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親のがん、最後に何をしてあげればいい?体力に合わせた小さなこと

このテーマの総論:母が・父ががんになった|最初の1週間に子どもができること

この記事には、余命や生存率などの数字の話が出てきます。数字は多くの方をまとめた統計で、一人ひとりの予測ではありません。読むのがつらいときは、途中で閉じても大丈夫です。

この記事の結論

特別なことができなくても大丈夫です。起きて話せる日は希望を一つ聞く、横になる時間が長い日は短い時間で終わる心地よさを届ける、ほとんど眠っている日は声と手のぬくもりを届ける。親の体力と意識の段階に合わせて、小さなことを一つ選べば十分です。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:Blundon EG, et al. Electrophysiological… ほか4件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

お母さんに最後にしてあげられることは、旅行や特別なイベントのような大きなことでなくてかまいません。その日の体力と、目を覚ましていられる時間に合わせた小さなことを一つずつ重ねていくことが、そのまま「してあげられること」になります。

体力や意識の状態は、日によっても時間帯によっても変わります。昨日できたことが今日はできない日もあれば、思いがけず話せる日もあります。だから、してあげることを一つに決めておくより、段階ごとの「引き出し」をいくつか持っておくほうが、面会のたびに迷わずにすみます。

この記事では、親の体力と意識を「起きて話せる時間がある」「横になっている時間が長い」「ほとんど眠っている」の3つの段階に分け、それぞれで子どもができる小さなことと、声や写真を残すときの頼み方をまとめました。

「何をしてあげれば」と考え続けている方へ

  • 母に残された時間が短いと分かった。何か特別なことをしてあげたいのに、何も思いつかない。
  • 旅行に行ける体力はもうない。毎日面会に行って、ただ座っているだけでいいのだろうか。
  • あとになって「あのとき、ああしておけば」と悔やむのが怖い。

がんの母に、最後に何をしてあげればいいでしょうか。特別なことができる自信がないのですが?

特別なことができなくても大丈夫です。その日の体力と意識に合わせて、そばにいる、話を聞く、思いを伝える、声や写真を残す、希望を聞く、といった小さなことを一つ選べば十分です。大きな計画より、続けられる小さなことのほうが、お母さんの負担になりません。

元気だったころのお母さんを思い浮かべると、温泉や、好きだった店での食事のような「特別なこと」が浮かびます。けれど体力が落ちている時期には、外出や長い会話そのものが大仕事になり、喜ばせたい気持ちが、かえってお母さんを疲れさせてしまうこともあります。

「特別なことを」と探してしまう気持ちの奥には、「愛されていたと感じてほしい」「あとで悔やみたくない」という願いがあります。願いの大きさと、することの大きさは、同じでなくてかまいません。下の表は、5つの小さなことを、体力と意識の3つの段階に分けて並べたものです。面会の前に、今日のお母さんがどの段階に近いかを思い浮かべて、その列から一つ選んでみてください。

小さなこと起きて話せる時間がある横になっている時間が長いほとんど眠っている
そばにいる同じ番組を見て、感想を一言交わす同じ部屋で、小さな作業をしながら過ごす手を握る、髪をなでる
話を聞く「今日はどうだった?」と短く聞くうなずきで答えられる問いにする表情や寝息の変化に気を配る
思いを伝える何かをしながら「ありがとう」を一言短い手紙を読み上げる耳元で名前を呼び、話しかける
声や写真を残す本人の了解を得て、一緒の写真や声を残す手を重ねた写真など、負担の少ない形で新たには撮らず、家族の日記に書く
希望を聞く会いたい人、食べたいもの、過ごしたい場所「〜する?」と選べる形で聞く以前に聞いた希望を、家族で守る
5つの小さなことを、親の体力と意識の3段階で見る

子どもだからこそできる関わり、たとえば昔の話を聞くことや、親として頼る場面を残すことについては、子どもだからできる関わりで詳しく紹介しています。この記事では、体力の段階ごとの選び方に絞ってお伝えします。

毎日面会に行って、ただ座っているだけでいいのですか?

いいのです。同じ部屋に、いつもの顔がある。それだけで、お母さんにとっては心強い時間になりえます。手持ちぶさたでつらいときは、小さな作業を持ち込み、話さない時間もそのまま一緒に過ごしてください。

ベッドの横の丸椅子に座り、眠っているお母さんの顔を見ながら、気づけばスマホで「最後に してあげること」と検索している。そんな面会が続くと、「自分は何の役にも立っていない」と感じてしまいます。けれど、目を覚ましたときに見慣れた顔があること、足音や話し声で家族がいると分かることは、言葉にしなくても伝わっていることがあります。

座っている時間を少し楽にするには、手を動かせる作業を一つ持ち込むのがこつです。洗濯物をたたむ、手帳を書く、本を読む。話さなければと思うと沈黙が重くなりますが、それぞれが別のことをしながら同じ部屋にいる時間は、家で過ごしていたころの空気に近いものです。面会の長さも、お母さんの体力に合わせてかまいません。疲れた様子が見えたら、顔を見て一言かけ、早めに切り上げるのも思いやりです。

持ち込める小さな作業

  • 洗濯物をたたむ、持ち物を整える
  • 手帳や日記を書く
  • 本や新聞を読む

話さなくても届くこと

  • 好きだったラジオや音楽を小さく流す
  • 窓の外の天気や季節を一言伝える
  • 帰りぎわに手や肩にそっとふれる
ただ座っている時間を、少し楽にする工夫

起きて話せる時間があるうちは、何ができますか?

話せる時間があるうちは、会いたい人、食べたいもの、過ごしたい場所といった希望を少しずつ聞く、思いを短く言葉にする、了解を得て一緒の写真や声を残す、ができます。一度に全部ではなく、一回の面会で一つで十分です。

話せる時間は、一日の中でも波があります。午前中のほうが話しやすい、痛み止めが効いている時間は楽そう、といったリズムは、看護師さんや付き添っている家族が知っていることが多いので、面会の時間をそこに合わせると、短い時間でも言葉を交わしやすくなります。

希望は、大きな問いより、答えやすい小さな問いから聞きます。「今度、何か食べたいものある?」「会っておきたい人はいる?」「家と病院、どっちが落ち着く?」。国立がん研究センターの「遺族調査報告書 2023年度調査」(2025年7月公表、2021年にがんで亡くなった方の遺族1,226名)では、医師と最期の療養場所を話し合ったと振り返った遺族は53%で、前回の36%から増えていました。裏を返せば、半数近くは「話し合った」と答えていないことになります。厚生労働省が「人生会議」と名づけたACP(アドバンス・ケア・プランニング)も、望む医療やケアを家族や医療・ケアチームとくり返し話し合い、共有していく取り組みとされています。一度で決めきらなくてよい、ということです。

思いを伝えるのは、照れくさいものです。爪を切りながら、髪をとかしながら、というように、手を動かしながらのほうが「ありがとう」は口から出やすくなります。言葉の選び方に迷うときは、最期に伝える5つの言葉も手がかりになります。

横になっている時間が長くなったら、何ができますか?

長い会話や外出の代わりに、短い時間で終わる心地よさを届けます。爪を整える、ハンドクリームを塗る、髪をとかす、好きな音楽を小さく流す。声かけは「うん」で答えられる形にして、疲れが見えたら途中でやめてかまいません。

この段階では、起きていられる時間が短くなり、話すことにも体力を使うようになります。質問を重ねるより、「窓、少し開けようか」「この曲かけていい?」と、うなずくだけで答えられる声かけにすると、お母さんの負担が減ります。

手や足にふれるケアは、言葉より先に気持ちが届くことがあります。ただ、むくみや皮膚の弱りがある場所もあるので、さすってよいか、クリームを塗ってよいかは、看護師さんに先に確かめておくと安心です。好きだったものを、五感に合わせて少しずつ届けるのもひとつの方法です。愛用のひざ掛けを足元にかける、家族の写真を目に入る場所に置く、好きだった果物をひと口だけ味わってもらう。においの強いものや食べ物は、体調によって負担になることもあるので、持ち込む前に病棟に聞いてみてください。

  1. 1様子を見る表情や呼吸を見て、起きていられそうかを確かめる
  2. 2ひとつ届ける手のケア、音楽、写真など、短く終わることを一つだけ
  3. 3うなずきで話す「うん」で答えられる声かけにして、返事を急がない
  4. 4早めに休ませる疲れが見えたら切り上げ、「また来るね」と伝える
横になっている時間が長い日の、面会の流れの一例

ほとんど眠っているようになったら、もうできることはないのですか?

あります。反応が薄れても耳は聞こえている可能性があるといわれ、名前を呼ぶ、手を握る、いつもの話をする、といった関わりは続けられます。唇を湿らせる、部屋の明るさや音を整えるなど、眠りを守ることもしてあげられることです。

ホスピスで過ごす患者さんの脳波を記録したカナダの研究(ブリティッシュコロンビア大学、2020年、Scientific Reports)では、呼びかけに応えなくなったあとも、音に反応を示す脳があったと報告されています。反応のない状態で調べられたのは5人だけで、聞いた言葉の意味まで受け取れているかは、まだ分かっていません。それでも、聞き慣れた声で「来たよ」「今日は雨だったよ」と話しかけることを、ためらう理由にはなりません。反応がなくなってからの話しかけ方は、反応がなくても声は届くのかにまとめています。

眠りを守ることも、この段階でできる大事な関わりです。照明を少し落とす、テレビの音を小さくする、乾いた唇を湿らせる、布団のしわを伸ばす。どれも数分で終わることですが、お母さんが楽に眠れる環境を整えることは、そのまま「してあげられること」です。目を開けない日が続いても、そばで過ごした時間は、ちゃんとお母さんとの時間です。

昨日は話せたのに、今日は眠っている。段階が行き来するときは?

段階は一方向に進むとは限らず、日によって、時間によって行き来します。面会の前に一つに決めておくより、3つの段階それぞれの小さなものを鞄に入れておき、病室でその日の様子を見てから選ぶと迷いません。

昨日は冗談まで言っていたのに、今日は一度も目を開けない。反対に、眠ってばかりだったお母さんが、ある朝すっきりした顔で「お茶が飲みたい」と言うこともあります。最期が近い時期には、こうした波がよく見られます。持ち直したのかどうかは医療者に確かめるとして、家族にとって助けになるのは、その日の段階に合わせて、用意していたものを入れ替えられることです。

そのために、段階ごとの小さなものを一つずつ鞄に入れておく方法があります。病室に入る前に、ナースステーションで「今日の母はどんな様子ですか」と一言聞いておくと、選ぶ手がかりになります。思いがけず話せる日が来たら、希望を一つ聞いたり、伝えたかった一言を渡したりする時間に使ってください。眠っている日が続いても、用意していたハンドクリームや音楽で、その日の一つは選べます。

  • 話せる日のために:聞いてみたい問いを一つ書いたメモ
  • 話せる日のために:一緒に眺めたい家族の写真
  • 横になる日のために:ハンドクリームや爪やすり
  • 横になる日のために:好きな曲を入れたスマホ
  • 眠っている日のために:唇を湿らせる保湿剤(使ってよいか看護師さんに確認)
  • 自分のために:飲み物と、ひと息つける軽い食べ物
面会の鞄に入れておく、段階ごとの小さなもの

写真や声を残したいとき、本人にどう頼めばいいですか?

まず本人の気持ちを聞き、「孫に見せたいから」のように理由を添えて頼みます。姿が変わったことを気にしている場合もあるので、断られたら引き、手だけの写真や声だけの録音など、負担の少ない形を選んでもらいます。

写真や声は、あとになって家族を支えてくれるものになりえます。けれど、病気でやせた姿や、かすれた声を残されたくない、と感じる方もいます。だからこそ、残すかどうか、どんな形で残すかは、お母さん自身に決めてもらうことが前提です。黙って撮ったり録音したりすることは、どんなに大切に思う気持ちからでも控えてください。

頼み方は、残したい理由を先に伝えると、受け取ってもらいやすくなります。「孫が大きくなったら、おばあちゃんの声を聞かせたいんだ」。顔を写すのに抵抗があれば、手を重ねた写真、好きな歌を一緒に口ずさんだ声、短い一言の録音など、負担の少ない形を選んでもらえます。撮ったものはその場で見せ、気に入らなければ消すと約束しておくと、安心して応じてもらいやすくなります。眠っている時間が長くなってから新たに撮るのは、元気なうちに本人の了解をもらっていた場合だけにしておくと、あとで迷わずにすみます。

  1. Q1お母さんは、今、自分の気持ちを伝えられる状態ですか

    はい理由を添えて頼み、顔か手か、写真か声かを選んでもらう

    いいえ新たには撮らず、その日の様子を家族の日記に書いておく

  2. Q2頼んでみて、ためらう様子がありましたか

    はいその場で引き、日を改めるか、手だけ・声だけなど別の形を提案する

    いいえ撮ったものを見せ、誰に見せてよいかを聞いておく

写真や声を残したいと思ったときの分かれ道

何もできなかった日は、どう考えればいいですか?

眠っていて話せなかった日も、そばに座っていた時間は消えません。できなかったことより、今日そこにいたことを数えてください。疲れて早めに帰った日も、明日また来るための選択です。

用意していったハンドクリームを、一度も出さずに帰ってきた。話しかけようとしたのに、言葉が出てこなかった。そんな日の帰り道は、「今日も何もしてあげられなかった」という思いでいっぱいになります。けれど、お母さんの側から見れば、目を開けたときに子どもの姿があった、それだけで一日の中の確かな出来事です。

家族は、本人を気づかうあまり自分の気持ちを後回しにしやすく、そのうえ自分の暮らしも回し続けなければなりません。国立がん研究センターのがん情報サービスにも、「ご家族は、『第二の患者』ともいわれます」という一文があります。看病や面会の合間に、自分が眠ること、食べることを後回しにし続けると、面会に行く力そのものがなくなってしまいます。休むことは、お母さんから離れることではありません。

「特別なこと」を探し続けていた娘さんは、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
30代・娘の立場(母が緩和ケア病棟に入院中。小学生の子どもがいて、面会は夕方の1時間ほど)
相談のあとに変わったこと
特別なことを探すのをやめ、母の体力に合わせて、面会ごとに小さなことを一つだけ選ぶようになった。母と一緒に口ずさんだ歌の録音が、家族の宝物になった。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から2週間で、Fさんの面会の過ごし方は変わりました。以前は病室に入る前から「今日こそ何かしなければ」と気が重く、1時間のうち半分ほどはスマホで検索をしていました。今は病室に着いてお母さんの様子を見てから、その日の一つを決めます。目を開けている日は、昔よく一緒に歌った曲を口ずさみ、お母さんの了解を得て録音しました。眠っている日は、爪を整えて、ハンドクリームを塗って帰ります。「録音を聞くと、母の台所の音まで思い出す」とFさんは話します。

2. 相談を考えた背景

お母さんは60代。治療を終えて緩和ケア病棟に移ったとき、主治医から、残された時間は長くないと説明を受けました。Fさんは、元気なころに約束していた温泉旅行を思い出し、「せめて何か特別なことを」と考えるようになりました。

3. 相談する前に困っていたこと

外出の許可をもらって近くの公園へ、と計画しましたが、当日の朝にお母さんの体調が崩れて取りやめになりました。病室で眠るお母さんの横で、「何もしてあげられない」と泣いてしまったといいます。仕事と子育ての合間の面会は夕方の1時間だけで、その時間を無駄にしたくないという焦りが、かえって面会を重くしていました。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のがん相談支援センターで療養のことを相談できるのは知っていましたが、まずは誰かに気持ちを聞いてほしいと思っていました。がんと家族の相談室に、評価も助言もせずに話を聞く20分があると知り、子どもが寝たあとにフォームを送りました。お名前はニックネームでよかったことも、気持ちを軽くしたそうです。

5. 相談で話したこと・その後

電話の担当は、はじめの20分、Fさんの話をただ聞きました。Fさんが「それでも何かしたい」と話すと、担当は一般的な関わり方の例を挙げながら、お母さんの様子を「話せる日」「横になっている日」「ほとんど眠っている日」に分け、それぞれでできそうなことをFさんと一緒に書き出しました。お母さんの見通しについての予測はしていません。録音は、お母さんに「声を残してもいい?」と聞いてからにすると決めました。初めて頼んだ日は「こんな声、恥ずかしい」と断られましたが、数日後、お母さんの方から「あの歌なら」と言ってくれたそうです。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 母が起きていて楽そうなのは、一日のうち、どの時間帯が多いですか。
  • 手や足にふれたり、ハンドクリームを塗ったりしてもよいですか。避けたほうがよい場所はありますか。
  • 好きだった食べ物をひと口だけ持ってきてもよいですか。どんな形なら安全ですか。
  • 病室で音楽を流したり、家族の写真を飾ったりしてもよいでしょうか。
  • 体調のよい日に、短い外出や外泊をすることはできそうですか。

とはいえ、「してあげたい」に追い立てられないでほしい2つのこと

① 気持ちのこと──小さなことは、後悔をゼロにするための宿題ではありません

どれだけ心を尽くしても、「もっとできたのでは」という思いは、少しは残るものです。それは、お母さんを大事に思ってきた気持ちの大きさの裏返しで、足りなかった証ではありません。小さなことを選ぶのは、後悔を消すための宿題をこなすためではなく、今日のお母さんと一緒にいる時間を、少しだけ心地よくするためです。できた日も、できなかった日も、それでいいのです。

② 実務のこと──面会の当番と、その日の様子をつなぐ仕組みを作る

家族が交代で面会するなら、誰がいつ行くかを簡単な表にし、その日にお母さんが喜んだこと、嫌がったことを一行ずつ家族のグループに残すようにします。「今日は手のクリームを気持ちよさそうにしていた」と分かれば、次に行く人が同じことを続けられます。仕事をしながら面会に通う人は、介護休暇が1年に5日(対象の家族が2人以上なら10日)まで、時間単位でも取れることを覚えておくと、夕方の面会を少し早めるといった使い方ができる場合があります。対象になるかどうかや、職場での手続きは、勤め先に確かめてください。

今日できること

明日の面会に向けて、今夜できる3つのこと

  1. 小さな持ち物を一つ入れる

    ハンドクリーム、爪やすり、好きな曲を入れたスマホ、家族の写真など、鞄に入る小さなものを一つだけ用意します。

  2. 聞いてみたい問いを一つ書く

    「今度、何か食べたいものある?」のように、明日答えてもらえそうな問いを一つだけメモしておきます。答えが返ってこなくても大丈夫です。

  3. 今の気持ちを預ける

    何をしても足りない気がして眠れない夜は、がんと家族の相談室に今の気持ちを送ってください。ただ聞いてほしいだけでもかまいません。

よくある質問

母が「何もしなくていいから」と言います。本当に何もしなくていいのですか?

その言葉は、気をつかわせたくない、という思いやりから出ていることがあります。何かを「してあげる」より、同じ部屋で静かに過ごす、帰りぎわに手にふれる、といった小さな関わりを続けるほうが、お母さんにとって負担が少ないかもしれません。何もしない時間を一緒に過ごすことも、ひとつの「してあげられること」です。

外出や外泊をさせてあげたいのですが、もう無理でしょうか?

体の状態や、病院・在宅の体制によって違います。家族だけで判断せず、主治医や看護師さんに「体調のよい日に、短い外出はできそうですか」と尋ねてみてください。外出が難しくても、窓から外を眺める、季節の花を病室に持ち込む、家の様子を動画で見せる、といった形で外の空気を届けることはできます。

きょうだいと「してあげたいこと」の意見が合いません。

どちらの案も、お母さんを思う気持ちから出ていることを、まず認め合えると話しやすくなります。そのうえで、お母さん自身が何を望んでいるかを中心に置き、話せるうちに本人に選んでもらうのがいちばん確かです。やり方が違っていても、日を分けてそれぞれのやり方で関わることもできます。

写真を撮られるのを嫌がります。でも、何か残したいです。

嫌がる気持ちを大事にしてください。手だけの写真、声だけの録音、愛用していた物の写真、家族が書く面会の日記など、本人の姿を写さずに残せる形もあります。日を改めて、残したい理由を伝えたうえで、もう一度聞いてみると、別の形なら応じてくれることもあります。

母の好物を、少しだけ病室に持っていっても大丈夫ですか?

病棟によって決まりがあり、飲み込む力や体調によっては負担になることもあるので、持っていく前に看護師さんに確かめてください。ひと口だけ味わう、においを楽しむ、といった小さな形なら、勧めてもらえることもあります。

眠っている母の横で、涙が出てしまいます。泣いてもいいのですか?

泣いてかまいません。涙は、お母さんとの時間を大事に思っているからこそ出てくるものです。声が届いているかもしれないと気になるときは、いったん廊下に出て深呼吸をし、落ち着いてから戻る方法もあります。泣いたあとに、手を握って「また来るね」と声をかけられれば、それで十分です。

仕事があって、毎日は面会に行けません。

面会の回数で、思いの深さが決まるわけではありません。行けない日は、短い電話や、家族のグループに届く写真に一言添えるなど、離れていてもできる関わりがあります。面会の時間を少しでも確保したいときは、時間単位で取れる介護休暇などの制度を勤め先に確かめてみてください。

次の面会でできる「小さなこと」を、一緒に選びませんか

お母さん(お父さん)の今の様子と、面会に行ける時間帯、電話に出やすい時間帯を書いてください。フォームを送ると、受付確認のメールがその場で届きます。そのあと、フォームに書いていただいた時間帯に合わせて、担当がお電話します。まずはお気持ちを伺い、そのうえで、お母さんの体力に合わせた小さなことを一緒に一つ選びます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

    3. お見積りの後にお断りいただいても構いません

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    「あとどれくらい」の答えを待つより、会える時間の使い方を決める

    親御さんの病状の見通しは、主治医や病棟の看護師がいちばんよく知っています。ご家族として尋ねてよいことです。はっきりした数字が出なくても、「会っておいてほしい人を呼ぶ目安」を聞いておくと、動くタイミングを決める手がかりになります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「遠方の家族を呼ぶなら、いつごろが目安になりますか。」

    1. 誰が誰に知らせるか、連絡の順番をきょうだいで決めておく
    2. 泊まるか帰るか迷う夜のために、家族へ連絡をもらう基準を看護師に聞いておく
    3. 仕事の休み方(介護休暇・介護休業など)を、職場に早めに確かめておく

    手元にあると話しやすいもの

    • 家族・親族の連絡先の一覧
    • 勤務先の休みの制度が分かるもの(就業規則など)

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    勤務先の人事・総務の窓口
    介護休業・介護休暇や、治療と仕事の両立の制度を確かめられます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    • Blundon EG, et al. Electrophysiological evidence of preserved hearing at the end of life. Scientific Reports. 2020. doi:10.1038/s41598-020-67234-9 https://psych.ubc.ca/?p=25979
    • 国立がん研究センター「遺族調査(H29予備調査)結果」2018年;国立がん研究センター がん対策研究所「患者さまが受けられた医療に関するご遺族の方への調査報告書(2018-2019年度調査)」2022年;国立がん研究センター「遺族調査報告書 2023年度調査」2025年 https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/1226/index.html
    • 厚生労働省「『人生会議』してみませんか」/厚生労働省「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を『人生会議』に決定しました」/厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html
    • 国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」 https://ganjoho.jp/public/support/family/fam/index.html
    • 厚生労働省「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」/厚生労働省「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」/厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト「特別な休暇制度とは」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001407488.pdf
    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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