わる長さにする
  • 最初の一文に、具体的な思い出をひとつ書く
  • 「ありがとう」を1回は入れる
  • 返事を求める言葉は書かない
  • 本人が読みやすい大きさの字で書く
  • 渡し方(手渡し・枕元・読み上げ)を決めておく
短い手紙を書くときに確かめること

書いた手紙をすぐに渡せなくても、書いたこと自体が、言葉の下ごしらえになります。いざ面と向かったとき、一度文字にした言葉は、口から出やすくなるものです。

ご本人として、家族に伝えておきたい言葉があるときは?

体調のよい日に、ひとりずつ、少しずつで大丈夫です。感謝やお願いに加えて、「悲しんでいいよ」「これからも笑って暮らしてね」のように家族の心を軽くする言葉も、ご本人にしか渡せない言葉です。

ご本人の方へ。家族に残す言葉を考えて夜中に眠れなくなっている自分を、責めないでください。それだけ家族を大事に思っているということです。家族の前では平気なふりをしている方も、ここでは泣いていいのです。

家族に言葉を渡そうとすると、「そんなこと言わないで」とさえぎられることがあります。家族の側も、まだ受け止める準備ができていないのかもしれません。そんなときは「聞いてくれるだけでいいから」と前置きするか、手紙や録音に預けておく方法があります。一度に全員へ言おうとせず、今日は配偶者に、来週は子どもに、と分けてもかまいません。

「あなたのせいじゃないよ」「あとのことは、あなたが決めていいからね」。こうした言葉は、残される家族が、あとで自分を責めずにいるための支えになることがあります。気持ちのつらさが強く続くときは、主治医やがん相談支援センター(ご本人も家族も、無料・匿名で相談できます)、こころの相談窓口にも頼ってください。

言えないまま別れの時が来たら、どうすればいいですか?

言えなかった言葉は、亡くなったあとにも渡し直せます。そばで声をかける、手紙を書いて添える、心の中で話しかける。間に合わなかったからといって、気持ちが届かなかったことにはなりません。

駆けつけたときには、もう息を引き取っていた。言おうと決めていた「ありがとう」を、結局一度も言えなかった。そんな思いを抱えるご家族もいます。そのときは、手を握って、言えなかった言葉をそのまま声にしてください。お別れの時間に、手紙をそっと添えることもできます。

言えなかった悔いが、何か月たっても胸から離れないこともあります。それは、それだけ伝えたい気持ちが大きかったということです。ひとりで抱えきれないときは、国立がん研究センター中央病院の遺族ケア外来のように、がんで大切な人を亡くした人のための窓口もあります。身近なところでは、がん相談支援センターでも話を聞いてもらえます。

「ありがとう」が言えなかった夫は、どう伝えた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
60代・夫の立場(妻が緩和ケア病棟に入院中)
相談のあとに変わったこと
結婚してから口にした覚えのなかった「ありがとう」を、毎日の面会の帰りに言えるようになった。3週間のあいだに、妻から「あなたもね」と返ってきた日があった。

1. 相談のあとに変わったこと

相談のあと、面会の帰りぎわに「今日もありがとうな」と言うことが、毎日の決まりになりました。最初の日は声が小さく、妻は眠っていたのか、返事はありませんでした。3日目に妻が目を開けて少し笑い、2週目のある日、「あなたもね」と返ってきたそうです。便箋1枚に5行の手紙も書き、枕元の引き出しに入れました。「1回目より2回目のほうが、ずっと言いやすかった」と話しています。

2. 相談を考えた背景

妻が緩和ケア病棟に移ったころ、娘から「お母さんに、ちゃんと言っておいたほうがいいよ」と言われました。言うべきことがあるのは分かっていました。けれど、言葉にした途端、「もう終わりだと思っている」と妻に伝わる気がして、面会のたびに天気の話だけをして帰っていたといいます。

3. 相談する前に困っていたこと

夜に「最期に伝えること」と検索して出てきたのは、感動的な手紙や立派なスピーチの例ばかりでした。読めば読むほど、自分には無理だと感じたそうです。40年近い結婚生活で、「ありがとう」も「好きだ」も、口にした記憶がありませんでした。

4. ここを選んだ理由・決め手

娘には、病院のがん相談支援センターも勧められました。ただ、妻が入院している病院の職員に自分の気持ちを話すのは、どうしても気が引けました。電話なら顔を合わせずに済む。平日の昼に電話をかけると、担当が名前を名乗って出たことで、少し肩の力が抜けたといいます。

5. 相談で話したこと・その後

はじめの20分ほどは、評価も助言も挟まずに、担当がただ話を聞きました。新婚旅行で道に迷った話、妻の作る煮物の話。話しているうちに、「ありがとうって言うだけなら、できるかもしれない」という言葉が、本人の口から出てきました。眠っている時間が長くなった妻に話しかけてもよいのかを尋ねたときは、担当は自分で判断を示さず、看護師に聞くことを3つの質問にまとめて送りました。「誰かに話したら、言うことが決まった」。いまはそう振り返っています。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医師・看護師に聞く質問例

  • 本人と落ち着いて話しやすいのは、一日のうちでどの時間帯ですか。
  • 眠っている時間が長くなっても、話しかけたり手に触れたりしてかまいませんか。
  • 家族が少しの時間、二人きりで過ごせるようにしていただけますか。
  • 枕元に手紙を置いたり、録音した声を小さく流したりしてもよいですか。

とはいえ、言葉が見つからない日があってもいいと伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──言葉にならない日は、そばにいることが代わりになります

言おうとして涙で詰まる日も、結局何も言えずに帰る日もあるでしょう。言えなかった日を数える必要はありません。手を握って黙って座っていた時間も、本人にとっては「来てくれた」という出来事です。ご家族は、本人を思うあまり自分の気持ちを後回しにしがちで、国立がん研究センターのがん情報サービスでは「第二の患者」ともいわれると紹介されています。言葉が出てこないほど疲れているときは、伝えることより、まず自分が眠ることを優先してかまいません。

② 実務のこと──二人きりになれる時間を、家族の予定に組み込む

大事な言葉ほど、人がたくさんいる病室では言いにくいものです。家族の面会時間を少しずつずらして、一人ずつ本人と二人きりになれる時間をつくると、それぞれが自分の言葉を渡せます。病棟に「少しのあいだ、二人にしてもらえますか」と相談できるかどうかは病院によって違うので、看護師に聞いておきます。気持ちの整理を手伝ってほしいときは、病院のがん相談支援センター(家族だけでも、無料・匿名)や相談室が使えます。相談室の電話(080-4178-5017)は、平日9:00〜18:00は担当が直接お受けし、それ以外は自動音声で受け付けて、翌朝9時までに折り返します。

今日できること

伝えたい言葉を、今夜から明日にかけて形にする3つ

  1. 引き出しを1つ選ぶ

    感謝・謝罪・許し・愛情・さようならのうち、今の気持ちにいちばん近いものを1つだけ選ぶ。

  2. 一文だけ書いてみる

    スマホのメモに「〇〇のとき、ありがとう」の形で一文書き、具体的な場面をひとつ入れる。

  3. 言葉を乗せるきっかけを用意する

    古い写真、好物、好きだった歌など、次の面会で話のきっかけになるものを1つ持っていく。

よくある質問

本人のほうから「今までありがとう」と言われました。どう返せばいいですか?

「そんなこと言わないで」と打ち消したくなりますが、本人は勇気を出して言葉を渡そうとしているのかもしれません。「こちらこそ、ありがとう」と受け取って、手を握るだけで十分です。泣いてしまってもかまいません。その涙も、返事のひとつです。

何年も関係がこじれていた親に、今さら何を言えばいいか分かりません。

無理に和解の言葉を探さなくて大丈夫です。「会いに来たよ」「体、つらくない?」と、今のその人に向けた短い言葉からで十分です。話すのがつらいなら、顔を見せるだけでもひとつの返事になります。気持ちの整理がつかないときは、がん相談支援センターや相談室で、まず自分の気持ちを聞いてもらう方法もあります。

遠方に住んでいて、直接会って伝えられそうにありません。

電話やビデオ通話、声のメッセージ、手紙で届けられます。本人が電話に出るのが難しくなっていたら、付き添っている家族に頼んで、スマートフォンを耳元に当ててもらう方法もあります。録音した声を病室で流すときは、音を出してよいか病棟に確かめてからにしてください。会いに行けないことで、自分を責める必要はありません。

子どもや孫にも、何か伝えさせたほうがいいですか?

子どもが「伝えたい」と言ったら、その気持ちを手伝ってあげてください。絵や短い手紙、「ありがとう」の録音など、子どもに合った形があります。反対に、言いたがらない子に無理をさせる必要はありません。親子それぞれの立場での言葉の例は、親に・子どもに伝える言葉の例で紹介しています。

伝えようとすると涙が出て、言葉になりません。

泣きながらでも、気持ちは届きます。涙を見せたくないなら、面会の前にトイレや廊下で一度深呼吸してから入る、言葉を手紙に預ける、といった方法もあります。泣いてしまったら、「ごめんね、なんだか泣けてきた」とそのまま言えば十分です。家族が泣くことで、本人も安心して気持ちを出せることがあります。

伝えようとしたら、本人に「縁起でもない」と嫌がられました。

本人の「今は聞きたくない」も、大事な意思です。「そうだね、また今度」と引いて、いつもの話に戻ってかまいません。伝えたかった言葉は手紙にして引き出しにしまっておけば、本人が読みたくなったときに読めます。日常の「ありがとう」や「おやすみ」は、嫌がられない範囲で続けてください。

LINEやメールなど、文字で伝えてもいいですか?

もちろんかまいません。声に出すと詰まってしまう言葉も、文字なら書ける人がいます。本人がスマートフォンを見られるなら、短いメッセージを送っておく。画面を見るのが難しくなっていたら、そばにいる家族に読み上げてもらう。送った言葉は消えずに残るので、本人が何度でも読み返せるという良さもあります。

亡くなったあと、言えなかったことを思い出して苦しくなったら?

言えなかった言葉は、手紙に書く、お墓や写真に向かって話しかけるなど、あとからでも形にできます。それでも苦しさが続くときは、国立がん研究センター中央病院の遺族ケア外来のような専門の窓口や、がん相談支援センターに相談できます。つらさが強くなったときは、電話をかけた場所の地域の公的な相談先につながる、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556。受付時間は地域によって違い、通話料がかかります)も使えます。

言えずにいる言葉を、話すところから始めませんか

フォームには、伝えたい相手と、いま胸にある言葉の種類(感謝・謝罪など)をひとこと、それに折り返し用のお電話番号を書いてください。送ったあとすぐに受付確認のメールで届いたことが分かり、ご都合の時間帯に担当からお電話します。まずは20分、評価も助言もせずにお話を聞きます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

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