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がん治療中の母の最期を考えてしまう|予期悲嘆との付き合い方

このテーマの総論:母が・父ががんになった|最初の1週間に子どもができること

この記事には、余命や生存率などの数字の話が出てきます。数字は多くの方をまとめた統計で、一人ひとりの予測ではありません。読むのがつらいときは、途中で閉じても大丈夫です。

この記事の結論

親がまだ治療中なのに最期を考えて泣いてしまうのは、大切な人を失うかもしれないと感じた心が、先に悲しみ始める自然な反応です。悲しみと回復への希望は同時にあってよく、どちらかを消す必要はありません。浮かんだ場面を「今のうちにしたいこと」に置き換えると、今の時間に目が向きやすくなります。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「『がん相談支援センター』とは」;国立がん… ほか5件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

母はまだ治療中で、本人も前向きなのに、子どもの自分が先に最期のことを考えて泣いてしまう。それは心が冷たいからでも、回復をあきらめたからでもありません。大切な人を失うかもしれないと感じたとき、実際の別れより前に悲しみが始まるのは、よく知られた心の動きです。

その悲しみがいつ、どのくらいの強さで来るかは人によって違い、検査の結果を待つ時期や季節の行事の前後に強まるなど、波があるのが普通です。前向きな親御さんの横で自分だけが沈んでいるように感じても、悲しみと希望は、同じ心の中に同時にあってかまいません。

この記事では、治療中に最期の場面が浮かんでしまう理由、悲しみと希望が両立する理由、考えが止まらないときの具体的な手順、浮かんだ場面を今の時間に生かす方法、そして前向きな親御さんとの過ごし方を、順にまとめました。

母の前では笑って、ひとりで泣いている方へ

  • 母はまだ治療中で、本人も前向きなのに、母の最期のことを考えて泣いてしまう。
  • まるで母がいなくなることを先取りしているようで、母に申し訳ない。
  • こんなことを考えているなんて、家族にも友人にも言えない。

親はまだ治療中なのに、最期のことばかり考えてしまいます。おかしいでしょうか?

おかしくありません。大切な人を失うかもしれないと感じたとき、実際の別れより前に心が悲しみ始めるのは、よく知られた自然な反応です。最期を考えてしまうことは、親御さんの回復を信じていないことを意味しません。

この心の動きは「予期悲嘆」と呼ばれ、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の機関誌(Foundation News Vol.48、2025年4月)では、「喪失が現実となる以前に起こる悲嘆」と説明されています。この記事では、もう少しやさしい言葉で「先回りの悲しみ」と呼ぶことにします。

先回りの悲しみは、いろいろな形で顔を出します。夕食の席で、母の手首が細くなったことに気づいた瞬間。年末のスーパーで、おせちの材料を見て「来年も一緒に食べられるだろうか」と思ったとき。母の書いた買い物メモを見て、いつかこの字が形見になる日を想像してしまったとき。シャワーを浴びながら、理由もなく涙が出てくることもあります。悲しみと一緒に、そんな想像をした自分への後ろめたさがついてくるのも、この時期によくあることです。

ただ、浮かんでくる場面は予測ではありません。治療がこの先どう進むかは、まだ誰にも分かりません。浮かぶ場面の重さと、親御さんの今の病状は、別のものとして扱ってください。失うことへの怖さそのものとの向き合い方は、親を失うのが怖いときの向き合い方にまとめています。

なぜ、前向きな母の横で、自分だけが先に悲しくなるのですか?

治療を受けている本人と、そばで見ている家族とでは、向き合っているものが違うからです。本人は目の前の治療を乗り切ることに力を使い、家族は先のことを考える時間が長くなりがちで、気持ちの進み方にずれが出るのは自然なことです。

治療中の親御さんの頭の中は、次の治療の日、副作用への対処、体調に合わせた家事の段取りといった、目の前のことで埋まっていることがあります。前向きな言葉は、そうした毎日を乗り切るための構えでもあります。一方、そばで見ている子どもには、本人ほど「今日やること」がありません。そのぶん、空いた時間に先の場面を思い描きやすくなります。

親を失うかもしれないという感覚を、自分が生まれ育った場所の一部を失うような感覚だと話す人もいます。本人の気持ちと同じ速さで進まないのは、当たり前のことです。親御さんの前向きさに合わせなければと無理をする必要はなく、親御さんのほうも、前向きな言葉の裏で同じように揺れている日があるかもしれません。

観点治療中の親御さんそばにいる子ども
頭を占めやすいこと次の治療の日や、副作用への対処この先の見通しや、もしもの場面
気持ちが向く先今日を乗り切ることこの先も一緒にいられるか
手を動かせること治療を受ける、体を休める見守る、調べる、待つ
悲しみが出やすいとき体調が悪い日や、結果を聞く日ひとりの夜や、親の変化に気づいたとき
治療中の親御さんと、そばにいる子どもで、見えているものの違い(一例)

先回りして悲しむのは、母を裏切ることになりませんか?

なりません。悲しみと希望は、どちらか一方を選ぶものではなく、同じ心の中に同時にあってよいものです。最期を思って泣いた日にも、次の治療がうまくいくよう願う気持ちは、ちゃんと残っています。

朝の通勤電車で母の最期を思って涙ぐみ、昼には母と電話で好きなドラマの話をして笑う。同じ一日の中で、悲しみと希望は入れ替わりながら並んでいます。悲しんだからといって希望が消えるわけではなく、希望を持っているからといって悲しまずにいられるわけでもありません。

「考えたら本当になってしまいそう」と、縁起の悪さを気にする人もいます。けれど、心の中で何を思い描いても、それで病気の経過が変わることはありません。先回りの悲しみは、親御さんの体に何の影響も与えず、あなたの心の中だけで起きていることです。

両方の気持ちを抱えるときに役立つのが、「でも」を「そして」に言い換えることです。「悲しい。でも、頑張らなきゃ」は、悲しみを打ち消そうとする言い方です。「悲しい。そして、来週の通院には一緒に行く」と言い換えると、どちらの気持ちも消さずに、次の行動に進めます。悲しみは親御さんを大切に思っている証拠で、希望はその親御さんと今日を過ごす力です。

先回りの悲しみ

  • いつか来る別れを思って、涙が出る
  • 母のいない台所や実家を想像してしまう
  • 季節の行事のたびに「あと何回」と思う

今の希望

  • 次の治療がうまくいくよう願っている
  • 次の休みに母と出かける予定を楽しみにしている
  • 母が笑った話を、誰かに話したくなる
同時にあっていい、2つの気持ち

考えが止まらないときは、どうすればいいですか?

浮かんだ場面を一行だけ書き、その隣に「今日の母」を一行書いて、未来の想像と今日の事実を並べます。考えを止めようと力むより、目の前の親御さんに意識を戻す手がかりを作るほうが、心は落ち着きやすくなります。

先回りの悲しみが描くのは、まだ来ていない日の場面です。その場面を頭の中だけで繰り返していると、想像はどんどん細かくなり、本当に起きたことのように重くなっていきます。そこで、ノートを縦に2つに分け、左に浮かんだ場面を、右に今日の親御さんの様子を書きます。「母のいない台所に立っている」の隣に、「今日の母は、卵焼きを焼きながら鼻歌を歌っていた」。並べて書くと、悲しい場面がまだ想像の中のものであることと、今日の母が確かにここにいることの両方が、目に見える形になります。

悲しみの波が来やすい時間帯が分かっているなら、先に予定を置いておくのも一つの方法です。日曜の夜に沈みやすいなら、その時間に友人と電話する約束を入れる。寝る前に考えやすいなら、寝室にスマホを持ち込まず、温かい飲み物を用意しておく。止めることより、波が来たときの過ごし方を先に決めておくほうが、ずっと楽です。夜中に「最期」という言葉で検索するのは、想像の材料を増やしてしまうので、明るくなるまで待ってください。

浮かんだ場面今日の母
母のいない台所に、一人で立っている卵焼きを焼きながら、鼻歌を歌っていた
これが最後の正月かもしれない来年の初詣はどこに行こうかと話していた
病室で、何も言えずに座っている電話で近所の猫の話をして、大笑いしていた
浮かんだ場面と、今日の母を並べて書いた例

浮かんだ場面を、今の時間に生かすことはできますか?

できます。最期の場面には、「そのとき悔やみそうなこと」が隠れています。それを一つ取り出して、今週できる小さな行動に置き換えると、先回りの悲しみが、親御さんとの今の時間を大切にする道しるべになります。

「母のいない台所」の場面が浮かぶとき、その奥には「母の味を覚えていない」という悔いの予感があるのかもしれません。それなら、次の日曜に煮物の作り方を教わる。「これが最後の正月かもしれない」と思うなら、今年の正月にみんなで写真を撮る。「病室で何も言えない自分」が浮かぶなら、次の電話で、子どものころにしてもらってうれしかったことを一つ話してみる。悲しみが指さしている方向に、今週の一歩を置くのです。

すべての場面を行動に変える必要はありません。ただ悲しいだけの場面もあり、それはそれで、泣いてやり過ごしてかまいません。また、置き換えた行動が「最後にしておくべきことの一覧」になってしまうと、親御さんとの時間がかえって重くなります。煮物を教わる日は、別れの準備ではなく、ただの楽しい日曜日として過ごしてください。治療中の親御さんとの時間の過ごし方は、会う日と会えない日の時間の濃くし方でも詳しく紹介しています。

  1. 1場面を一行で書く浮かんだ場面を、短い一文で書き留める
  2. 2悔やみそうなことを探す「そのとき、何をしておけばよかったと思いそうか」を考える
  3. 3今週の大きさに縮める電話一本、写真一枚、料理一品など、小さな形にする
  4. 4日にちを決める親御さんの体調のよい日を選んで、予定に書き込む
浮かんだ場面を、今週の小さな行動に変える手順

前向きな母に、この悲しみを見せてもいいですか?

全部を打ち明ける必要も、完全に隠す必要もありません。悲しみそのものより、「お母さんとの時間を大事にしたい」という気持ちのほうを言葉にすると、前向きに治療を続ける親御さんにも受け取りやすくなります。

親御さんの前向きさは、治療に向き合うための大事な構えです。そこへ「いなくなるのが怖い」と悲しみをそのまま差し出すと、親御さんは自分の不安より先に、子どもを慰める役に回ってしまうことがあります。かといって、いつも完璧に笑顔でいる必要もありません。ふいに涙ぐんでしまったら、「お母さんのこと、大事だなと思ったら泣けてきた」と、気持ちの向きだけを伝えれば十分です。親の前で泣いてしまうことの考え方は、親の前で泣いていいかを考えた記事にまとめています。

反対に、親御さんのほうから「もしも」の話が出ることもあります。「私がいなくなったら、お父さんのことお願いね」。そんなとき、「縁起でもないこと言わないで」と話をそらしたくなりますが、親御さんは勇気を出して口にしたのかもしれません。前向きにふるまっている人が、実は先のことを話せる相手を探していることもあります。まずは話をさえぎらずに聞き、その場で答えを出さなくてもかまいません。

  • 「うん、聞かせて」
  • 「そう思うことがあるんだね」
  • 「今すぐ決めなくていいから、思ったときに教えて」
  • 「そういう話をしてくれて、うれしい」
  • 「先生にも、一緒に聞いてみようか」
母のほうから「もしも」の話が出たときに、返しやすい言葉

悲しみの波は、いつまで続くのですか?

決まった期間はなく、治療の節目や季節の行事、親御さんの体の変化をきっかけに、寄せては返すことが多いものです。波が来ること自体はおかしくなく、来やすい時期を知っておくと、前もって備えられます。

波が来やすいのは、たとえば検査の結果を聞く日の前、年末年始や親御さんの誕生日、母の日のような行事のころ、髪が抜けるなど見た目の変化に気づいたときです。自分の人生の節目、たとえば子どもの入学式や昇進が近づいたときに、「この姿を母に見せられるだろうか」と悲しみが強まる人もいます。

治療が落ち着いて穏やかな日が続くと、悲しみはしばらく遠のき、何かのきっかけでまた戻ってくる、ということを繰り返すかもしれません。戻ってきたからといって、状況が悪くなったわけではありません。波の来やすい日には、予定を詰め込まない、夜に話を聞いてくれる人と約束しておく、といった備えで十分です。

どんなときは、誰かの手を借りたほうがいいですか?

悲しみがあっても、眠る、食べる、働くがなんとか回っているなら、話せる相手を一人持って様子を見てかまいません。そのどれかが回らなくなってきたときや、消えてしまいたい気持ちがあるときは、専門の相談先を頼ってください。

国立がん研究センターのがん情報サービスは、家族は「第二の患者」ともいわれると紹介しています。治療中の親を見守る子どもの悲しみも、支えを受けてよいものです。眠れない日や食べられない日が続く、仕事が手につかない状態が続くといったときは、ご自身のかかりつけ医や心療内科・精神科に「親の病気がきっかけで」と伝えて相談してください。親御さんの病院のがん相談支援センターは家族だけでも無料・匿名で使え、話した内容が相談した人の同意なく担当医などに伝わることはありません。

こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、かけた場所の都道府県や政令指定都市の公的な相談窓口につながります(受付の曜日や時間は地域ごとに違い、通話料がかかります)。消えてしまいたい気持ちがあるときは、その日のうちに誰かに話してください。24時間・無料の電話窓口としては、よりそいホットライン(0120-279-338)があります。差し迫っていると感じたら、ためらわず119番に電話してください。亡くなる前から受けられる心のケアについては、亡くなる前から受けられる家族の心のケアで詳しく紹介しています。

  1. Q1眠る・食べる・働くのどれかが、回らなくなっていますか

    はいかかりつけ医や心療内科、がん相談支援センターに「親の病気がきっかけで」と相談する

    いいえ話せる相手を一人決めて、波が来たら声をかける

  2. Q2消えてしまいたい、いなくなりたいと感じることがありますか

    はい今日のうちに誰かに話す。夜中ならよりそいホットライン(0120-279-338)へ

    いいえ悲しい日があっても、ひとりで抱えない形を続ける

誰かの手を借りるか迷ったときの分かれ道

母の最期を考えては自分を責めていた娘さんは、何が変わった?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
40代・娘の立場(70代の母が通院で抗がん剤治療中。母は前向きで、週末は実家で一緒に夕食をとる。夫と中学生の子どもと暮らす)
相談のあとに変わったこと
夜ごとに浮かんでいた「母のいない台所」の場面を、月に2回「母の料理を教わる日」に置き換えた。泣く夜はなくならないが、自分を責める言葉が減り、姉にも気持ちを話せるようになった。

1. 相談のあとに変わったこと

相談からふた月がたち、彼女のノートには母に教わった料理が6品並んでいます。月に2回、日曜の午後に実家へ行き、母の横で煮物や酢の物を作ります。「今さら?」と笑う母の声も、メモの端に書き残しています。ほとんど毎晩泣いていたのが、今は週に一度か二度になりました。場面が浮かんだ夜は、ノートの左に場面を、右に「今日の母」を書いて閉じます。姉に打ち明けると、「私も同じこと考えてた」と返ってきて、二人で泣いたそうです。

2. 相談を考えた背景

母のがんが分かったのは春でした。母は「先生を信じて頑張るから」と明るく言い、治療が始まってからも、週末の夕食は変わらず母の手料理でした。ある晩、食卓で母の手首が細くなったことに気づき、その夜、シャワーを浴びながら母の葬儀の場面を思い描いて泣きました。

3. 相談する前に困っていたこと

それから、同じような夜が続きました。「親 がん 最期 考えてしまう」と検索し、悲しみについての文章をいくつも読みましたが、読むほど「母は頑張っているのに、心の中で母を見送っているみたいだ」と自分を責めました。夫に話すと「まだ早いよ」と言われ、それきり誰にも話さなくなりました。

4. ここを選んだ理由・決め手

母の病院のがん相談支援センターも考えましたが、母に知られるのではと不安でした。相談した内容が自分の同意なく伝わることはないと知ったのは、あとのことです。名前を出さずに送れるLINEなら、と午前1時に「母の最期のことばかり考えてしまいます」と送ると、翌朝に返事が届き、その日の昼に電話で話すことになりました。

5. 相談で話したこと・その後

電話の20分、担当は評価も助言もせずに話を聞きました。彼女の希望で、この日の話は記録に残さない形にしてもらったといいます。話し終えたあと、彼女が望んだので、担当は「浮かぶ場面で、いちばん悔やみそうなことは何ですか」と尋ねました。少し考えて出てきた答えが「母の味を知らないこと」で、料理を教わる日が決まりました。担当は母の病状について何も予測していません。「悲しいのは変わらない。でも、悲しみが母のところへ行く理由になった」。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 母の治療が今目指していることを、家族にも分かる言葉で教えていただけますか。
  • 次に検査の結果を聞くのはいつごろですか。家族も一緒に聞いてよいでしょうか。
  • 家族の気持ちのつらさについて相談できる場所は、院内のどこにありますか。
  • (ご自身のかかりつけ医に)家族の病気のことで気持ちが沈み、眠りが浅くなっています。相談に乗っていただけますか。
  • 母が先のことを話したがったとき、医療者の方にも一緒に聞いていただけますか。

とはいえ、悲しみを抱えたまま母のそばにいるあなたへ、伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──悲しみは、母を大切に思う気持ちの別の顔

先回りの悲しみは、消すべき「余計な気持ち」ではありません。親御さんがいてくれることを、心の深いところで大事に思っているからこそ、失う場面を想像しただけで涙が出るのです。治療中の今は、悲しみと希望が日替わりで顔を出す時期です。泣いた夜のあとに、親御さんと普通に笑える朝が来ても、それはどちらも本当の気持ちです。前向きな親御さんに合わせて自分の悲しみを否定しなくていいし、悲しみに合わせて希望を手放す必要もありません。

② 実務のこと──悲しみを話す場所を、日々の予定に組み込んでおく

悲しみの波は予告なく来るので、話す相手をその場で探すのは大変です。週に一度、友人や姉妹と話す時間を決めておく、検査の結果を聞く日の夜は予定を空けて誰かと過ごす、といった形で、悲しみを置く場所を暮らしの予定に組み込んでおきます。きょうだいがいるなら、「波が来たら連絡していい」と互いに約束しておくのも一つの方法です。眠りや食事が崩れやすい人は、自分のかかりつけ医に早めに一度話しておくと、いざというときに相談しやすくなります。

今日できること

今夜から明日までに、悲しみと一緒に過ごすための3つのこと

  1. 場面と今日の母を並べて書く

    今夜浮かんだ場面を手帳に一行書き、隣に「今日の母」を一行書いてページを閉じる。

  2. 悔やみそうなことを一つ選ぶ

    その場面で悔やみそうなことを一つ選び、今週できる小さな行動に書き換える。

  3. ひとりに打ち明ける

    信頼できる人か相談室のLINEに、「母の最期のことを考えてしまう」とだけ送る。

よくある質問

今から悲しんでおけば、その時が来たときに少しは楽になりますか?

楽になるかどうかは人によって違い、はっきりしたことは言えません。参考になる調査に、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の「J-HOPE4」(2018年、215施設の遺族17,147名に調査し、9,071名が有効回答)があり、患者が亡くなることへのこころの準備が「できていた」と答えた人は29%、「ある程度できていた」を含めると85%でした。回答者の多くは緩和ケア病棟で家族を見送った方なので、すべての家族に当てはまる数字ではありませんが、準備がすっかり整ったと言える人は多くないことがうかがえます。今の悲しみで準備を終わらせる必要はなく、悲しんだ分だけ楽になるという決まりもありません。

母の前で、つい涙ぐんでしまいます。

涙ぐんでしまう日があっても大丈夫です。無理にごまかすより、「お母さんのこと、大事だなと思って」と気持ちの向きだけを伝えれば、親御さんも受け止めやすくなります。続けて泣いてしまいそうなときは、「ちょっと飲み物買ってくるね」と席を外してもかまいません。

夫に話したら「まだ治療中なのに」と言われました。

身近な人ほど、早く元気になってほしくて、悲しみを小さく扱ってしまうことがあります。分かってもらえないと感じたら、「解決してほしいわけじゃなくて、聞いてほしいだけ」と最初に伝えてみてください。それでも届かないときは、家族の外に話せる相手を一人持つことも、自分を守る方法です。

考えないようにしようとすると、かえって考えてしまいます。

「考えないように」と思うほど、その考えは強く戻ってきやすいものです。追い払う代わりに、場面を一行だけ書いて隣に今日の母の様子を並べる、悲しみの波が来やすい時間に予定を入れておく、といった形で、考えとの距離を少しずつ取っていってください。

きょうだいは平気そうです。自分だけがおかしいのでしょうか?

おかしくありません。悲しみの出方や時期は人によって違い、平気そうに見えるきょうだいも、ひとりのときには揺れているかもしれません。「最近、母さんのことで考えちゃうことある?」と軽く聞いてみると、思いがけず同じ気持ちを話してくれることもあります。

夜中に最期のことを考えて眠れません。今話せる先はありますか?

よりそいホットライン(0120-279-338)は24時間・無料で、がん専門ではありませんが、今の気持ちを話せます。がんと家族の相談室のLINEは匿名で送れて、夜に届いたものは翌朝いちばんに読んでお返事します。眠れない夜が続くときは、ご自身のかかりつけ医にも相談してください。

先回りの悲しみを、20分だけ聞かせてください

「母のことで」とひとことだけお書きください。受付確認のメールが届いたあと、ご希望の時間帯に担当からお電話し、評価も助言もせずに20分お話を伺います。記録を残さないことも選べます。お話のあと、ご希望があれば、浮かんだ場面を今の時間に生かす方法も一緒に考えます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

    3. お見積りの後にお断りいただいても構いません

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    「あとどれくらい」の答えを待つより、会える時間の使い方を決める

    親御さんの病状の見通しは、主治医や病棟の看護師がいちばんよく知っています。ご家族として尋ねてよいことです。はっきりした数字が出なくても、「会っておいてほしい人を呼ぶ目安」を聞いておくと、動くタイミングを決める手がかりになります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「遠方の家族を呼ぶなら、いつごろが目安になりますか。」

    1. 誰が誰に知らせるか、連絡の順番をきょうだいで決めておく
    2. 泊まるか帰るか迷う夜のために、家族へ連絡をもらう基準を看護師に聞いておく
    3. 仕事の休み方(介護休暇・介護休業など)を、職場に早めに確かめておく

    手元にあると話しやすいもの

    • 家族・親族の連絡先の一覧
    • 勤務先の休みの制度が分かるもの(就業規則など)

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    勤務先の人事・総務の窓口
    介護休業・介護休暇や、治療と仕事の両立の制度を確かめられます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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