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がんの最期はどのくらい続く?変化の節目と家族の動き方

このテーマの総論:あとどれくらい生きられるか知りたい|がんの余命5つの質問に回答

この記事には、余命や生存率などの数字の話が出てきます。数字は多くの方をまとめた統計で、一人ひとりの予測ではありません。読むのがつらいときは、途中で閉じても大丈夫です。

この記事の結論

看取りの時期と言われてからの長さには幅があり、数日のこともあれば、数週間に及ぶこともあります。日数は医師にも言い切れないため、家族は日を数えるより、食事・眠り・呼吸の変化や医療者の言葉の変化を「節目」にして、休み方や付き添いの交代、遠方の家族を呼ぶ判断を見直していくと、生活を保ちながらそばにいられます。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:山本亮, 大谷弘行, 松尾直樹, 他. 看取りの時期が近づいた患者の家族への説明… ほか9件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

「看取りの時期です」と言われてからの時間は、数日で変化が進むこともあれば、数週間にわたって続くこともあり、その長さを前もって言い当てることは医師にもできません。予想していたより日が過ぎていくのは、決して珍しいことではないのです。

それでも、家族の生活は毎日続きます。仕事をいつまで休むのか、遠くに住むきょうだいをいつ呼ぶのか、付き添いを誰が代わるのか。日数が分からないまま張りつめ続けるのは、それだけで心も体もすり減らします。

この記事では、看取りの時期が思ったより長くなったときに、日数ではなく「節目」で区切って、休みの取り方、付き添いの交代、呼ぶ判断の見直しどきを決めていく考え方をまとめました。最後の数日に体に起きる変化そのものは、最後の1週間・数日に起きる変化で詳しく取り上げています。

「そろそろ看取りの時期」と言われて、日が過ぎていく方へ

  • 「そろそろ看取りの時期です」と言われてから、もう1週間がたった。数日なのか数週間なのか、見当がつかない。
  • 会社をこのまま休み続けていいのか分からない。でも、出勤した日に何かあったらと思うと怖い。
  • 遠くに住む兄を、いつ呼べばいいのか決められない。早すぎても遅すぎても、後悔しそうな気がする。

がんの最期の時期はどのくらい続くものですか?亡くなる前の期間の目安を知りたいです。

決まった長さはありません。看取りの時期と言われてから、数日で変化が進む方もいれば、数週間にわたって、穏やかな日と変化の日をくり返す方もいます。医療者が示せるのは、体の変化の速さから見た、幅のある見立てです。

「看取りの時期」という言葉は、残りの日数を示すものではありません。食べる量、眠っている時間、呼びかけへの反応、呼吸の様子などの変化が重なってきて、体が最期に向かう段階に入ってきた、という見立てです。その段階の中で変化がどんな速さで進むかは、体に残っている力や、水分や栄養のとり方、感染症などの思いがけない出来事によって変わります。

医師や看護師が「週の単位」「日の単位」といった言い方をするのは、一つの数字では言い切れないからです。それぞれの単位が一般にどのくらいの幅を指すのかは、医師の「月単位・週単位」が示す目安と幅で説明しています。ここで覚えておきたいのは、単位で示された見立ても、長いほうにも短いほうにも外れうる、ということです。

ですから、家族が手元に置いておきたいのは「あと何日」という答えではなく、「今、どの段階にいて、次に何が起きたら動くか」という目印です。この記事では、その目印を「節目」と呼びます。

先が見えないまま待つ日々は、なぜこんなにつらいのですか?

いつ来るか分からない別れに備えて、心も体も「すぐ動ける状態」を保ち続けているからです。その緊張は数日なら持ちこたえられても、長く続けば誰でもすり減ります。つらいと感じるのは、それだけ真剣にそばにいるからです。

スマホを握ったまま眠る。着信音が鳴るたびに心臓が跳ねる。会議の最中にも、病院からの不在着信がないかを何度も確かめる。スーパーのレジに並びながら、今呼ばれたらどの道で向かうかを考えている。どれも、大切な人のそばに間に合いたいという気持ちから来る、自然な構えです。けれど、この構えは短い期間を前提にしたもので、何週間も続けられるようにはできていません。

待つ日々が長くなると、「早く楽になってほしい」という気持ちと、「まだそばにいてほしい」という気持ちが、同じ日に交互にやってきます。ふと「まだなのか」と思ってしまい、そんな自分にぞっとする方もいます。けれど、それは別れを望んでいるのではなく、苦しむ姿を見続けるつらさと、張りつめた日々への疲れが言わせる言葉です。まだ目の前にいる人を思って悲しむことは、「予期悲嘆」と呼ばれ、日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の資料では「喪失が現実となる以前に起こる悲嘆」と説明されています。

ご家族は、「本人はもっとつらいのだから」と自分の気持ちを後回しにしながら、自分の暮らしも回し続けなければなりません。そのため国立がん研究センターのがん情報サービスでは、ご家族は「第二の患者」ともいわれる、と紹介されています。家族が自分のつらさや困りごとを担当医や看護師に相談してもかまわない、とも書かれています。待つことに疲れた、という一言も、病棟や訪問看護の看護師に話してよいことです。

日数が分からないとき、何を区切りにして決めればいいですか?

日数の代わりに「節目」を区切りにします。食べる量や飲む量がぐっと減る、眠っている時間がほとんどになる、息の仕方が変わったと感じる、医療者の言葉が「週」から「日」に変わる。節目ごとに休み方や付き添い、連絡を見直すと先に決めておけば、毎日迷わずにすみます。

毎朝「今日はどうしよう」と一から考えていると、判断のたびに心が削られます。そこで、何が起きたら家族の動き方を変えるのかを、先に決めておきます。節目は、家族が自分で見て気づくものと、医療者の言葉で知るものの両方を使います。

ただし、節目が現れる順番や時期は人によって違い、すべてが現れるとは限りません。家族が体の変化を見て、残りの日数を判断する必要もありません。気づいたことは看護師に伝え、「先週と比べて、変化は進んでいますか」と確かめれば十分です。節目は、時間を当てるためのものではなく、家族の動き方を切り替える合図です。

節目気づくきっかけ家族が見直すこと
波のある日が続くよい日と悪い日をくり返し、少し食べられる日もある交代でそばにいながら、仕事と家のことも回す
食べる・飲む量がぐっと減る口から取れるものが、ひと口ずつになっていく休みを増やし、遠方の家族に様子を知らせる
眠っている時間がほとんどになる呼びかけへの反応が少なくなっていく会っておきたい人を呼ぶかを、家族で決める
息の仕方が変わったと感じる呼吸のリズムや音が、これまでと違って見えるすぐ看護師に伝え、泊まる人を決める
医療者の言葉が変わる「日の単位」「会わせたい方は」と言われるその日のうちに家族で集まり、決め直す
日数の代わりに使う「節目」と、家族が見直すことの例(順番や時期は人によって違い、すべてが現れるとは限りません)

仕事は、いつまで、どう休めばいいですか?

「最期まで休み続ける」と一度に決めず、節目ごとに休み方を区切ります。今は時間単位の介護休暇や有給休暇で半日ずつ、節目が来たらまとまった休みに切り替える、という組み立て方です。使える制度と手続きは、会社の人事に確かめてください。

先が読めない時期に全日の休みを続けると、休みの残りが減るたびに焦りが増し、「この休みが尽きたあとに最期が来たら」と、別の不安が生まれます。日数が読めないのなら、休み方も、短い単位で組み直せる形にしておくほうが続きます。

育児・介護休業法の介護休暇は、1年に5日(対象の家族が2人以上なら10日)まで取れ、時間単位でも使えます。午前中に仕事をして、午後から病院に向かう、という使い方ができます。介護休業のほうは、対象の家族1人につき通算93日までで、3回まで分けて取ることができます。対象になるのは、その家族が要介護状態(2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にあるときです。分けて取れる仕組みは、先が読めない時期にこそ生かせます。条件を満たせば、雇用保険から介護休業給付金も出ます。ご家族の状態が当てはまるか、いつまでに申し出ればよいかは、人事に確かめてください。2025年4月からは、介護に直面した社員に制度を個別に知らせ、使うかどうかの意向を確かめることが会社の義務になっています。

上司には、見通しが立たないこと自体を正直に伝えるほうが、相手も段取りを組みやすくなります。たとえば「母が看取りの時期に入りましたが、どのくらい続くかは医師にも分からないそうです。しばらくは半日単位で休みを取り、変化があったときはまとめて休ませてください」。最期のあとの休みについても、忌引き(慶弔休暇)は法律で決まった休みではなく会社ごとの制度なので、就業規則で先に確かめておくと、今の休みを使い切る不安が一つ減ります。

  1. 1今週有給休暇や時間単位の介護休暇を使い、半日ずつ付き添う
  2. 2人事に相談介護に直面していることを伝え、使える制度と申し出の時期を確かめる
  3. 3節目が来たらまとまった休み(条件に合えば介護休業)に切り替える
  4. 4落ち着いた時期出勤を少し戻し、残りの休みを次の節目のためにとっておく
  5. 5最期のあと忌引きなど、就業規則で決まっている休みを使う
先が読めない時期の休み方を、節目で区切って組み立てる例

付き添いを、長くなっても続けられる形にするにはどうすればいいですか?

「家族の誰もがいつもそばにいる」形をやめて、節目に合わせて付き添いの厚さを変えます。波のある日が続くあいだは交代で顔を出し、夜は病棟に任せて家で眠る。節目が来たら厚くする。厚さを変えてよいと決めておくと、長くなっても誰かが倒れずにすみます。

看取りの時期と言われた直後は、家族全員が毎日病室に詰め、泊まり込む人が出ることも少なくありません。最初の数日はそれで持ちこたえられても、日が過ぎるうちに、付き添う人の睡眠と食事が削られていきます。いざ大きな節目が来たときに、そばにいるべき人が疲れ切っている、という形がいちばん避けたいことです。

付き添いの厚さを変えることは、手を抜くことではありません。病院なら、夜は看護師が見ています。気になる変化があれば電話をもらえるよう病棟に頼み、家で眠る夜をつくります。自宅で療養している場合は、夜の見守りも家族で交代にし、在宅医や訪問看護の夜間の連絡先を枕元に置いておきます。在宅療養支援診療所には24時間連絡を受ける体制が求められていますが、夜にどう動いてもらえるかは医療機関によって違うので、確かめておくと安心です。

  1. 1「日の単位」と言われたら泊まる人を決め、ほかの家族もすぐ動ける距離にいる
  2. 2大きな節目が来たら毎日誰かがそばにいて、様子はその日のうちに家族で共有する
  3. 3波のある日が続くあいだ交代で顔を出し、夜は病棟に任せて家で眠る(自宅なら夜の見守りも交代に)
付き添いの厚さを、節目に合わせて変える例(上の段ほど厚い)

遠くに住む家族は、いつ呼べばいいですか?

「最期の瞬間に間に合うように一度だけ呼ぶ」と考えると、決められなくなります。まだ言葉を交わせるうちに一度来てもらい、そのあとは決めた合図で呼び直す、という二段構えにすると、早すぎる・遅すぎるの迷いが小さくなります。

遠方の家族にとって、移動には時間もお金もかかり、仕事の調整も必要です。だからこそ「呼ぶのは一回きり」と考えがちですが、そうすると、呼ぶ側は「まだ早いかもしれない」とためらい、呼ばれる側は「いつ行けばいいの」と待ち続けることになります。

一度目は、ご本人が目を開けて、うなずいたり短く話したりできるうちに来てもらいます。ご本人の体調がよい時間帯を看護師に聞き、その時間に合わせて会う日を決めます。二度目に呼ぶ合図は、「医療者から『日の単位』という言葉が出たら」「眠っている時間がほとんどになったら」など、遠方の家族と前もって一つ決めておきます。合図が来るまでは、決めた曜日に様子を一行で送るだけにすれば、毎日電話で「どう?」と聞かれる負担も減ります。会わせたい人への連絡の順番や伝え方は、「もう長くない」サインと呼ぶ人・伝えることにまとめています。

  1. Q1遠方の家族は、ご本人と言葉を交わせるうちに一度会えていますか

    はい次に呼ぶ合図を決めて、それまでは決めた曜日に様子を知らせる

    いいえ節目を待たずに、ご本人の体調のよい時間帯に来てもらう日を相談する

  2. Q2決めておいた合図が、今日あらわれましたか

    はいその日のうちに連絡し、移動の手段を一緒に確かめる

    いいえ呼ぶ判断はそのまま保ち、様子だけを短く送る

  3. Q3遠方の家族に、何度も来るのが難しい事情がありますか

    はい来られない日は、電話やビデオ通話で声を届ける方法を、ご本人のそばに用意する

    いいえ合図ごとに来てもらう形を続け、移動の負担を家族で分け合う

遠方の家族を呼ぶ判断を、見直すときの分かれ道

医療者には、何を、どのくらいの間隔で確かめればいいですか?

「あと何日ですか」より、「先週と比べて、変化は進んでいますか」「今、家族が決めておくことはありますか」と、変化の向きと次の一手を聞くほうが、答えをもらいやすくなります。確かめるのは、節目に気づいたときと、家族で決めた日です。

「あと何日ですか」と聞いて「はっきりとは言えません」と返されると、それ以上聞けなくなってしまうかもしれません。けれど、それは隠しているのではなく、本当に幅があるからです。日数ではなく、変化の向き(進んでいるか、同じくらいか)と、家族が次にすること(休みを増やす、遠方の家族を呼ぶ)に結びつく形で聞くと、医療者も答えやすくなります。聞く人は家族の中で一人に決めて、聞いた言葉をそのまま家族に共有します。

病棟によっては、看取りの時期の体の変化を家族向けに説明した資料を用意しています。緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)がつくった冊子『これからの過ごし方について』もその一つで、医師や看護師が説明に使うことを想定したものです。この冊子を使った説明を受けた遺族への調査(2012年。10施設の遺族325名に送り、260名が回答)では、81%が「とても役に立った」「役に立った」と答え、84%が「変化の目安になる」と答えています。ただし著者らは、冊子はただ手渡すものではなく、医療者と家族が話し合いながら使うものだという条件をつけています。似た資料があるか看護師に尋ね、読んだうえで分からないところを聞いてみてください。

先が見えないまま待っていた娘は、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
50代・娘の立場(80代の母が自宅で療養中。在宅医と訪問看護が入り、「看取りの時期」と言われて10日。高齢の父と二人暮らしの実家に通い、兄は飛行機の距離に住む)
相談のあとに変わったこと
「今日かもしれない」と毎日張りつめていた日々を、節目で区切る過ごし方に変えた。兄は母と言葉を交わせるうちに一度帰省し、次に呼ぶ合図も兄妹で決めた。仕事は半日単位の休みに切り替えて続けている。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から2週間、彼女は冷蔵庫に貼った「節目のメモ」を見ながら動いている。メモには、訪問看護師に聞いた3つの節目と、そのとき家族がすることが書いてある。仕事は、毎日の全休をやめ、介護休暇を時間単位で使って、午後から実家に向かう形にした。兄は相談の翌週末に帰省し、母と1時間ほど話した。兄の顔を見た母は「遠かったでしょう」と言ったという。次に兄を呼ぶのは、在宅医か訪問看護師から「日の単位」という言葉が出たとき、と兄妹で決めてある。毎晩スマホを握ったまま眠っていた彼女は、今は着信音を最大にして枕元に置き、横になれている。「毎日が『今日かもしれない』ではなくなった」と彼女は話す。

2. 相談を考えた背景

在宅医から「そろそろ看取りの時期に入ってきました」と言われ、彼女はその日から1週間の休みを取った。兄からは毎晩「いつ帰ればいい?」と電話が来た。1週間がたっても、母はうとうとしながら、ときどきゼリーをひと口食べた。休みの最終日の夜、彼女は、これが数日なのか数週間なのか、まったく見当がつかないことに気づいた。

3. 相談する前に困っていたこと

夜中に「看取り 期間 どのくらい」と検索すると、記事によって書いてある日数がばらばらで、かえって分からなくなった。訪問看護師に「あと何日くらいですか」と聞いたときは「はっきりとは言えないんです」と言われ、それ以上は聞けなかった。有給休暇の残りが気になる一方で、仕事に戻りたいと思う自分が冷たく感じられた。「まだなのか」と一瞬でも思ってしまったことを、誰にも言えずにいた。

4. ここを選んだ理由・決め手

訪問看護師やケアマネジャーに相談することも考えたが、聞きたいのは介護の方法より、兄をいつ呼ぶか、会社に何と言うかという家族の判断だった。がんと家族の相談室のページに、遠方の家族を呼ぶか、会社に何と言うかを一緒に整理すると書かれていたのが決め手になった。母が眠った夜10時、ニックネームでフォームを送り、翌日の昼の時間帯を選んだ。

5. 相談で話したこと・その後

電話の担当は、まず彼女の話を最後まで聞いた。母があと何日かについては「それは在宅医や訪問看護師さんに確かめることです」と言い、予測はしなかった。そのうえで、日数の代わりに節目で区切る考え方を一緒に整理し、訪問看護師に聞く3つの質問、兄に送る文面、上司への一文を作った。最初に質問を持っていった日、「少しずつ進んでいます」という言葉に動揺して、彼女はその場で兄に電話をかけかけた。メモを見返し、決めた合図とは違うと気づいて、その日は様子を知らせるだけにした。兄は「一回目は今週末に行く」と自分から言った。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 先週と比べて、変化は進んでいますか。それとも同じくらいでしょうか。
  • 今の様子は、「週の単位」と「日の単位」のどちらに近いと見ていらっしゃいますか。
  • 家族が次に動き方を変えたほうがいいのは、どんな様子になったときですか。
  • 遠方の家族に来てもらうなら、本人と話せるうちの、どの時間帯がよいでしょうか。
  • 家族が仕事に出ている日中に変化があったら、どのように連絡をいただけますか。
  • この時期の体の変化を説明した資料があれば、いただけますか。

とはいえ、待つ日々を過ごすあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──間に合わない日があっても、それまでの日々が看取りです

節目で区切って過ごしても、最期の瞬間にそばにいられるとは限りません。仕事に出ていた午後や、交代で家に帰って眠った夜に、静かに息を引き取ることもあります。それは、区切って過ごすと決めたせいではありません。どれほど付き添っていても、その瞬間を選ぶことは誰にもできないのです。待つあいだに通い続けたこと、声をかけ続けたこと、交代して倒れずにいたこと。その一つひとつが、もう看取りです。家族の前では気丈にふるまっていても、帰りの車の中で泣いてかまいません。夜中に誰かと話したくなったら、よりそいホットライン(0120-279-338)があります。がん専門の窓口ではありませんが、24時間、無料でかけられます。

② 実務のこと──長くなったら、家族だけで抱える量を減らす相談をする

待つ期間が長くなるほど、家族が抱える量は少しずつ増えていきます。入院中なら、病院の医療ソーシャルワーカーが、療養の場の変化や使える行政サービスについて、家族の相談にも応じています。自宅で療養している場合は、ケアマネジャーに、訪問介護などのサービスを足せないか相談できます。介護保険は、65歳以上なら要介護・要支援と認定されれば原因を問わず使えます。40〜64歳の方も、医師が回復の見込みがない状態に至ったと判断したがんであれば、要介護認定を受けて使えることがあります。また、がん相談支援センターは、患者さんだけでなく家族も、その病院に通っていない人も、無料・匿名で利用できます。「どのくらい続くか分からない」という状況そのものを相談の入り口にしてかまいません。

今日できること

先が見えない今夜から明日にかけて、家族ができる3つのこと

  1. 節目を3つ書く

    看護師(自宅なら訪問看護師)から聞いた変化のうち、家族が動き方を変える合図にするものを3つ書き、それぞれの横に「休み」「付き添い」「連絡」で何を変えるかを一言ずつ添えます。

  2. 遠方の家族と合図を決める

    「この言葉が出たら呼ぶ」という合図を一つ決めて、遠くに住む家族に一行で送ります。まだ会えていないなら、本人と話せるうちに一度来てもらう日も相談します。

  3. 上司への一文を下書きする

    「どのくらい続くか医師にも分からないため、しばらく半日単位で休みを取り、変化があったときはまとめて休ませてください」という一文を、送る直前の形まで作っておきます。

よくある質問

「看取りの時期」と言われて2週間たちます。見立てが外れたのでしょうか?

外れたとは限りません。看取りの時期という見立ては、体が最期に向かう段階に入ったという意味で、その中で変化がどんな速さで進むかには大きな幅があります。気になるときは、「先週と比べて、変化は進んでいますか」「今の見立ては、言われたときと変わりましたか」と、看護師や医師に確かめてください。見立てが変わっていれば、家族の動き方もそれに合わせて組み直します。

本人から「仕事に行って」と言われます。休みを減らしてもいいのでしょうか?

ご本人の言葉には、家族の生活を守りたいという気持ちが込められていることが多いものです。その気持ちを受け取って、休み方を半日単位に区切ったり、出勤する日を増やしたりしてかまいません。そのかわり、出勤する日は病棟や訪問看護に連絡がつく番号を伝え、帰りに顔を出す時間を決めておくと、ご本人にも家族にも安心が残ります。

本人として、家族が仕事を休み続けているのが心苦しいです。どう伝えればいいですか?

心苦しいという気持ちは、そのまま言葉にしてかまいません。たとえば「来てくれてうれしい。でも、仕事も大事にしてほしい」「今日は帰って、ちゃんと寝てね」。家族は、休むか出勤するかを自分たちだけで決められずに迷っていることも多く、ご本人の一言が、区切った休み方に切り替えるきっかけになります。会いたい人や、してほしいことがあれば、それもあわせて伝えておいてください。

遠方の家族が、何度も行き来するのは難しいと言っています。

何度も来られない事情があるときは、まず、ご本人と言葉を交わせるうちの一回を大事にしてもらいます。そのあとは、電話やビデオ通話でご本人の耳元に声を届ける方法があります。来られないことを責め合わず、「来られた一回」と「届けた声」を、家族みんなの見送りとして数えてください。移動にかかる費用や休みの取り方が気がかりなら、それも家族で率直に分け合います。

長く待つうちに、きょうだいの間で不満が出てきました。どうすればいいですか?

待つ期間が長いほど、近くに住む人と遠くに住む人、休める人と休めない人の負担の差が大きくなり、不満が出やすくなります。誰かを責める前に、節目ごとの役割を紙に書き出し、空いているところに入れる日を聞く形にすると、言い合いになりにくくなります。気持ちが行き詰まったときは、家族のつらさも相談の対象です。病棟の看護師やがん相談支援センターに話してみてください。

夜中にひとりで不安になったら、どこに話せますか?

よりそいホットライン(0120-279-338)は、24時間、無料でかけられます。がんと家族の相談室のLINEは無料・匿名で使え、夜に送ったものは翌朝いちばんに読んで返事をします。お電話(080-4178-5017)は、平日9:00〜18:00なら担当が直接出て、それ以外の時間は自動音声で受け付け、翌朝9時までに担当から折り返します。ご本人の様子が急に変わったときは、まず病棟や在宅医、訪問看護へ。命に関わると感じたら119番に電話してください。自宅で看ている場合は、どんなときに119番を使うかを在宅医や訪問看護と前もって話しておくと、いざというときの迷いが減ります。

待つ日々の区切り方を、一緒に決めませんか

ご家族の顔ぶれと、今いちばん迷っていること(休み・付き添い・遠方の家族を呼ぶ時期など)をひとことお書きください。送信のあと、受付確認のメールがすぐに届き、ご希望の時間帯に担当がお電話します。日数の予測はしませんが、節目ごとに見直すことを一緒に一枚にまとめます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    数字より先に、「幅」と「今できること」を聞いてみる

    余命の数字は、多くの方の経過をまとめた統計で、あなた一人の予測ではありません。知りたいかどうかは、ご本人が決めてよいことです。知りたいときは、数字そのものより「どのくらいの幅で見ているか」を主治医に尋ねると、受け止めやすくなります。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「今の状態を、月単位・週単位のような幅で見ると、どのあたりでしょうか。」

    1. 聞きたいこと・聞きたくないことを、先にご家族と話しておく
    2. 主治医に聞くのがつらいときは、看護師やがん相談支援センターに「どう聞けばよいか」から相談する
    3. 数字を調べ続けて眠れない夜は、結論を朝に回して、誰かに話す

    手元にあると話しやすいもの

    • 聞きたいこと・聞きたくないことを書いたメモ
    • 次の診察の日時

    公的な相談先

    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。
    がん情報サービス(国立がん研究センター)
    出典のはっきりしたがんの情報と、お近くのがん相談支援センターの探し方がまとまっています。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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