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がんの人に最後に何を言えばいい?|特別な言葉はいらない理由

このテーマの総論:夫・妻のがん、あとどれくらい?|配偶者の見通しの聞き方

この記事の結論

最後にかける言葉に、決まった正解はありません。「ありがとう」「そばにいるよ」、あるいは天気や家族の近況といったいつもの話で十分です。反応がなくても耳は聞こえている可能性があるといわれ、手に触れることも言葉の代わりになります。言えなかったとしても、それまでの時間が消えるわけではありません。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:Blundon EG, et al. Electrophysiological… ほか8件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

最後の時間に要るのは、うまい台詞よりも、聞き慣れた声と、いつもの距離感です。病室の前で「何か特別なことを言わなければ」と立ち止まってしまうのは、相手を大事に思っているからこそです。けれど、ドラマのような別れの言葉が言えなくても、何十年分の関係が、最後のひと言で書き換わることはありません。

どんな言葉が届くかは、その人との関係や、その日の本人の状態によって違います。はっきり話せる日もあれば、うとうとしている日、反応が見えにくい日もあり、それぞれに合った関わり方があります。

この記事では、特別な言葉がいらない理由、短く使える言葉の例とその意味、言葉の代わりになる関わり方、そして「言えなかった」「間に合わなかった」と感じている方への考え方をお伝えします。ご本人が家族に言葉を残したいと考えている場合に向けた項目もあります。

最後の言葉を探して、病室の前で立ち止まっている方へ

  • 最期が近いと言われてから、何か特別な言葉を言わなければと、ずっと焦っている。
  • いざ病室に入ると何も出てこなくて、手を握るだけで帰ってきてしまう。
  • 「ありがとう」なんて言ったら、もうお別れだと思わせてしまいそうで怖い。

最後に、特別な言葉を言わなければいけないのですか?

いいえ。最後の時間に交わす言葉に、決まった型はありません。長く一緒に過ごしてきた人にとっては、聞き慣れた呼び方や口ぐせのほうが、改まった言葉より安心につながることもあります。

「最後に何を言うか」が大事に思えるのは、映画やドラマの別れの場面を、どこかで見てきたからかもしれません。けれど実際の病室では、本人が眠っている時間が長かったり、話すと疲れてしまったりして、改まった会話の場面そのものが訪れないこともあります。特別な一言を探しているうちに、普通に話せる時間が過ぎてしまうこともあります。

いつもの話とは、たとえばこんな言葉です。「今日は雨だったよ。洗濯物、部屋に干してきた」「庭の柿が色づいてきたよ」「〇〇が部活の試合に出たって」。変わらない毎日の話は、本人にとって、自分がいなくても家族の暮らしが続いていくという安心につながることがあります。お別れの雰囲気をあまり感じさせたくない方にとっても、自然に聞いていられる話題です。

話題に困ったら、質問ではなく「報告」にすると続けやすくなります。返事を求められないので、話す力が小さくなった本人も、聞き役として気楽にいられます。スマホの写真を見せながら最近の出来事を話す、応援しているチームの結果を伝える、昔一緒に行った場所の話をする。本人が好きだった話題を家族で書き出しておくと、病室で言葉に詰まったときの助けになります。

何を言えばいいか分からないとき、どんな言葉なら使えますか?

短くて、何度でも言える言葉で十分です。「ありがとう」「そばにいるよ」「大丈夫だよ」「また来るね」。どれもお別れの宣言ではなく、今ここにいることを伝える言葉として使えます。

「ありがとう」は、これまでの時間全部への感謝として。「そばにいるよ」は、ひとりではないという安心として。「大丈夫だよ」は、「病気が治る」という意味ではなく、「家のことは心配いらない」という意味で使うと、本人を置き去りにしない言葉になります。「また来るね」は、明日も続いていく日常のしるしです。

どれか一つを選ぶ必要はありませんし、順番もありません。同じ言葉を毎日言っても構いません。言葉にするのが照れくさい家族なら、名前を呼ぶだけでも十分です。呼ばれ慣れた呼び方は、それだけで「あなたの家族がここにいる」という合図になります。

言葉伝わるもの言いにくいときの言い換え
ありがとうこれまでの時間への感謝「〇〇してくれて助かったよ」
そばにいるよひとりではないという安心「ここにいるからね」
大丈夫だよ残る家族の暮らしは心配いらないということ「家のことはちゃんとやってるよ」
また来るね明日も続いていく日常「明日はお昼に来るね」
いつもの話変わらない毎日が続いていること天気、ペット、テレビの話
短く使える言葉と、その言葉が伝えるもの

「ありがとう」を言ったら、お別れを意識させてしまいませんか?

その心配は自然なものです。改まって言うのが重ければ、日常の小さな出来事に「ありがとう」を添える形で伝えられます。何度言っても構わず、一度で完璧に伝える必要もありません。

たとえば、「昔、運動会のお弁当を毎年作ってくれてありがとう」「このあいだ電話くれてありがとう」のように、具体的な出来事にくっつけると、別れの言葉というより思い出話になります。本人に「なんだ、改まって」と言われたら、「言いたくなっただけ」と笑って返せば十分です。

反対に、本人のほうから「ありがとう」「世話をかけたな」と言ってくることもあります。そのときに「そんなこと言わないで」と打ち消すと、本人が言いたかったことを受け取りそこねてしまいます。「こちらこそ」と短く返す、手を握り返す。それだけで、本人の言葉はきちんと受け取られます。

長いあいだわだかまりが残っている関係なら、和解の言葉を無理に探さなくても構いません。病室に顔を出して「来たよ」と声をかけること自体が、言葉にしにくい気持ちを伝える一つの形になることもあります。

反応がなくなったあとも、声をかける意味はありますか?

あります。反応しなくなった方の一部でも脳が音に反応していたという研究報告があり、耳は聞こえている可能性があるといわれています。どこまで分かっているかは不明でも、いつもの声で話しかけることは無駄になりません。

カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究(Scientific Reports、2020年)は、ホスピスの患者さんの脳波を調べ、呼びかけに応えなくなった状態でも、一部の方の脳が音に反応していたと報告しています。反応がない状態で記録できたのは5人で、話の内容を理解しているかまでは分かっていません。それでも、話しかけることをためらう理由にはなりません。

病室に入ったら「〇〇だよ」と名乗る。体を拭く前に「今から手を拭くね」と声をかける。込み入った話や、本人が聞いたらつらくなる話は部屋の外でする。遠くにいる家族の声をスマホで録音して、枕元で流してもらう。家族が大勢集まったときは、一人ずつ枕元に行って短く声をかける時間をつくると、それぞれが自分の言葉を伝えられます。話すのが苦手な人は、手を握るだけで構いません。呼びかけに応えなくなった時期のことは、反応がない時期の意識の変化の記事でも詳しく扱っています。

  1. 1話ができる日いつもの会話に、感謝や思い出をひとつ混ぜる
  2. 2うとうとしている日起こさずに、短く話しかけて手に触れる
  3. 3反応が見えにくい日名前を名乗ってから、ゆっくり、いつもの調子で話す
  4. 4呼吸が変わってきた日そばにいること、ありがとうを短く伝える
  5. 5間に合わなかった日手紙や写真に向かって、言いたかったことを話す
その日の状態に合わせた、声のかけ方の目安

言葉のほかに、最後にしてあげられることは何ですか?

手や肩に触れる、唇を湿らせる、好きだった音楽を小さく流す、部屋に家族の気配をつくる。言葉にならない関わりも、本人に向けた確かなメッセージになります。

話すのが苦手な家族や、涙で言葉が出てこない家族には、手が言葉の代わりになります。手の甲をゆっくりさする、髪をなでる、肩に手を置く。触れられて落ち着く方もいれば、触られるのを嫌がる日もあるので、表情を見ながら加減してください。口が乾いているようなら、唇や口の中を湿らせる方法を看護師さんに教えてもらえます。

部屋の環境も、関わり方の一つです。好きだった音楽やラジオを小さな音で流す、家族の写真を見える場所に置く、本人が好きだった明るさや温度に近づける。家族が交代で付き添い、病室に誰かの気配がある時間を少しずつ増やすことも、言葉のいらない「ここにいるよ」です。気持ちをどう言葉にするか整理したいときは、5つの言葉で気持ちを整理する方法も参考になります。

  • 手を握る、手の甲をゆっくりさする
  • 唇を湿らせる方法を看護師さんに聞いて試す
  • 好きだった音楽やラジオを小さな音で流す
  • 家族の写真や、子ども・孫の声の録音を聞かせる
  • 部屋の明るさや温度を、本人の好みに近づける
  • 帰るときに「また来るね」と声をかける
病室でできる、言葉以外の関わり

立ち会えなかった、言えなかった。それでも伝わっていたのでしょうか?

伝わっていたかを確かめる方法はありません。けれど、最後の一言が言えたかどうかで、その人との関係の価値が決まるわけではありません。それまでにかけた声や、何気ない会話の積み重ねが、二人の時間そのものです。

最期の瞬間に間に合わなかった。何か言おうとしたのに、言葉にならなかった。そう感じている方は、今も自分を責めているかもしれません。けれど、仕事や距離、看病の疲れで眠っていた時間など、そばにいられなかったことには、それぞれ理由があります。そのときのあなたが、できる範囲で選んだことです。飲み物を買いに出た数分のあいだや、仮眠をとっていた明け方に最期を迎えることもあります。それは、そばを離れて見捨てたということではありません。

心の準備についての調査もあります。日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団のJ-HOPE4(2020年)は、2018年に215施設の遺族17,147名へ調査し、9,071名から有効回答を得ました。家族が亡くなることへのこころの準備が「できていた」と答えた方は29%で、「ある程度できていた」を含めると85%でした。回答者の大半は緩和ケア病棟で家族を見送った方なので、すべての遺族に当てはまる数字ではありません。裏返せば、こころの準備が十分にできたと言い切れる家族のほうが少ない、ということでもあります。準備しきれないまま、その時を迎えるのは、珍しいことではないのです。

言えなかった言葉は、今からでも置き場所をつくれます。手紙に書く、写真に話しかける、誰かに聞いてもらう。思いが重く残り続けるときは、がん相談支援センターや、国立がん研究センター中央病院の遺族ケア外来のような、大切な人を亡くした方のための窓口もあります。

  1. Q1本人は、いまもそばで過ごせる状態ですか

    はい次の面会で、短い一言か、いつもの話をひとつ。言えなければ手を握るだけでいい

    いいえ手紙に書く、写真に話しかける、誰かに聞いてもらうなど、言葉の置き場所をつくる

  2. Q2その思いのせいで、眠れない日や食べられない日が続いていますか

    はい遺族ケアの窓口や、こころの相談窓口など、専門の相談先を使う

    いいえ無理に整理しなくていい。思い出したときに、少しずつ言葉にする

言えなかったことが心に残っているとき

ご本人の側から、家族に言葉を残したいときは?

改まった形でなくても、「ありがとう」「思うように生きてね」といった一言を、話せるうちに伝えたり、メモやスマホの録音に残したりする方法があります。言えない日があっても構いません。

ご本人の方へ。家族に何か残したいと思う一方で、それを口にすると別れを認めるようで怖い。その揺れは自然なものです。家族に見せている顔とは別に、ここでは泣いてしまってかまいません。一度に全部を伝えようとしなくて大丈夫です。今日は一人に一言、と小さく区切ると、少し始めやすくなります。

残し方は、自分に合うものを選べます。スマホのボイスメモに「〇〇へ」と1分だけ話す。手帳に、家族一人ひとりへ一行ずつ書く。書いた紙を封筒に入れて、「いつか読んで」と信頼できる人に預ける。言葉にする元気がない日は、休んでかまいません。

言葉と一緒に、医療やケアの希望を伝えておくこともできます。厚生労働省は、もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療者と繰り返し話し合う取り組みを「人生会議」と呼んでいて、書面にすることは必須ではありません。「苦しいのは嫌」「最後は家族の声が聞こえる所にいたい」といった一言も、立派な希望です。気持ちのつらさが続くときは、主治医やがん相談支援センター、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556、通話料がかかります)にも相談できます。

何も言えずに病室を出ていた家族は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・妻の立場(夫が入院中、高校生の子どもが2人)
相談のあとに変わったこと
「何か言わなきゃ」と構えるのをやめ、面会のたびに子どもたちの部活の話をすることにした。夫が眠っている日も、15分ほど話しかけてから帰るようになった。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から3日目の面会で、初めて病室で15分ほど話し続けることができました。それまでは手を握って10分ほどで帰っていたのが、今は眠っている夫に、子どもたちの部活の試合や、夕飯の献立の話をしています。子どもたちも週末に、声のメッセージを録音して持ってくるようになりました。「特別なことを言わなくていいと分かって、病室に入るのが怖くなくなった」と話しています。

2. 相談を考えた背景

医師から「会わせたい方がいれば、声をかけておいてください」と言われた日から、結婚して20年分の気持ちを、何か大事な言葉にして伝えなければと思い詰めるようになりました。けれど病室に入ると喉が詰まり、何も言えないまま帰る日が続いていました。

3. 相談する前に困っていたこと

夜に「最後にかける言葉」と検索すると、心に響く言葉の例がたくさん並んでいて、読むほどに「自分にはこんなことは言えない」と苦しくなりました。夫は眠っている時間が長く、話しかけても聞こえているのか分かりません。子どもたちからは「何を話せばいいの」と聞かれ、答えられませんでした。

4. ここを選んだ理由・決め手

看護師さんに聞くのは、医療の質問ではない気がして遠慮していました。がん相談支援センターも、治療の相談をする所だと思い込んでいました。ある夜、LINEに「何を言えばいいか分からない」と一行だけ送ると、翌朝いちばんに返事が届きました。そこで、子どもたちが登校したあとの時間帯を指定して、フォームから折り返しの電話を申し込みました。

5. 相談で話したこと・その後

最初の20分、担当はただ話を聞きました。途中で泣いてしまっても、話を急がせることはなかったそうです。そのあと、本人の希望で次の面会の段取りを一緒に整理し、「話題を一つだけ決めて行く」「看護師さんに、夫は聞こえていそうか、手に触れてもいいかを聞く」の2つに絞りました。担当は、夫の状態や今後の見通しについては何も言いませんでした。子どもたちには無理に話をさせず、録音という形を選びました。最初の日はやはり言葉が出ず、手を握るだけでしたが、それでいいのだと思えたことが、次の日につながったといいます。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

看護師さんに聞く質問例

  • 本人は今、声をかけると聞こえていそうですか。どんなふうに話しかけるとよいですか。
  • 手を握ったり、体に触れたりしても大丈夫ですか。痛む場所はありますか。
  • 口が乾いているようです。家族が湿らせてもいいですか。やり方を教えてください。
  • 好きだった音楽を流したり、家族の録音を聞かせたりしてもいいですか。
  • 夜も付き添いたいときは、どうすればいいですか。

とはいえ、言葉に迷うあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──言えない日があっても、関係は続いています

病室に入った途端に涙があふれて、何も言えない日もあります。言葉が出ないのは、気持ちが足りないからではなく、気持ちが大きすぎるからです。話すのが得意な家族もいれば、黙って座っている家族もいて、どちらもその人なりの関わり方です。がん情報サービスは、本人のつらさを優先して自分の気持ちを抑えがちな家族について、「第二の患者」ともいわれると説明しています。あなた自身の悲しみや疲れも、誰かに話してよいものです。

② 実務のこと──会いに行ける時間を、仕組みでつくる

言葉をかける機会は、会いに行ける時間があってこそ生まれます。病棟の面会時間や、夜間の付き添いができるかどうかは病院ごとに違うので、一度確かめておくと計画が立てやすくなります。働いている方は、介護休暇(1年に5日、対象家族が2人以上なら10日まで、時間単位でも取得可)が使える場合があります。家族が2週間以上の期間にわたり常に介護を必要とする状態なら、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れる介護休業もあります。2025年4月からは、介護に直面したことを申し出た社員に、会社が制度を個別に知らせ、意向を確認することが事業主の義務になりました。家族の中で面会の曜日を分けておくと、誰か一人が倒れることも防げます。

今日できること

次の面会で、言葉に迷わないための3つの準備

  1. 話題を1つだけ決めておく

    天気、家族の近況、昔の思い出など、次の面会で話すことを1つ、スマホにメモしておく。

  2. 病室に入る第一声を決める

    「〇〇だよ、来たよ」と、名乗ってから話しかけると決めておく。それだけで、入るときの緊張が少し和らぎます。

  3. 言えなかったことを書いて置く

    口に出せない言葉は、手帳やスマホに一行で書いておく。あとで手紙にしても、しまっておいてもいい。

よくある質問

がんの人に最後に何を言えばいいですか?何をしてあげればいいですか?特別な言葉が必要ですか?

特別な言葉は必要ありません。「ありがとう」「そばにいるよ」「また来るね」のような短い言葉や、天気や家族の近況といったいつもの話で十分です。言葉のほかにも、手に触れる、唇を湿らせる、好きだった音楽を流すといった関わりができます。反応がなくなっても耳は聞こえている可能性があるといわれているので、名前を名乗って、いつもの調子で話しかけてください。言えなかったことが残っても、それまでの時間が消えるわけではありません。

意識がはっきりしているうちに、伝えておいたほうがいいですか?

伝えたいことがはっきりあるなら、本人が返事をできるうちに伝えられると、言葉のやりとりになります。ただ、急いで全部を言おうとすると、お互いに苦しくなります。今日は「ありがとう」、明日は昔の話、と小さく分けて、本人の疲れ具合を見ながら少しずつで構いません。言えないまま時間が過ぎても、それで二人の関係が損なわれるわけではありません。

「頑張って」は言わないほうがいいですか?

体力が落ちた時期には、「頑張って」が、これ以上どう頑張ればいいのかという重さになることがあります。代わりに「一緒にいるよ」「無理しなくていいからね」と言い換えると、本人を急かさずにすみます。ただ、家族の間でずっと使ってきた励まし方を本人が喜んでいるなら、無理にやめる必要はありません。

本人から「もういいよ」「早く楽になりたい」と言われたら、何と返せばいいですか?

言葉を打ち消したり励ましたりする前に、「それくらい、しんどいんだね」と、気持ちをそのまま受け取ってください。分かってもらえたという感覚が、本人の支えになることがあります。言葉の奥に痛みや息苦しさが隠れていることもあるので、主治医や看護師さんに「本人がこう言っていました」と伝えてください。

子どもや孫にも、最後に話をさせたほうがいいですか?

決まった正解はありません。親ががんになったときの子どもとの関わりについて、がん情報サービスは、病気の話をするかどうかに唯一の正解はなく、まわりの大人どうしで方針をそろえておくことが大事だと説明しています。孫の場合も、この考え方が参考になります。話すときは、子どもの発達に合った分かりやすい言葉を選びます。病室に行くのが怖い子には、手紙や絵、声の録音という形もあります。面会できる年齢や時間は病院によって違うので、看護師さんに確かめてください。

涙が出て、何も話せなくなってしまいます。

泣いてしまっても大丈夫です。「ごめん、泣いちゃった」と言って手を握るだけでも、気持ちは十分に表れています。苦しくなったら、いったん廊下に出て深呼吸してから戻ってください。毎回話そうとしなくても、そばに座っている時間そのものが関わりです。

遠方に住んでいて、最期に間に合わないかもしれません。

離れていても、声を届ける方法はあります。そばにいる家族や看護師さんに頼んで、電話やビデオ通話を本人の耳元に近づけてもらう。声のメッセージを録音して送り、枕元で流してもらう。短い手紙を書いて、家族に読み上げてもらう。どれも、あなたの声とあなたの言葉を本人のそばに置く方法です。

亡くなったあとでも、伝えたいことを伝えていいですか?

もちろんです。亡くなった直後にお別れの時間をとれることもあるので、その場で手を握って話しかけても構いません。後日、手紙に書く、写真や遺影に話しかける、墓前で報告するなど、伝え方はいくつもあります。その思いを抱えきれないときは、大切な人を亡くした方のための遺族ケアの窓口や、がん相談支援センターに相談できます。

言えない言葉ごと、預けてみませんか

伝えたいのに言えないことや、面会のたびに迷っていることを、ひとことと折り返しのお電話番号を添えてお送りください。受付確認のメールが届いたら、あとはお待ちいただくだけです。ご希望の時間帯に担当がお電話し、評価も助言もせずにお話を伺います。ご希望があれば、次の面会までの段取りも一緒に整理します。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

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