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がんの家族との最後の時間|思い出作りは「いつも通り」でいい理由

このテーマの総論:がんの家族と後悔しないために|今できる5つのことと時期別の表

この記事の結論

特別な思い出を作らなければ、と焦らなくて大丈夫です。いつもの食卓やテレビの時間は、本人が病人ではなく家族の一人でいられる時間で、体力もあまり要りません。体調で予定が変わったら、やめるのではなく小さくして続ければ十分。最後の会話も、いつもの言葉でかまいません。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」 https:/… ほか6件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

がんの家族との残された時間に、特別な思い出を作らなければいけない、ということはありません。朝のお茶、夕方のニュース、いつもの口げんか。病気の前から続いてきた場面を、今の体調に合う大きさで続けていくことが、本人にとっても家族にとっても、無理のない「一緒に過ごす」形になります。

本人の体調や、残された時間の流れ方は一人ひとり違い、先週できたことが今週は難しくなることも、反対に落ち着いた日が続くこともあります。だからこそ、一度きりの大きな予定に願いを託すより、何度でも繰り返せるいつもの時間を大事にするほうが、体調の波に振り回されにくくなります。今週の予定の組み立て方は3つの決めごとで考える今週の過ごし方に任せ、この記事では「思い出を作らなきゃ」という焦りをほどくことに絞ってお伝えします。

「思い出を作らなきゃ」と焦っている方へ

  • 旅行や外食を計画するのに、本人は疲れていて乗り気ではない。
  • 特別なことをしないと後悔しそうで、でも本人に無理をさせるのも違う気がする。
  • どう過ごせば正解なのか分からないまま、何もしない日が過ぎていく。

この記事で分かること

  • 特別な思い出より、いつも通りの時間を大事にしてよい理由
  • いつもの場面を、その日の体調に合わせて小さくする方法
  • 予定が取りやめになった日に、本人にかけられる言葉
  • 「最後の会話」を特別にしようと構えすぎない考え方

がんの家族との残された時間を、どう過ごせばいいですか?特別な思い出を作らなければいけませんか?

作らなくても大丈夫です。いつもの食卓、いつものテレビ、いつもの口げんか。本人が病人ではなく家族の一人でいられる時間は、それだけで一緒に過ごした確かな時間です。特別な予定は、本人が望んだときに足せば足ります。

「残された時間を大切に」と言われると、何か形に残る出来事を作らなければ、と感じるのは自然なことです。けれど、特別な予定と、いつもの時間とでは、本人と家族に求めるものがかなり違います。旅行や記念の食事は、準備にも当日にも体力を使い、終わったあとに疲れが残ることがあります。「最後の思い出に」という空気が、かえって本人に病気の重さを意識させてしまうこともあります。

いつもの時間は、その反対です。体力をあまり使わず、何度でも繰り返せて、本人がそこで果たしてきた役割も続けられます。特別な一日を否定する必要はありませんが、思い出の土台になるのは、むしろ毎日の方だと考えてみてください。

特別な予定

  • 準備にも当日にも体力を使い、あとに疲れが残ることがある
  • 一度きりなので、体調が崩れると取りやめになりやすい
  • 「最後の思い出に」という空気が、病気の重さを意識させることがある

いつも通りの時間

  • 体力をあまり使わず、その日の調子で長さを変えられる
  • 何度でも繰り返せるので、一回できなくても次がある
  • 本人が家族の中で果たしてきた役割を、そのまま続けられる
特別な予定と、いつも通りの時間が、本人と家族に求めるもの

なぜ「いつも通り」の時間に意味があるのですか?

いつもの時間の中では、本人は「看病される人」ではなく、ニュースに文句を言う父、味見をして塩を足す母のままでいられるからです。特別な一日は一度きりですが、いつもの時間は回数を重ねるたびに、家族の中に少しずつ積もっていきます。

病気がすすむと、本人の毎日は「してもらうこと」で埋まりがちです。体を起こしてもらう、薬を出してもらう、予定を決めてもらう。その中で、いつもの場面だけは、本人が自分の席に座っていられる場所です。毎朝の新聞を読み上げる、洗濯物のたたみ方に口を出す、孫の成績を気にする。そうした役割が続いていることは、本人にとって「まだ家族の中に自分の居場所がある」という手ごたえになります。

家族の側にとっても、いつもの時間は特別な準備が要らないぶん、そばにいることそのものに気持ちを向けられます。旅行の段取りや店の予約に追われることなく、本人の顔色や声の調子に気づける。いつもの湯のみ、いつもの番組、いつもの「おかえり」。何度も繰り返された場面は、あとで振り返ったときにも、その人らしさと結びついて思い出されることがあります。

「思い出を作らなきゃ」という焦りは、どこから来るのですか?

「あとで後悔したくない」という気持ちと、残された時間を数えてしまう怖さから来ていることが多いものです。焦りは本人を大事に思う気持ちの裏返しですが、焦りのまま予定を詰めると、本人も家族も疲れてしまいます。

周りから「大切な時間だね」「思い出を作ってあげて」と声をかけられる。インターネットには、家族で出かけた旅行の話や、やりたいことのリストが並んでいる。そうしたものに触れるたび、何もしていない自分が足りないように感じてしまいます。まだ一緒にいるのに、失ったあとの悲しみが先に押し寄せてくる。この悲しみには「予期悲嘆」という呼び方があり、喪失が現実となる以前に起こる悲嘆と説明されています。焦りの奥には、この悲しみが隠れていることもあります。

焦りに気づいたら、予定を足す前に、自分に一つだけ問いかけてみてください。「これは本人がしたいことか、それとも自分が安心したいことか」。自分が安心したいことだと気づいても、責める必要はありません。そのときは、予定を増やすのではなく、自分の気持ちを話せる場所を一つ持つほうが、焦りは静かになっていきます。後悔を減らすための考え方の全体は、今できる5つのことと時期別の表にまとめています。

体調に合わせて、いつもの時間はどう作ればいいですか?

新しい予定を足すより、いつもの場面を体調に合わせて小さくします。食卓に並べなくても同じ時間に同じ部屋で食べる、外に出られない日は窓を開けて外の音を入れる。場面を残すことが大事で、形は変えてかまいません。

まず、病気の前から続いていた「いつもの場面」を思い出してみます。朝いちばんのお茶、昼のワイドショー、夕方の犬の散歩、寝る前の晩酌。その場面のうち、今の体でも続けられる部分はどこかを探します。散歩に行けないなら、犬を枕元に連れてきて、なでてもらう。晩酌が難しければ、いつものグラスにお茶を少しだけ注いで、乾杯の音だけ鳴らす。場面の「芯」が残っていれば、形が小さくなっても、いつもの時間は続いています。

体のつらさが強いと、いつもの場面も楽しめません。痛みや息苦しさは、我慢せずに医療者に伝えてください。緩和ケアは、本人と家族の生活の質を高めることを目指すもので、がんと診断されたときから受けられます(国立がん研究センター がん情報サービス)。つらさが和らぐと、いつもの場面に戻れる日が増えることがあります。

いつもの場面体調のよい日疲れやすい日
朝のお茶食卓で向かい合って飲むベッドの横に湯のみを二つ並べる
夕方のニュース一緒に見て、あれこれ言い合う音だけ流して、手をさすりながら聞く
外の空気家の前を少し歩く、車で近所を回る窓を開けて、風と外の音を入れる
家のこと料理の段取りや、洗濯物のたたみ方の指示役「今日の味つけ、どうしよう?」と相談だけする
寝る前いつもの話をしてから「おやすみ」「おやすみ」だけを、いつもの声で
いつもの場面を、その日の体調に合わせて小さくする例

本人が「出かけたい」と言ったら、特別な予定を入れてもいいですか?

もちろんです。本人の望みから生まれた特別な予定は、家族の焦りから生まれた予定とは違います。体や治療に関わることは主治医や看護師に確かめ、時間を短めにして、当日の体調で取りやめることも最初から計画のうちに入れておきます。

いつも通りでいいというのは、特別なことをしてはいけない、という意味ではありません。「もう一度、あの店のうなぎが食べたい」「孫の運動会を見に行きたい」。本人が言い出した願いには、その人にとっての大事な理由があります。家族の段取りの手間より、その理由のほうを大事にしてください。会いたい人や行きたい場所を叶える具体的な段取りは、会いたい人・行きたい場所を叶える段取りで詳しく取り上げています。

計画するときのこつは、「行けたら上出来、行けなくても大丈夫」という形にしておくことです。予約は取り消しやすいものにする、行き先の近くで休める場所を調べておく、帰る時間を先に決めておく。前後の日は予定を空けて、疲れが出ても休めるようにしておきます。

  1. Q1それは、本人が言い出したことですか

    はい主治医や看護師に、今の体調で気をつけることを確かめてから計画する

    いいえ家族の思いつきなら、まず本人に「どう?」と軽くたずねてみる

  2. Q2当日の体調で取りやめても、がっかりしすぎない形ですか

    はいそのまま日にちを決める

    いいえ予約を取り消しやすくする、近場に変えるなど、形を軽くする

  3. Q3予定の前後に、休める日を空けられますか

    はい前後の日は、いつも通りの過ごし方だけにしておく

    いいえ時間を短くするか、別の週に動かす

特別な予定を入れるか迷ったときの分かれ道

予定が体調で取りやめになったら、どう考えればいいですか?

取りやめは失敗ではなく、本人の体を守った判断です。本人が「ごめんね」と言ったら、「今日の予定は一緒にいることだったから、もう叶ってるよ」と返せます。予定は延期にして、手放さずに持っておけます。

楽しみにしていた日の朝、本人が「今日はやめておく」と言う。準備していた家族はがっかりし、本人は家族をがっかりさせたことを気に病む。体調で予定が変わりやすい時期には、こうした朝が何度か来るかもしれません。そのとき、本人にいちばん届いてほしいのは、「行けなかったこと」より「一緒にいられること」のほうです。

がっかりした気持ちは、家族が持っていてかまいません。ただ、それを本人の前で全部出すと、本人は「自分のせいで」と受け取りやすくなります。気持ちは、あとで別の家族や友人に話す。本人の前では、取りやめになった予定の代わりに、いつもの場面を一つ用意しておく。行くはずだった店の話をしながらお茶を飲むだけでも、その日はちゃんと一緒に過ごした日になります。

  • 「今日は家の日にしよう。それもいいね」
  • 「無理しないでくれて、ありがとう」
  • 「行くのは、また体調のいい日にね。楽しみが残ったね」
  • 「今日の予定は、一緒にいること。それはもう叶ってるよ」
  • 「代わりに、あの店の話を聞かせて」
予定が取りやめになった日に、本人にかけられる言葉の例

「最後の会話」は、特別なものにしなければいけませんか?

いいえ。どれが最後の会話になるかは、あとにならないと分かりません。毎回を特別にしようと構えるより、「また明日ね」「おやすみ」といういつもの言葉を、いつも通りに交わすほうが自然です。伝えたいことがあれば、話せる日に少しずつ。

「最後かもしれない」と思いながら話すと、言葉はどうしてもぎこちなくなります。本人も、家族のその構えを感じ取るかもしれません。会話は一度きりではなく、話せる日が来るたびに何度でもあります。言いそびれたことがあっても、次に会ったときに言えばいい。そう考えておくほうが、一回一回の会話を楽に交わせます。

伝えておきたい言葉があるなら、改まった場を待たずに、いつもの会話の中で小分けにします。湯のみを渡すときに「いつもありがとね」。帰りぎわに「また来るね、楽しかった」。呼びかけへの反応が少なくなってからも、耳は聞こえている可能性があるといわれています(2020年にカナダの大学の研究チームが、ホスピスの患者さんの脳波を調べた報告。反応がない状態で記録できたのは5人で、内容の理解までは分かっていません)。いつもの声で、いつもの話を続けてください。最後にかける言葉に迷うときは、特別な言葉はいらない理由も参考になります。

何もしない日が続いても、時間を無駄にしていることになりませんか?

なりません。同じ部屋で別々のことをしている時間も、本人にとっては家族がそばにいる時間です。向かい合って何か話さなければと思うより、並んで同じものを見たり、隣で家事をしたりする時間を、そのまま大事にしてください。

病室で、家族は本を読み、本人はうとうとしている。家の居間で、本人はテレビを見て、家族は洗濯物をたたんでいる。何もしていないように見えるこうした時間を、もったいないと感じる方もいます。けれど、本人の側から見れば、目を覚ましたときに家族がそこにいる、台所から音がする、という安心がそこにあります。

向かい合う時間は、話題を探さなければならず、どちらも少し疲れます。並んでいる時間は、話してもいいし、黙っていてもいい。眠っている時間が長くなってきた時期には、この並んで過ごす時間が、一緒にいる時間の中心になっていきます。

新婚旅行の地への旅を断られた夫は、どう過ごし方を変えた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
50代・夫の立場(50代の妻が、治療を終えて自宅で療養中。高校生の息子と三人暮らし)
相談のあとに変わったこと
妻に断られた遠方への旅行の代わりに、夫婦で20年以上続けてきた「土曜の朝の喫茶店」を、近所の店で30分だけの形にして再開できた。妻が店まで行けなくなってからは、同じカップで家のモーニングに切り替えて続けている。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から6週間で、土曜の朝の30分は5回できました。取りやめになったのは、妻の体調が悪かった1回だけです。はじめのうちは歩いて5分の喫茶店で、妻はトーストを半分だけ食べました。妻が店まで歩くのが難しくなってからは、店で使っていたのと似たカップを買い、家の窓辺にテーブルを寄せてモーニングを続けています。息子がトーストを焼く係です。新婚旅行の写真のアルバムは、旅行の代わりに、土曜の朝に一緒にめくりました。「特別なことは、実はもう毎週してたんだな」と話しています。

2. 相談を考えた背景

妻の治療が終わり、家で過ごすことになったのは、初夏のことでした。主治医からの説明を聞いた帰り道、夫は「元気なうちに、もう一度あそこへ連れて行こう」と、新婚旅行で訪れた北の町への旅を決めました。

3. 相談する前に困っていたこと

旅行会社のパンフレットを集め、休みの段取りまで考えて妻に話すと、妻は「行きたくないわけじゃないけど、疲れるのが怖い」と言いました。夜中に「最後の時間 思い出作り」と検索すると、家族旅行の体験談ばかりが目に入り、何もできない自分が情けなく思えたそうです。妻が昼寝をしている間、居間で何をすればいいのか分からず、ただテレビの音を小さくしていました。

4. ここを選んだ理由・決め手

訪問看護の看護師には妻の体のことを相談していましたが、「どう過ごせばいいか」は聞いてはいけない気がしていました。妻が眠ったあと、フォームにニックネームで「旅行を断られて、何をすればいいか分からない」と書いて送りました。受付確認のメールがすぐに届き、翌日の昼休みに電話をもらうことにしました。

5. 相談で話したこと・その後

電話では、担当がまず20分ほど、何も助言せずに話を聞きました。旅行の話の途中で夫がふと口にしたのが、毎週土曜の朝に夫婦で通っていた喫茶店のことでした。担当はそこで、旅行の代わりではなく、そのいつもの場面を今の体に合う大きさで続けてはどうかと一緒に考えました。妻の体調の見通しについては予測をせず、外出の時間の目安は訪問看護の看護師に聞いてみることを勧めています。再開した2回目の土曜は、妻の体調が悪く中止になりました。落ち込んだ夫に、妻は「来週の楽しみが残ったね」と言ったそうです。その言葉を聞いてから、取りやめの日を怖がらなくなったといいます。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 本人の調子がいい時間帯を、看護のときの様子から教えていただけますか。
  • 本人が出かけたいと言っています。今の体調で、気をつけることを教えてください。
  • 一緒に食卓を囲むとき、食べ方や姿勢で気をつけることはありますか。
  • 出かけたあとに疲れが出たら、どう休ませればよいですか。
  • いつもの過ごし方を続けるうえで、控えたほうがいいことはありますか。

とはいえ、焦ってしまう日のご家族に伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──「ちゃんと一緒にいた」は、もう積み重なっています

特別な思い出を作れていない、と感じる夜があるかもしれません。けれど、毎朝の「おはよう」、帰りぎわの「また来るね」、黙って隣に座っていた午後。そうした時間は、数えていないだけで、もう何度も積み重なっています。焦りが強い日は、今日一緒にいた場面を、寝る前に一つだけ思い出してみてください。それで十分に、今日は一緒に過ごした日です。支える側の気持ちが追いつかないのも、おかしなことではありません。国立がん研究センターのがん情報サービスは、家族は本人を気づかって自分の気持ちを我慢しがちで、そのうえ日常生活も保たなければならないため、ご家族は「第二の患者」ともいわれると説明しています。焦りや悲しみを、家族の外の誰かに話していいのです。

② 実務のこと──「いつも」を家族で分け合っておく

いつもの場面は、一人で全部を守らなくてかまいません。朝のお茶は同居の家族、週末の電話は遠方のきょうだい、孫が来る日は娘、というように、場面ごとに受け持ちを分けておくと、誰かが疲れたときにも、いつもの時間が途切れにくくなります。受け持ちを決めるときは、病気の前に誰がその場面にいたかを手がかりにすると、自然な形になります。体調に合わせた場面の小さくし方に迷ったら、訪問看護や病棟の看護師に「この時間を続けたいのですが、どんな形なら負担が少ないですか」と聞いてみてください。家族自身のつらさや過ごし方の迷いは、全国のがん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターで、家族だけでも、その病院に通っていなくても、無料・匿名で相談できます。

今日できること

今夜から明日にかけて、いつもの時間を取り戻す3つ

  1. 「いつも」を3つ書き出す

    病気の前から続いていた家族のいつもの場面を、朝・昼・夜から一つずつ、紙に書き出す。

  2. 1つを今の体に合う形にする

    3つのうち1つを選び、時間を短くする、場所を家にするなど、明日できる大きさに変えておく。

  3. 別れ際の一言を、いつも通りに

    帰るときや寝るときの「また明日ね」「おやすみ」を、今日からいつもの声で言う。

よくある質問

家族旅行を計画したら、本人に断られました。どうすればいいですか?

断られたのは、旅行そのものより、疲れることや迷惑をかけることが心配だからかもしれません。「行きたくないわけじゃない」という気持ちが隠れていることもあります。理由をたずねてみて、遠出が負担なら、旅行先の写真を一緒に見る、行くはずだった町の名物を取り寄せるといった、家でできる形を提案してみてください。本人が「家がいい」と言うなら、その言葉どおり、いつもの時間を大事にするのがいちばんの答えです。

親戚から「思い出を作ってあげて」と言われて、つらくなります。

親戚の言葉は、たいてい善意から出たものです。それでも、過ごし方を決めるのは本人と家族です。「本人のペースで、いつも通りに過ごすのがいちばんみたいです」と短く返せば十分です。いつもの時間を大事にしていることは、外から見えにくいだけで、何もしていないこととは違います。

孫にも、何か思い出を残してあげたいのですが。

特別な行事でなくても、孫が来る日をいつも通りに過ごすことが、孫にとっての思い出になります。おやつを一緒に食べる、宿題を見てもらう、昔の話を聞く。本人が疲れやすいなら、来る時間を短めにして、帰りぎわに「また来てね」と言ってもらうだけでもかまいません。写真や声を残したいときは、本人に一言たずねてからにしてください。

本人が眠っている時間が長く、話せる時間がほとんどありません。

話せなくても、そばにいる時間は続いています。眠っている本人の隣で本を読む、手や足に触れる、家族どうしでいつもの話をする。呼びかけに反応が少なくても、耳は聞こえている可能性があるといわれています。目を覚ましたときに「おはよう、いるよ」と声をかけられるよう、本人が起きやすい時間帯を看護師にたずねておくのもよい方法です。

いつも通りにしようとしても、本人の前で涙が出てしまいます。

涙が出るのは、それだけ大事な人だからです。本人の前で泣いてしまっても、取り返しがつかないことにはなりません。「ちょっと泣けてきちゃった」と言って、少し席を外してもかまいません。涙が止まらない日が続く、眠れない夜が重なるといったときは、がん相談支援センターや、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556。かけた場所の都道府県などが行う公的な相談窓口につながり、受付時間は地域で異なり、通話料がかかります)に話してください。

夜中に、もっと何かしてあげられたのではと考えてしまいます。

夜は、できなかったことばかりが浮かびやすい時間です。よりそいホットライン(0120-279-338)は、がん専門ではありませんが、24時間・無料で話を聞いてくれる電話です。相談室のLINEにも、名前を出さずに今の気持ちを送れます。夜に届いたものは、翌朝いちばんに読んで返事をします。体の様子が急に変わったときの連絡先は、主治医や病棟、訪問看護です。命に関わると感じたら、119番に電話してください。

本人の「いつもの場面」を、一緒に探しませんか

病気の前から続いていた家族の習慣や、今の過ごし方で迷っていることをひとこと、電話に出やすい時間帯と一緒にお書きください。フォームを送ると受付確認のメールがすぐ自動で返り、その後、書いていただいた時間帯に担当が電話をかけます。今の体調に合う大きさで続けられる、いつもの場面を一緒に考えます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    全部をしようとせず、今週の3つに絞る

    ご家族の役割は「そばにいる」「情報を一緒に整理する」「生活を支える」「自分を守る」の4つに分けると、見通しがよくなります。全部を完璧にする必要はありません。今週できることを3つだけ選んでみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「家族として、今いちばん手伝えることは何でしょうか。」

    1. きょうだいや親族で役割を分けて、ひとりに負担を集めない
    2. 診察には、聞きたいことを3つ書いたメモを持っていく
    3. 仕事やお金の手続きは、がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーに相談する

    手元にあると話しやすいもの

    • 家族の役割分担のメモ
    • 次の診察の日時と、付き添える人

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    医療ソーシャルワーカー(病院の相談室など)
    医療費や制度、退院後の暮らし、在宅療養の準備を一緒に考える専門職です。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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