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何もできないと感じるがんの家族へ|治すことだけが役割ではない理由

このテーマの総論:がんの家族と後悔しないために|今できる5つのことと時期別の表

この記事の結論

「何もできない」と感じるのは、家族の役割を治るための応援だけで測っているからかもしれません。治療が終わり緩和ケアが中心になると、役割は、つらさに気づいて医療者に届けること、本人の望む過ごし方を守ること、そばにいることへ移ります。役割は形を変えただけで、なくなってはいません。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」(WHO定義は日本緩和医療学会… ほか9件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

がんの家族を前に「何もできない」と感じるとき、その「何も」の中身は、多くの場合「治すために役立つこと」です。治療が終わって緩和ケアが中心になると、通院の付き添いや副作用の記録といった目に見える応援の役目がなくなり、自分の役割まで消えたように感じられます。けれど、家族の役割はなくなったのではなく、「治る応援」から「そばで支える」へと形を変えています。

この感じ方の強さや続く長さは、本人との関係、病気の経過、家族自身の疲れによって人それぞれです。この記事では、治療が終わり緩和ケアが中心になる時期に絞って、役割が変わる理由、その時期に家族が担えること、自分を責める気持ちのほどき方、後悔を少しでも減らすためにできること、つらさを話せる先をまとめました。毎日すでにしていることの数え方は実はできている10のことに、過去の出来事への罪悪感の扱い方は罪悪感の手放し方に詳しく書いています。

「そばにいることしかできない」と感じている方へ

  • 病気を治せるわけでも、痛みを取ってあげられるわけでもない。そばに座っていることしかできない。
  • 「もっと早く気づいていれば」と、同じところで自分を責め続けてしまう。
  • あとで後悔するのが怖くて、何かしていないと落ち着かない。

がんの家族に何もしてあげられず、自分を責めてしまいます。後悔しないために何ができますか?

まず、「何もできない」と測っている物差しを確かめてください。治すことは医療の役目で、緩和ケアが中心の時期の家族の役目は、つらさに気づいて医療者に届けること、本人の望む過ごし方を守ること、そばにいることです。後悔を減らす手がかりも、この3つの中にあります。

自分を責める気持ちが強い人ほど、ここまで本人のために力を尽くしてきた人です。治療中は、通院の予定を手帳に書き込み、副作用の様子をメモし、食べられそうなものを探して台所に立ってきたかもしれません。その努力の向かう先が「治る」だったからこそ、治療が終わったとたん、努力の行き場がなくなります。行き場を失った力は、「何もできない自分」を責める方向へ向かいがちです。

けれど、治すことは、はじめから家族の役目ではありませんでした。それは主治医と医療チームの仕事です。家族がしてきたのは、本人が治療を受けられるように暮らしを支え、そばにいることでした。治療が終わっても、その芯は変わりません。変わるのは、支える目標が「治る」から「つらさが少なく、その人らしく過ごせる」へ移ることです。

治る応援の時期

  • 通院や治療の予定を支える
  • 副作用の様子を記録して伝える
  • 「一緒に頑張ろう」と励ます

そばで支える時期

  • つらさに気づいて、医療者に届ける
  • 本人の望む過ごし方や、会いたい人を守る
  • 「ここにいるよ」と伝える
治療中と、緩和ケアが中心の時期で変わる家族の役割

なぜ、治療が終わると「何もできない」と感じやすくなるのですか?

治療中は「次の治療」「次の検査」という目標があり、家族の行動にも分かりやすい意味がありました。治療が終わると目標が見えにくくなり、自分のしていることに意味があるのかを確かめる手がかりも、一緒に失われるからです。

治療中の家族は、カレンダーを見れば次にすることが分かりました。抗がん剤の日の送迎、検査の結果を聞く日の付き添い。一つ終えるたびに、小さな「やりとげた」がありました。緩和ケアが中心になると、カレンダーの予定は「訪問看護」や「面会」に変わり、何かをやりとげる感覚は得にくくなります。

もう一つ、「緩和ケアは何もしない医療」という思い込みも、無力感を強めます。国立がん研究センターのがん情報サービスは、緩和ケアは「がんと診断されたときから始まります」と説明していて、治療が終わってから始まる別の医療ではありません。世界保健機関(WHO、2002年)の定義(日本緩和医療学会の定訳)では、緩和ケアは、患者と「その家族」の生活の質を、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題に早く気づいて対応することで高めていくアプローチだとされています。家族は、緩和ケアに支えられる側であると同時に、本人を支えるチームの一員でもあるのです。

緩和ケアの時期の家族は、具体的に何をすればいいのですか?

ふだんの本人を知る人として、表情や眠り、食事の変化に気づくこと。気づいたことと本人の言葉を、医療者に届けること。本人の「こうしたい」を聞いて守ること。この3つが中心で、どれも医療者には代われない役割です。

医療者は、毎日たくさんの患者さんを診ています。「今日はいつもより口数が少ない」「好きな番組を見なくなった」といった小さな変化は、ふだんの本人を知っている家族だから気づけるものです。気づいたことは、その日のうちに看護師に伝えてください。痛みや息苦しさへの手当ては、医療者に届いて初めて動き出します。

本人の言葉を届けるのも、家族の役目です。本人は、医師の前では「大丈夫です」と言ってしまうことがあります。家族が「夜中に『背中が痛い』と言って起きていました」と付け加えるだけで、薬の見直しにつながることがあります。痛み止めの医療用麻薬について、命を縮めるのではと心配する家族もいますが、日本緩和医療学会の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』は、オピオイドの使用が生命予後を短縮するという根拠はない、としています。つらさを伝えることを、ためらわなくていいのです。

そして、本人の「こうしたい」を守ること。家に帰りたい、あの人に会いたい、好きな音楽を聴きたい、もう検査はしたくない。望みを聞いて医療者と共有し、できる形を一緒に探すのは、家族にしかできない仕事です。

場面治る応援の時期の言葉そばで支える時期の言葉
朝の声かけ「今日の検査、頑張ってね」「今朝はどこかつらいところある?」
食事「体力をつけるために食べよう」「食べたいもの、何かある?」
医療者に「次の治療はいつからですか」「夜、痛みで目を覚ましていました」
帰り際「早く元気になってね」「また明日来るね。ここにいるからね」
「治る応援」から「そばで支える」へ、かける言葉の置き換え例

「何もできない」と自分を責める気持ちは、どうほどけばいいですか?

責める声に答える代わりに、物差しを取り替えます。「治せたか」ではなく、「今日、本人は少しでも楽だったか」「本人の望みを一つ守れたか」「自分は倒れずにここにいるか」の3つで一日を振り返ると、責める理由より、届いたことが見えてきます。

自分を責める声は、たいてい「治せなかった」「もっと何かできたはず」という物差しで話しかけてきます。その物差しで測る限り、緩和ケアの時期の家族は、毎日「不合格」になってしまいます。けれど、その物差しは、もう今の役割に合っていません。

寝る前に、新しい3つの問いで今日を振り返ってみてください。今日、本人は少しでも楽だったか。答えが「看護師さんに痛みを伝えたら、頓服を使ってもらえた」なら、それはあなたの気づきが届いた結果です。本人の望みを一つ守れたか。「カーテンを開けてほしい」に応えたことも、立派な一つです。自分は倒れずにここにいるか。眠れていない、食べていないなら、明日の役目は自分の体を整えることです。

責める気持ちが「あのとき、もっと早く病院に行かせていれば」という過去の出来事に向いているときは、扱い方が少し違います。その場合は、事実と解釈を分けて書き出す方法が役に立ちます。今夜は考えを無理に止めず、浮かんだことを紙に書いて閉じるだけで十分です。

  1. Q1その声は「治せない」ことを責めていますか

    はい治すのは医療の役目。家族の役目は和らげる手伝いとそばにいること、と言い直す

    いいえ次の問いへ進む

  2. Q2過去の「あのとき」を責めていますか

    はい浮かんだことを紙に書いて閉じる。過去への罪悪感は、事実と解釈を分けて扱う

    いいえ次の問いへ進む

  3. Q3今日、本人のためにできることが一つ浮かびますか

    はいそれを一つだけする

    いいえそばにいることを、今日の役目にする

責める声が聞こえてきたときの分かれ道

後悔を少しでも減らすために、この時期にできることは何ですか?

後悔をゼロにする方法はありません。それでも、本人の望みを聞いておくこと、つらさを我慢させずに医療者へ伝えること、伝えたい言葉を先延ばしにしないことの3つは、今日から手をつけられます。

本人の望みを聞くことについて、厚生労働省は「人生会議」(ACP)という取り組みを勧めています。もしものときに望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有するものです。一度で決めきる必要はなく、書面に残すことが前提でもありません。「今いちばん落ち着くのはどこ?」「会っておきたい人はいる?」と、ふだんの会話の中で一つずつ聞いていけば十分です。

伝えたい言葉は、特別なものでなくてかまいません。「ありがとう」「一緒にいられてよかった」。面と向かって言いにくければ、手を握りながら、あるいは帰り際の「また明日ね」の前に、一言だけ添えます。

それでも、心の準備が十分に整った状態でその時を迎えられるとは限りません。日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の『遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究4(J-HOPE4)』(2020年)は、2018年に遺族17,147名を対象に調査し、9,071名から有効回答を得ています。「患者が亡くなることに対するこころの準備」についての回答を見ると、「ある程度できていた」まで含めれば85%、「できていた」だけでは29%でした。回答者の多くは緩和ケア病棟で家族を見送った方なので、全体を代表する数字ではありませんが、準備が「できていた」と言い切れる人は少数だったことが分かります。準備が足りないと感じているのは、あなただけではありません。後悔の減らし方は、後悔しないために今できることでも時期ごとに取り上げています。

  • 本人の「こうしたい」を、ふだんの会話の中で聞いておく
  • 痛みや息苦しさに気づいたら、その日のうちに看護師に伝える
  • 会っておきたい人がいるかを尋ね、連絡の段取りをつける
  • 「ありがとう」を一度、言葉にしておく
  • 家族として何をすればいいかを、医療者に直接聞く
  • 自分が眠る時間と、食べる時間を確保する
この時期に、先延ばしにしないでおきたいこと

本人に「迷惑をかけてごめんね」と言われたら、何と返せばいいですか?

謝る言葉を打ち消すより、そばにいる理由を伝えます。「そう思っていたんだね」と受け止めてから、「ここにいたいから来ているんだよ」と言えば、本人も「役に立てない自分」を責める気持ちを少し下ろせます。

緩和ケアの時期には、本人もまた「何もできなくなった」と感じていることがあります。仕事も家事もできず、家族の手を借りてばかりいる。そう感じた本人の口から出てくるのが、「ごめんね」「迷惑をかけて」という言葉です。家族の無力感と本人の申し訳なさは、同じ形をした気持ちが向かい合っているのかもしれません。

返す言葉に正解はありませんが、「そんなこと言わないで」とすぐに打ち消すと、本人はその先の気持ちを言えなくなることがあります。まず「そう思っていたんだね」と受け止め、そのうえで、自分がそばにいる理由を伝えてみてください。「こうして一緒にいる時間が、私には大事なんだよ」。そばにいることの意味を言葉にできるのは、そばにいる家族のほうです。本人の「ごめんね」に「ありがとう」で返し合えたとき、二人とも、何もできないという思いから少し離れられます。

自分を責める気持ちが止まらないときは、誰に話せばいいですか?

病棟や訪問の看護師、緩和ケアチームに「家族のほうがつらくなっています」と伝えてかまいません。がん相談支援センターも、家族だけの相談を無料・匿名で受けています。眠れない日が続くなら、かかりつけ医にも相談してください。

がん情報サービスの「家族のがんが進行・再発したとき」には、家族が自分のつらさや困りごとを担当医や看護師に相談してかまわないこと、相談しにくいときは看護師やがん相談支援センターに相談できることが書かれています。家族は「本人のほうがつらいのに」と自分の話を後回しにしがちですが、家族のつらさも、相談してよい内容として扱われています。同じがん情報サービスの「家族ががんになったとき」でも、家族は「第二の患者」ともいわれると紹介されています。

亡くなる前から、失うことを思って悲しみが始まることがあります。これは「予期悲嘆」と呼ばれ、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の会報(Foundation News Vol.48、2025年4月)では、「喪失が現実となる以前に起こる悲嘆」と説明されています。何もできないと責める気持ちの奥に、この悲しみが混ざっていることもあります。責める声が止まらないのは、心が弱いからではありません。

電話で話したいときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)にかけると、かけた地域の公的な相談窓口につながります。どの曜日・時間帯に受け付けているかは都道府県によって異なり、通話料は自己負担です。夜中に一人で抱えきれないときは、24時間・無料のよりそいホットライン(0120-279-338)があります(がん専門の窓口ではありません)。がんと家族の相談室では、評価も助言もしない20分の電話で、責める気持ちを最後まで聞きます。ご希望があれば、記録も残しません。

何もできないと感じている家族

  • 病棟・訪問の看護師家族自身のつらさも相談してよい。本人の様子もあわせて聞ける
  • 緩和ケアチーム本人と家族の両方が支えの対象
  • がん相談支援センター家族だけでも無料・匿名。その病院に通っていなくても使える
  • かかりつけ医眠れない、食べられない日が続くとき
  • よりそいホットライン24時間・無料。夜中に抱えきれないとき(がん専門ではない)
  • がんと家族の相談室評価も助言もしない20分。記録を残さないこともできる
責める気持ちを話せる先

面会のたびに「何もできない」と泣いていた娘は、どう変わった?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・娘の立場(70代の父が抗がん剤を終え、緩和ケア病棟に入院中。母はすでに亡く、娘は仕事帰りに週3回面会している)
相談のあとに変わったこと
面会のあと車の中で泣く夜が、週3回ほどから月に1、2回に減った。父の夜の痛みを看護師に伝える役を引き受け、痛み止めの使い方が見直された。父が聴きたがっていた古い歌を、病室で一緒に聴けた。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から1か月、彼女は面会のはじめに父の顔色と眠りの様子を確かめ、気づいたことを手帳に一行だけ書くようになりました。ある日、看護師から「夜中に何度か目を覚まされています」と聞き、父に「夜、どこかつらい?」と尋ねると、「背中がね」と返ってきました。その言葉をそのまま看護師に伝えると、痛み止めの使い方が見直され、父が朝まで眠れる日が増えたといいます。父がぽつりと言った「あの歌が聴きたい」には、スマホにイヤホンをつないで応えました。イヤホンを片方ずつ分けて聴いた20分のことを、彼女は「治せなくても、楽にする手伝いはできるんだと思えた時間」と話します。面会のあと車の中で泣く夜は、週に3回ほどから、月に1、2回になりました。

2. 相談を考えた背景

父の抗がん剤治療は2年近く続き、その間、彼女は治療の日のたびに車で送り迎えをしてきました。主治医から「これ以上の抗がん剤は、体への負担のほうが大きくなります」と説明を受け、緩和ケア病棟に移ったのは春のことです。送り迎えの必要がなくなった最初の週、手帳の空白を見て、自分の役目が終わったように感じたといいます。

3. 相談する前に困っていたこと

「がん 家族 何もできない」と検索すると、家族ができることの一覧が並んでいましたが、読むほど、自分ができていないことばかりが目につきました。看護師に「何か手伝えることはありますか」と聞いても、「大丈夫ですよ」と返されるだけ。面会に行っても父はうとうとしていることが多く、椅子に座って時間が過ぎるのを待っている自分が情けなかったそうです。夜になると、「もっと早く病院に連れて行っていれば」という考えも浮かんでいました。

4. ここを選んだ理由・決め手

職場の同僚にも親戚にも、弱音を吐けずにいました。病院の外の、事情を知らない誰かに聞いてほしい。その夜、LINEにスタンプを一つと、「何もできなくてつらいです」という一行だけを送りました。翌朝いちばんに届いた返事を読んで、平日の昼休みの折り返しをフォームから申し込みました。

5. 相談で話したこと・その後

電話では、担当が最初の20分、評価も助言もせずに話を聞きました。そのあとで、治療中と今とで、彼女の役目がどう変わったかを一緒に言葉にしていきました。父の病状やこれからの見通しについて、担当は判断していません。看護師に聞く質問は3つにまとめ、メモで送りました。「夜につらそうなとき、家族が気づいたことはどう伝えればいいですか」「父が楽に過ごせるよう、家族が整えられることはありますか」「父の好きなことを、病室でしてもよいですか」。最初の面会では看護師が忙しそうで聞けず、次の面会でメモを見せながら尋ねたそうです。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 家族として、この時期にできることや、してほしいことはありますか。
  • 家族が気づいた本人の変化は、どなたに、どのように伝えればいいですか。
  • 医療用麻薬の痛み止めで命が短くなるのではないかと気がかりです。どう考えればよいか、説明していただけますか。
  • 本人の希望(会いたい人、聴きたい音楽など)を叶えるために、病棟でできることはありますか。
  • 家族自身の気持ちがつらいとき、この病院で相談できる人はいますか。

とはいえ、そばにいることしかできないと感じるあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──「そばにいることしかできない」から、「しか」を外してみる

「そばにいることしかできない」という言葉から「しか」を外すと、「そばにいることができる」が残ります。緩和ケアの時期に、ふだんの本人の表情を知っている人として、いちばん近くの椅子に座っていられるのは家族です。医療者がどれだけ手を尽くしても、その椅子には座れません。何もできない、と感じる日があってもかまいません。それでも面会に来て、帰り際に「また来るね」と言えたなら、その日のあなたは役目を果たしています。眠れない、食べられない日が続くときは、その疲れを看護師やがん相談支援センターに話してください。

② 実務のこと──治療の予定表を、「そばで支える」予定表に書き換える

治療中の手帳には、通院や検査の日が並んでいました。緩和ケアが中心になったら、その手帳を「そばで支える」ための予定表に書き換えます。書き込むのは、本人が起きていることの多い時間帯、看護師に様子を聞きやすい時間、家族の誰がいつ面会するか、そして自分が休む日です。家族が何人かいるなら、予定表を共有して、面会が一人に寄らないようにします。看護師に伝えたいことを書く欄を一つ作っておけば、気づいたことをためておけます。目に見える予定があると、「今日は何もしなかった」ではなく、「今日は予定どおりそばにいた」と一日を数えられるようになります。

今日できること

無力感が強い今夜から明日までに、家族ができる3つのこと

  1. 看護師に伝える一文を書く

    今日気づいた本人の変化を一つ、「いつ・どんな様子だったか」の形で一文にして、次の面会で看護師に渡します。

  2. 望みを一つ聞く

    次の面会で「今、いちばんしたいことは何?」と一つだけ聞き、答えを看護師にも伝えます。

  3. 新しい物差しで振り返る

    寝る前に、「本人は少しでも楽だったか」「望みを一つ守れたか」「自分は倒れずにいるか」の3つに、一行ずつ答えを書きます。

よくある質問

治療をやめることに賛成した自分を、責めてしまいます。

治療を続けるかどうかは、多くの場合、本人と主治医が体の状態やこれからの過ごし方を考えて話し合い、決めていくもので、家族の賛成だけで決まるものではありません。緩和ケアは何もしない医療ではなく、つらさを和らげる医療は今も続いています。それでも迷いが消えないときは、主治医に「あのときの判断について、家族として知っておきたいことがあります」と尋ねてかまいません。説明を聞くことで、気持ちの置き場所が見つかることがあります。

本人が「もう何もしなくていい」と言います。本当に何もしなくていいのですか?

その言葉には、「特別なことはいらないから、そばにいてくれればいい」という気持ちが込められていることがあります。家族を疲れさせたくない遠慮から出ることもあります。「してほしくないことはある?」と、逆の向きから聞いてみると、本人の本当の望みが見えやすくなります。何もせずに一緒にいる時間も、本人が選んだ過ごし方として大事にしてください。

本人の前で泣いてしまいました。

泣いてしまったことを、失敗だと思わなくて大丈夫です。涙は、それだけ本人を大切に思っていることの表れで、その気持ちは本人にも伝わっています。気になるなら、「急に泣いてごめんね。それくらい大事なんだよ」と一言添えれば十分です。泣きたい日が毎日続くようなら、看護師やがん相談支援センターに、家族自身のつらさとして話してください。

本人が眠っている時間が長く、話もできません。そばにいる意味はありますか?

意味はあります。呼びかけに目を開けなくなった時期でも、耳は聞こえている可能性があるといわれています。名前を呼ぶ、いつもの声で今日の出来事を話す、好きだった音楽を小さく流す。体に触れるときは、触れてよい場所や力の加減を看護師に確かめてから、手を握ってみてください。話せない時間も、そばにいる時間に変わりはありません。

亡くなったあとに「何もできなかった」と後悔し続けそうで、怖いです。

後悔が出てくるかどうか、どれくらい続くかは人によって違い、前もって言い切ることはできません。今の怖さの中には、失うことを思って先に始まる悲しみ、予期悲嘆が混ざっていることもあります。亡くなったあとにも支えを受けられる場はあり、国立がん研究センター中央病院には、がんで大切な人を亡くした遺族のための遺族ケア外来があります。今のうちから気持ちを話せる相手を一人見つけておくことが、その先の時間の支えにもなります。

「何もできない」と感じた日のことを、話してみませんか

フォームには、今日の面会の様子をひとことと、電話に出やすい時間帯をお書きください。送信のあとすぐに受付確認のメールが届き、その時間帯に担当からお電話します。最初の20分は、評価も助言もせずに聞くだけの時間です。看護師さんに伝えたいことが見つかったら、質問を3つにまとめたメモもお送りします。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    全部をしようとせず、今週の3つに絞る

    ご家族の役割は「そばにいる」「情報を一緒に整理する」「生活を支える」「自分を守る」の4つに分けると、見通しがよくなります。全部を完璧にする必要はありません。今週できることを3つだけ選んでみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「家族として、今いちばん手伝えることは何でしょうか。」

    1. きょうだいや親族で役割を分けて、ひとりに負担を集めない
    2. 診察には、聞きたいことを3つ書いたメモを持っていく
    3. 仕事やお金の手続きは、がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーに相談する

    手元にあると話しやすいもの

    • 家族の役割分担のメモ
    • 次の診察の日時と、付き添える人

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    医療ソーシャルワーカー(病院の相談室など)
    医療費や制度、退院後の暮らし、在宅療養の準備を一緒に考える専門職です。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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