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正解が分からない、がんの家族として|後悔の少ない決め方

このテーマの総論:がんの家族と後悔しないために|今できる5つのことと時期別の表

この記事の結論

がんの家族として選ぶ場面に、誰にでも当てはまる一つの正解はありません。それでも後悔の少ない決め方はあります。本人の意向を聞き、頼る情報源を絞り、決めた理由を書き残して振り返りすぎないこと。家族自身の心は、眠る・食べる・話す相手を持つ・休む日をつくるの4つの習慣で守れます。

理由と根拠は、このあと本文でくわしくお伝えします。 主な出典:厚生労働省「『人生会議』してみませんか」/厚生労働省「ACP(アドバンス・ケア・… ほか9件 参考・出典を見る 先に「次の一歩」を見る

がんの家族として迫られる選択に、誰にでも当てはまる一つの正解はありません。治療の続け方も、療養する場所も、本人との接し方も、自分の仕事の続け方も、どれを選んでも得るものと手放すものがあります。それでも、決め方には、後悔を小さくする道筋があります。

迷う量や、決めるまでにかかる時間は、家族の人数や住んでいる場所、本人の状態によって大きく違います。毎晩「これでよかったのか」と自分を裁いてしまうのは、あなたが本人を大切に思い、責任を感じているからです。正解探しに使っている力を、決め方と、自分の心を守る習慣のほうへ少し回すと、選んだあとの日々が軽くなっていきます。

この記事では、家族の選択に正解がない理由、後悔の少ない決め方の手順、家族の不安を減らすために今できること、本人の心の支え方、そして家族自身の心を守る4つの習慣と相談先を、順にまとめました。

正解が分からないまま、決め続けている方へ

  • 治療のこと、療養する場所、接し方、自分の仕事。どれも正解が分からないまま決めている。
  • 間違えたら取り返しがつかない気がして、毎晩「これでよかったのか」と考えてしまう。
  • 家族のために何をすべきか考えるうちに、自分のことはすっかり後回しになっている。

がんの家族として、どうするのが正解か分かりません。正解はあるのですか?自分の心はどう守ればいいですか?

誰にとっても同じ正解はありません。ただ、後悔の少ない決め方はあります。本人の意向を真ん中に置き、頼る情報源を絞り、決めた理由を書き残して振り返りすぎないこと。心は、眠る・食べる・話す・休むの4つの習慣で守れます。

「正解はない」と言われると、突き放されたように感じるかもしれません。けれど、それは「何を選んでも同じ」という意味ではありません。選んだ結果がどうなるかは、選んだ時点では誰にも分からない。だからこそ、結果ではなく決め方のほうを整えておく、という意味です。

国の考え方も、同じ方向を向いています。人生の最終段階の医療やケアについて厚生労働省が示している指針は、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)という名前です。名前のとおり、決めていく過程についての指針で、本人による意思決定を基本にしています。厚生労働省は、もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアチームとくり返し話し合って共有しておく取り組みを「人生会議」と呼んでいます。一度で決めきるのではなく、話し合いを重ねながら考えをそろえていく。それが、国の示す決め方の土台です。

決め方と同じくらい大事なのが、決める人であるあなたの心を守ることです。眠れず、食べられず、誰にも話せず、休む日もないまま下した判断ほど、あとで自分を責める材料になりやすいからです。4つの習慣は、後半で具体的に紹介します。

なぜ、家族の選択には正解がないのですか?

どの選択肢にも得るものと手放すものがあり、何を大事にするかで答えが変わるからです。その「何を大事にするか」の中心にあるのは本人の価値観です。先のことは医師にも確かには分からないため、結果から逆算して正しさを決めることもできません。

たとえば療養する場所。自宅なら、慣れた部屋で家族の気配を感じながら過ごせますが、家族の手や夜の見守りが必要になります。病院なら、医療者がすぐそばにいる安心がありますが、面会の時間や暮らしの自由は限られます。どちらにも確かな良さがあり、どちらにも手放すものがあります。

「家の風呂に入りたい」と話す人もいれば、「家族に迷惑をかけたくない」と話す人もいます。同じ病気、同じ状態でも、本人の価値観が違えば、ふさわしい答えは違ってきます。家族が外側から唯一の正解を見つけ出せないのは、そのためです。

そして、先のことは誰にも確かには分かりません。結果が思わしくなかったとしても、それは決め方が間違っていた証拠にはなりません。その時点で分かっていたことと、本人の思いをもとに決めたのなら、それはその時点での精いっぱいの選択です。

選ぶ場面迷いやすいこと決めるときの手がかり
治療の続け方続けるか、体の負担を減らす方向に切り替えるか本人が大事にしたい過ごし方と、医師の説明
療養する場所自宅か、病院か、施設か本人の希望と、家族が続けられる体制
本人への接し方いつも通りか、気をつかうか本人に「してほしくないこと」を聞く
自分の仕事続けるか、休むか、減らすか自分の体力と、会社の制度
家族が迷いやすい選択と、決めるときの手がかり

後悔の少ない決め方には、どんな手順がありますか?

決める中身を一文にし、本人の意向を聞き、頼る情報源を二つか三つに絞り、決めた理由を書き残し、見直す日を決めます。この5つを踏んでおくと、あとで迷いが戻ってきたとき、当時の自分の考えを確かめ直せます。

迷いが大きいときほど、「何を決めればいいのか」があいまいになっています。まず、迷いを一つの問いの形にします。「父の退院後、まずどこで過ごすか」「今月、仕事を何日休むか」。問いが一文になると、誰に何を聞けばいいかが見えてきます。そのうえで、次の3つを意識してください。

  1. 1決める中身を一文にする「退院後、まずどこで過ごすか」のように、迷いを一つの問いにする
  2. 2本人の意向を聞く「どうしたい?」「これだけは嫌、ということは?」の二つを聞く
  3. 3情報源を絞る主治医・看護師、がん相談支援センターなど、土台にする先を二つか三つに
  4. 4理由を書き残す決めた日付と、決めた理由を一行でメモしておく
  5. 5見直す日を決める次の診察のあとなど、考え直す日を先に決め、それまでは蒸し返さない
後悔の少ない決め方の5つの手順

本人の意向を聞く──言葉にできないときは、これまでの言葉から

選ぶ場面の中心は、本人がどうしたいかです。「どうしたい?」と大きく聞いて答えが出ないときは、「これだけは嫌、ということはある?」と、外したいことから聞くと答えやすくなります。本人の気持ちの聞き方は、本人の本音を知る方法でも扱っています。本人が迷っていて決めきれないときや、病状のために話すことが難しいときは、本人が以前に話していたことや大切にしてきた暮らし方を手がかりに、「本人ならどう考えるか」を家族で話し、医療・ケアチームとも共有します。

療養する場所について医師と話すことも、特別なことではなくなってきています。2021年にがんで亡くなった方の遺族1,226名を対象に、国立がん研究センターが2025年に公表した「遺族調査報告書 2023年度調査」では、医師と最期の療養場所を話し合った割合が53%で、前回の36%から増えていました。遺族が振り返って答えた評価ですが、「どこで過ごすか」を医師に相談してよいのだと知っておくと、切り出しやすくなります。

情報源を絞る──土台にする情報を先に決める

迷っているときほど、情報を集めすぎてしまいます。体験談、親戚の意見、知人のすすめ。どれも善意ですが、全部を並べると、かえって決められなくなります。土台にするのは、本人の状態を知っている主治医や看護師、制度や相談先に詳しいがん相談支援センター、国立がん研究センターのがん情報サービスのような公的な情報の、二つか三つまでと決めておきます。それ以外は「参考」の箱に入れておけば十分です。

決めたら振り返りすぎない──理由を一行で書き残す

決めたら、日付と理由を一行で残しておきます。「〇月〇日、退院後はまず自宅で過ごすと決めた。父が『家の風呂に入りたい』と言ったから」。あとで迷いが戻ってきたとき、この一行が、当時の自分が何を大事にして決めたのかを思い出させてくれます。あとから分かったことで、当時の自分を裁かないでください。そのときに知りようのなかったことは、判断の材料にはできなかったのです。見直す日も先に決めておきます。次の診察のあと、体調が変わったとき。その日までは蒸し返さないと決めておくと、毎晩の自問から少し離れられます。

家族の不安を減らすために、今できることは何ですか?

不安の多くは、「分からない」と「まだ決まっていない」から生まれます。分からないことは質問の形にして医療者に渡し、今は決めなくていいことは迷いのリストから外します。何をすべきか迷う夜は、今週決めることを一つに絞るだけで十分です。

不安は、正体が分からないものに対していちばん大きくなります。治療の効き目、この先の体調、お金、仕事。頭の中で全部が同時に回ると、何から手をつければいいのか分からなくなります。そこで、頭の中の迷いを、紙の上で二つに分けてみてください。今週決めなければならないことと、まだ決めなくていいことです。

書き出してみると、今週決めなければならないことは、思っていたより少ないと気づくことがあります。残りを「まだ決めなくていい」の側に移すだけで、頭の中の席が空きます。今週決めることの中に「分からない」が混ざっていたら、それは悩むものではなく、聞くものです。「退院したら、家でどんな手助けが必要になりますか」のように質問の形にして、次の診察で医師や看護師に渡します。質問の絞り方は、診察で聞くことを3つに絞る方法にまとめています。

家族が何人かいるなら、迷いごとごとに「決める役」を決めておくのも助けになります。全員で全部を決めようとすると、話し合うたびに不安が膨らみやすくなります。

今週決めること

  • 退院の日に、誰が付き添うか
  • 次の診察で、医師に聞く質問
  • 自分が仕事を休む日と、休み方

まだ決めなくていいこと

  • 数か月先の仕事の予定
  • 遠方の親戚に、どこまで詳しく伝えるか
  • 家の片付けや、住まいの将来のこと
今週決めることと、まだ決めなくていいことの分け方(例)
  1. Q1今日決めないと、本人の安全や治療に差し支えますか

    はい医療者に相談しながら、今日のうちに決める

    いいえ一晩おいて、眠ったあとの朝に決める

  2. Q2本人の意向は分かっていますか

    はいその意向を土台に決め、理由を一行で書き残す

    いいえ「これだけは嫌、はある?」と本人に聞く。聞けなければ、以前の言葉から考える

今日決めるか、一晩おくか迷ったときの分かれ道

がんの家族の心を支えるには、何をすればいいですか?

正しい言葉を探すより、本人が決めたことや迷っていることを、否定せずに一緒に抱えることです。決まったことを家族の迷いで上書きしない、してほしくないことを一つ減らす、いつもの時間を続ける。この3つが、本人の心の足場になります。

本人もまた、正解が分からないまま決めています。治療を続けるか、どこで過ごすか、誰にどこまで話すか。家族以上に、自分の体のことだからこそ迷っているかもしれません。本人が「本当にこれでよかったのかな」とつぶやいたときに、家族がどう返すかは、本人の心の支えを左右します。

例:「あのとき一緒にたくさん考えて決めたよね。また迷ったら、そのとき一緒に考え直そう」

気をつけたいのは、決まったあとに「やっぱり別の方法のほうがよかったんじゃない?」と家族の迷いを持ち込むことです。本人は、自分の選択を守りながら家族の不安にも応える、という二重の重さを背負うことになります。家族の迷いは、本人の外で話して整えてください。そして、病気の話をしない、いつもの時間も続けます。一緒にテレビを見る、季節の話をする。決めることに追われる毎日の中で、何も決めなくていい時間は、本人にとっても家族にとっても休息になります。

家族自身の心は、どう守ればいいですか?

眠る・食べる・話す・休むの4つを、看病の予定と同じ重さで予定に入れます。この4つは心を守る習慣であると同時に、迷いの中で決める力を守る習慣でもあります。疲れきった頭で下した判断ほど、あとで自分を責める材料になりやすいからです。

国立がん研究センターのがん情報サービスは、家族は「本人はもっとつらいのだから」と気持ちを我慢しがちで、そのうえ自分の日常生活も保たなければならないことから、「ご家族は、『第二の患者』ともいわれます」と紹介しています。家族の心身を守ることは、わがままではなく、支え続けるための準備です。

眠る──大事な判断は、眠ったあとに回す

夜は、同じ出来事でも悪いほうへ考えが傾きがちです。夜中に浮かんだ結論は、その場で決めずにメモに預け、朝に読み直してから決めます。看病で眠りが削られているなら、泊まりや夜の見守りを交代できる人を探すことも、立派な判断の準備です。

食べる──空腹のまま話し合わない

空腹で疲れているときは、考えが短く、言葉もきつくなりがちです。医師との面談や家族会議の前には、何か口に入れておきます。一日に一度は、座って温かいものを食べる時間を確保してください。

話す──決める前に、一度声に出して説明する

迷っていることを誰かに声に出して説明すると、自分が何を大事にしたいのかが、話しているうちに見えてきます。相手は、助言する人より、最後まで聞いてくれる人が向いています。

休む──週に一日、「決めない日」をつくる

看病の予定も、決めごとも入れない日を、週に一日つくります。その日に浮かんだ迷いは、メモに書いて翌日に回します。決めることから離れる時間があると、次に決めるときの力が戻ってきます。

  1. 1眠る夜中に結論を出さない。浮かんだ考えはメモに預けて、朝に見直す
  2. 2食べる面談や話し合いの前に、何か口に入れておく
  3. 3話す決める前に、最後まで聞いてくれる相手に声に出して説明する
  4. 4休む週に一日、看病の予定も決めごとも入れない日をつくる
心と決める力を守る4つの習慣(1から順に、土台になるものです)

強い落ち込みが続くときは、どこに相談すればいいですか?

眠れない・食べられない・何をしても楽しめない状態が続き、仕事や暮らしに差し支えているなら、ご自身の受診や相談を考えてください。家族も使えるがん相談支援センター、こころの健康相談統一ダイヤル、かかりつけ医や心療内科が相談先です。消えてしまいたいと感じる日は、その日のうちに誰か一人に気持ちを伝えてください。

がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院などに置かれた相談窓口で、患者さんの家族も、その病院を受診していない人も、無料で、名前を伏せたまま相談できます。がんについて詳しい看護師や、生活全般の相談ができるソーシャルワーカーなどが相談員を務め、相談した内容が、相談した人の同意なしに担当医を含むほかの人へ伝わることはありません。病院を問わず話したいときは、国立がん研究センターの「がん情報サービスサポートセンター」(0570-02-3410 または 03-6706-7797、平日10時〜15時、通話料は自己負担)に匿名で相談でき、平日12時〜15時にはチャット相談もあります。ただし、医学的な判断を必要とする質問には答えられない窓口です。

気持ちのつらさそのものは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)で、かけた地域の公的な相談窓口につながります(曜日や時間は地域で異なり、通話料がかかります)。夜中に一人で抱えきれないときは、がん専門の窓口ではありませんが、よりそいホットライン(0120-279-338)が24時間・無料で受けています。自分を傷つけるおそれが差し迫っているときは、時間を問わず119番に電話してください。

迷いを誰かに話すのは、特別なことではありません。がんと家族の相談室に寄せられた電話相談・問い合わせは、2026年9月の実績(運営者集計)で1,200件あり、そのうち800件がご家族からでした。相談室では医療の判断はしませんが、今週決めることを一緒に整理し、次の診察で聞く質問を3つにまとめてお送りできます。

毎晩「これでよかったのか」と考えていた息子さんは、どう動いた?

説明のための例(実在の方の体験談ではありません)

どなたの例か
50代・息子の立場(父が治療中。退院後に自宅で過ごすか、施設を探すかで迷っている。姉は遠方に住んでいる)
相談のあとに変わったこと
頭の中にあった7つの迷いを、「今週決めること2つ」と「まだ決めなくていいこと5つ」に分けた。決めた理由を一行で残すようにして、夜中に考え込む日が週5日ほどから週1〜2日に減った。

1. 相談のあとに変わったこと

相談から2週間後、彼の手帳には、日付と一行の理由を書いたページが増えていました。「父が『家の風呂に入りたい』と言ったので、退院後はまず自宅で過ごす。次の診察のあとに見直す」。夜中に考え込む日は、週に5日ほどあったのが、1〜2日に減りました。迷いが戻ってきたときはそのページを読み返し、「あのときの自分は、これで決めた」と確かめるそうです。

2. 相談を考えた背景

父の退院が近づき、主治医から「退院後の過ごし方を考えておいてください」と言われたのがきっかけでした。自宅か、施設か。自分の仕事はどうするか。遠方の姉にどこまで頼めるか。考えることが、一度に押し寄せてきました。

3. 相談する前に困っていたこと

ネットで調べるほど、自宅で過ごしてよかったという声と、無理をして家族が倒れたという声の両方が見つかり、どちらが正解なのか分からなくなりました。姉とは電話のたびに意見が食い違い、夜中に「これで父を不幸にしたらどうしよう」と考えて、眠れなくなっていたといいます。

4. ここを選んだ理由・決め手

病院のソーシャルワーカーに相談する予定はありましたが、その前に、頭の中のごちゃごちゃを誰かに聞いてほしいと思ったそうです。医療機関でも葬儀社でもない窓口で、決めることを一緒に整理してもらえると知ったのが決め手でした。夜にフォームを送ると、すぐに受付確認のメールが届き、希望した翌日の昼休みの時間帯に担当から電話がありました。

5. 相談で話したこと・その後

電話では、彼が抱えている迷いを一つずつ書き出してみると、7つあることが分かりました。担当は父の病状を判断したり、どちらがよいかを勧めたりはせず、今週決めることと、まだ決めなくていいことに分ける作業に付き添いました。退院後の過ごし方は「まず自宅、次の診察のあとに見直す」と決め、主治医に聞く質問を3つにまとめて送ってもらいました。彼の希望に応じて、介護の相談先として地域包括支援センターに伝えることも整理しました。姉との電話は、彼が「今週はこれだけ決めた」と報告する形に変えると、言い争いが減ったといいます。「正解は分からないままです。でも、決め方が分かったら、眠れるようになりました」。

※よくある状況を組み合わせて作った例です。登場する方は実在しません。相談の進み方は、状況によって異なります。

医療者に聞く質問例

  • 本人の今の状態で、選べる過ごし方にはどんなものがありますか。
  • それぞれの選び方で、本人と家族の暮らしはどう変わりますか。
  • 決めるまでに、どのくらい時間をかけても大丈夫でしょうか。
  • 一度決めたことを、あとから変えることはできますか。
  • 家族の意見が分かれたとき、話し合いに加わっていただけますか。

とはいえ、決め続けるあなたに伝えたい2つのこと

① 気持ちのこと──「これでよかった」は、あとから少しずつ育つもの

決めた瞬間に「これでよかった」と確信できる選択は、ほとんどありません。選んだあとの日々の中で、本人と過ごした時間や交わした言葉が積み重なって、少しずつ「これでよかった」に近づいていきます。だから、決めた夜に安心できなくても、選択が間違っていた証拠にはなりません。迷いながら選んだことは、本人のことを真剣に考えた記録でもあります。

② 実務のこと──家族の中で「決める役」と「調べる役」を分けておく

家族の全員が全部の判断に関わると、話し合いのたびに同じ迷いをくり返すことになります。本人と一緒に決める役、情報を調べて整える役、親戚に伝える役を分けておくと、一人ひとりの抱える量が減ります。調べる役は、土台にする情報源を家族で共有し、それ以外の情報は「参考」として扱う決まりにしておくと、話し合いがぶれにくくなります。自宅での療養を考えるときは、介護保険を使えるかどうかも判断材料の一つです。65歳以上の方は原因を問わず、医療保険に加入している40〜64歳の方はがんなどの特定疾病が原因の場合に限って、要介護認定を受ければ介護保険を使えます(40〜64歳のがんは、医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限られます)。要介護認定の申請先は市区町村の窓口で、結果は原則として30日以内に通知されます。

今日できること

正解探しを、決め方に切り替えるための3つのこと

  1. 迷いを二つの欄に分ける

    紙に「今週決めること」「まだ決めなくていいこと」の二つの欄を作り、頭にある迷いを全部書いて振り分ける。

  2. 一つだけ質問の形にする

    「今週決めること」の中の分からないことを一つ選び、次の診察で聞く質問として一文で書く。

  3. 今夜は決めないと決める

    夜中に結論を出したくなったら、考えをメモに預けて、明日の朝に読み直してから決める。

よくある質問

家族の中で意見が割れたとき、誰の意見を優先すればいいですか?

土台になるのは本人の意向です。国の指針も、本人による意思決定を基本にしています。本人が決めきれないときは、本人が以前に話していたことをもとに「本人ならどう考えるか」を家族で話し合います。それでもまとまらないときは、主治医や看護師に話し合いへ加わってもらったり、がん相談支援センターに相談したりすると、感情のぶつかり合いになりにくくなります。

本人に「任せる」と言われました。家族が決めてもいいのでしょうか?

「任せる」も、本人の意思の一つです。ただ、全部を家族だけで背負わなくてかまいません。「これだけは嫌、ということはある?」と外したいことだけでも聞いておくと、決めるときの手がかりになります。そのうえで医療・ケアチームと話し合い、決めた理由を本人にも短く伝えておくと、家族だけで決めたという重さが和らぎます。

あとから、もっと良い選択肢があったと知ったらどうすればいいですか?

あとから知ったことで、当時の自分を裁かないでください。そのときに分かっていたことと本人の思いをもとに決めたのなら、それはその時点での精いっぱいです。今からでも変えられることなら、次の診察で「今からこの方法に変えることはできますか」と聞いてみてください。

正解を教えてくれる人はいないのですか?

主治医や看護師は、医療の選択肢と、それぞれで予想される経過を説明してくれます。がん相談支援センターでは、制度や相談先を含めて、何をどう決めるかを一緒に考えてもらえます。がんと家族の相談室は医療の判断をしない窓口ですが、迷いを整理し、医師に聞く質問をまとめるお手伝いはできます。ただ、最後に何を大事にするかを決めるのは、本人と家族です。

がんの家族として、自分の不安をどうすればいいですか?

不安を、「分からないこと」と「まだ決まっていないこと」に分けてみてください。分からないことは医療者への質問に変え、まだ決まっていないことは、今週決めるものとまだ決めなくていいものに分けます。それでも残る不安は、話す相手に預けてかまいません。眠れない、食べられない日が重なるときは、ご自身の受診も考えてください。

本人の前で、迷っている顔を見せてしまいます。

迷っていることを隠しきらなくてもかまいません。本人もまた迷っていることがあり、「一緒に迷っている」と伝わること自体が支えになる場合もあります。ただ、結論が出たあとに迷いを何度も持ち込むと、本人の負担になります。迷いは本人の外で話して整え、本人の前では「決めたことを一緒に続ける」姿勢を見せられれば十分です。

夜になると、決めたことを後悔してしまいます。

夜は考えが悪いほうへ傾きやすい時間です。決めたときに書き残した一行の理由を読み返し、それでも気になることは、決めておいた見直しの日まで預けてください。眠れないほどつらい夜は、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・無料。がん専門の窓口ではありません)に電話できます。がんと家族の相談室のLINEにひとこと送っておけば、翌朝いちばんに読んで返事をします。

迷っている選択を、電話で一緒にほどきませんか

いま迷っていることを、箇条書きでもひとことでも、フォームにお書きください。送ったあとすぐに受付確認のメールが届き、指定していただいた時間帯に担当から電話をおかけします。正解を決めるのではなく、今週決めることと、まだ決めなくていいことを一緒に分け、次の診察で聞く質問を3つにまとめます。

  1. 入力は1分ほどお名前はニックネームで構いません。ご相談の内容は、ひとことでも大丈夫です。
  2. すぐに受付メール送信すると、受け付けたことをお知らせするメールが届きます。
  3. ご希望の時間にお電話電話番号は、折り返しのお電話にだけ使います。スタッフが名前を名乗っておかけします。

    必須は4項目(お困りの内容・施設名・お名前・メールアドレス)です。分かる範囲でご記入ください。写真があると、状況の確認が早くなります。

    1. 1営業日以内にご連絡(お急ぎの場合は当日中)

    2. 現地の確認は無料です(所要30分〜2時間)

    3. お見積りの後にお断りいただいても構いません

    1ご相談の内容
    ご相談の種類任意

    今まさに設備が止まっている・水が漏れているときは、いちばん上を選んでください。すぐにできることを表示します。

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    私たちは医療機関ではないため、診断・治療・余命の判断はできません。体調の急な変化は、まず主治医や病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は、迷わず119番へ。

    次の一歩

    伝えたいことを、ひとつだけ今日のうちに

    後悔しない過ごし方に、決まった正解はありません。「ありがとう」を伝える、好きだった音楽を一緒に聴く、手を握る。小さなことでも、一緒に過ごした時間は残ります。会いに行くタイミングに迷うときは、病棟の看護師に目安を尋ねてみてください。

    主治医や看護師に聞いてみる一言

    「本人が会いたがっている人がいます。いつごろ来てもらうとよいでしょうか。」

    1. 伝えたいこと・聞いておきたいことを、1つずつ書き出しておく
    2. ご本人の希望(会いたい人・過ごしたい場所)を、聞ける範囲で聞いておく
    3. 遠方の家族とは、会いに行く予定を早めに相談しておく

    手元にあると話しやすいもの

    • 伝えたいこと・聞いておきたいことのメモ
    • 会いたい人の連絡先

    公的な相談先

    病棟の看護師・訪問看護
    ご本人の体調の変化を、いちばん近くで見ている相談先です。夜間の連絡先も確かめておくと安心です。
    がん相談支援センター
    全国のがん診療連携拠点病院などにある相談窓口です。どなたでも無料で、その病院にかかっていなくても相談できます。

    このサイトでできること

    体調の急な変化は、まず主治医・病棟・訪問看護へ。命に関わる緊急時は119番へ。

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    参考・出典

    監修者 木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の
    支援に関する監修者

    木内 由香

    緩和ケア・がん患者と家族の支援に関する監修者

    県立がんセンターでの勤務経験を経て、がん患者さんとそのご家族が直面する療養上の悩みや意思決定の葛藤に向き合ってきました。

    がんと診断されたご本人を支えるご家族には、「一日でも長く生きていてほしい」という切実な願いがあります。一方で、緩和ケアでは、痛みや苦痛を和らげること、その人らしい生活を大切にすること、ご本人の希望を尊重することなど、さまざまな視点から療養の方向性を考える必要があります。

    こうしたご家族の願いと医療・療養方針との間に生まれる葛藤を理解し、年間約200名のがん患者さんとそのご家族に関わる中で、それぞれの状況に応じた支援のあり方や、その先に進むための選択肢をともに考えてきました。

    「がんと家族の相談室」では、がん患者さんご本人だけでなく、支えるご家族も孤立せず、必要な情報や相談先につながれることを大切にしています。医療情報を伝える際には、医学的な正確性に配慮するとともに、ご家族が抱える不安や迷いにも目を向け、療養生活の中で次の一歩を考えるための情報発信を目指しています。

    監修は医療情報の正確性と表現の妥当性に関するものであり、個別の診断・治療・余命の判断を行うものではありません。ご本人の症状や治療については、担当の医師・看護師にご確認ください。

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