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がんで余命数ヶ月・1年と言われたら何をする?やりたいことの決め方

このテーマの総論:がんの家族と後悔しないために|今できる5つのことと時期別の表

この記事の結論

余命が数か月か1年かで変わるのは、体力の要ること、遠くへの移動、時間のかかる手続きを、どれだけ早い時期に置くかです。人と過ごす時間は、どちらでも今週から始められます。やりたいことを今週・今月・いつかに分け、体調に合わせて何度でも並べ替えてください。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「用語集:生存率」;国立がん研究センター「… ほか14件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

余命を数か月、あるいは1年と言われたとき、残りの時間の使い方を決める手がかりは、数字の長さそのものより「そのやりたいことに、何が要るか」にあります。体力が要るのか、遠くへの移動があるのか、準備や手続きに時間がかかるのか。そこが分かると、今週やること、今月やること、いつかに置いておくことが、自然に分かれていきます。

医師が伝える「数か月」「1年」は、同じような状態の方の経過から出された目安で、あなた自身の時間を言い当てるものではありません。長くなることも、短くなることもあります。この記事では、数字を締め切りにしない計画の立て方として、やりたいことを今週・今月・いつかの3つの箱に分ける方法と、体調が変わったときの並べ替え方をまとめました。告げられたばかりで、まだ何も考えられないという方には、告げられた日から始める3つの整理のほうが合うかもしれません。

「数か月」「1年」という言葉を、持て余している方へ

  • 「1年くらい」と聞いた日は何かできる気がしたのに、何から始めればいいのか、まだ決められずにいる。
  • 「数か月」と言われてからは、やりたいことを考えるたびに「もう間に合わない」と手が止まる。
  • 残りの時間をどう使えばいいのか、誰も教えてくれない。

余命数か月、あるいは1年と言われたら、残りの時間をどう使えばいいですか?

時間の長さで変わるのは、体力の要ること・遠くへの移動・時間のかかる手続きを、どの時期に置くかという順番です。人と過ごす時間は、数か月でも1年でも今週から始められます。やりたいことを今週・今月・いつかに分け、体調に合わせて並べ替えていきます。

「1年」と聞くと何でもできそうに感じ、「数か月」と聞くと何もできない気がする。そう揺れるのは、数字を「残りの量」として受け取っているからかもしれません。けれど、やりたいことを一つずつ眺めてみると、数字の長さで扱いが変わるものと、変わらないものがあります。

扱いが変わるのは、体力を使うこと、遠くへ出かけること、準備や手続きに時間がかかることです。これらは体調のよい時期に置いたほうが選べる形が多くなるので、言われた幅が短いほど、早めの箱に寄せます。反対に、家族と夕食を食べる、友人に電話をする、好きな音楽を一緒に聴くといった人と過ごす時間は、数か月でも1年でも、今週の予定に入れられます。長いから後回しにするものでも、短いから急いで詰め込むものでもありません。

長さで扱いが変わること

  • 体力を使うこと(遠出、長い時間の外出、行事への参加)
  • 遠くへの移動(飛行機や長距離の電車、泊まりがけの旅)
  • 準備や手続きに時間がかかること(介護保険の相談、保険の契約の確認)

長さで変わらないこと

  • 家族や友人と、会って話す時間
  • 「ありがとう」や昔の話を交わすこと
  • 好きなものを食べる、好きな景色を眺めるといった毎日の楽しみ
余命の長さで扱いが変わることと、変わらないこと

「数か月」と「1年」では、やりたいことの並べ方はどう変わりますか?

変わるのは主に「今月」の箱の中身です。数か月と言われたら、体力と移動の要ることを今週・今月へ寄せ、準備のかかる願いは形を小さくして近くに置きます。1年と言われたら、季節の行事や準備のいる旅を、今月より先に並べる余裕が生まれます。

どちらの場合も、人と過ごす時間は今週の箱に入ります。違いが出るのは、体力を使う願いを、どこまで先に置いておけるかです。たとえば「娘と温泉に一泊したい」という願いがあるとき、1年という幅で考えているなら、治療の予定と相談しながら、来月や再来月に日付を置くこともできます。数か月という幅なら、今月のうちに日帰りでできる形を考え、一泊は体調のよい日が続いたら、と「いつか」の箱に残しておく。どちらも願いを捨ててはいません。置く場所が違うだけです。

ただ、ここで言う「1年」「数か月」も、あくまで目安です。1年と言われていても、治療の変わり目に疲れやすい時期が来ることはありますし、数か月と言われてから落ち着いた日が長く続く方もいます。下の表は、その時々の体調に合わせて読み替えてください。

やりたいことの種類「数か月」と言われたとき「1年」と言われたとき
人と過ごす時間今週から。短く、回数を重ねる今週から。幅が長くても先送りしない
体力を使う外出今週・今月に寄せ、時間は短めに治療の予定と合わせて、今月から先に置く
遠くへの移動や旅日帰りや近場の形を今月に置く来月以降に日付を置き、下調べを今月に
季節の行事近い季節のものを今月に置く先の季節のものも、いつかの箱に置いてよい
時間のかかる手続き最初の一歩を今週に入れる最初の一歩を今月に入れる
「数か月」と「1年」で、箱への置き方が変わりやすいこと(どちらも目安で、体調によって入れ替えてよい)

余命の数字に合わせて、計画を立てていいのですか?

数字は計画の締め切りにしないほうが、立てた計画が長持ちします。余命の数字は同じような状態の方の統計から出された目安で、ご本人の時間を言い当てるものではなく、それより長くなることも、短くなることもあるからです。

医師が伝える余命の目安は、多くの場合、同じ病気・同じような状態の方々の経過をまとめた統計がもとになっています。よく使われる生存期間の中央値は、集団の半数がまだ生存している期間のことで、それより長く過ごす方も、短い方もいます。国立がん研究センターの院内がん登録の生存率集計も、示している数字は過去の期間に診断された方のもので、これから治療を受ける人には当てはまらない可能性があると注意を添えています。

数字にぴったり合わせた計画は、数字がずれた瞬間に崩れてしまいます。「1年あるはずだから」と大事な願いを先に置きすぎると、体調の波で動けない時期と重なることがあります。「数か月しかないから」と予定を詰め込みすぎると、疲れて楽しめなくなることもあります。だからこの記事では、数字ではなく「体力が要る順」に並べ、変化があれば並べ替えることを前提にしています。数字の受け止め方をもう少し知りたいときは、医師の「月単位・週単位」が示す目安と幅が手がかりになります。数字を聞き直さない、これ以上は聞かないという選び方も、あなたの権利です。

やりたいことは、どうやって「今週・今月・いつか」に分ければいいですか?

一つずつに4つの問いを当てます。体力が要るか、遠くへの移動があるか、準備や手続きに時間がかかるか、誰かの都合が要るか。人と過ごすことは今週へ、体力と移動の要ることは早めの箱へ、準備のかかることは「最初の一歩」だけを今週か今月に入れます。

まず、やりたいことを書き出します。ノートでもスマホのメモでもかまいませんが、付箋に1枚1つずつ書いておくと、あとで箱を移すのが楽になります。立派な願いでなくて大丈夫です。「駅前の店のかつ丼を食べる」「弟と将棋を指す」「庭の柿の木の手入れを誰かに頼んでおく」。思いついた順に、数は気にせず書いていきます。

次に、1枚ずつ4つの問いを当てます。体力と移動の両方が要るものは、早い箱に寄せます。準備に時間がかかるものは、願いそのものではなく、準備の最初の一歩(宿に電話して部屋の段差を聞く、など)を今週か今月に入れます。誰かの都合を合わせる必要があるものは、今週のうちに連絡だけしておき、日にちが決まった時点で今月の箱に移します。

  1. 1書き出す付箋1枚に1つずつ。立派な願いでなくていい
  2. 24つの問いを当てる体力・移動・準備の時間・相手の都合が要るかを確かめる
  3. 3人との時間を今週へ会う、話す、一緒に食べることは、幅の長さを問わず今週の箱に
  4. 4早めの箱に寄せる体力と移動の両方が要るものは、今週か今月へ
  5. 5最初の一歩だけ入れる準備がかかる願いは、電話一本や下調べを先に
  6. 6今週は3つまで入りきらない分は、今月の箱で待ってもらう
やりたいことを3つの箱に分けるまでの流れ

今週の箱は、3つまでにしておくのがおすすめです。予定が多すぎると、体調のよくない日にひとつも動けず、そのことで気持ちが沈みます。3つのうち1つは人と過ごすこと、1つは小さな楽しみ、1つは気がかりを減らす用事。そう組み合わせると、一週間の手ごたえが偏りません。

「今週」の箱には、どんなことを入れればいいですか?

会う・話す・一緒に食べるといった人と過ごすこと、短い時間でできる楽しみ、気がかりを一つ軽くする小さな用事です。体力の要る願いも、下見や電話一本の大きさに切り分ければ、今週の箱に入ります。

今週の箱には、カレンダーに日付と時間まで書けるものだけを入れます。「いつか友だちに会う」ではなく、「木曜の午後、高校の同級生に電話する」。ここまで具体的にすると、体調のよい時間帯を、そのために取っておけるようになります。

一日のうちで調子のよい時間帯が分かっていれば、今週の3つはその時間に置きます。午前中は比較的楽で、夕方に疲れが出るという方なら、人に会う予定は午前に、映画を観るのは横になれる夜に。予定に体を合わせるより、体のリズムに予定を合わせるほうが、ずっと楽しめます。

  • 家族と、いつもの店で昼ごはんを食べる
  • しばらく連絡していなかった友人に電話をかける
  • 好きな映画やドラマを、家族と並んで観る
  • 行ってみたい場所の話を、家族にしておく
  • 大事な書類のしまい場所を、家族に一つだけ伝える
  • 気になっている体のつらさを、次の診察を待たずに病院へ伝える
今週の箱に入れやすいことの例

「いつか」の箱は、あきらめた願いの置き場所ですか?

いいえ。いつかの箱は、今はまだ動かさない願いを、なくさずに預けておく場所です。週に一度のぞき、体調のよい日が続いたら今月へ移します。先の季節の願いは、近い形の「今の版」を今月に置き、本来の形はいつかの箱に残しておけます。

いつかの箱に付箋を貼ると、「もう叶わないと認めたようで嫌だ」と感じる方もいます。けれど、いつかの箱は捨てる箱ではありません。付箋は、なくさない限り、いつでも今月の箱へ移せます。

先の季節に結びついた願いは、2つの版に分けて持つと気持ちが楽になります。たとえば「来年の春、孫の入学式に出たい」という願いなら、本来の形はいつかの箱に置いたまま、「今月、孫とランドセルの色の話をする」を今月の箱に入れる。「春に満開の桜を見たい」なら、今月は近所の公園で今の季節の木々を眺め、春の桜にはいつかの箱で待ってもらう。今の版を先に叶えておくと、その願いのいちばん大事な部分が、もう手元にある状態になります。

  1. Q1この1週間、体調のよい日が続いていますか

    はいいつかの箱から1枚選び、今月の箱へ移す

    いいえ今週の箱を2つに減らし、いつかの箱はそのままにしておく

  2. Q2その願いは、形を変えても大事な部分が叶いますか

    はい近い形の「今の版」を作り、今月の箱に入れる

    いいえ本来の形のまま、何に気をつければよいかを主治医に聞いてみる

  3. Q3誰かの手を借りれば、今月のうちに動かせますか

    はい手伝ってほしいことを1つに絞って、家族や友人に頼む

    いいえいつかの箱に残し、次の見直しの日にもう一度のぞく

いつかの箱を見直すときの分かれ道

体調が変わったら、計画はどう変えればいいですか?

変えてかまいません。計画は守るためのものではなく、その週の体に合わせて選び直すための道具です。時間を短くする、場所を近くする、来てもらう、日を延ばす。形を変えることは、願いを手放すことではありません。

治療が変わった週、熱が出た週、理由もなく体が重い週。計画どおりに動けない週は、誰にでもやってきます。そのとき「せっかく立てた計画が崩れた」と思う必要はありません。体調に合わせて並べ替えるところまで含めて、この計画の使い方です。変えるときは、下の図の上の段から順に試していくと、願いの大事な部分を残したまま形を小さくできます。

  1. 1時間を短くする2時間の予定を30分に。会う人数を減らす
  2. 2場所を近くする遠くの店の代わりに、近所の店や自宅の食卓で
  3. 3来てもらう・届けてもらう会いたい人に来てもらう、店の味を持ち帰ってもらう
  4. 4日を延ばす体調のよい日が戻るまで、今月の箱で待ってもらう
  5. 5いつかの箱に戻す願いは消さずに預け、次の見直しでまたのぞく
体調が思わしくない週の、計画の変え方(上から順に試す)

つらさが強くて予定どころではないときは、計画を変える前に、そのつらさを医療者に伝えてください。緩和ケアは終末期になってから受けるものではなく、がんと診断されたときから受けられるものです(国立がん研究センター がん情報サービス)。痛みや息苦しさが和らぐと、今週の箱に戻せる予定が増えることもあります。会いたい人や行きたい場所を体調に合わせて叶える具体的な段取りは、会いたい人・行きたい場所を叶える段取りにまとめています。

手続きは、やりたいことより先に済ませておくべきですか?

全部を先に済ませる必要はありません。時間のかかる手続きは、最初の一歩だけを今週か今月の箱に入れ、続きは家族や窓口に預けます。やりたいことのための時間を、手続きだけで埋めてしまわないことを優先してください。

時間の幅を聞いたあと、「迷惑をかけないように、手続きを全部片づけてから」と考える方は少なくありません。けれど手続きには、ご本人でないと進めにくいものと、家族や窓口に任せられるものがあります。ご本人の手が要るのは、契約の中身を確かめる、自分の希望を伝える、といったところまで。書類集めや問い合わせは、得意な家族に預けてかまいません。

時間がかかる手続きの代表が、介護保険です。65歳以上なら原因を問わず、40〜64歳なら、がんを含む特定疾病が原因で一定の条件にあたる場合に限り、要介護・要支援の認定を受けると使えます。市区町村の窓口に申請してから認定の結果が届くまでは、原則30日以内です(厚生労働省)。まだ必要ないと感じていても、市区町村の窓口や地域包括支援センターで流れを聞いておくだけなら、今月の箱の付箋1枚で済みます。

生命保険に入っている方は、契約にリビング・ニーズ特約がついているかを確かめておくと、やりたいことに使えるお金の見通しが立てやすくなることがあります。原因にかかわらず、医師から余命6か月以内と判断された場合に、将来の死亡保険金に代えて、所定の範囲内で保険金の一部または全部を生前に受け取れる特約です(生命保険文化センター)。前払いになるので利息と半年分の保険料相当額が差し引かれ、上限や手続きは契約によって違います。使うかどうかは、ご本人が決めることです。医療費の自己負担には月ごとの上限があり、2026年8月から上限額の見直しと年間上限の新設が行われました。自分の上限額がいくらになるかは、加入先の健康保険に問い合わせると分かります。

もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組みを、厚生労働省は「人生会議」と呼んでいます。これは期限のある手続きではなく、気持ちが変わればそのたびに話し直せるものです。今月の箱に「話のきっかけを一つ作る」と書いておくくらいの置き方で十分です。

「数か月から1年」と言われた方は、やりたいことをどう並べた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
70代・本人の立場(夫を数年前に見送り、一人暮らし。近くに住む娘が週に2回来る。主治医から「数か月から1年くらいの幅で考えておいてください」と説明を受けた)
相談のあとに変わったこと
ノートに書き出した14のやりたいことを、今週3つ・今月3つ・いつか8つに分けられた。最初の2週間で妹への電話と娘との昼ごはんを済ませ、温泉への一泊が難しくなったあとも、日帰りの形に変えて出かけられた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から2週間で、今週の箱に入れた3つはすべて済みました。遠くに住む妹への電話、娘と行きつけのそば屋での昼ごはん、それに、庭の柿の木の手入れを近所の人に頼んでおくこと。今月の箱には、妹との温泉、孫とランドセルの話をすること、介護保険の流れを地域包括支援センターで聞くことの3つが入りました。いつかの箱の8枚は、ノートの最後のページに貼ってあります。毎週日曜の夕方、10分だけノートを開いて箱を見直すのが習慣になりました。「いつかの箱があるから、今週を3つにできた」と話しています。

2. 相談を考えた背景

主治医から「数か月から1年くらいの幅で」と言われたのは、外来での説明のときでした。帰りのバスでは「1年あるなら、まだ何かできる」と思ったのに、翌朝には「数か月なら、もう何もできない」と思い直していたといいます。その揺れが、毎日続いていました。

3. 相談する前に困っていたこと

夜になると「余命1年 やりたいこと」と検索して、ほかの人のやりたいことリストを読んでいました。海外旅行や大きな買い物が並ぶリストは、今の自分の体には合わないように見えました。ノートに14個書き出したものの、どれも「今さら遅い」か「急がなくていい」に見えて、ひとつも選べません。娘に話すと「何でも付き合うよ」と言ってくれましたが、その優しさで、かえって決められなくなったそうです。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターには、次の通院日に寄ってみるつもりでした。ただ、それまで1週間ありました。夜中に眠れずにいたとき、匿名で送れると知って相談室のLINEに「やりたいことが選べません」とだけ送ると、翌朝いちばんに返事が届きました。娘が来ない日の午前中に電話をもらえるよう、そのあとフォームから申し込んだそうです。

5. 相談で話したこと・その後

電話では、担当がまず20分ほど、ノートを書いたときの気持ちを聞きました。そのあと14個を一つずつ読み上げ、体力が要るか、遠くへの移動があるか、準備に時間がかかるか、誰かの都合が要るかを一緒に確かめながら、3つの箱に分けていきました。「1年あると思っていいのでしょうか」と聞かれたとき、担当は見通しには答えず、次の診察で「体力の面で、早めにしておいたほうがいいことはありますか」と聞いてみることを提案しています。3週目、治療の変わり目で体がだるい日が続き、温泉の一泊は難しくなりました。落ち込んでLINEを送ると、翌朝「今週の箱を2つに減らしてみませんか」と返事があったそうです。翌月、妹と近くの日帰り温泉に2時間だけ出かけ、一泊の付箋は、いつかの箱に貼り直しました。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 体力の面で、早めにしておいたほうがいいことはありますか。
  • 治療の予定のなかで、出かける予定を入れやすい時期はいつごろですか。
  • 遠出や泊まりがけの外出を考えるとき、気をつけることを教えてください。
  • 「数か月から1年」という幅は、どんな変化があったら見直すことになりますか。
  • やりたいことの妨げになっているつらさを和らげるために、相談できる窓口はありますか。

とはいえ、計画どおりにいかない日のあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──何も浮かばない日も、あなたの大事な一日です

やりたいことを考えようとしても、何も浮かばない日があります。付箋を手に取る気になれない週もあります。それは怠けているのでも、あきらめたのでもなく、大きな知らせを受け止めている途中だからです。家族の前では平気な顔をして、夜中にひとりでこのページを開いた方もいるでしょう。眠れないまま検索を重ねてしまうのは、それだけ自分の時間を大事にしたいからです。そんな自分を責めないでください。ここでは、泣いてもいいのです。気持ちの落ち込みや眠れない夜が続くときは、そのことも主治医やがん相談支援センターに伝えてください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)にかけると、かけた場所の都道府県などが行う公的な相談窓口につながります(受付時間は地域によって違い、通話料がかかります)。

② 実務のこと──3つの箱は、人と窓口に分けて持つ

3つの箱を、全部ひとりで抱えなくてかまいません。今週の箱はあなたが選び、今月の箱の段取りは家族と分け、いつかの箱は見直しの日まで閉じておく。持ち手を分けておくと、体調が揺れた週も計画が止まりません。家族に頼むときは、リストを丸ごと渡すより、手伝ってほしい付箋を1枚ずつ渡すほうが、家族も動きやすくなります。相談先も、箱の中身で使い分けられます。体のつらさや出かけるときの注意は、主治医や看護師へ。療養中の暮らしや仕事、お金の心配は、病院のがん相談支援センターで、その病院にかかっていなくても無料・匿名で相談できます(国立がん研究センター がん情報サービス)。病院に医療ソーシャルワーカーがいれば、使える行政サービスや療養の場の変化についても相談できます。やりたいことの並べ方そのものに迷うときは、相談室にも話してください。2026年9月の実績(運営者集計)では、相談室に届いた電話相談・問い合わせ1,200件のうち、400件がご本人からのものでした。

今日できること

今夜から明日にかけて、3つの箱を作り始める

  1. やりたいことを付箋に書く

    1枚に1つ、思いつくままに書く。食べたいもの、会いたい人、片づけたい用事が混ざっていてかまわない。

  2. 今週の3枚を選ぶ

    人と過ごすことを1枚、小さな楽しみを1枚、気がかりを減らす用事を1枚。残りは今月といつかの箱に分けておく。

  3. 見直しの曜日を決める

    毎週同じ曜日と時間に10分だけ箱を見直すと決めて、カレンダーに書き込んでおく。

よくある質問

やりたいことを書こうとしても、ひとつも出てきません。

告げられてまだ日が浅いころや、体調がすぐれない時期には、よくあることです。大きな願いを探すのをいったんやめて、「今日、何なら少しだけ楽しいか」を1枚書くところから始めてみてください。反対に、「やりたくないこと」を書き出すのも手がかりになります。「親戚に会うたびに病気の話をされたくない」と書けば、その裏に「いつもどおりの話がしたい」という願いが見えてきます。浮かばない日が続いても、箱が空のままでも、それで遅れをとるわけではありません。

仕事を続けることも「やりたいこと」に入れていいですか?

入れてかまいません。仕事が張り合いになっていたり、人とつながる場所になっていたりする方もいます。厚生労働省は「治療と就業の両立支援指針」を2026年4月から適用し、事業主が両立支援に取り組むことは2026年度から努力義務になりました。働き方に関係なく、就労の相談はがん相談支援センターででき、両立支援コーディネーターという支援役もいます。体調で働けない時期が来たときは、会社員などで健康保険に本人(被保険者)として入っている方なら、給与が出ない期間に傷病手当金を受け取れる場合があります(国民健康保険には原則としてありません)。続ける形と休む形の両方を知っておくと、仕事を今週・今月のどの箱に置くかを決めやすくなります。

痛みやだるさで、やりたいことどころではありません。

そのつらさは、我慢せずに主治医や看護師に伝えてください。緩和ケアは、がんと診断されたときから治療と並行して受けられるもので、病院によっては緩和ケアチームや緩和ケア外来があります。医療用麻薬について心配する方もいますが、日本緩和医療学会の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』は、オピオイドの使用が生命予後を短縮するという根拠はないとしています。つらさが和らいでから箱を開いても、遅くはありません。

余命の数字より長く過ごせたら、計画はどうなりますか?

箱は何度でも並べ替えられるので、困ることはありません。いつかの箱の付箋を今月へ移し、今週の箱に新しい楽しみを足していけばよいだけです。余命の数字は集団の統計から出された目安で、それより長く過ごす方もいます。長くなっても短くなっても困らない並べ方をしておくことが、この3つの箱の考え方です。

家族が「何でも付き合うよ」と言ってくれるのが、かえって重く感じます。

「何でも」と言われると、こちらが選んで頼まなければならず、かえって気をつかうことがあります。そんなときは、今週の箱の中から、手伝ってほしい付箋を1枚だけ家族に渡してみてください。「木曜の昼、そば屋まで車で連れて行ってほしい」と具体的に頼むと、家族のほうも、何をすればいいかが分かって楽になります。ひとりで決めたい箱があるなら、それも伝えてかまいません。

夜中になると、やりたいことより怖さのほうが大きくなります。

夜は、同じ不安でも昼より大きく感じやすいものです。がんに限らない電話相談ですが、よりそいホットライン(0120-279-338)には24時間・無料でかけられます。相談室のLINEは無料で、匿名のまま送れます。夜に届いたものは翌朝いちばんに読んで返事をします。言葉にならなければ、スタンプひとつでもかまいません。体の具合が急に変わったときは主治医や病棟へ。命に関わると感じたら、119番に電話してください。

やりたいことの並べ方を、電話で一緒に決めませんか

書き出したやりたいことと、電話に出やすい時間帯をお書きください。送っていただくと、受付確認のメールがすぐに自動で届きます。お電話はご希望の時間帯に担当からかけ、4つの問いを当てながら今週の3つを一緒に選びます。次の診察で聞く質問も、3つにまとめてお送りします。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    伝えたいことを、ひとつだけ今日のうちに

    後悔しない過ごし方に、決まった正解はありません。「ありがとう」を伝える、好きだった音楽を一緒に聴く、手を握る。小さなことでも、一緒に過ごした時間は残ります。会いに行くタイミングに迷うときは、病棟の看護師に目安を尋ねてみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「本人が会いたがっている人がいます。いつごろ来てもらうとよいでしょうか。」

    1. 伝えたいこと・聞いておきたいことを、1つずつ書き出しておく
    2. ご本人の希望(会いたい人・過ごしたい場所)を、聞ける範囲で聞いておく
    3. 遠方の家族とは、会いに行く予定を早めに相談しておく

    手元にあると話しやすいもの

    • 伝えたいこと・聞いておきたいことのメモ
    • 会いたい人の連絡先

    公的な相談先

    病棟の看護師・訪問看護
    ご本人の体調の変化を、いちばん近くで見ている相談先です。夜間の連絡先も確かめておくと安心です。
    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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